ひぐらしのなく頃に 夢呪い編   作:たらたらたら男

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呪夢相殺 拾

(さてと、虚勢を張ったのはいいものの...

いけるか...?)

 

冷や汗を流しながら状況を再確認する。

 

(俺の刀はぶち折られちまってる。

んで”領域展開”を使える額に縫い目の女...。

こっちが1番謎なんだが...一旦置いとこう。

何故かわからんが復活した梨花。

と、梨花が渡してきた刀。)

 

(羽入の領域にはほぼ時間制限が無い。

決着は領域内。

しかも黒閃を決められている...!

これが痛てぇ...!)

 

「時間もねぇ!短期決戦だ!」

 

思考を切り替え、一気に切り込む。

鞘から抜かれた刀は刃先が3つに枝分かれした。

 

(なんだこれ!?

どんな刀だよ!?)

 

先に教えておいてくれと思いながら、再び神と切り合う。

 

「うおおおおおおっ!」

 

「あはははははっ!」

 

攻撃を捌きながらフィジカルで攻める神。

対して技術で攻めながら懐に入れないように守る

祐斗。

 

互いが互いに勝負の決め手であることが分かっているため攻めながら守る。

守りながら攻める。

 

故に均衡が崩れる瞬間は

 

「っ!」

 

ガキンッ!

 

彼の武器が手元を離れた時

 

「今ッ!」

 

そしてそれは彼にとっても

 

ズシャ...

 

「!?」

 

シン・陰流 朧月

 

いつの間にか手にしていた”折れている”方の刀から”呪力の刃”が伸びていた。

 

「ぐっ!」

 

神が吐血しながら離れる。

刀の間合いから離れた神に対して居合の構えをとる祐斗。

攻撃の瞬間を狙っていた神は予想外のダメージを受けることになる。

 

ザクッ・・・

 

「え...」

 

少年の手元には刀は無かった。

 

「投げ...!」

 

「シン・陰流 禍月(まがつき)

 

朧月によって生成された刃から複数の刃が生えていた。

 

シン・陰流 禍月(まがつき)

シン・陰流の簡易領域に独自のプログラムを組み込み、朧月の要領で呪力の刃を無数に生やすことで刺さった内側から攻撃する技。

 

が、

 

「あ ゙あ゙あ゙あ゙!」

 

それでも神は止まらない。

 

そして、

 

グサ・・・

 

神の頭に刃先が3つに枝分かれした”刀”が突き刺さった。

かつて、鬼を打ち倒した少女の名も、古手の姓を持つものだったと言う。

 

「...梨花!」

 

「梨゙花゙あ゙あ゙」

 

「はあっ!はあっ!」

 

バシュウ・・・

 

決着は余韻を感じさせない瞬間決着。

同時に呪霊の消失反応が起こる。

 

「はぁっ!はぁっ!勝った...!」

 

「羽入...!」

 

そして、見計らったように領域が崩れる。

額に縫い目の女性がぱちぱちと拍手をしながら近づいてくる。

 

「いやー素晴らしいね。」

 

「...!」

 

「あなたは...誰なのですか?」

 

梨花が単刀直入に疑問を切り込む。

 

「あぁ!自己紹介がまだだったね。

私は冬水 優。

しがない美女だよ。」

 

「しがない美女が領域展開する世の中になったとはな。物騒なもんだ。」

 

遠回しにそんな美女はいないと言うが

 

「違いないね。物騒な世の中に”なる”よ。」

 

サラリとかわされる。

 

と話していると

 

「うわっなにっ?」

 

梨花の刀が光る。

光は刀から人の姿へと形を変えた。

 

「...!」

 

「おぉ...」

 

「嘘...だろ...」

 

三者が三様の驚きを見せた。

 

「梨花!会いたかったのです!」

 

「羽入!」

 

光は先程の神、羽入へと形どった。

そして抱き合う二人。

 

「ダメだこりゃ...なにがなんだか...」

 

「面白いねぇ...!」

 

考えるのをやめた日野祐斗。

面白いと目を輝かせる冬水優。

そして、羽入梨花とグッと抱き合った後にこちらを向きお辞儀をし、話しを始めた。

 

「祐斗、今回は本当にありがとうございました。」

 

「あ、あぁ。

えっと...」

 

「安心してください。僕は羽入なのです。

それも含めて順を追って説明するのです。」

 

「まず、僕の姿をしたアイツ。

アイツは雛見沢症候群の産土神なのです。

そしてこの世界の僕と融合した。」

 

「ちょ、まてまて、この世界のお前って...」

 

「言うなれば、このカケラの僕。」

 

「お、おぉ...なるほど?」

 

「僕はある目的があって梨花を別のカケラに送ったのです。」

 

「ふむ?」

 

「そしたら、なにか別の物とぶつかってしまって梨花を飛ばしたカケラが別のところに行ってしまって。」

 

「そんなことが...」

 

「それの原因は私かも」

 

「え!?」

 

「!?」

 

「一から説明してもらえるかな?」

 

カクカクシカジカ

 

「なるほどね。」

 

「恐らく私の術式《空間転移》の発動が被ったから...だと思う。

カケラというものの移動と、現実の空間移動が影響を及ぼすのかどうかは分からないけどね。」

 

「いや...有り得るかもしれないのです。

それが”術式”であるならば」

 

「...なるほどね。」

 

「お、おい。話についていけなくなってきたぞ。」

 

「これは僕の予想なんですが、僕がカケラ移動をした時、冬水は雛見沢に近いところで術式を発動したのです。

これにより異なる二つの力が共鳴したのだと思うのです。」

 

「なるほど...?」

 

いまいちピンと来ていない表情の祐斗をそのままに推理をつづける羽入。

 

「そして本来無いはずのカケラが出来てしまったのです。」

 

「おいおいまてまて。

それじゃ俺が巻き込まれた理由は?

俺は術式も無いし、巻き込まれる理由がないだろ。」

 

「祐斗はこの近くに任務があったのでは無いのですか?

任務に来る途中で空間の重なりがあったなら巻き込まれたとしても何ら不思議では無いのです。」

 

「イレギュラーに次ぐイレギュラー。

何があってもおかしくはないよね。」

 

タハーと額に手を当てながら笑う冬水。

元の世界に戻ったら一発殴ってやろうと決める祐斗だった。

 

「んで?どうやったは戻れんのよ。」

 

「それは僕がやるのです。

カケラ移動の要領でそっちの移動もできるはず...。」

 

そう言うと、羽入の目の前の空間が歪む。

 

「この中に入って歩いていけば元の世界に戻れるはずなのです。」

 

「私は結構この世界まだ気になる事が多かったんだけどね。」

 

「はぁ...俺は帰らせてもらうぜ。」

 

冬水を後ろ目に歪んだ空間に入っていこうとすると微かに服を引っ張られる。

 

「?」

 

後ろを見ると梨花が服を控えめに引っ張っていた。

 

「おぉ。」

 

「祐斗...。

本当にありがとう。」

 

「おう。」

 

「一年後また雛見沢に来て。

その時は私、中学生だから。

部活のみんな事も紹介したいから。」

 

(まじかよ...。正直ここにあんま良い思い出ねぇぞ...。)

心の中でそんなことを思いながらも肯定する。

 

「まぁ...来れたらな。」

 

様々な要因が重なったことで出会うことになった今回の事件。

だが、そこに突っ込むほど野暮ではなかった。

 

「僕からもお願いするのです!

雛見沢は本当はいい所なのです!

また来て欲しいのです!」

 

「分かったよ。

また来るよ。

この季節に。」

 

梨花と羽入はこくりと頷いた。

 

「じゃあな。」

 

と言いながら歪みの中に入っていく。

 

「また!この季節に!

ひぐらしのなく頃に!」

 

梨花の声が聞こえ、片手だけ上げぶらぶらと手を振った。

 

───────

 

空間の中は何も無く一筋の光のみが出口を教えていた。

 

「いやー今回はお疲れ様だったね。」

 

後から入ってきた冬水が話しかけてくる。

 

「アンタのせいでな...。」

 

ぶっきらぼうに返す。

 

「お詫びと言ってはなんだけどね。

戻ったら高専近くまで送るよ。」

 

「そりゃあ、ありがてぇ。

でもいいのかよ?

呪詛師だろ?アンタ。」

 

「だから近くまでさ。」

 

「なるほどな。」

 

「君こそいいのかい?

呪詛師を見逃してさ。」

 

「ま、領域勝負で助けられたからな。

恩は仇で返さない派なんだよ俺は。」

 

(そもそも絶対勝てねぇしな。)

 

「そう言えば!

呪力の刃が急に出てきた技...あれは術式かい?」

 

「あぁ、あれは...」

 

話しながら歩いていると光が強くなっていく。

眩い光に目を細めると次の瞬間には、本来任務があった田舎に立っていた。

 

「おぉ...。まじで戻ってきたんだな。」

 

「ようだね。」

 

日は沈み始めていた。

そして、カナカナと響くひぐらしの鳴き声が絶妙に心地よかった。

 

 




TIPS シン・陰流 禍月
シン・陰流の術者には簡易領域に独自のプログラムを組むことが出来る者がいる。
簡易領域内に侵入したものを全自動反射で迎撃する等。
禍月は簡易領域内限定で自身の呪力で生成したものから無数の呪力の刃を生やすことが出来る。
ただ、燃費が悪いことと縛りをほぼ無しでプログラムを組む事は難易度が高いためこの技の使い手はほぼ日野祐斗のみ。
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