小悪党、又は異常者の狂逸譚     作:這いずる蛞蝓

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第八話 その豚鼻に一撃を

 

 

 

陽射しが照る林の中。迷宮区へと列を成し向かう攻略組の最後尾で私とキリト達はポップするエネミーを狩りながらレイド戦の基本をキリトから教わっていた

 

 

 

 

私とアスナはゲーム自体あまり経験が無く、そんな事前知識の無い状態で、ぶっつけ本番での集団での戦闘が原因で事故が発生するなんてあまりにも馬鹿すぎる

 

 

 

 

キリトは以前からSAOのような系統のゲームをいくつも遊んでいたらしく私とアスナに立ち回り等を詳しく解説をしてくれた

 

 

 

 

 

 

「基本的な立ち回りは以上かな……それじゃあ軽くフロアボスの情報を確認しておこうか」

 

 

 

 

 

 

ソードスキル発動時の硬直時間をカバーし合うスイッチという技術も習得した事だし順調に事が進めば夕方前には第ニ層に到達できるだろう

 

 

 

 

 

森林地帯をあと少しで抜ける辺りでキリトがボスの情報の再確認を提案してきた

 

 

 

 

正直既に何度が対峙してきた相手なので行動パターンは記憶しているし、取り巻きがポップするタイミングも把握済み。情報の再確認は私には必要ないが…ここで提案を断ると明らかに不自然だ

 

 

 

 

 

 

「そうだね。お願いしても良いかな? 」

 

 

 

 

 

 

リトル・ペネントの放つ蔦による多段攻撃を片手直剣で凌ぎ、返しの刃で止めを指し、残るリトル・ペネントにはインベントリから取り出した店売りのスローイングピックに投剣スキルを乗せて投擲する

 

 

 

 

 

一応キリトの話は聞いている

 

 

 

 

 

「…ああ。ボスの名称はイルファング・ザ・コボルトロード。武装は斧と小盾。それと取り巻きとしてルイン・コボルト・センチネルがポップするらしい。攻撃パターンは未確認。フロアボスの四段のライフゲージの内最後の一本が赤く染まると、コボルトロードは武器を曲刀カテゴリのタルワールに持ち帰る……っとこんな所か? 」

 

 

 

 

 

 

「あとはコボルトロードの溜め攻撃の一部にはスタン効果が発生するものもあるから気を付けると良い。くれぐれも油断しないように」

 

 

 

 

 

確定クリティカルが発生する弱点を切り裂き戦闘を終わらせる。武器防御スキルを鍛える為にわざと戦闘を長引かせていたが、このままでは先頭との距離が離れすぎてしまう

 

 

 

 

 

「アンタはボスのダメージディーラーも担当してるんだからあまり無理しないでくれよ。最悪、取り巻きはこっちに任せてくれれば………」

 

 

 

 

「必要ない」

 

 

 

 

「なっ、意地になるなよ。確かにアンタとのレベル差はかなりあるけど、足手まといになる程弱くはないつもりだぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

しつこいガキだ。頸を撥ねてやろうか

 

 

 

「……まぁ考えておくよ。ほら思考を切り替えていこう。阿呆みたいな理由で死なないためにね」

 

 

 

 

 

寸前の所まで吐瀉されかけた言葉を飲み込み、腹奥に仕舞い込む

 

 

 

 

 

上面を取り繕う言葉でキリトの提案を濁し、連撃を与え続けざまに片手直剣斬撃系ソードスキル、スラントを最後のリトル・ペネントに放つ

 

 

 

 

青く散るフラグメント越しに見えた困ったように黙り込んだキリトの表情に、私は酷い既視感を憶えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▲▽▲▽▲

 

 

 

 

 

 

 

浮遊城の最下層。迷宮区の最奥にて、騎士ディアベルがフロアボス討伐の為に集まったメンバーを耳障りの良い言葉で鼓舞する

 

 

 

 

 

攻略組の士気は非常に高い。大きな失敗でもない限りはフロアボス攻略をなんの障害もなく終えることが出来るだろう

 

 

 

 

 

そもそも私が単独でのフロアボス攻略に苦戦していたのは、フロアボスであるコボルトロードの圧倒的な体力が主な要因である

 

 

 

 

 

プログラムされたAIが制御するエネミーの攻撃パターンには本来は存在してしまう癖などがなく簡単に対応できるが、HPに関してはそうはいかない

 

 

 

 

 

フロアボス討伐戦はパーティーを複数束ねたレイドによる攻略を想定している。最低四十八名の人間を相手取る事が出来るように設計されているフロアボスが、通常のエネミーと変わらない訳がない

 

 

 

 

 

 

 

門が開く。私は見慣れた光景だ。攻略組メンバーには新鮮だったらしい。部屋の中に踏み入り、声音が消える。それが緊張からなのか、はたまた恐怖からくる物なのかはわからないが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

静まり返り、警戒を強める攻略組メンバーを見つめる眼が二つ、怪しげに輝く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、玉座に座するコボルトの王の咆哮が部屋中に轟いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

攻略組メンバーの内の半数は今ので恐怖のバッドステータスを食らってしまったらしい。随分と脆弱な奴らだ

 

 

 

 

 

このままでは三十秒後にポップする取り巻き(ルイン・コボルト・センチネル)に囲まれてしまい、当初の作戦通りに攻略を進められ無くなってしまう

 

 

 

 

無価値な肉袋と化した元攻略組メンバーを一瞥し、無骨な片手直剣を引き抜き、コボルトロードへと駆け迫る

 

 

 

 

 

片手直剣スキルの熟練度は三百五十一。ダメージ量を重視するのであればバーチカル・スクエア等の連撃技を放つのが一番良いが、それではソードスキル発動後の硬直時間の間にHPを大幅に削られてしまう

 

 

 

 

ソードスキルを放ったわけでもないのに自ら硬直時間に入った攻略組からのカバーは期待できない。選択されたソードスキルは片手直剣スキルの中で硬直時間、冷却期間が段違いに短いもの

 

 

 

 

片手直剣スキル 斬属性 単発技 スラント

 

 

 

 

 

積めるだけのスキルModを積み強化されたスラントの硬直時間は二秒。加えてスラントの起動モーションは非常に緩く設定されており部位欠損でもしていない限り理論上どんな体勢からでも発動できる

 

 

 

 

 

 

駆ける。大胆不敵に笑みを浮かべる豚面までの距離は五十メートル

 

 

 

 

 

 

手にした剣が輝きを得る。ソードスキル毎に設定されている固有のエフェクトだ。片手直剣の初期スキルであるスラントに設定されていたエフェクトは質素なものだが、エフェクト自体に判定やステータス向上などの効果はないただの装飾なので構わない

 

 

 

 

 

 

視線が集まるのを感じる。刺すような願望。驚愕と嘲るような表情。感情をプログロムされていない生物的で無機質な双眼。そうだ。それで良い

 

 

 

 

 

 

ボス部屋に突入しての約六十秒間は王座から立ち上がらないのは既に確認済みだ。第一層フロアボス戦において唯一安全にボスを攻撃を出来る最初で最後のチャンス。ここでボスの頭に大ダメージを与えるとボスは一分間スタンする

 

 

 

 

 

その隙に攻略組にボスを殴らせれば良いだろう。動けない相手を殴るのとか得意そうだし。きっと適任な筈。たぶん。知らないけど

 

 

 

 

 

 

それは遥か空の彼方にある浮遊城を落とす為の最初の試練であり、ユウキを救うための第一歩だ

 

 

 

 

機械的な眼が私の剣を捉えた。だがもう遅い。コボルトロードとの距離は既に目と鼻の先。斧と小盾を取り出すのに必要な時間は五秒。私が剣を振る方が速い

 

 

 

 

 

先ずは一撃。ソードスキルは正確にコボルトロードの額を捉えた。王座から立ち上がろうとしていたコボルトロードはそのまま王座に押し戻され、コボルトロードはスタン状態に陥った

 

 

 

 

瞬間、私にもソードスキルの代償である二秒の硬直時間が発生したが問題ない。取り巻きの出現までには僅かだが数秒の猶予が存在する

 

 

 

 

 

「フロアボスは一分間案山子。私は取り巻きの処理に移る。ディアベル」

 

 

 

 

「ッ! 攻撃開始! A隊C隊E隊はボスを叩いてくれ! B隊D隊はボスのスタン復帰を警戒! F隊は取り巻きの処理を! 」

 

 

 

 

 

スタン状態に陥ったコボルトロードの腕に剣を突き刺し、速度を緩め地上に復帰し、コボルトロードから距離を取り、キルゾーンを離脱

 

 

 

 

目線の先では二十体程度のルイン・コボルト・センチネルの出現演出が行われている

 

 

 

 

 

コボルトロードの猛攻を攻略組が耐えられるとは思えないので何人かはここで死ぬかもしれないが少しでもボスの体力を削れれば御の字だ

 

 

 

 

 

 

一人で挑んでいた時とは違い、相手も頭数だけは一丁前に揃えているようだし、僅かだが経験値の足しくらいにはなるだろう

 

 

 

 

右手でメインメニュー・ウィンドウを開き、ストレージから適当な武器を選択。オブジェクト化された刃渡り五十センチのロングダガーを左手に構え

 

 

 

 

〈ERROR/不適切な装備パターン。ソードスキル発動不可〉

 

 

 

 

瞬時に視界に警告文が表示されたが無視だ。これだけの敵の数を前にソードスキルなんて使えば硬直時間の間に寄って集って嬲り殺されてしまう

 

 

 

 

 

視界の端にキリトの姿が映る。痛いくらいの既視感は、既に何処かへと消え去っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一層フロアボス攻略後の展開について。階層スキップして二十五層のクウォーターポイントの話から赤鼻のトナカイやら圏内事件の流れに入ろうかと思うんですが、二十五層までの主人公の話は冒頭でさらっと開示するだけで良いですか?

  • いいよー
  • 駄目だ。一話分使ってちゃんと書け
  • 作者に任せる
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