side とある医療従事者へのインタビュー
──本日はインタビューにご協力頂き、ありがとうございます
──では、早速ですが、かのSAO事件についてお伺いします。お二人はSAO事件について、どのような
「えぇ、まぁ一年半もの期間が未来ある若者から奪われてしまった事は、残念だとは思います」
眼鏡をかけた四十代後半のスーパードクターはハンカチで額の汗を拭きながら、そう答えた
「だいたいあの茅場って男とアーガス? って会社が悪いんでしょ? VRなんて技術が広がらなければこんな事件も起きなかったんだし」
若作りをした厚化粧の女の年齢は推定しずらいが五十代後半くらいだろうか? 何十にも重ねられたメイクの下の本心には濃すぎるくらいの無関心が厚く塗り重ねられているようだ
──なるほど。ありがとうございます。お二人の認識は把握しました。では質問を変えましょう
──SAO事件では残念な事に、その環境の劣悪さから数多くの犯罪者プレイヤー、カーソルの変化から名前を取ってオレンジ、レッドと呼ばれるプレイヤーが犯罪行為を行っていたらしいのですか、それに関してはどう思われますか?
「それは…仕方ないんじゃないでしょうか。劣悪な環境下で……精神が歪んでしまった末の行為ですし、本人が完全に悪いとは………断言は出来ないと思います」
当たり障りのない言葉を選び抜いた中身の無いスカスカな言葉である。こんな言葉が記事として紙に乗ることこそが本当の環境破壊なのではなかろうか
「なに? そんなもん刑務所にぶち込んどけば良いじゃない。ここは日本なんだし、日本の法律で裁けば良いのよ。強盗も恐喝も殺人も、証拠があるなら罪に問えるでしょ」
こちらの老婆は凄い言い様である。それが出来ないから皆が頭を悩ませていると言うのに
こいつは自分が一握りの天才か何かだと勘違いしているのではなかろうか? 過大評価にも程がある
それから数件の質問が続き、これまた頓珍漢な回答に耳を傾けていると、時間的にも次が最後の質問となった
──お二人は冒頭、いついかなる場合でも、どんな理由であれ、殺人を正当化する事は出来ないとおっしゃりましたがSAOにて攻略組と呼ばれるプレイヤーが先導して行った、犯罪者ギルド。
「……仕方ないんしゃないでしょうか? 正当防衛というものがあるように………やっぱり時と場合というものをあ考慮するべきだと……した方が良いんじゃないかと、思います」
ホワイトペーパーよりも薄っぺらな言葉を語る男性は滝のような汗をハンカチで拭き取りながら、焦るように、何かに怯えるように、やたらと時計を気にし始める
──風の噂で耳にしたのですが、どうやらお子さんが例の殺人ギルドの首領だった訳じゃないですか。その辺りについて、何か感じることだったりは
「なによ! あの恩知らずのクソガキとは縁を切ったわ! もう何の関係もないのに、なんでそんな質問をするのよ! 失礼だとは思わ無いわけ!? 」
逆上する老婆はそのまま脳の血管が切れてしまいそうな勢いで顔を真っ赤にし首を締め上げ迫る
あぁ、血管が切れてしまっても、夫に処置して貰えるから良いのか。相性の良い夫婦だと思った
──まぁまぁ、奥様落ち着いて。おおっと、お時間となりましたので、インタビューはこれにて終了とさせていただきます。お忙しい中わざわざお越し下さり、誠にありがとうございました
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「みんな! 今日は呼びかけに応じてくれてありがとう! 俺の名前はディアベル! 職業は……気持ち的にナイトをやってます! 」
「ほんとは勇者って言いたいんだろ! 」
生温い笑いが場に満ちる。SAOにジョブシステムなんて無い筈なので、これは場を和ませる為に冗談だ
その後ディアベルは私が予め指示した通りにレベル十二以下のプレイヤーを会議から締め出す
ボス部屋に一度に入場出来る上限人数は複数のパーティーを束ねたレイド、計四十八人のみ。その貴重な枠をレベルの低い活躍が期待できないプレイヤーで潰すことは出来ない
「先日、俺達のパーティーがあの層の最上階でボス部屋を発見した! 」
シームレスな進行を行うためにいくらかの嘘を織り交ぜながら行われた演説には、円形劇場に集まるのべ三五名のプレイヤー達の士気を向上させる熱があった
一部のプレイヤーは今の演説でディアベルに尊敬の念を抱いたらしい
必要以上の影響力をディアベルが持ってしまうと、後々ディアベルとの方向性の違いが明確になってしまった際の処理が面倒になりそうだが、上澄みのプレイヤーの内の八人程度が信者となった所で九人纏めて処理すれば良いだけだ
むしろ現段階では攻略組の一体感を増すための良い演出になる。熱狂するプレイヤー達を横目に私は円形劇場の隅っこで控えめに拍手を送る
「ちょお待ってんか!! 」
折角の攻略会議に水を差す真似をする協調性のない奴はいかしては置けない。トゲトゲしい髪型の似非大阪弁を喋る男の人相を素早く記憶し、私は壇上に上がったプレイヤーの言葉を馬鹿にする用意をする
どんな表情をしてやろうか。どんな言葉で否定してやろうか。攻略の役に立たないプレイヤーに有限のリソースを無駄に割くわけにはいかない。目立たない程度にこいつの心にヒビを入れておこう
「こんなかな死んでった千五百人に、詫び入れなアカン奴がおる筈や! 」
キバオウと名乗ったプレイヤーはこの場に集まった攻略最前線を走るトッププレイヤーの中に大犯罪者が紛れ込んでいるとでも言うつもりらしい
殺人を行う際には周囲に第三者が接近していないか注意深く確認をしていた筈なのだが、何か証拠でも残っていたのだろうか?
屍となったプレイヤーは血痕一つ残さず青のフラグメントに変換され消滅するものだとばかり思っていたのだけど
「キバオウさん。あなたが言いたいのは元ベータテスター達の事かな? 」
「決まっとるやないか! ベータ上がりのクソ共はワイらを置いてきぼりにジブンらだけウマい狩り場やらクエストやらを独り占めしおって、ワイらビギナーの事は知らんぷりや」
「それは……」
「そんベータ上りの腐れ連中が溜め込んだ情報やらアイテムやらを吐き出して貰わな、仲間として協力はできひん! 」
良かった。どうやら私が殺害したプレイヤーの知人、友人が復讐にでも来たのかと思っていたがそうでは無いらしい
ベータテスターと新規プレイヤーとの関係に軋轢が生じているようだが、クローズベータテストの際に進んだ階層は僅か十層のみ。つまりベータテスターの情報的アドバンテージは十層までしか通用しない
攻略が停滞するようであればベータテスターの殲滅も視野に入れておかなければならない
もっとも、それを行えば以降の階層攻略において協力者を募る事は難しくなるだろうからやらないが
筋肉質でガタイの良いスキンヘッドの黒人が場を収めてくれたのでキバオウ及びベータテスターの殲滅は行わなくてよさそうだ
あのまま暴動が広がれば一層攻略に大きな遅れが生じてしまう所だったので正直ありがたい。それに有益な情報も提供してくれた
どうやらこのデスゲームと化したアインクラッドで、上手く捌けば莫大な富を築けるような情報をタダで教え広めているプレイヤーが存在するらしい
攻略本と呼称されていたプレイヤーメイドの一品はにはフレンジー・ボアの効率的な狩り方や、リトル・ペネントを討伐する際の注意点。一層から三層まで使える優秀な片手直剣、アニールブレードを獲得できるクエストの詳細などが事細かに記されていた
私が提供したフロアボスの情報も僅かにだが記載されている。この分なら私が秘密裏に手を回し、ディアベルを傀儡にしなくても勝手に攻略会議が開催されていたのではないかと勘繰る程だ
おそらくこの攻略本の著者はベータテスター。それも優秀な仲間と組み、広大な情報網を形成している
大規模な攻略本にはベータテスト時との変更点まで懇切丁寧に記述されいるが、デスゲームが開始されて僅か十三日しか経過していない現段階で、一人でこれ程精密な情報を広く集める事など不可能だ
現段階では有益な情報をもたらす情報屋は攻略に役立つので生かしておいても良いが、あまり優秀過ぎるもの問題だ
「ボス攻略はパーティーを複数束ねたレイドで行う! それじゃあ六人のパーティーを組んでくれ! 」
ディアベルはこの前迷宮区で遭遇した時のパーティーメンバーと組むらしい。私はパーティーを組まずに取り巻きの処理と遊撃を行う。ディアベルには事前に話を通しているので問題ない
迷宮区に行ってもレベルは上がらないし、明日に備えて今日は久々に寝ようかな
ディアベル達は仲を深めるために親睦会と称して宴を行うらしいが、ハッキリ言って味覚エンジンのばっとしないこの世界でどんなに高品質でグラフィックの良い物を食そうが味はさして変わらない。ただの無駄である
「……あんたもあぶれたのか? 」
席を立とうとした瞬間、声をかけられた。幼く何かに萎縮しているような自身の無い声
「君らみたいに売れ残った訳じゃないさ。元々ディアベル…今回の攻略会議の主催者から取り巻きの殲滅と遊撃を頼まれていてね」
どこか聞き覚えのある声だった。だからこそ無視して立ち去ることが出来なかった
「なるほどな。でも、パーティを組んじゃいけないって訳じゃないんだろう? 丁度俺達も取り巻きの処理を担当する事になったんだ。良ければパーティを組まないか? もちろん、フロアボス攻略の間だけの暫定で」
液晶越しに映る彼の姿が脳を掠めた。可視化された不完全な幻影は煙のように消えてしまう
「……それで、どうかな? 」
じっと顔を見つめてしまっていたらしい。童顔の少年は気恥ずかしそうに顔をそらしながら答えを求めている
「いいよ。パーティを組もう」
行動を共にすれば脳を刺激するこの違和感の正体もなにかわかるかもしれない。半透明のウィンドウに表示されたパーティーの勧誘申請を見つめ、yesを押す
パーティーメンバーとなった二人の名前が視界の左上に表示される
Kirito Lv12
Asuna Lv10
やけに記憶を刺激する。脳を裂くような頭痛がした
第一層フロアボス攻略後の展開について。階層スキップして二十五層のクウォーターポイントの話から赤鼻のトナカイやら圏内事件の流れに入ろうかと思うんですが、二十五層までの主人公の話は冒頭でさらっと開示するだけで良いですか?
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いいよー
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駄目だ。一話分使ってちゃんと書け
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作者に任せる