ひぐらしのなく頃に 夢呪い編   作:たらたらたら男

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呪夢相殺 漆

 

神の領域展開。

それに対抗するは───────

 

シン・陰流 簡易領域

 

同時に簡易領域を展開する。

 

(領域展開!?羽入は呪術を知らない方だろ!?

てか、掌印を結ばずの領域展開!?聞いたことねぇぞ!)

 

領域展開は呪術戦の極致。

結界術により現実と結界を分断し、結界内に相手を閉じ込める。

結界内に術式を付与し、領域内での術式は”必中””必殺”となる。

この結界内には術者の心象風景が映し出される。

 

呪術を極めるということは引き算を極めるということ。

神は本来領域を展開するために必要な工程の掌印すらも行っていない。

困惑と疑念が入り交じるが、思考を切り替える。

 

(だめだ。今は生き残ることを優先!)

 

後方には目からハイライトが消えたまま力なく座りこんでいる梨花。

もし、領域内の術式効果が直接的にダメージを与えるものならば、呪術を扱えない梨花にそれを防ぐすべはない。

 

シン・陰流 簡易領域

術式を付与せず結界術を発動する。

効果は領域内にある必中効果を無効にする。

そして、簡易とはいえ領域は領域。

簡易領域内であれば多少ではあるが相手の術式効果は弱まり、自身の呪力出力は上がる。

 

(簡易領域で梨花と俺を守りつつ、羽入の領域を防ぎきる...。

できるか...?

いや!どっちにしろ出来なきゃ待ってるのは死!)

 

自身から仕掛ける攻撃は諦め感覚を研ぎ澄まし、カウンターに集中する。

 

「「うああああああぁ!」」

 

領域内に同じように閉じ込められた村人達が叫び出す。

その首には無数の引っ掻き傷のようなものが出来ている。

 

(引っ掻き傷...?いきなり引っ掻いた...?

いや違うな。おそらく羽入の術式効果だ。

雛見沢症候群...か...?)

 

確信は無いながらも突如村人にできた傷。

そして今までの情報を組み合わせ思考する。

 

「やっちゃってくださいなのです〜。」

 

間延びした声と共に発狂している村人達がこちらに襲ってくる。

 

「「「がああああぁ!」」」

 

「ちっ!」

 

舌打ち共に村人たちを迎撃する。

 

(羽入の言動を見るに...術式効果は雛見沢症候群の発症と発症したものを操れるってとこか?

首の引っ掻き傷にカウントがあるとみた。

引っ掻き傷が規定数を超えたら操れるってところか?

どちらにせよ簡易領域は解けねぇ...)

 

ギギャアアアア

 

反射で防いだ何かと接触した刀が悲鳴をあげる。

 

(!?ぶねぇ!なにか高速で飛んできた!?

アイツが飛ばしたのか?)

 

反射で簡易領域内に入ってきた村人達を切り伏せながら羽入を見る。

羽入が手を少し振ると村人達の間を通り呪力の刃のようなものが飛んできた。

 

 

ギキギギィン

 

(領域内では術者の能力も底上げされる...。

だけどこれはやりすぎだ!)

 

6〜7人ほど村人を切り伏せたところで他の村人たちの発狂がさらに強くなる。

 

「やめらああああぁ!」

 

「だめだ!だめなんだぁ!」

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛!」

 

「ウジ虫が!ウジ虫が湧く!ああああああ!」

 

するといきなり首を力いっぱい引っ掻きはじめ、首から大量の出血をし、地に伏せていった。

 

「...。」

 

まさに阿鼻叫喚。

領域内は血にまみれ、凄惨なものとなっていた。

 

「あぅ〜。

やっぱり発症が進むと勝手に死んでしまうのです。

領域内で発症の進行を操作するのは難しいのです〜。」

 

試したものが失敗に終わったことに対しての感想。

神にとっては遊んでいた玩具が壊れてしまったくらいの、もしくはもっとどうでもいいほどの事。

 

裕斗の表情に力が入る。

が、決して冷静さは失わずにいた。

 

(悪ぃ。誰彼構わず助けられるほどの余裕はねぇ。

最優先は梨花。

ここで死ななきゃ丸儲けだ。)

 

助けられなかった村人たちに心の中で謝罪をし、次の行動に移る。

 

「梨花!起きろ!お前が諦めてどうすんだ!

このままこの世界で終わったら、お前今度こそ出られないループになるぞ!」

 

「...。」

 

裕斗は振り向かず、敵を見据えながら後方の梨花に発破をかける。

実際にここで死んだ場合、このままこの世界でループするかは分からない。

だが、可能性は高い方だと認識している。

 

そして、そうなってしまった場合、梨花はおそらく100年のループが優しく見えるほどの恐ろしい体験をすることになるだろう。

 

それを防ぐにはここで未来を進める他に無い。

例え、絆を繋いだ仲間がいなくとも、唯一の理解者であり、ループを共に歩んだ者が敵になろうとも。

 

「頼む!一瞬だけでいい!俺に賭けろ!」

 

(羽入の領域内じゃ勝ち目は100パーセントない!

なら、こいつの領域の時間切れを待つ。

そして、領域の崩壊と同時に叩く!)

 

領域展開は、強度に差はあれど使用後に脳に刻まれている術式が焼き切れ、術式の仕様が困難になる。

そして呪力をかなり消費することで再び領域を発動することは疎か、戦闘を継続することすら困難となる。

 

(領域の崩壊と同時に戦闘範囲から逃げてくれりゃ、大分戦闘がしやすくなる。

それならギリギリ倒せるかもしれねぇ!)

 

領域内での自己強化が乗った状態で羽入は呪力で作ったであろう装飾がされた鍬のようなもので攻撃を始めていた。

 

ギン

ガチン

 

それを上手く躱しながら梨花への呼び掛けを続ける。

 

「頼む!起きてくれ!梨花!」

 

神は不気味に笑みを浮かべると

 

「無駄なのですよ。

梨花はもうこちらには戻ってきませんのです。」

 

鍬のようなものでの攻撃をやめ、後方にふわふわと浮かび上がっていく。

 

「それは分かんねぇだろ!」

 

半ば悲鳴のように声を上げる。

 

「ふふっ」

 

神が微笑をした次の瞬間。

 

ドドドドドド

 

形を持たない斬撃、氷や炎が次々と裕斗を襲った。

 

「そういえばなんでボクがこのタイミングで行動を移したのか気になってるんじゃないのですか?」

 

「くっ!」

 

攻撃を捌いていると神は独り言のように話し始める。

 

「元々ボクは、綿流しまでは我慢しようと思ってたのです。

そこに突然あなたがやってきてとても困ったのです。」

 

「帰ってもらうまで待とうとも思ったのですが...」

 

「とても美味しそうだったので梨花の後に食べようと思ったのです!

なのに来るのが早すぎるのです!」

 

そう言うと攻撃が更に激しくなる。

 

───────

 

何分...いやそれほど経っていないだろうか。

永遠に続くとも思えた攻撃が止む。

 

シュウウウ・・・

 

と怒涛の攻撃が止み、煙が上がっている。

その辺り一面は文字通り吹き飛んでいた。

”一部”を除いて。

 

煙の中からシルエットが見えてくる。

そこにはボロボロになった刀と日野裕斗、そして後方には梨花が先程と同じように虚ろな目で力なく座っている。

 

「頑丈なのです。」

 

「ハァ...ハァ...。」

 

そのつぶやきに答える余裕は無い。

 

「じゃあもう一度」

 

次の一言を紡ごうとしたその時。

 

パキパキパキ

 

神による領域展開、133秒経過

領域は遂に崩壊を始めた。

 

(来た!千載一遇のチャンス!

ここで決めてみせる!)

 

梨花への説得は成功しなかったがその行為をすること自体に意味があった。

 

(羽入は恐らく、領域崩壊後に俺たちが逃げると思っている可能性が高い。

実際、こっちも逃げるか叩くか判断に迷ったが、ループの原因の可能性がある以上ここで倒せるなら倒しておきたい。)

 

羽入は領域が崩壊を始めている今。

それでも尚、羽入は戦闘を継続できるだけの呪力量を有している。

だが、術式が焼き切れ多くの呪力を消費している今ならば微かな勝機があることに裕斗は気づいていた。

 

そして、バリンッという音ともに本格的に領域が崩壊する。

裕斗が神を倒すべく最高速で距離を詰めようとしたその時、あるものが見えた。

 

(!?なんで掌印を!?

領域は崩壊した。

術式は焼き切れて使えないはず...。)

 

神は領域を展開するための掌印を、崩壊する領域の中で結んでいた。

 

(嘘だろ?そんな事有り得るはず...)

 

思考では有り得ないと理解しているはずだが、裕斗はその場で簡易領域を張り直し強度を確保していた。

 

「領域展開」

 

神域・社神(しんいき・やしろのかみ)

 

神が閻魔天印と共に二度目の領域を展開する。

 




TIPS 同級生
日野裕斗の同級生は2人、彼を含めて2年生は3人になる。
どちらも女性であり、1人は五条家から六眼、無下限は持っていないが現在2級で準1級の昇格審査中。
札を使う術式で、作中呪霊避けに使っていた札は彼女から拝借したもの。
もう1人は自己強化や他者を強化することの出来る術式。
古くからある呪術を扱う家系で、現在の等級は裕斗と同じく準1級。
徒手での模擬戦では彼女が勝ち越している。
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