幻影の狂剣士   作:izuki

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第五話 歌姫と騎士

 人目が付かない街の端で、俺は紅白の装備を身に纏ったプレイヤーと戦っている。

 

「はあっ!」

「……」

 

 突進しながら斬り掛かってきたそいつの攻撃を刀でいなし、足を払いし転倒させる。

 

「うわっ!」

 

 すぐさま起きあがろうとしたところに、首に刀を突きつける。

 

「詰みだ」

「…………参りました」

 

 その言葉を聞いて刀を首から離し鞘に収める。

 悔しそうに降参の言葉を口にするこいつ………ノーチラスと俺はデュエルをしていた。

 何故こんなことをしているかというとそれは1ヶ月ほど前に遡る…………

 

 

 俺はその日なんとなく下層の洞窟に来ていた。

 何故?と言われると少し困るのだが、理由があるとすれば少しだけ嫌な予感がしたからだ。

 俺の勘はよく当たる。

 よくない事にも良いことにも。

 あとこいつ、秋水に慣れるためでもある。

 一昨日やっと装備できるようになったのだ。

 モンスターを倒しながら進んで行くとどこからか歌声が聞こえた。

 それもただの歌声じゃなく、どこか恐怖の入り交じったような歌が。

 俺は気になってその歌が聞こえるほうへ進んで行った。

 少し進むとそこには2人のプレイヤーがいた。

 一人は男で紅白の装備を身にまとっている。血盟騎士団の制服だ。

 もう一人は女で吟遊詩人みたいな服装をしている。

 それよりも状況だ男は動けないのか不自然に固まっており女はそれを庇うようにしながら数匹のモンスターと戦い、同時に歌っている。

 だが不思議なのは、敵が全員女の方に向かってきていることだ。

 何故だ?あの歌にはタンク役が使うようなヘイト調整の効果があるのだろうか?

 …………まあいいか、どうでも。

 俺は敵の背後をとって斬るを、そして近づいてきたもう一体を殴り飛ばす。

 突然の乱入に驚き二人がこちらを見る。

 

「……助けに来た、さっさとやるぞ」

 

 その後は動けるようになったのか男とも協力して、苦労することなくモンスターを倒した。

 

「ありがとう、おかげで助かった」

「本当にありがとう!助かったわ!ところであなた、名前は?」

「……シキ」

「私はユナ」

「僕はノーチラスだよろしく」

 

 名前を聞いて驚いた。

 まさかこんなところでこの2人に出会うとは。

 ユナとノーチラス、この2人は悲劇が降り注ぐ。

 2023年10月15日、とあるパーティがダンジョン内のトラップで全滅しかける事件が発生。

 攻略組は最前線でフロアボス攻略戦の最中のためエイジとユナを含む攻略組二軍が救助に向かう。

 しかし攻略組最精鋭に比べダンジョン攻略の経験が足りなかった救出部隊は、自分達もモンスターの大群に囲まれミイラ取りがミイラとなりかけてしまう。

 ユナは《吟唱》スキルでヘイトを集め囮となることで救出を成功させるが、自身は薄暗い牢獄ダンジョンの底で二十体以上の獄吏型モンスターのリンチに遭い凄惨な最期を遂げることになった。

 この時、エイジはFNC(フルダイブ不適合)の発作を起こしてしまい助けることができなかった。

 という話だったはず。俺の記憶が正しければだが。

 

「……取り合えずここを出るぞ。このまま行っても死ぬだけだ。」

 

 そう言って入ってきた道を戻り始める。二人も付いてきているようだ。

 そのまま洞窟から出てその場で別れようとする。

 

「待ってくれ」

 

 呼び止められた。

 ……なんか嫌な予感がする。

 

「お願いがあるんだ、僕に稽古をつけてほしい」

 

 そう言って頭を下げてくる。

 …………面倒くさい。

 

「なんで俺なんだ、お前血盟騎士団だろ。他の奴に頼めよ」

「頼むこのままじゃ、僕はユナを守れない」

「ノーくん」

 

 ……話聞けよ。

 ……だがここで断る方が最低か、だけど教えるのとか面倒なんだよなぁ…

 

「……はぁ、いいよつきあってやる。だけど俺から何か教わろうなんて思うなよレベリングとかにつきあってやるだけだ」

「ありがとう!」

 

 こうして俺はこいつらとパーティーを組み行動するようになった。

 基本的にレベリングや素材集めなどを手伝い、たまに手合わせをするくらいだ。

 そして現在に戻る。

 

 

 デュエルを終えた後俺たちはカフェに来ていた。

 こいつらとパーティーを組んでからはよくレストランやカフェなどに行くようになった。

 俺は普段そういうところには来ないからな。

 ちなみにユナは今買い出しに出かけている。

 そしてノーチラスだが先ほどから俯き何かに悩んでいるように感じる。

 ……はぁ

 

「……なにか悩みがあるのか」

「え」

「そんな顔をしている。別に言えって言ってるわけじゃない。言いたくないなら言わなくていい」

 

 少しノーチラスは考え込んだ後、話し始めた。

 

「……怖いんだ。僕はユナを失うのが怖い」

「…………」

「もしユナが死んでしまったら、僕は……なのに肝心な時に限って体は動かない……どうしたらいいのか分からないんだ…」

「ふーん」

「本当情けないな、……君が羨ましいよ全く恐怖を感じずに戦えている、強い。それに比べて僕は……弱い」

 

 こいつは本能的に死へ恐怖を感じているだから体が動かなくなる。

 そしてユナが死んでしまうことへの恐怖も感じている

 そういった恐怖をこいつは捨てようとしているんだろう。

 だがそれは違う。

 

「……人間ってのはみな弱者だ」

「……え」

「お前が強者だと思っている奴らはみんな強者の仮面を付けた弱者だ。そいつらはそうやって仮面を付けて恐怖心などの弱いところを偽っているだけに過ぎない」

「…………」

「俺が思う強者はそういう仮面を付けずに自身の弱いところを受け入れ自覚したうえで何かのために戦う者のこと」

「……弱さを受け入れ何かのために…」

「ああ」

「……できるかな、僕に」

「さあな」

 

 

 翌日俺たちはダンジョンの前まで来ていた。

 

「……本当にいいんだな」

「ああ、僕がどこまで行けるのかを試したいんだ」

「私も二人のフォローをするよ!」

 

 このダンジョンは普段戦っているモンスターとは少レベルが高いがノーチラスがこういうので来たわけだ。

 

「……行くか」

 

 中に進むとモンスターがポップしてくるのでユナを守りつつ倒しながら進んで行った。

 ノーチラスは最初の頃に比べると大分動けるようになっていた。

 

「最初に比べると動きが良くなってきたな」

「そう言われると嬉しいな、ありがとう」

「うんうん!ノーくん成長してる!」

 

 しばらく進むとボス部屋があり、開けると一体の巨大なモンスターと取り巻きが数匹がいた。

 ボスは巨大な剣を持っている。

 

「あいつがボスだな」

「二人とも行こう!」

 

 俺たちは戦闘を開始する。

 戦闘自体は問題なく順調に進んで行った。ノーチラスも問題なく動けている。

 だがHPバーが残り一本を切ったとき行動パターンが変わった

 雄たけびをあげステータスを向上させる。

 シキは問題なく対処しているがノーチラスの動きが止まってしまった。

 

(まただ)

 

 突然、動けなくなってしまった。

 

(このままじゃユナが…………)

 

 シキはボスモンスターの攻撃を容易くいなしてはいるが取り巻きまで完璧には対処しきれてはいない。

 

『俺が思う強さはそういった仮面を付けずに自身の弱いところを受け入れ自覚したうえで何かのために戦う者のこと』

 

 シキに言われた言葉が蘇る。

 シキはこう言っていた自身の弱さを受け入れ何かのために戦うものが本当の強者、強さだと。

 怖い、だけどそれも僕の一部…………それを受け入れて僕は……

 

(僕は、ユナを守る!)

 

 その時動けなくなっていた自分の体が動き出しユナの元へと真っすぐ向かった。

 

「ユナ!」

「ノーくん!」

 

 ノーチラスはユナに迫りくるモンスターを切り伏せた。

 

(乗り越えたか…………)

「シキ、すまない!ボスは任せた!」

「ああ」

 

 さて

 俺は改めてこいつの死を視る。

 

「――直死――」

 

 秋水を構え、疾走する

 そして斬る(殺す)

 

「――死が俺の前に立つな」

 

 ボスのHPバーが0になり消滅する。

 ボス戦は終了した。

 

 

「本当に行くのか?」

 

 あれから数日たった今日俺はパーティーから抜け俺は上の層へ行こうとしていた。

 

「……別に今のお前には俺はもういらないだろ」

「寂しくなるね」

 

 ちなみにノーチラスだがあの後血盟騎士団を脱退しユナを守ることを決意した。

 ユナに関しては自分の歌をいろんな人に聞いてもらいたいからと各層をめぐるらしい。

 

「一応フレンド登録してるんだからいつでも会えるだろ」

「そうだね」

「ありがとうシキ、君のおかげだ」

「……別になんもしてないよ」

 

 そう言って転移門に近づく。

 

「じゃあな」

リメイクするって言ったらどうします?(ストーリーは基本変わらない)

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