湿った緑の匂いと肌にまとわりつくような風を感じた俺はゆっくりと目を覚ました。葉っぱで作った家からのそのそと這い出して朝の空気を思いっきり吸い込む。耳を澄ませば周りから虫の演奏が聞こえる。
今日は食べ物を料理するための道具を作ろうと思う。魔法で作成してしまえば一瞬で解決するけどそんなのはサバイバルのロールプレイでは異端だ! 現地で素材から製作する。これが俺のロールプレイだからな。だけど料理道具の作り方なんて俺は知らない。そこで、だ。
俺はこの前使った料理道具--課金アイテム--を手にした。使い捨てのはずなのになぜか消滅することなく残ってるフライパンを手にして解除していたエキスパートのパッシブスキル発動する。
--<道具理解>。このスキルを使えば何と指定したアイテムの製造者や効果だけでなく製造方法もわかってしまうのだ。ふむふむ、どれどれ。
【--フライパン--材料~~。選別~~。生産~~。精製~~。製造~~。仕上げ~~。】……。まぁ、はい。わかってたよ。武器製造と同じくらい手間がかかるのね。道具だから少しは楽なのかなと思ったけどそんなことはなかった。アイテムランクが高いからか材料はアルフヘイムに居ない別の場所のレアモンスターのドロップ品だなあ。この素材は持ってないしソロ討伐するにしてもキツイ。というかマップに行けるのか?
俺は<
だとするとアイテムランクを落とすしかないんだけど。悩んだ末に俺は一番ランクの低い--下級--アイテムを作ることにした。これなら材料は鉄で済むしね。問題は岩石だよなあ。どこにあるんだろ。あ! そういえば最初に魚を捕まえた場所に岩がたくさん転がってたな。それでいっか。
俺は転移魔法を使って岩石を取ってくるとそれを殴った。力を込めて殴れば木っ端みじんになることはそこらへんに生えてる木で学んだから。
--岩石を殴る。
--岩石を殴る。
--岩石を殴る。
小さな石になったら手に握ってすりすりする。
--すりすり。
--すりすり。
そして岩石が砂のようになった。次は選別だ。エキスパートのスキルでやり方は分かるんだけど色々あるみたい。道具がなくてもできる方法は……。
「<
俺はドルイドの第一位階魔法を発動する。この魔法は自然に流れてる風の威力を増幅して攻撃することができる。さらに
大切なのは威力だ。鉄は不要なものよりも重いらしい。だから風の力で鉄だけを残すように慎重に砂の山を攻撃する。よーしよし、いい感じに砂が飛んでいくぞ。その調子その調子。
「だああああ。できたああ」
なんとか鉄の選別に成功したみたいだ。こんなに集中して作業したのはデスペナの恐怖に怯えながら背伸びした狩場でソロ狩りしてた時以来だ。不意の横沸きで敵を抱える許容量を超えて一気に死ぬ恐怖は今でも震えるくらいだ。でもその作業も何とか終わった。次は選別した鉄の粉を熱する。必要なのは高炉。……高炉。すいません、アイテム使わせてもらいます。
「……」
いや、やっぱり手作りしよう! 唸れ! 俺のエキスパートクラス! そしてクラフトマンとどちらを取るか悩んだ上位クラスの
「うおおおおお」
俺は穴を掘った。
--もっと穴を掘る。
--掘る。
--掘る。
きたああああ! これだぜ。しばらく穴を掘れば粘土が手に入る。この粘土がないとダメなんだよな。
もう一か所適当に穴を掘って平にしたら第一段階は終わりだ。次はこの粘土をツボの形に整える。
--ぺたぺた。
--ぺたぺた。
--ぺたぺた。
そして<
--ゆっくり。
--ゆっくり。
--ゆっくり。
よし。こんなもんだろ。俺の中の
俺はフライパン--課金アイテム--を加工した粘土で挟んで力をこめる。そしたら粘土がカチカチに固まった。次は固まった粘土を力ずくで真っ二つにする。オラァ! レベル百のパゥワーを舐めるなよ!
「できた!」
そうすればフライパンの形をした粘土の台が出来上がった。あとはここに溶けた鉄を流して冷ませばフライパンが出来上がる。高炉の中を覗いたら鉄が溶けているのが分かった。それじゃあ型に流し込むぞ。
「あっつ」
溶けた鉄を掴んだら意外と熱かった。こいつモンスターでもないのに俺にダメージを与えるとはいい度胸じゃねえか。俺は
最後に
「できた!」
ふーん。なんかブツブツがあって触ってみるとデコボコしてるな。課金アイテムのフライパンと手触りを比べたら全然違う。課金アイテムはツルツルしてるし。改良の余地がありそうだ。でもまあ初めてにしては上出来でしょ。満足満足。
俺は同じやり方で鍋と菜箸、その他の調理器具も作った。ボウルやお皿は木材で作ったりもした。そうして完成した調理器具を並べてみる。
「おぉ~。ええやん」
課金アイテムと比べるとかなりゴツゴツした感じだけどやりきった感じがして気持ちよかった。ユグドラシルでも素材から武具を作って達成感を感じたことはある。けど今はその時とは違ったものを感じる。そう、これだ。
「ふっふっふっふっふ。ひっひっひっひっひ」
心が笑っているせいか意識しても笑うのが止められない。これが、これこそがサバイバルのロールプレイの醍醐味ってやつなんだな。やっぱりいいな。サバイバルってやつは。
その後、俺は自分で作った道具を作って料理を作った。その味といったら。最高においしかった。