SAO-絶剣と怪物狩り   作:小説大工の源三

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お待たせしました


鍛治師が憧れた英雄

 

ユウキside

 

 ボク達はシュバルトに宿屋の広い一室に集められ、緊急会議をとり行っている。

 

「それでシュバルト、強化詐欺のロジックはわかったのか?」

 

「うん。今回は灯台下暗しだった。まさかクイックチェンジを使ってたなんてさ……」

 

「クイックチェンジ?」

 

「細かい説明は省くと、指先一つであっという間に武器変えできる魔法のようなスキルmodさ」

 

「確かに灯台下暗しだな……お前がβでよく使ってたスキルなわけだし」

 

「だからあの時武器が一瞬明滅したのね……」

 

「でもなんで鍛治師がクイックチェンジなんか使えるんだ?」

 

「……一つ気になったんだけどさ……どうして強化詐欺を実行したのかな」

 

「ただ単に強い武器が欲しかったからじゃないの?」

 

「現にこうやってボク達に詐欺のロジックがバレたわけだけど……どうしてこんなことが出来たのかな……泥棒は悪いことだってわかるのに」

 

 それがずっと気になっていた。

 『出来る』と『やる』は似ているようで違う。

 実行する時に躊躇いがある。強化詐欺をしている彼を見た時、それを実行出来るような顔付きをしていなかった。

 まるで何かに怯えている様に見えた。

 

「確かにハードルはあるわな……」

 

「想像した上で踏み倒したのかもね……」

 

「アスナそれって……つまり、バレても問題がないって事?」

 

「うん。ミトの言う通りよ。問題が露見しても問題ないくらい強くなれば、リスクを踏み倒せるもの」

 

「おいおいアスナ! やめてくれよ! 悪事を厭わない連中が最前線組までぶっちぎるほど強くなったら……それってもう……」

 

「……まるで世界の支配者…とまでは言わないけど、ノーマナーな連中が牛耳り、プレイヤー間の治安も悪化していくだろうね。僕としてもそれは避けたいよ」

 

「んでどうするんだ?」

 

「それでなんだけど、一層に戻ってアニールブレード取りに行こうと思うんだ」

 

「なんでだ?」

 

「いや…実は強化詐欺の現行犯で捕まえたいんだけどさ、僕の持っているアニールブレード……もう+8なんだよね…」

 

「なるほどな……なら俺が行ってもいいぞ? その鍛治師とは顔も合わせてないからターゲットにはもってこいだしよ」

 

「いや、万が一、詐欺られなくて失敗したら悪いからいいよ」

 

 そう言うのだが、シュバルトは全員(フィリア除く)からジト目で睨まれる。

 

「流石に、どこかで失敗(ファンブル)するからね?」

 

 そう言うことで、彼は一層の森に戻り、リトルネペントを狩りに行く。

 その際、フィリアも同伴したいと申し出たので、彼女も連れていくことになった。

 

「どれくらいであの2人戻ってくると思う?」

 

「もう来るだろ」

 

 戻る時間を予想しようと全員で話し合おうと数分のことだった。

 

「ただいまー」

 

「ほらな?」

 

 テリーが言った通り、あっさりと新品かつ、+6まで強化されたアニールブレードを持って帰った2人が現れた。

 

「早すぎない?」

 

「……ボクもそう思う」

 

「おまけに強化済ませてるし……」

 

 この2人のリアルラックがあれば、リアルTASプレイできるんじゃないかな……

 そう思っても仕方ないぐらい早かった。

 

「んじゃ、強化しに行かなきゃならないけど……装備変えた方がいいよね……」

 

「確かこの街の防具屋に厚着できる鎧とバケツ兜あったな」

 

「それ買って現行犯で捕まえてくるよ」

 

「…シュバルト君…少し良い?」

 

「アスナ? どうしたの?」

 

「実はネズハさんの事なんだけど……彼、あまり強化したがってないみたい」

 

「つまり誰かに脅されてやってるって言いたいの?」

 

「俺もアスナと同じ意見だ」

 

「私がフルーレの強化をお願いしようとした時、彼『お買い物ですか? それともメンテですか』って。まるで強化はやりたくないみたいに……」

 

 アスナの言いたいことが理解できた。

 昨日、強化を依頼された彼はとても困った顔をしていた。

 

「……シュバルト君。もし、レジェンド・ブレイブスの人たちが庇うんだったら私はいっそその方がいいと思う。でも……もし彼を切り捨てるようなことがあったら……」

 

「……」

 

 アスナの言いたいことはボクもわかる。

 彼に全プレイヤーの怒りが集中して、《処刑》なんてことが起きかねない。

 シュバルトもそれはわかっているようで難しい顔をしたまま動かない。

 すると彼がメニュー画面を開く。

 

「アルゴからだ……依頼の件か。アスナの分も一緒に入ってるみたい」

 

 そう言って、メニューを可視化状態にして全員に共有する。

 

【取り急ぎ、第一報】

 そんな書き出しの下に列挙されているレジェンド・ブレイブスの人たちの情報だった。

 リーダーであるオルランドの名前からずっと、読み続けていくと、ネズハの名前とその下に由来が添えられていた。

 

「───えっ!?」

 

「なに………!?」

 

「ああ……なるほど、やっぱり彼の名前も英雄だったんだね」

 

「読み方が特殊だねこれ」

 

「で、でもブレイブスの連中は彼のことを『ネズオ』って呼んでたぞ……!?」

 

「おそらく、本人が明かしてないんだろうな……」

 

「由来がこれならクイックチェンジが使えるのも納得ね……そのスキルも《武器》なのだから」

 

 ここにいる全員が事件の真実に一気に近づくのだった。

 

 

─────────────────────────

 

シュバルトside

 

「強化をお願いしよう」

 

 僕はグレートヘルムを被り、例の鍛治師の所でアニールブレードを突き出すように机の上に置く。

 

「プロパティ、拝見します……」

 

 僕が無言なので、彼はアニールブレードの柄をタップし、ウィンドウを一瞥する。

 

「アニールブレード+6……試行回数は2回残し、ですか。内訳が、S3、A3。……見たこともない振り分けですね………強化の種類は、どうしますか?」

 

「そうさな……正確さで……素材は料金込みで80%で頼もう…」

 

「解りました。確率ブースト80%だと、料金は……手数料と合わせて、2,500colになります…」

 

 僕は彼の手の動きが異様に丁寧なことに目が行く。まるで強化詐欺とは別の何かが失敗しないように、正確に行おうとするのが気になった。

 そうこう考えながら、鍛治の強化手続きを済ませる。普段ならば、メニューウィンドウを消すが、今回はクイックチェンジを使うので、そのまま待機させる。幸いにも彼はこの行動を不審に思うことなく作業を続けた。

 

「……2,500col、確かに頂戴しました」

 

 彼が素材を携行炉に流し込むのを見ずに、彼の左手を見続ける。

 右手に握られたアニールブレードが一瞬、先日、彼の犯行の時と同様に明滅する。そして剣を金床の上に置き、スミスハンマーでそれを叩く。

 今からが叩いてるのはおそらく数日前に買い取ったエンド品のアニールブレードだろう。

 過程回数、ハンマーで剣を叩き、強化不能のそれは跡形もなくポリゴン片へと砕け散ってしまった。

 

「すみません!」

 

「うんにゃ、謝る必要はないさ」

 

「…………ぇ…………」

 

 謝罪する彼の前で開いたままのメニューウィンドウからクイックチェンジを選択し、彼に手渡して盗られたアニールブレードを呼び出す。

 ついでにいつもの装備を選択し、普段通りの格好へと変える。

 

「あー…騙すような真似してごめんね? そこはお互い様ってことで流すとして……よくまぁこんなトリックを思いついたものだよ。こんなクイックチェンジとベンダーズ・カーペットを使った武器のすり替えなんて裏技染みたものをさ」

 

 正直、開発者視点でも驚きの方法だ。

 

「あ、貴方は……こ、攻略組の……!」

 

「お? 僕のこと知ってたんだ。んじゃまぁまず、鍛治師ネズハくん。12月11日、午後8:05。強化詐欺の現行犯で御用です」

 

 僕はなるべく彼を怯えさせないように笑顔でそう告げた。

 

─────────────────────────

 

ユウキside

 

 シュバルトが、強化詐欺師の彼を連れて、ボク達がいる隠れ小屋へと入る。

 

「というわけでまぁ……うーん……どの言葉でも、脅しになっちゃうなぁ……」

 

 シュバルトは困ったような表情で話を切り出そうと悩んでいる。

 

 確かにこの雰囲気は警察の取り調べのようだ。

 

 彼が困るのも仕方ない。ネズハ本人も借りてきた猫のように縮こまってしまっており、どうしたらいいかわからない。

 

「……謝っても許されない…ですよね。せめて……せめて騙し取った剣をお返し出来ればと思ったんですが…それも出来ません。全て売って……お金に変えてしまいました…自分にできることはこれくらいしか……ッ‼︎」

 

 彼は机に頭を打ちつける。

 

「死んで償うことしかできません……」

 

「そういうのは辞めろ。んなことしたってなにも解決しないし、何かを果たせる筈の人間が減って攻略が遠退くだけだ」

 

 テリーは冷たく言うが、死に急ごうとする彼を引き止めるには充分だった。

 

「……皆さん……強いですね……僕もあなた達のようになりたかったです……」

 

「そう……だろうな……クイックチェンジを使えるってことは何かしらの武器スキルを上げた訳だしな。それこそ、《投剣》スキルだったとしてもだ」

 

「……!?ま、まさか僕の名前まで」

 

「その辺りは情報屋からだけどね」

 

「それでもですよ……」

 

「……なんで、戦うのを諦めちゃったの?」

 

「……僕は『FNC』なんです」

 

 聞きなれない言葉が出てくる。

 

「…F…N…C…?」

 

 ボクの疑問にシュバルトが答える。

 

「……フルダイブ不適合(Full dive Non Conforming)。つまり、初期接続のテスト段階で五感か何かが完全に機能しなくなるんだ。下手したらナーヴギアを使うこともできない。ネズハ…君は目に出ちゃったのかな?」

 

「……流石、攻略組の中でもトップの状況判断能力の持ち主ですね……その通りです。僕は視覚に異常が出てしまって………遠近感がよくわからないんです」

 

「……だからか…俺達の時にも、すごい丁寧に作業してたのは」

 

「遠近感覚が働かないってことは……剣で戦えないってことじゃない…!」

 

 フィリアが大きな声で言う。

 

「よく僕がクイックチェンジを使っているのを見抜きましたね…」

 

「それに関しては偶然だよ。一度アスナのフルーレを回収してから、可能性を探っている内に、一度君の詐欺現場を見てから確信に変わったって所だよ。そして君のプレイヤーネームから投剣スキルを使ってたのでは? ってなったのさ、『ナタク』」

 

「……あはは。そんな名前からそこまで推察されるなんて……やっぱり攻略組の中でもトップクラスパーティは違いますね」

 

 『哪吒』。FGOだとランサークラスで登場する英霊……つまり英雄の名前だ。ナーザだったりナタ太子なんて呼ばれたりする少年神。

 数多の武器を操り、二つの輪に乗って空を飛ぶ英雄だ。

 投剣スキルの件はCMでもその光輪を投げてたりするのでそこから辿ればの話だが。

 この名前に気づいたアルゴとシュバルトの2人はすごいと思う。

 

「……《レジェンド・ブレイブス》はソードアート・オンラインが始まる前に、ダウンロード専用のゲームで組んだチームの名前なんです。一本道のマップに出てくるモンスターとかを武器で倒して得点を競うシンプルなゲームだったんです……でも、それですら僕にはとても難しかった……奥行きがわからないから攻撃は空振りばかりで、チームのランキングは上がらないままで……オルランド達はリアルの知り合いではないのでチームを抜けるかすれば良かった……でも皆が何も言わないのを良いことにそのチームに留まり続けた……」

 

 ボク達は彼の話を黙って聞き続けた。

 

「……ソードアート・オンラインの世界に来たかったから……オルランド達と居れば強くなれるんじゃないかと思って……名前もわかりやすい前の名前じゃなくて、『Nezha』にしたのは言わばおべっか……オルランド達みたく英雄の名前は使わないからって……ほんとどうしようもないですよね……」

 

「でも、SAOがデスゲームになってから状況が変わったんでしょう?投剣スキルを使えばある程度は戦えたのだから……」

 

「でもあまりにもスキルの熟練度上げは遠すぎて……そのせいで攻略組に乗り遅れて……僕がスキルを諦めるって言い出した時の話し合いはすごく険悪な雰囲気になりました」

 

「生産職になった所で、また一からだもんな……」

 

「はい……なので、いっそのこと、パーティを抜けるってあの時言えば良かったんです。でも1人になるのが怖くて……言い出せなかった……その時、酒場の隅に座っていた2人のプレイヤーが……ずっとNPCだと思ってた人達が近寄って来て『そいつが戦闘スキル持ちの鍛治師になるなら、ずけぇクールな稼ぎ方があるぜ』って言ったんです」

 

「え……君達がこの方法を考えたんじゃなかったの…!?」

 

 まさかの事実にボク達は目を見開いたり、息を呑むように驚いた。

 

「はい……名前はわからないですが1人は雨ガッパのようなフーデッドマントをすっぽり被ってて、もう1人は眼帯と黒いマスクで顔のほとんどを隠していた、奇妙な感じの人でした」

 

「雨合羽…?」

 

「眼帯と……黒い…マスク…だと…?」

 

 キリトとシュバルトの2人が強く反応した。

 

「……そいつらはお前達に詐欺方法を教えた後、利益の配分とか見返りはどうしたんだ…?まさか、無償だったりはしないだろう。こんな突破なトリックなんだから」

 

「いえ……そういうのは特にありませんでした……」

 

「は?な、ど、どういう事だ…!」

 

 激しい動揺がテリーを襲う。

 

「……方法を説明した後、分け前とかの説明なしにいなくなってしまったんです」

 

 全員再び絶句してしまう。

 

「つまり、その2人はいきなり割り込んで、すり替えの方法だけ伝えて消えたってことなの?」

 

「なんでその2人はそんなチグハグな行動をしたの…?」

 

 アスナがそう確認し、ミトが出てきた疑問をこぼす。

 

「いえ、正確にはもう少し話したんです。皆、否定的で犯罪だしやったらダメだよなって……そしたら、フードを被った1人がすごく明るく笑って……それこそハリウッド映画みたく綺麗で楽しそうな笑みでこう言ったんです」

 

 ネズハが一呼吸置いて、フード男のセリフを言う。

 

「『ここはネトゲだぜ?やっちゃいけないこもは最初からシステム上できないだろ?つまりできるならやって良いことになるだろう?』って。そしてもう1人もそれに追従するようにまるで親友に語りかけるように『ドロップアイテムの申請だってしなくていい。つまりバレなきゃ良いんだよ』って」

 

「そ、そんなの詭弁だよ!だってそれならモンスタートレインも、モンスターの横取りも……それこそ……圏外で……んむぅ!?」

 

 ボクが最後に言わんとしたことを察したシュバルトの手によって口を塞がれる。

 シュバルトの方を見ると、とても険しい顔をしていた。

 何か過去に一度、そんな人によくない理由で遭遇したような感じだ。

 

「ネズハ、それからそのポンチョ男とは会ったか?」

 

「いえ、あれから会ってません……………今思えば不思議なんですが、彼等がいなくなってからギルドの中の空気が変わったような気がして、みんなやれるならやっちゃうか、みたいなノリで盛り上がっちゃって……お恥ずかしいですが、僕もみんなのお荷物になるくらいなら、詐欺の主役になってお金を稼いだ方がざっとマシだと、思ってたんです。けど……」

 

 ネズハは肩を震わせ、両目をきつく閉じて今にも泣き出しそうな声で続けました。

 

「初めて教えてもらった通りに詐取をした時………すり替えられたエンド品が砕けた時の、お客さんの顔を見て……ようやく気づきました。こんなこと、たとえシステム的に出来たって絶対にやっちゃいけないんだって……そこで剣を返して、何もかも打ち明ければよかったんですが……そんな勇気なくて、せめてこの一回で終わりにしようって思いながら、ギルドの溜まり場に戻ったんです。でも………………でも、そしたら、みんなが、僕の騙し取った剣を見て、凄く、凄く僕を褒めて……だから……だから、僕は………ッ‼︎」

 

 彼は耐えられなくなったのか再び頭を机に打ちつけた。

 

「……ネズハ……いやさナタク。一つボクから提案がある。君のレベルは今いくつ?」

 

 シュバルトがそう切り出すと、彼は不思議そうに顔を上げて答えた。

 

「……10です」

 

「なるほど、スキル枠は3つか……ナタク……鍛治スキルを捨てる覚悟はある?」

 

 そう言ってシュバルトはストレージから一つのリングをオブジェクト化させるのだった。

 

 




人数が多いせいで誰をどのタイミングで喋らせるか一苦労……
なんでありふれの二次創作で同じ経験してるのに学習しないんですかねこのタコ作者は。

シュバルト
割と引きずるリアルラックネタ。
運が良い設定なのにファンブルしまくるとかそういうと矛盾しちゃうからね。
そしてヤーさんみたくネズハ氏を連れていくシーンはどうしようもなかった。

フィリア
幸運の女神様はいつでもドロップ最高効率。
強化ももれなく上手くいく。


ユウキ・アスナ
今回は聞くことしかすることがなく、ネズハとの会話ではほぼ空気だった。
人数が増えた結果の弊害ですね……

テリー・キリト・ミト
3人はついて行けていたのでセリフは多め。

追加補足説明
今作ではキリトにアニールブレードの取引は持ちかけられてません。
キバオウがβテスターを恨んでもいないので、攻略会議の際にβテスターへの恨み事を吐かなかったのです。
なのでディアベルも攻略でLABを上手く獲得出来ればなーの気持ちで挑んだのでギリギリ生存したということになります……
というかそういう事にしといてください。
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