ひぐらしのなく頃に 夢呪い編   作:たらたらたら男

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呪夢相殺 捌

 

「領域展開」

 

「神域・社神」

 

神による二度目の領域展開。

 

─ シン・陰流 簡易領域 ─

 

そしてこちらも一瞬にして簡易領域を張り直す。

領域は術者の技量によって展開のスピードや領域の押し合いの強さが変わる。

 

簡易領域は術式を付与せず、領域内に複雑なプログラムを組み込まないという点で相手が領域を展開するよりも先に発動することができる場合が多い。

 

が、今回は神の領域が完成するとほぼ同時に簡易領域も完成していた。

 

(と、いうことは今回の領域はさっき使った領域よりも高精度で強力ということ!

術式効果が不明な以上こちらから前に出ることは出来ねぇ!)

 

二度目の領域内には無数の破片のようなものが宙を漂い、神の後方には社が神々しく出現していた。

 

「素晴らしいのです。

ボクもここまで使うと思っていなかったのですよ。」

 

「そりゃあそうだろな。

普通は二回連続での領域展開なんて真似できねえからな!」

 

神の賞賛に対して、吐き捨てるように返す。

 

(一応、簡易領域を張ったが...ダメだなこりゃ。

勝てるビジョンが見えねぇ。

勝ち筋があるとしたらこの領域の崩壊まで耐える。

何分?何十分?分が悪いどころじゃねぇ...。)

 

こちらの呪力は残り四割弱と言ったところだろうか。

対して神は見た感覚でも八割強は残っているように見える。

 

「その”領域”を解いてボクと戦ってみませんか?」

 

突然の提案に戸惑う。

 

(簡易領域を解いて戦うだと?

冗談じゃねぇ。領域内って言うのはつまり相手にずっと体の全てを触られてるようなもの。

梨花は呪力も使えねぇ。

そんなところで簡易領域を解く?

領域自体に何かを及ぼす効果があるのか?)

 

幾つもの考えが頭を逡巡する。

 

「意図が読めねぇな。」

 

「単純な”遊び”なのですよ。

あなたも分かっているはずなのです。

このままじゃ勝機は無いってことが。

その証拠にボクはあなたの領域を剥がしていないのです。」

 

(ちっ。こっちの考えはお見通しの上ってか?)

 

自分の考えを見透かされ内心、舌打ちをする。

 

「馬鹿言うな。

この領域の崩壊時間まで粘ってやるよ。

死ぬ気で来なきゃ行けねぇのはてめえじゃねえのか?」

 

自分を鼓舞するように虚勢をはるように言い放つ。

 

「ふふっ。やっぱり面白いのです。」

 

神は呪力で作ったのであろう刀を持っていた。

 

(───────来るっ!)

 

ガキィ

 

金属と金属がぶつかり合う音が一つ、響いたように聞こえた。

 

神はにこにこと表情を崩さず、ふわふわ浮きながら距離をとる。

 

「はあっ...はあっ...はあっ...。」

 

祐斗は全身に新たな切り傷をいくつも作り肩で息をしていた。

 

「すごいのです!

まさかまだそんなに動けるとは思わなかったのです!」

 

幾度目かの興奮。

それにすら軽口を叩ける余裕もない。

 

(あの数瞬で何回斬り合った...?

剣術は俺の方が上。

だが、スペックが違いすぎる。

単純な速度とパワーで負けた。

領域内ってのを加味しても、それでも俺の簡易領域内だぞ?)

 

先程の斬り合いの音は一つではなく、数瞬に数多のぶつかり合う音がほぼ同時だったことにより一つに聞こえたものだった。

 

体のあちこちに痛みが走る。

呼吸も定まらない...が立ってはいられた。

”この程度”は倒れられる理由にはならなかった。

 

これまで任務では一度だって倒れなかった。

それは死に直結するからだ。

必死に剣を振るった。

生を掴み取るために。

 

(そうだ、落ち着け。

やつの領域の時間切れまで粘る。

過程はどうでもいい。)

 

逆境。

それ故に無駄な思考を削ぎ落とす。

感覚を研ぎ澄まし、身を委ねる。

 

「良い顔なのです。」

 

その言葉と同時に再び神との斬り合いが始まる。

 

ギ ギ ギ ギ ギ ギ

 

切り結ぶ音はほぼ途切れず鳴りつづけている。

 

ギィン・・・

 

神の太刀筋を捌き、

 

スパッ

 

その太刀筋は首元に迫ったが、避けられる。

が、神の頬には傷が残っていた。

 

「一太刀...貰ってしまったのです。」

 

そう言うと頬から口元まで流れる赤を、舌で舐めとった。

 

「ぐっ...。」

 

対する祐斗は刀を支えに膝をつき呼吸すらもままならない状態だった。

その体には先程よりも多くの切り傷が刻まれていた。

 

ここまでの攻防に一分も使ってはいない。

このままでは絶望的なほどの状況。

だが、

 

「ご褒美にこの領域、そして術式について少し教えてあげるのです。」

 

なんとここに来て更に時間を使う行為をし始める。

 

(馬鹿が。

余裕ぶっこいてると自滅するぞ?

さっきの領域も(体感で)三分そこらだった。

これなら勝機も...)

 

「まずは先程の領域の種には気がついているのですよね?

お察しの通りあれは雛見沢症候群の強制発症と発症した者を一時的に支配下におけるってところなのです。」

 

「そして本題はこっちなのです。

こっちは”ボク”の能力を使うことが出来る...言わば神の力の方なのです。」

 

(神の力...?雛見沢症候群は神の力が由来じゃねぇってことか?)

 

あるワードに引っかかるが話はサクサクと進む。

 

「”ボク”の能力はざっと言ってしまえば時間系統の戻る能力なのです。

時間逆行というような。」

 

(なんだよその反則は...。

いや、じゃあなんで)

 

「でも難しいことに十全に使うにはボクの力も完全には残ってはいないのです。

だから、限定的に領域内でのみ使うことが出来るという”縛り”で十全に使える状態にしたのです。」

 

「そして、その副産物としてこの領域は神の力が付与されることになったのでボクの身体能力も呪力出力ではなく呪力量で、そして神性でさらに上がった状態になったのです。」

 

神の褒美が終わる頃には頬の傷はすっかりと消えていた。

 

(なるほどな。

心許ない方の術式は領域内での使用という縛りで出力を安定させる。

雛見沢症候群の方は通常の使用で運転すると。

そして副産物として縛った方の術式の領域中はバケモンみたいな強化がされると。

てことは...。)

 

何とか思考を働かせていた時、ひとつのことに気づく。

 

「気づいたのです?」

 

領域内を見廻すと宙を漂っていた破片のようなものが明らかに減っていた。

 

「後、数十秒...と言ったところなのです。」

 

破片のようなものは次から次へと消えていく。

一つ、また一つ、最後の破片になり

そして───────

 

次の瞬間には無数に浮いている破片が元通りになっていた。

 

「はっ...」

 

乾いた笑みが漏れ出る。

あまりにも無情な現実が突きつけられていた。

 

(この領域は...)

 

「そう。この領域はボクが自分の意思で解除するか、領域の押し合いで勝たない限り出ることができないのです。」

 

見たところ呪力さえもこの領域展開直後と同等まで戻っている。

実質的に領域の制限時間は無いということ。

 

(詰みか...。)

 

「楽しかったのですよ。」

 

そう言うと神は自らの周囲に、炎や雷等を己の呪力を変化させた物を浮かべ始めた。

 

(今度は防ぎきれねぇ...。)

 

諦めようとしたその時

 

パキ・・・

 

微かに、どこかにヒビが入る音が聞こえた。

余りにも微かな音に神も祐斗も気づいてはいない。

 

「さよならなのです!」

 

そして、最後の攻撃が始まろうとしたその瞬間。

 

バリィン

 

(!?)

 

「!?」

 

領域に穴が空き、光とともに神域にもう一人加わることになる。

 

光と共に降り立ったのはポニーテールの美女だった。

 

(領域外から領域内に入ってきた!?)

 

神も予想外の事態に動きが止まる。

 

が、呪術の戦闘は常に想定外で出来ている。

 

「領域 展開」

 

「胎蔵遍野」

 

侵入者のその額には”縫い目”があった。

 




TIPS 二つの領域
雛見沢症候群の領域、「鬼崇・綿潰し」は通常の術式による必中必殺という言ってしまえばただの領域展開である。
神域・社神は必中必殺にする効果は無く、呪力による攻撃も必殺効果は持たない。
が、途切れずに領域を展開し続けられるという芸当は正に神にしか出来ない唯一のものだろう。
また、「鬼崇・綿潰し」の中で使った氷や炎の攻撃も神の能力によって呪力を変化させたものによるもの。
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