不定期!不定期です!まだ書き貯めがあるから毎日に見えるだけです!
私は今、ムツキに手を引かれて狭い路地を走っている。
ムツキは前を、私は下を向いて。
「ねぇ...なんで。」
私の声にムツキの足が止まる。
「なんでこんなことしてるの?」
「アルちゃんに言われたからだよ?」
なんでもないことのようにムツキは言う。
「あの子...あのままじゃ死ぬよ?」
「そうかもね?」
ムツキの声色は変わらない。
「平気なの?私みたいな碌に知らない人間1人にお節介焼いて死ぬんだよ?」
「私は、あなた達を使い潰して逃げるために依頼をした。だから命を賭けられる義理なんてない。」
「知ってるよ?私もアルちゃんも。」
「それならなんで...なんで依頼を投げ出さずに命を賭けてるの?」
「フィクサーはそんなにお金が大事なの?」
「まあ、確かにお金も大事だけどさ〜。答えをカヨコはもう知ってると思うよ?」
そう言うと、享楽主義の小悪魔は急に全てを見通したような目をした。
「...私には、何も分からないよ。」
「ふーん?じゃあ答え合わせにしよっか!」
「答えはね〜。二人とも良く似てるから!」
私は面食らった。
ムツキが何を言っているのかさっぱり分からない。
「アルちゃんはさ〜、ハードボイルドなフィクサーになりたいんだよね!でもね?ぜーんぜん向いてないの!」
ムツキはケラケラと笑う。
完全にムツキの言っていることが分からなくなった私はただ黙って聞いていることしかできなかった。
「ミステリアスで、悪を裁く悪、って感じのを想像してるみたいだけど、人が良すぎるんだよね。アルちゃんは。」
ま、そこが良いんだけど。
ムツキはそう言って続ける。
「で、カヨコの方もさ、ぜーんぜんヤクザ向いてないよね!」
「え?」
私はまたもや面食らった。
極道の娘としてしか、お嬢としてしかの扱いしか知らない私にとって、その一言はあまりにも予想外で、そして、鮮明で。
「なんで、そう思うの?」
「お人よしだからだよ?すっごく。」
「カヨコはさ、あのオールバックの人が私達を殺そうとした時に止めたよね?自分から帰りたくもない場所に戻ることを決めて。」
「どうせ、もう逃げれそうになかったからだよ。」
冷たく放とうとした言の葉は妙に淀んだ。
「でも、自分から選ぶのと結果的にそうなるのは違うよ?それにどっちにしろ私達を庇う義理なんてカヨコにはなかったじゃん。」
「カヨコは、自分が思ってるよりずっとお人よしで優しいと私は思うな!あっ!雨の日の猫とか放っておけなさそ〜!!」
ムツキは心底楽しそうに笑った後、結びを言った。
「甘ったれなハードボイルドと、優しいヤクザ、結構似たもの同士だと思わない?」
「だから
「......」
私は返す言葉を見つけられなかった。
「おい!居たぞ!」
組員が私たちを見つけ、雪崩れ込んでくる。
「あちゃぁ...話しすぎたかな?」
ムツキが素早く反応し、私を後ろにして飛びかかっていった。
「お願いします!お願いします!許してください!本当にお金がないんです!」
哀れな滞納者が床に頭を擦り付けている。
私は刀を握ったままそれを見ていた。
「あ?金払えねぇなら別のもので払わなきゃな。」
楊が笑みを浮かべる。
「お嬢。左目切ってください。」
促されるままに私は一歩前に出た。
四つん這いの男の顔は私の腰くらいの高さにあるので、簡単に切れそうだ。
「い、嫌だ!勘弁してくださいぃ!それだけはぁぁ!!」
「嫌なら内臓でも売って金用意するべきだっただろ?」
「全身やっすい義体*1にして。」
楊がつまらなさそうに言った。
「そんな...」
「そもそも保護料が高すぎるんだ!こんな金額どうやって毎月....」
私は急に開き直って不満を吐き散らす男の肩を刃先で抉った。
「ぎぃやぁぁぁ!!!」
ドクドクと血が溢れる傷を抑えて男がのたうち回っている。
「おー」
「流石ですお嬢。」
楊がパチパチと拍手をして、私に飴玉を渡してきた。
「うん。」
幼い私は嬉しさを隠しながらも素早く包装を解いて口に含み、コロコロと転がす。ぶどう味だ。
「自分の立場も分からずにごねて来るやつには痛い目を見せてやる必要がありますからね。よくできましたよ〜お嬢。」
よしよしと楊が私を撫でた。
「ク....クソが!お前らはイカれてる!どうやったら顔色一つ変えずにこんなことが...」
言い終わる前に男の首がゴロンと落ちる。
うるさかった口は開いたままで固まったのに首があった場所からは悲鳴のようにどばどばと血を流し続けていた。
私が楊の方を見ると、不快そうな顔で刀の血を拭いている。
「はぁ...お嬢、こいつ最後までクソ野郎でしたね?巣*2が無くなったんならただのゴミのくせに、プライドばっかり高い奴は身の振り方がわかっちゃいない。」
楊が首のなくなった体を蹴り飛ばす。
「おい、これ片付けとけ。」
そう言うと、二人の組員がすぐに死体を担ぎ、どこかに持ち去っていった。
「はぁ。すいませんねお嬢。これじゃ練習にならないってのに...」
これが、私の日常だった。
自分が組織をまとめ上げていくんだと教え込まれ、『
幼い日の中のいつかだった。
私が護衛に組員を連れて支部の視察に行った日。
その日の裏路地は激しい組織間抗争の最中に会った。
完全に戦場に踏み込んでしまい、退路を確保する為に飛び出して行った組員が帰って来ず、一人ぼっちの私は壁を背にして声を殺して泣いていた。
やがて、戦場からあぶれた血まみれの男が、足を引きずりながら私に近づき、斧を振り上げた。
私は今にも訪れようとしている凄惨な結末に諦めて目を閉じた。
しかし、その時は来なかった。
つんざくような絶叫、肉が裂ける瑞々しい音と、骨が断たれる乾いた音、怒号と剣戟、先ほど響いていたそれが何倍にも増幅されて響く。
しばらくすると全ての音がぴたりと止んだ。
恐る恐る目を開くと、全身に浴びた血と同じくらい赤い髪をたなびかせた女性が私の前に立っていた。
男と並んでも全く見劣りしないだろう高い背丈に頑強な体格、深く抉られた右目の傷。子供ながらにも一目で猛者と確信できるその人は、ギョロギョロ動く眼球と赤い肉塊が張り付いた奇妙な大剣を肩に担いでいた。
正直、凄く怖かった。
私は彼女が何者か知らないし、お世辞にも人相が良くは無かったから。
彼女は煙草をふかしながら剣で路地の向こうを指した。
「あそこに走って行けばここから抜けられる。」
確かにその向きには散らばった死体と武器が散乱しているものの、動いている物は無い。
でも私は突然のことに腰が抜けてしまって動けなかった。
一向に動けない私に彼女はため息をついて近づく。
恐怖のあまり、顔を背けて拒絶するように突き出した私の手を取り、彼女は私をひょいと立たせた。
「しっかり歩け。」
そう言って背中を叩かれた。
私はすぐにでも走って行こうとしたが、思い出して懐に入っていた飴玉を彼女に差し出した。
受けた恩に義理を通すのは任侠の基本だ。
「いいから早く行け。」
ぶっきらぼうに彼女は言う。
一向に腕を退けない私に根負けしたのか、それとも極道の娘としてしか生きられない少女への憐れみだったのか。
理由はどちらにせよ、彼女は飴玉を受け取った。
それから、私は彼女のことを考えた。
彼女は強い。
組織の戦闘員を瞬く間に床に散らかしたその実力もそうだが、本質はその心にあると私は思った。
都市で見知らぬ誰かを守るために戦う。
それはどれだけの勇気がいることだろうか?
なんの得もなく、因縁が増えるだけ。
そんな苦行をなんでも無いように行う彼女の姿は私にとって紛れもなく英雄だった。
背丈が伸び、飴の代わりに煙草を咥え出しても私は未だにポケットに飴玉を入れている。
そしたら、彼女に会えた時に私を思い出してくれるかもしれないから。
私は...雲になりたかった。
気まぐれに流れて時折、誰かを潤してあげられるような。
でも、黒い雲は流れはしない。
人々の頭上に留まり、濁った赤黒い雨を降らし続けるだけだ。
私は雨に打たれて凍える心を守るために逃げ出した。
当てなんて最初からなかった。
だから、救いなんてないはずだった。
でも、私は太陽を見つけた。
まだまだ小さいが、確かな暖かさを感じる太陽、他人の為に命を賭けるお人よし。
思えば、彼女の髪は朱色だ。
ああ。そうか。
私は...その姿に
ムツキは苦戦を強いられていた。
一人一人がそれなりの使い手であり数的不利、さらに狭い路地は長い彼女の得物を振り回すのに向かない。
牽制を繰り返してなんとか持ち堪えてはいるものの、段々と動きを見切られ始め、ジリジリと追い詰められつつあった。
繰り出された平突きを鎌の刃で掬い上げるようにして弾き飛ばしたとき、死角からもう一人が飛び出した。
両手で握りしめられたその刃は死に体となったムツキの胴へと伸びる。
その瞬間、カヨコがムツキの横から飛び出した。
短い呼気と煌めく白刃。
薄い白銀の軌跡は男の顔を撫でるように弧を描き、鞘と鍔が出会った途端、その色を紅く変えた。
弾けた雲から雨が飛ぶ。
それは雪のような白肌と髪を赤く染め上げるが、彼女はもう雨に凍えることはない。
雨の後には陽が出るものだ。
1000UA超えたねぇ!
カヨコの過去はミョのコアページ参考にしました。
赤い霧チルドレンはこうやって増えていくんだろうね。
あと、ブルアカのアニメすっごく良かった。
やっぱり透き通る世界でも蹴りとか殴打は普通にあるんやなって...
御職業は?(展開の参考にするかもしないかも。)
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管理人(プロムンユーザー)
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先生(ブルアカユーザー)
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その他(どっちも知らない)