フィクサー事務所68   作:バラのレバー

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おはようございます…
もう少し書き貯めがあるので出していきますね。



「買い物」

「買い物」

 

「なぁローラン。お前最近どうしたんだ?楽な依頼ばっか引き受けてるじゃないか。」

「飲みに誘っても来ないし...」

賑やかな雰囲気の居酒屋の中、白い外套に身を包んだ大柄な男は二言目に特に重点を置きながら、若干恨めしそうに言った。

「あー、悪かったよ。」

「このごろちょっと立て込んでてさ...」

「そうなのか?」

こいつの名前はオリヴィエ。俺と同じチャールズ事務所のフィクサーで、俺の親友だ。

アルとムツキの二人を育てる時間を捻出するため、あれこれと誤魔化しながら長いこと飲みの誘いを蹴ってきた俺は、訝しんだオリヴィエに捕まっていつもの居酒屋に連行された。

「で、結局理由はなんだ?」

「え、え〜と...」

「目を逸らすな。」

仮面越しでもバレるのかよ。

「わかったよ...多分呆れると思うんだけどさ...」

「実は...孤児を育てて...」

オリヴィエが酒を噴き出す。

しばらく咳き込むと、オリヴィエは怪訝そうな顔をした。

「...なんだって?」

「いや...自分でもどうかしてるとは思うんだけど...煙戦争の孤児を二人育ててるんだ。」

オリヴィエはハッとした顔をして、開きかけた口をつぐんだ。

普段なら「正気か?」ぐらい言いそうなものだが、目の前のこいつは腕組みまでしながら慎重に言葉を選んでいた。

昔から戦略とか計画を立てるのが上手い奴だった。

だから、おおよその事情を察して、俺に配慮してくれているんだろう。

「...いちいちそんなことやってたらもたないぞ?」

「はは...そうだな。」

気の置けない親友の気遣いを肴に、俺も杯を飲み干した。

今から言う言葉は酒の力を借りなければ言えそうにないからだ。

「見過ごせなかった…てのは、今まで散々殺してきておいて今更だよな?俺は自分の罪悪感を拭う為にあの子達を利用したんだ。」

「でも、あの子はずっと強くて優しかった。俺を赦すって言ってくれたんだ。感謝してるって、家族だと思ってるって...病的にお人好しだよな?」

「恥ずかしい話だけど、少しだけ、生きる理由になったよ。」

「ローラン...」

オリヴィエは何も言わなかった。

しばしの沈黙、グラスの中で揺れる透明な酒を見つめながら、俺は切り出した。

「なあオリヴィエ。」

「『頼みがあるんだけど』か?」

「うっ...」

「『なにかで俺が戻らなかったらあの子達の面倒見てやってくれないか』だろ?」

「ううっ...」

はぁ、全部見通されたか。

こんな図々しい頼み事するだけでも恥ずかしいっていうのに...

「分かった。」

オリヴィエの返答に、半ば諦めていた俺は耳を疑った。

「え?マジで?」

「そんな日は来ないと言ってやりたいが、こんな仕事だ。そう言える奴なんて特色ぐらいだろう。それに、親友の忘れ形見くらい守らせてくれ。」

「貸し一つだぞ。ローラン。」

感激する俺を見て、オリヴィエは快活に笑った。

やっぱり持つべきものは親友だ。

それからしばらく経ったわけだが、幸い俺は今も無事....ではない時もあるにしろ、五体満足に仕事を続けている。

ある日、休暇が取れたので彼女達を連れて買い物に行くことにした。

年頃の少女二人は大はしゃぎで出る支度を始めたが、おしゃれしようにも着る服がないことに気づき、首を傾げた。

俺はその様子を見て過去の自分を呪った。

何で女の子達にオシャレさせてあげようって発想すら出てこないんだお前は?

というわけで、まずは服屋に寄ることにした。

仕事服だと専用の職人に頼まないといけないんだけど、それはまた今度で。

今までで一番輝かしい目で服を見て回る彼女達に少し罪悪感を感じるながら、微笑ましい光景に頬がやや緩む。

やがて、欲しい服が決まったようで、着替えて俺に見せに来た。

「どう?せーんせ?ムツキちゃんカワイイでしょ?」

「お、おう。」

ムツキは赤と黒のチェック柄のスカートが目を引くゴシック調のものを選んだ。

思ったより丈が短く、危うさがあるので、心配して見ていると、「何?先生緊張しちゃった?」と小悪魔の様に笑った。

どちらかというと親心だ。

「ふふふ、カッコよく決めすぎたかしら?」

アルが選んだのは、白シャツに丈の短い黒スカート。

スタイルが良いので実にメリハリがあって似合っているのだが、物足りなさを感じたのか大きな外套を袖を通さずに羽織った。

なんだその背中のモフモフは。

なんとなく北部出身の外套を四枚羽織った友人を思い出し、思わず噴き出すと、アルは「なんでよ!カッコいいでしょ!?」と反論しながらポカポカ殴ってきた。

思ったより愉快な子だったのかもしれない。

店を出て裏路地を歩く、新しい服で、手を伸ばしてみたり、くるりと一回転してみたりと目に見えて楽しんでいる二人と一緒に今日のプランをこなしていく。

「何これ!美味しい!」

「ん〜♪これ美味しいね!」

「だろ?俺ここのサンドイッチ大好きなんだよ。本当に生活のレベルが一段階上がるよ。」

ハムハムパンパンに寄ったり、

「アウトローの心得!?」

「読んでわかるのか?ホンモノ何人か見てきただろ。」

本屋に寄ったり。

リストを消化しながらいろいろ歩き回った後、俺達は3メートルサイズの立方体の建物の前に着いた。

フィクサーをやるなら済ませておかないといけない用事があるからな。

「ごめんくださーい」

育ちの良いアルが自発的に扉を叩きに入ったが、返事は無い。

「誰も居ないみたいだけど?」

アルが不思議そうに言うが、俺は構わずドアを開けて現れた階段を降りていく。

「アル、言い忘れてたんだけど都市のドアってたまに腕が溶ける様なしょーもないセキュリティついてるから気をつけた方がいいぞ。」

「えっ!?」

アルは慌てて手を確認するが、異常はない。

この工房の持ち主は性格がひん曲がっているが、そんな装置は付けていない。

なぜならもっとタチが悪いものが出てくるからだ。

「ええ?ここ降りるの?」

「探検みたいで面白そう!」

ドアの向こう側には、地下へと続く先の見えない階段があった。

暗く、最後の見えない階段を踏み外さないように下っていくと、暗がりから大きな影が上がってくる。

「先生!?何か来てるわよ!?」

「もしかして敵かな?やっつける?」

「はぁ〜。来るたびにあれしまえって言ってるんだけどな....」

地響きと聞き間違うほどの足音と共に、その主が姿を現した。

茶色い体に大きな丸っこい手足、クリクリとしたビーズのお目目の巨大なクマのぬいぐるみだ。

そいつはテクテクと器用に階段を上ってくる。

「あ、可愛い〜」

なんて呑気に言うアルを下がらせ、10段は離れていた距離を一気に詰めて来たクマの前足を剣で受け止めた。

「え?ええええ!?」

「あはは!面白〜い!」

絶叫するアルと面白がるムツキを背に、俺はクマと激しい鍔迫り合いを繰り広げた。

飾りにしか見えない可愛らしい爪は、見た目にそぐわない鋭さでギリギリと不快な金属音をたてながら、俺を押さえ込もうと圧力をかけてくる。

...こんなに強かったか?

前でさえ人をズタズタにできる強さだったのに、更に出力が上がっている気がする。

本格的に客撃退機になって来たな...

流石に、こんなおもちゃに負けるほど鈍ってないが。

少し力を込めて腕を押し返すと、頭が大きいため、重心が不安定なクマはのけぞり、階段の縁に後ろ脚を引っ掛けてなんとかバランスを取ろうとした。

腕をジタバタさせてグラグラと揺れる様子は、なんとなく間抜けで愛嬌がある振る舞いだった。

「やっぱり...可愛い?」

「一体持ってたら面白そう〜!」

俺は素早くデュランダルを抜き放って間抜けなクマの前腕を斬り落とし、そこそこの力を込めてガラ空きの胴体に蹴りを入れた。

あんまり派手に壊すと後が怖いので加減したつもりだったが、俺の蹴りを喰らったクマは、強く押しすぎたケチャップみたいに両腕から綿を飛び散らし、暗い底へと転げ落ちていった。

「「.....」」

非常になんとも言えない表情で俺を見つめる二人を無視して、雪のように降る綿の中を下っていく。

やがて、広いスペースが現れ、主人が不機嫌そうな顔で出迎えてくれた。

「ねぇ、ローラン。何度言ったら来るたびに私のクマちゃんを破壊しないでもらえるのかしら?」

工房の主人はクマの残骸を見ながら煩わしそうに頭を掻いた。

「勘弁してくれユーリア。どう考えてもあの客撃退機片付けた方がいいぞ。」

小さいシルクハットを被り、短く揃えた鮮やかな赤髪の少女は俺を非難する様に睨みつけた。

同時に、後ろの2人に気付いた様だが、無視して俺に話しかける。

「で、何の用で来たのかしら?ローラン?」

「短くない付き合いなのにアポの取り方も覚えられない貴方に同情するわ。」

「それについてはインターホンをつければ済む話じゃないか?武器を作ってもらいにきたんだよ。工房職人のユーリア。」

「武器?あなた昔からその長剣...ああそうだ、デュランダル一本だったじゃない。」

「私が何回も勧めてる私の工房製は使わず、メンテばかりさせてくるくせに今更武器を作れと言いたいのかしら?」

「俺はこれが一番手に馴染むんだよ。」

ユーリアはネチネチと俺に文句を垂らす。

アルとムツキは何故コイツの客がいなくならないのか不思議がっているだろう。

「俺にじゃない。後ろの2人にだ。」

ユーリアはさっき完全に見なかったふりをした2人をまじまじと見た。

「隠し子?」

「違う。」

「そう。」

自分から話を振っておいて微塵も興味なさげに相槌を打つ。

品のありそうな見た目のくせに性格がねじれているのがこの女だ。

「まあ、いいわ。ちょっと退屈してたところだから作ってあげるわ。」

ユーリアは明らかに先約の契約書の束を押しのけ、ゴタゴタした机の上で、書類を書き殴り、俺の顔面に叩きつけた。

「ぐぇっ」

書類を取って確認すると、そこには今回の料金が書かれていた。わりと法外な値段で。

「お前計算苦手か?俺の自費でいいから計算機買うって言うのはどうだ?」

「別に高くないでしょう?この私が腕によりをかけて作るのよ?安いくらいだわ。」

「...ちょっとまけろ。」

「はぁっ!?ちょっとあんたねぇ!常連だからってあんま調子に乗ってると...」

ユーリアを見てニヤニヤと笑うと、彼女はキャラクターが崩れたことに気づいたようで、コホン、と仕切り直し、圧を感じる笑顔のまま値引きしてくれた。

性格はひん曲がってるが、彼女は精神的に幼い。ちょろいもんだ。

俺は、ユーリアとの応酬についていけず、呆気に取られていた2人に話を振る。

「今からそこのお嬢様に武器を作ってもらうんだけど、どんなのが良い?」

アルとムツキは少し考えた後、アルは長剣、ムツキは大鎌を希望した。

「大鎌ねぇ...」

ユーリアがニヤニヤとしながら俺を見る。

なにか問題があったのかとやや心配そうに俺を見たムツキに、なんでもないと言った。

別に武器に罪はない。

使い手に良いイメージが全くないだけだ。

「とりあえず分かったわ。できたら連絡するから待ってなさい。」

 

 

後日、依頼を終えて帰ると、アルとムツキが申し訳なさそうに書類を持ってきた。

3匹ほどのクマのぬいぐるみが武器と一緒に持ってきたのだと言う。

内容を見るとそれは請求書で、合計金額がおかしい。

「やりやがったなアイツ....」

俺は法外な「送料」が書かれた請求書を握り締めた。




ユーリアが書きたかっただけです。
本編でもEGOの補助装置作ってたから大丈夫だろう精神。

御職業は?(展開の参考にするかもしないかも。)

  • 管理人(プロムンユーザー)
  • 先生(ブルアカユーザー)
  • その他(どっちも知らない)
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