フィクサー事務所68   作:バラのレバー

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バビロンの蔵(メモ帳)から何とか探して引っこ抜いて来ました。
次辺りから話が動くと思います。



「巣立ち」

「巣立ち」

 

私は椅子に腰掛け、舌を巻くほどの達筆で書かれた手書きの説明書を読んでいた。

『この武器には感情に共鳴して発熱する石を核に使っているわ。(私の自作よ)熱を使うからってスティグマ工房のパクリだなんて思わないことね。あんな三下工房の物なんかとは比べ物にならない可能性を秘めた武器だから。あなたはそんな私の武器を使えるわけだから誇りに思いなさい。誰かに自慢しても良いわよ?』

読み終わると頭が痛くなった。

この弘法小町は筆でなく書く内容を誤ったらしい。

気を取り直して、と言うわけでもないが、私は長剣を手に取り空に翳してみた。

漆のような光沢のある黒色の細く伸びたフォルムで、長さは3尺。

だが、見た目ほど重くなく、取り回しが良い。

素材は何で出来ているのだろうか?

剣身には枝分かれした白い紋様が描かれており、光の当たり具合によって淡い光を放つ。

黒と白のコントラストがよく映え、ついつい見入ってしまうような美しい造形だ。

まさに芸術と言える出来だった。

あのひねくれた主人からどうやってこんな繊細な一品が生まれたのか分からない。おそらくこの腕の良さで客足が途絶えずに済んでいるのだろう。

とはいえ、武器は武器。

見ているだけではどうしようもないので、庭に立てた案山子で試し斬りをしてみることにした。

いつかの先生の姿を思い返し、腰を落とし、両手でグリップを握り、剣先を長いウィッグを被った案山子、『アルガリア』に向ける。

すると、白い紋様が徐々に赤く染まっていき、にわかに空気が揺らぐ。

やがて剣身は炉の中の鉄の様に白熱した。

私は地面を蹴って、自身をまっすぐな一つの矢のようにするイメージで、白く燃える刃を突き出した。

白熱する剣先はまるで水につけた様に、無抵抗に案山子の胴体に沈み込み、煙を上げる風穴が開いた。

これは凄い。

感動して見惚れていると、ムツキが大きな赤い包みを背負って現れた。

「やっほー!アルちゃん!試し斬り中?」

「次、ムツキちゃんがやっても良いかな?」

「良いわよ。」

後ろに下がって、ムツキを見ていると、ムツキは包みを固定していたボタンをパチンと外して、中から赤い大鎌を取り出した。

「おっとと...」

ムツキが鎌の重さに一瞬ふらついて、鎌を傾けたとき、獣の唸り声のような歯車の駆動音がなり響き、鎌の背から蒸気が勢いよく噴き出す。

呆気に取られる私にイタズラっぽく笑ったムツキはその状態で大きく振りかぶり、蹴り出した。

蒸気から得た推進力でまるで氷の上を滑るように回転し、白い軌跡と共に煌めく三日月が案山子を二つに切り裂いた。

ムツキは鎌を振り上げ、またフラフラしながら、鋭く尖った石突を地面に刺し、こっちにピースした。

もしかしてわざとやってる?

「おー、やってるな。」

先生がぬらりと私の背後から現れる。

「うわぁっ!」

思わずその場に飛び上がってしまった。心臓に悪いったらありゃしない。

「〜っ、先生!いるなら声かけてくれても良いじゃないの!」

「訓練だよ、訓練。気配察知のための。」

笑いながら先生は言う。

「あっ!先生〜!!」

先生が居ることに気がついたムツキが小走りで近づいて先生に飛びかかる。

先生は受け止めた勢いそのままに一回転した後、そっとムツキを下ろした。

もう同じ手は喰らわないとでも言いたげなドヤ顔をしているが、別に攻撃のつもりはなかったと思う。

「武器の使い心地はバッチリって感じだな。」

「それと、話さなきゃいけないことなんだけど....ここ2年ぐらいサボってたからか数年かかるようなデカい仕事を割り当てられちゃって、帰る目処が立たなくなったんだよな。」

「だから....」

先生は頭を掻いた。

どうやって伝えるべきか迷っている様子だ。

用件は分かっていたし、驚きはしなかった。そのうちこんなときが来ると思ってたから。

ムツキに視線を送ると、彼女も時が来たことを理解したようで、頷いた。

「先生、私たち自立するわ。」

「....まあ、そうだよな。」

先生は心配にも寂しげにも見える顔だった。

さながら今生の別れのようだ。

「そんな顔しないで、先生。いつか凄いフィクサーになってまた先生に会いに行くから!」

「それまで死んじゃだめだよー?せんせ♪」

「ムツキ!縁起でもないからやめなさいよ!」

「くふふ」

「はは、このやりとりが見れなくなると思うと、ちょっと寂しいな。」

 

 

 

「ふぅー」

ガラス扉の前で大きく息を吐き、意を決してノブに手をかけようとしたとき、ムツキがドアを開けた。

「おー結構広いねー」

...出鼻を挫かれてしまったが、私もムツキの後に続いて堂々と中に入る。

灰色のカーペットが敷かれており、がらんと開けた十ニ畳半の部屋。

空白の領域は寂しさではなく、好きに埋められる楽しみである。

「....こだわって選んだ甲斐があったわ」

「家賃どう払うか考えないとね〜」

耳が痛い。

「でも、取り敢えずは喜ぼっか?」

「私たちの「事務所」をさ!」




用語に注釈は入れた方が良いのですかね?

御職業は?(展開の参考にするかもしないかも。)

  • 管理人(プロムンユーザー)
  • 先生(ブルアカユーザー)
  • その他(どっちも知らない)
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