ひぐらしのなく頃に 夢呪い編   作:たらたらたら男

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呪夢相殺 玖

 

(領域展開だと!?)

 

神の領域展開の開示。

そして、そこからの第三者の侵入。

祐斗が取った行動は

 

(ここは待ちだな。

入ってきた縫い目の女が味方がどうか分からない以上、簡易領域を展開し続けるしかない。)

 

前方には神、後方には額に縫い目があること以外は普通の女性。

動くには情報が足りていなかった。

 

「神域・社神」は本人の呪力量、技術、術式効果によって領域の押し合いでの勝負で勝つことは困難を極める。

正に神の領域。

人間の業では抗うことも出来ずに飲み込まれる。

 

が、領域の押し合いは”拮抗”していた。

 

確かに領域の勝負は相当の差が無ければ直ぐに決着が決まることは無い。

だが、結界術への適正がある祐斗だからこそ見ずとも技術を感じることが出来た。

 

少年は人間の極致を体感することになる。

 

(なんでだ...?

押し合いで拮抗している...!?

あの領域に...!?)

 

あまりの異常事態に後方に目をやる。

本来は敵から目を離すということは絶対にやってはいけない行動だが、この時とった異常な行動は正解だった。

 

「領域を...閉じてねぇ...?」

 

神域の侵入者の領域は、結界で空間を分断していなかった。

 

結界を閉じず

生得領域を具現化することは

キャンパスを用いず

空に絵を描くに等しい

 

(神業じゃねえか...!)

 

神の領域に対するは神の業。

押し合いという点では互角。

そして範囲は神域の侵入者が上。

故に勝負が決まるとするならば、

 

(領域を維持する能力は恐らく羽入が上!

なら俺が狙うのは羽入だ。

もし、縫い目の女が敵だったとしても領域展開直後なら勝ち目はゼロじゃない!

ここが、勝機!)

 

領域の押し合いの最中は互いの必中必殺効果は、相殺される。

簡易領域を張っていたのは押し合いが傾いた際の梨花への攻撃を防ぐため。

その懸念が無くなった今、初めて自身から攻撃が行える。

 

ズァッ!

 

一瞬にして神との距離を詰め居合で攻撃。

 

「くっ!」

 

ギャリッ

 

ギィン!

 

刀の軌道はブレずに数十本の線を描いていた。

先程の斬り合いは神からの攻撃を捌いていただけ。

そして、生死を分ける闘いにより日野祐斗の集中力は極限まで高まっていた。

これにより神は防戦を強いられる。

 

ブシッ スパッ スッ スッ

 

攻撃を捌ききれず斬撃を食らう。

そして、その切り口が開く前に新たな切り口が増えていく。

 

(不可解なのです!

さっきはボクが押していたはずなのに!)

 

ズズズ...

 

そして、領域の押し合い中によるものなのか巻き戻し自体もかなり遅くなっていた。

 

(このまま縫い目の女の領域を凌ぎきればボクの勝ちなのに!

このままじゃ削りきられるのです!)

 

ザク ズバババ

 

死を意識することにより神のボルテージが上がる。

 

「ああああああああああぁ!」

 

(!?)

 

斬撃の雨を防ぐことを諦め徒手での特攻を決める。

この行動は完全に日野祐斗の虚を着くことに成功する。

 

シュッ ズババ ブン ビュン

 

基本的に戦闘はリーチが長い方が有利である。

だが、0距離の戦闘においては刀や槍等と徒手が戦った場合、徒手が有利になる場合がある。

 

これは小回りが利く分徒手が有利になり、威力を出すのに多少の距離が必要になる分、刀や槍は不利になるからだ。

 

いつもの状態ならば刀を手放し、徒手で圧倒するはずだった。

が、

 

(くそっ!

俺の呪力出力じゃこいつを刀無しで倒しきれねぇ!

時間が掛けられない以上、刀は必須!)

 

領域の押し合いがいつまで続くか分からない以上短期決戦が求められる上、徒手での戦闘では刀以上にダメージを与えられないため刀を手放す訳にはいかなかった。

そしてこの判断は間違ってはいなかった。

 

だがこれは呪術による戦闘。

判断を間違わずとも勝敗は簡単に覆ってしまう。

 

「ふうううぅぅぅ!」

 

「しまっ」

 

───────

 

沈む意識の中、少女に呼びかける声が響く。

 

「梨花!」

 

「起きて!」

 

「梨花!」

 

もう、どうでもいい。

私にはもうどうにも出来ない。

 

「梨花!!」

 

「僕なのです!

羽入なのです!

お願い起きて!」

 

「梨花!!!」

 

「は...にゅ...う?」

 

「梨花お願い!

僕を信じて欲しいのです!」

 

無理よ

あんなことがあって

あんなになって

何を信じるっていうの

シンジルッテナニ?

 

「分かっているのです!

僕のせいなのです!

でもお願い!

僕は梨花も祐斗にも、もう誰にも死んで欲しくないのです!」

 

羽入の慟哭が沈む意識なかに反響する。

 

(あぁ。なんて自分勝手なのだろう。

無責任なのだろう。)

 

少女は怒りを隠せなかった。

 

「アンタの!

アンタのせいなのに!」

 

「お願い梨花、聞いて!」

 

怒りにより意識が戻った梨花は羽入に掴みかかった。

 

「信じてたのに...!

ずっと...!」

 

ポロポロと梨花の頬から雫が落ちる。

怒りは哀しみに。

羽入は梨花を抱き寄せる。

 

「羽入ぅぅぅぅ...」

 

「ごめんなさい梨花。

僕が弱いせいで。」

 

「ヒグッ...」

 

「梨花。

よく聞いて欲しいのです。」

 

「グスっ...」

 

涙を流し続けているが、聞いていると判断し羽入は言葉を続ける。

 

「今、僕...の形をしたアイツは力をかなり消費しています。

でも恐らく、祐斗はアイツに負けてしまうのです。

神との戦いは有利や不利ではなく文字通り次元が違うのです。」

 

「僕の体を使って僕を演じている以上、アイツは紛れもなくこの世界の”羽入”なのです。」

 

「だから...!

梨花、手を。」

 

「グス...ん...」

 

恋人繋ぎのように片方の手を合わせる2人。

するとつないだ手の間から光が漏れる。

光が消えると梨花の手には小さな”カケラ”が握られていた。

 

「それは僕の”カケラ”梨花が知っている僕の。

それはとても強いもの。

いや呪具と言った方が正確かもしれないですけど...。

これを祐斗に渡して欲しいのです。」

 

「...。」

 

カケラを見つめる梨花。

カケラは姿を変え、鞘に納まっている”普通の刀”となった。

 

「名を”鬼狩柳桜(おにがりのりゅうおう)

死が新たな世界の始まりでしかない、繰り返す者を殺すことが出来る剣なのです。」

 

「繰り返すものを殺すことが出来る...。」

 

「そして、人々は語り継いでいったのです。

鬼を打ち倒すことが出来る...と。」

 

「そうして年月が経ち鬼狩柳桜(おにがりのりゅうおう)は繰り返す者を殺すではなく、現世(うつしよ)に干渉し影響を及ぼすモノを元の状態に戻す剣となったのです。」

 

「影響を及ぼすっていうのは...」

 

「時間や空間...それこそ呪術ですら、現世(うつしよ)に影響を与えるものは全て本来ある状態に戻すのです。」

 

「それなら...!」

 

「えぇ!きっとアイツを倒せるのです!」

 

と言うと羽入の体がキラキラと光り始めた。

 

「羽入!?」

 

「ごめんなさい梨花。

僕が干渉できるのはここまでなのです。」

 

「でも僕は信じてるのです!

梨花ならきっとこの惨劇を打ち破れるって!」

 

「...うんっ!」

 

流れ出る涙を拭うと羽入の姿はもう見えなかった。

 

行ってきます!

 

───────

 

「ふうぅぅぅああああああぁぁっっ!」

 

【黒閃】

 

神の渾身の一撃。

 

拳は祐斗の腹部へ突き刺さった。

その瞬間空間は黒く歪み、呪力が稲妻のごとく迸った。

 

ベキベキベキィ

 

バゴン!

 

「ぐっあああああああああ!」

 

黒い火花は、微笑む相手を選ばない。

 

黒閃

打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突した瞬間、呪力は黒く光る。

威力は平均で通常時の2.5乗。

 

殴り飛ばされ、梨花が居た方まで転がっていく。

 

(黒閃!?

この土壇場に決めやがったのかよ...。

簡易領域、刀のガード、呪力のガードも間に合っていたのにこのダメージ...!

しくった...!)

 

すぐさま立ち上がろうとするが全身に力が入らない。

何とか片足の膝をつき鞘を支えに立ち上がろうとするが

 

「ゴボッ...ガ...ハッ...。」

 

口からは赤い血液が漏れ出るのみ。

 

「く...」

 

一方の神はというと

 

「あっはっははははは!」

 

「凄いのです!これは...!」

 

黒閃は1度発動するとアスリートで言う《ゾーン》の状態に入る。

黒閃を経験した者とそう出ない者の間には呪力の核心との距離に天と地程の差が出る。

今の羽入ならば領域の押し合いにもやや有利に動く。

 

「ぐ...くそ...!」

 

(どうする!?

この距離、奥の手は決めさせてくれねぇだろうな...。

まず今の状態のあいつに近寄れるか!?

この体で!?

いや違う、そもそも刀はもう使えねぇんだった...!

くそ!どうする!)

 

「祐斗!」

 

体感で随分と聞いていなかったと思える声が後方から聞こえた。

 

「!?」

 

「梨花...?」

 

「これを使って!」

 

いつの間にか意識を取り戻していた梨花は、鞘に収まった刀をこちらに差し出していた。

 

「これは...?」

 

「いいから!」

 

「お、おう。」

 

(!?)

 

受け取った瞬間にずしり、と何の変哲もないように見える刀がとても重く感じられた。

 

(何だこの呪力...。

途方もなく大きく”永く扱われたような”呪力は...

しかも、この刀の馬鹿でけぇ呪力のおかげで少し体が動く...!)

 

「私、勝手に諦めて、勝手に絶望して逃げようとした...。

本当にごめんなさい...!」

 

それは彼女の本心の中の本心。

そして、だからこそ。

 

「私はもう諦めない!

だからお願い祐斗!

私を助けて!」

 

もう一度立ち上がることが出来た。

 

「あぁ!任せとけ!」

 

少女の微かな希望に、精一杯の虚勢で答える。

希望のカケラは未だ、眩い光を放っている。

 

 




TIPS 鬼狩柳桜
雛見沢が鬼ヶ淵村と呼ばれていた遥か昔に、沼から湧き出る鬼達により村は度々襲われたが、天から啓示と鬼狩りの刀「柳桜」を授かった半人半鬼の血を引く最古で最初の人間▪️▪️▪️▪️が、この刀で村に厄災をもたらした鬼神を討ち取ったされている。
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