べ、別にそっちの方がUA稼げそうとか思ってないんだからね!
検索で出し辛くてちょっと気になるだけなんだからね!
「はっ!デカい口叩くならちゃんと腕が立たないとな!」
楊が斜め右上から刀を振り下ろす。
私は剣の腹に手を当てて面で受け、刃をなぞるようにして走る。
楊を間合いに捉え、勢いそのままに斬りかかったが、楊は素早く逆手に持ち変え、差し込むようにして刃を受け止めた。
引き戻してもう一度斬りかかろうとした瞬間。
楊は握った柄でそのまま私の鳩尾を打った。
「かはっ…」
衝撃で一瞬横隔膜が硬直し、死に体になった私に鋭い蹴りが入る。
尖った靴の爪先がまたもや鳩尾を捉えた。
強化施術で上がった身体能力から放たれる痛烈な前蹴り、それをもろに食らってしまった私はピンボールの玉みたいに射出され、3度バウンドして仰向けに地面に転がった。
「ゴホッ...ゲホッ...」
肺を施錠されてしまったような息苦しさと痛みで気管が蹂躙され、喉を焼くような空咳が溢れ出す。
咳を噛み殺し、心臓を押さえつけるように、胸に手を当てて立ち上がる。
「そのまま寝といた方が幸せだったな?」
楊がその場から弾き出されたように飛び込んできた。
前に出した足を強かに踏み込み、上段に構えた刀が恐るべき加速を持って振り下ろされた。
私は反射的に剣を掲げ、それを受け止める。
まるで大槌を振り下ろされたような衝撃が走り、鍔迫り合う刃がギリギリと嫌な音を立てた。
力の差は歴然。
楊はまるでゆっくりと空き缶を踏み潰すように力をかけていく。
このままでは押し付けられた自分の剣で頭蓋を割られるか、力負けして地面に押さえ付けられた瞬間を狩られて終わりだ。
「─はぁっ!」
爪先から指先までを総動員し、立ち上がるようにして一瞬だけ刀を押し上げる。
それにより緩んだ拘束を素早く後退して抜けようとするが、追うように薙がれた一刀が私の頬を薄く裂いた。
薄皮一枚。と言って良いほどの浅い傷にも関わらず、指でなぞっても血が消えない。どうやら内側から絶えず流れ出ているようだ。
『黒雲会の刀は出血させることに特化してるんだよな。だから単純な斬り合いにはめっぽう強い。対策は...まぁ避けることだな。』
私は不意に先生の教えを思い出し、少し後悔した。
それができるなら苦労はしない。
「ほらどうした?来いよ。」
楊が迎え入れるように両手を広げて笑った。
だが、私は先ほど稼いだ4メートルほどの距離を維持する。
「はぁ。隙作ってやってんのに来ないのか?」
痺れを切らした楊が大地を蹴り、凶暴な刃を舞い踊らせた。
ほとんど目で追えないような速度の剣舞に合わせて私も舞う。
黒と白の軌跡が火花を散らして入り混じる光景。
それは側から見れば演舞のようにも見えたかもしれない。
激しい剣戟の中、私の体には赤い線が増えていき、楊は軽やかに躱わし続ける。
止まらずに血が流れ続け、熱を失っていく体に限界を感じた私は、振り抜かれた刀を狙って剣を叩きつけ、楊が姿勢をやや崩した隙に後ろに飛び退いた。
「はぁ...はぁ...」
一瞬、目の前の男の姿がぼやけた。
血を流しすぎた影響だろうか。
朦朧とする意識に崩れかけた足を強く踏み締め、剣を握り直す。
楊と私の距離はまたも4メートル程だ。
「何度か隙を作ってやってたのにそのザマか?」
「もう、死ねよ。」
楊が腰を落とし、居合の構えをとった。
身体中に緊張感が重くのしかかり、肌がピクピクと震える。
眼前に色濃く立ち昇る質量を持った死から目を背けずに、真っ直ぐと見つめた。
さっき作られた隙は敢えて狙わなかった。
決定的なダメージを与えるために。
負傷を覚悟しながらも距離を取った。
回避も防御も不可能な程の隙を作る為に。
全ては...全てはこの一合のために。
雨の一雫。捉えてみせる。
私は剣を頭上に構える。
弓が軋むほど引き絞り、音を立てて震える矢が撃ち出されたような、距離という概念が馬鹿馬鹿しくなるほどのあの銀閃が放たれた。
だが、
その為に間合いをとったのだ。
見えない居合の最高速度を外すための間合いを。
身体で覚えた感覚を信じ、私は渾身の力を込めて剣を振り下ろす。
そして、
その瞬間、長剣はさながら大気圏に突入した隕石のように、熱を纏い、眩い光を放つ火の塊へ姿を変える。
白銀の一閃に灼熱の刃が激突し、轟音と共に火花と光が辺りを埋め尽くさんばかりに弾けた。
「グッ」
不意をつかれた楊は反射的に目を閉じ、一瞬たじろぐ。
ここだ。
ようやく切れ間のできた黒い雲に日差しが如き炎剣を振り下ろす。
一閃と共に鋭い焔が楊の腕を焼き切った。
「くっ......てめぇぇぇ!!!」
切断面が焼き焦げて塞がれるのは耐え難い激痛のはずだが、顔を歪ませながらも楊は残った方の腕で私の首へ手を伸ばす。
私は即座に腕を返し、斬り上げた。
日輪のような燃える軌跡が弧を描き、斬り飛ばされた残りの腕が煙を伴って地に落ちた。
「やった!」
私が叫んだ瞬間、ぐらり。と世界が廻った。
過度の出血状態での一切後先を考えない、動けなくなるほどの全霊の三撃。
その負担に私の体は耐えきれず、糸が切れた人形のように後ろに倒れたのだ。
「クソが!!!やってくれやがったなクソガキが!」
今までじっと見守っていた組員が膝を付いた楊の周りにゾロゾロと集まって来る。
だと言うのに、大の字に倒れ伏した私は指一本動けそうにない。
ああ...そうだった。組織と戦ってるんだからどう逃げるかも考えるべきだったのに....
「しく...じった...わね。」
私の顔が赤く彩られる。
でも、それは私の血ではない。
組員の首が落ちる。
倒れた体の後ろから現れたのは、返り血を浴びて真っ赤な二人。ムツキと....カヨコだ。
カヨコは私を見てため息をついた。
「やっぱり死にそうになってるじゃん。」
「まさか勝ってるとは思わなかったけど。」
「お嬢...?」
「何してるんです...?」
楊は信じられないと言った顔でカヨコを見る。
「楊、私は....戻らない。」
「...何故ですか?お嬢。」
「組織の何が不満だって言うんですか?あなたには地位も力も約束されているのに。」
カヨコは悲しそうに笑って首を横に振った。
「お金、地位、確かに良いものだけど。」
「そこに自由は無いから。」
「....そうですか。」
楊は歯噛みして言う。
「お前ら、仕事は終わりだ。...帰るぞ。」
楊は残った組員に肩を貸されながら路地の向こうへと消えていった。
カヨコはそれを複雑な表情で見送る。
去っていく楊が見えなくなったとき、カヨコは私に駆け寄り、懐から蛍光色の緑色の液体が入った試験管のようなものを取り出した。
キャップを開け、私の口にそれを流し込む。
エナジードリンクのような化学的な甘味と共に、全身に張り付いていた疲労と痛みが少し引いた感じがした。
「HP薬ぐらいフィクサーなら持っておくべきだと思うんだけど....」
「お金が無くってね...」
「再生アンプルならそりゃ買えないだろうけどさ、一体何に使ったらHP薬も買えないの?」
「家賃がちょっと...」
「あと、依頼が全然無くて...」
カヨコは呆れたと言った顔でため息をついた。
「ねぇ、代表さん。」
「会計が必要だったりしない?」
「私得意なんだけど...」
カヨコが少し赤くなりながら言う。
「えーっと、うちに契約する金銭的余裕は無いんだけど...?」
「いや、そうじゃなくて...」
「私達の事務所に入るんだよね!カヨコちゃん!」
痺れを切らしたムツキが割り込む。
「いや、多分給料払えな...」
言いかけた瞬間私の口に何かが捩じ込まれて
口を塞がれる。
甘くて丸い。ぶどう味の飴だ。
「だから!ついて行くって言ってるの。」
「飢えて死のうが、依頼で殺されようが、ついて行くって言ってるの!」
人が変わったように捲し立てるカヨコの剣幕に押され、私は豆鉄砲を喰らった鳩のような顔で首を縦に振った。
ムツキに目線を向けると、「今のはアルちゃんが悪いよ」と言いたげな顔で私を見た。
なんで急に鈍くなるんだか...と呆れた様子の、でも晴れやかな顔のカヨコは私の顔を見て言った。
「とにかく。これからよろしく。代表。」
「ええ、ようこそ。便利屋68へ。」
「歓迎するわ。」
....この後結局動けなかった私はカヨコに背負われて事務所に帰った。
新入りに威厳を持ったリーダーとして一目置かれようという私の試みは淡く散ったのだった。
今更だけど行間開けた方が見やすいのかな?
アンケートを取るかもだから時間あったら答えて下さいまし。
御職業は?(展開の参考にするかもしないかも。)
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管理人(プロムンユーザー)
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先生(ブルアカユーザー)
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その他(どっちも知らない)