「あっち〜な〜」
ジリジリと日差しが差し込み、蝉の鳴き声がこれでもかと鳴り響く中、身長は180cmほどの大きな棒が入るほどの袋を携えた黒髪のスポーツ刈りの少年がバス停のベンチで呟く。
季節は6月。
夏の暑さも本格的になって来た頃だ。
「ったくよぉ...あの先生も人が悪いぜ...」
彼は東京都立呪術高等専門学校
通称 呪術高専2年の
(今回の任務は田舎の”ある”風習を捜査してこいってこったが...
きな臭さすぎねぇかぁ?)
(そもそもこの呪術師が不足してるからって生徒を単独で動かすなっつう話だよな。
1年の夏から2年の初めまで、ずっと!任務 任務 任務!準1級に上がって給料は増えたけどブラック過ぎだろ!)
呪術高専は高専だが4年制になっており学年が上がる事に階級も上がり任務の量も増える。
だが、4年生に上がると術師は呪術師として生きるかどうかの指針や覚悟を決める期間がある。
(俺はそこまで本気でやる気もねぇし、術式もねぇからな...)
だが彼は準1級術師。
2年生にして術式が無く準1級になれたのは呪術の知識の多さとその恵まれた体格、結界術への適正という3つが理由に挙げられる。
(今回の任務が呪霊に関することなら1級への昇級審査も受けられるかもしれねぇってことを考えると悪ぃもんじゃねえか)
(問題は内容なんだがな)
思考を巡らせているとバスが到着し、乗り込む。
(ここが興宮...ま、なんつーか田舎の手前って感じだな)
興宮に着いた頃には日も少し落ちかけていたがこのまま行けば時間には間に合うのでそのまま向かうことにした。
歩くこと40分ほどすると、今回の目的地である雛見沢が見えてきた。
(ここが雛見沢村...。クソド田舎だな。
まぁ、あるあるなんだよな。呪いが溜まりやすいところって)
呪いとは人の負の感情が溜まりやすい場所に出現しやすくなる。学校や病院はもちろんのこと田舎というのも閉鎖的空間であり(全ての場所がそうでは無いが)村八分やプライベートの無さに苦手さを覚える人も少なくは無い。
(ま、最も厄介なのは出てきちまった呪霊を精霊や神の遣いとして見たり、勘違いや風習を取り込んで呪霊自体が強くなるっつう事がこういうところでは少なくないってことだ。)
(いわゆる産土神信仰。子供の頃に悪いことをしたら○○様が夢に出てきて叱るぞとかそういう奴がイメージで増やされ肉付けされる。今回がその案件なら1級案件なのは確実。1級下位ならまだしも上位クラスが出てきたら...)
と、考えている内に村に着いたら案内があると言われている家へ着く。
(ま、その辺は後々考えりゃあいいか。
ダメだった時は逃げちまおう。)
「すんませーん!
呪術高専の日野祐斗なんすけど!
ただいま到着しましたァ!」
と挨拶をすると
「はいはい」
と高齢の男性がでてきた。
「こりゃあ大きいねぇ。
都会の子はみんなこのくらい大きいのかな?」
「いやぁ。俺が特別っすね。えーっと...」
「あぁ!すまんすまん。
私は公由喜一郎。この村の村長だよ。」
「あ!そうだったんすね!
改めて、俺、呪術高専の日野祐斗です。
よろしくお願いします!」
「うんうん。よろしくねぇ。
外で話すのもなんだし上がっていきなさい。」
「お邪魔します!」
そして公由村長の自宅で話を聞くことになった。
「それで、今回の話っていうのは...」
「うん。なんでもね、最近うちの村人達が夜に不気味な音や声がするって言ってねぇ。
中にバケモンを見たって言う人もいてね...
流石にここまで話が大きくなると...」
「なるほど。
騒動を収めるためには原因を解明するか原因自体を解決しないといけないってことっすね。」
「そうなんだ。
そしてこの村ではそろそろお祭りがあってね。出来れば、それまでに解決してもらいたいんだ。」
「ちなみにお祭りはいつ頃に...?」
「6月19日さ。」
「了解です。」
カレンダーを確認しておくと今日は6月10日。
(時間はある。ただでさえそこまで大きくない田舎。山の中も確認したとしても呪力の残穢で余裕で追えるし、やばかったら呪札でしばらく呪霊を村に近づけないようにして任務は一旦終了させてほかの術師に投げちまおう。)
(遅くとも祭りの前々日には方が着いているだろうな。)
と考える彼とは裏腹にこれからことごとく起こる奇妙な現象と”今回”の雛見沢の異常性に巻き込まれていくことになる。