SAO-絶剣と怪物狩り   作:小説大工の源三

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タイトル詐欺になりかけてる……


黒エルフの騎士

テリーside

 

 シュバルトとユウキが主街区まで転移した後、俺たちは天幕で休むこととなったのだが、男女比2:4という、難しい状況だ。

 

「とりあえず、俺は寝袋持ってるから外で寝るさ」

 

「そ、そうだな…俺も外で寝るよ」

 

 と、言って外で手頃な場所を探そうとすると、アスナが天幕の毛皮の床を1度見た後、ウィンドフルーレを鞘のまま持ち、線を引くように動かし、こちらを見る。

 

「今の、国境線だから」

 

「………国境侵犯したらどうなるんです?」

 

 おいキリト、それは言うまでもないだろ。

 

「ここ、《圏外》よね」

 

「理解しました。はい」

 

 ほらみろ……

 

 俺は呆れたまま、アスナに許可された領域に座り込む。

 

「……この連続クエスト……私、まだ状況が掴めてないんだけど、これってどっちが正義で、どっちが悪って言う話じゃないのよね」

 

「そうね。基本設定はβと変わってないならもう少し上の層にある、聖堂って場所にある、なんかすごい力を巡ってエルフ同士が争ってる、って感じよ」

 

「その聖堂の鍵が全部で6つあって、層を跨いであちこちに隠されているから、それを集めるのが大筋だな」

 

 それを聞いたフィリアが目を輝かせてこちらを見る。

 彼女はお宝探しが好きな事を思い出し、この先にある層のお楽しみ要素で、子供のようにおおはしゃぎしそうだと思った。

 

「ねぇ……テリーなんか失礼なこと考えてない?」

 

「……そんなことはない」

 

「今の間、絶対考えてたでしょ!!」

 

「はて、なんのことやら…?」

 

 感の鋭いフィリアが俺を問い詰めるのをなんとか躱していると、キズメルが天幕に入ってきた。

 

「陣中ゆえ、大したもてなしも出来ぬがこの天幕は自由に使ってくれ。食堂はいつでも食事をとれるし、簡易だが湯浴み用の天幕もある」

 

「お風呂、あるんですか?」

 

 風呂に真っ先に反応したのはアスナだった。

 そういえば第一層でキリトと分かれた時に、風呂がどうのとか言っていた。

 

「食堂天幕の隣だ。こちらもいつでも使える」

 

「ありがとう、遠慮なく使わせていただくわね」

 

 迷うそぶりすら見せずに答えるアスナ。そのまま入り口へと歩き始める。

 

「私は少し休ませてもらう。用があればいつでも声をかけてくれ」

 

 そう言うとキズメルは、左の肩当ての留め具に嵌められている宝石に触れると、鎧とサーベルが光の粒子となって消滅した。

 俺はその光景をぼんやりと眺めていたが、意識が一気に覚醒し、このままでは不味いと咄嗟に首を逸らす。

 その先では、俺を睨むフィリアの姿があった。

 

「テリー……?」

 

「俺は見てない」

 

「ふーん?」

 

 どうして最近、俺はこんな目に遭うのだろう。運はあの2人と比べても悪くないはずなのだが。

 もしかて隣の真っ黒くろすけのせいか。

 

※その真っ黒くろすけは現在、アスナに襟首を引っ張られています。

 

「とりあえず、お風呂行こっか」

 

「……そうだな」

 

 βテストで風呂があったかどうか記憶にない。

 そもそもβでは風呂に入る必要がなかったのでそんな事を気にも止めてなかった。

 とか考えている内に、風呂天幕の前に着いたのだが、問題が発生した。

 

「………」

 

 入り口は一つ、男女に分かれた暖簾もない。そして中を確認したアスナが、風呂も一つしかない事を告げる。

 

「先に女子陣が入って良いぞ。俺達は隣で飯を食ってる」

 

「そうだな、ゆっくりすると良いよ」

 

 そう言って食堂に行こうとすると、フィリアに袖を掴まれる。

 

「ねぇ……ここって圏外なんだよね?」

 

「そうだな」

 

「武装解除は危険だよね?」

 

「……そうだな」

 

 嫌な予感がする。

 俺の背筋から不穏な気配が伝う。

 

「……お互いに交代で見張りしよっか」

 

「了解した……レディファースト…先に入ってこい」

 

 と言う事で、フィリア達が先に入ることとなった。

 

「とりあえず、荷物整理するか……」

 

「そうだな……」

 

 メニューを開き、中にあるアイテムを整理する。その中にある、ポーションに目が止まる。

 

 この麻痺耐性ポーションに助けられたな……ゴミ言ってごめん。

 

 そんな事を考えていると、『しゅわん』と涼しげな音が耳へと入る。恐らく、いや間違いなく《衣服全解除》と《下着全解除》のボタンが押された音だ。

 さらに追撃として、『ちゃぽん……ざざーん』という水音。トドメに『はひゅ〜』というような満足そうなため息。

 

 非常に不味い。

 友人のリラックス声がこんなにも、思春期男子を苦しめる程、扇情的なモノだとは思わなかった。

 

「……休めん!」

 

 隣にいるキリトも同じような結論に至ったようだ。

 

『ふんふーんふーんふふふーん♪』

 

 鼻歌まで聴こえてくる。

 俺達は無事でいられるのだろうか。

 

 

─────────────────────────

 

シュバルトside

 

「ふー……とりあえず今できることはやったし、後はエルフクエスト進めていたら終わるかな……」

 

「意外と時間かかっちゃったね」

 

「……そうだね……名前どうしよっか」

 

 僕とユウキは主街区で受けることのできる連続クエストを受け、今できるところまで進めて、(ダーク)エルフの野営地まで走っていた。

 お使いだったり、ドロップアイテムを集めたりなんだりするのだが、自分が本当に自覚のある幸運でよかった。

 

「うーん……ボクも一つ案があるんだよね」

 

「僕もあるし、後でみんなと相談しよっか」

 

 そう言って野営地に到着し、テリー達を探そうとマップを開くと、どうやら彼は、食堂天幕の隣の風呂天幕の外にいるようだ。

 

「でもなんで外に?」

 

「さあ?」

 

「というかお風呂あったんだ」

 

「βにはなかったの?」

 

「そもそもβじゃ風呂は必要なかったからね」

 

 風呂天幕に到着すると、入り口で頭を抱えて胡座をかいている2人が視界に入る。

 

「何してるの2人とも…?」

 

「シュバルトとユウキか……今、女子陣が風呂に入ってる……先に入るなら早めにしてくれ……」

 

 と、疲れた目をしているテリーが言うので、ユウキは「サクッとサッパリしてくる」といそいそと風呂天幕へと入った。

 

 しばらくして、女子陣で出てきたので、僕達男子陣も風呂天幕に入るのだった。

 中はかなり広かったので満喫した。

 

 そうして天幕で横になって眠ろうとしたのだが、中々眠りにつくことができなかった。

 デスゲームへと変わり果てた世界になってから、まともに睡眠を取ることができてない。

 そんな事を話せば、確実にみんなから熟睡できる方法探そうとするから黙っておかないと。

 

 それはそうとみんなは熟睡しているが、なるべく起こさないように立ち上がる。

 

「寝付けないし、少し歩くか……」

 

 そう言って、僕は武装解除した格好のまま、深夜の野営地を散歩することにした。

 夜特有の冷えた空気と、鈴虫の羽を震わせ『りーんりーん』と鳴く声が、心地よい。

 空を見上げれば、月光が木の隙間からその光を降らせる。月自体は外周付近でないと見えないのだが。

 

「んっ……はぁ……」

 

 この世界で身体を伸ばしても意味はないのだが、気分的な問題だ。

 しばらく歩き続け、大天幕の東を通り抜けた先の光景に僕は立ち止まってしまった。

 小さな樹が1本立っているだけのささやかなな草地だった。βではそれだけだったはずなのだが、今目の前には、簡素な物だが、3つの墓標が建てられていた。

 そのうちの一つにキズメルが、やや俯き加減に、墓標の根元を見つめている。

 視線に気づいたのか、彼女はこちらに振り向く。

 

「……シュバルトか。しっかり休んでおかないと、明日がつらいぞ」

 

「普段よりは快適に眠れたから大丈夫だよ。天幕、貸してくれてありがとう」

 

「なに、構わんさ。あの天幕は私ひとりには広すぎるからな」

 

 そう応じると、彼女は再び墓へ顔を戻す。

 墓に刻まれている名前を読む。

 【Tilnel】と刻まれていた。

 

「ティルネル……さん?」

 

「双子の妹だ。先月、この層に降りてきて、最初の戦で命を落とした」

 

 双子の妹。

 その事に、僕は亡くなった弟を思い出す。そして、弟を殺した男の姿を思い出すが、幼い頃の記憶ゆえに、ぼんやりした物ばかりだ。

 あの惨劇が平和だった日本で起きたことが信じられないのだが。

 

「妹は薬師だった。戦場では怪我人の治療が仕事で、ダガーより大きな刃物を持った事はなかった。だが、妹がいた後方部隊に、森エルフの鷹使いどもが奇襲をかけてな……」

 

 森エルフの鷹使い(フォレストエルブン・ファルコナー)は、ボスかイベントを除けば、この三層では最悪の敵mobだ。

 黒エルフにも黒エルフの狼使い(ダークエルブン・ウルフハンドラー)というのがいるが、厄介さで言うのなら、鷹使いの方が厄介だ。天と地から攻められるのは、かなり面倒だ。

 

「いつまでも立っていないで、座ったらどうだ。椅子も敷布もないが」

 

「それじゃあ隣、失礼するよ」

 

 僕は彼女の隣に座る。エルフの土地特有なのか、座り心地はとても良い。リアルでもこんな草はないだろう。

 キズメルが革袋を取り上げると、栓を抜いて一口呷る。それをそのままこちらに差し出してくる。それを礼を言って受け取り、それを飲む。

 トロリとした液体の味は甘酸っぱ草、飲み下ろすと強めの酒精が喉を灼いた後に、爽やかな後味が立ち上がる。

 昔、師匠に連れられて海外に行った時にこっそり飲んだ酒を思い出す。

 

「美味いね……強めの酒精は癖になりそうだ」

 

「そうか。妹もこの月涙草のワインが大好きだった……驚かせてやろうと、城から内緒で持ってきたのだがな……一口も飲ませてやれなかったよ……」

 

 僕が返したワインをティルネルの墓に残さず注ぎかける。そして右手から空になった革袋が滑り落ち、草の上で軽い音を立てた。彼女はのろのろと手を戻すと、両膝を揃えて立て、しっかりと抱え込んだ。

 

「……昨日、秘鍵奪還の任務に志願した時、私は死を覚悟していたんだ。いや、それを望んでいたのかもしれん。事実、あの森エルフとはよくて相打ち、あるいは敗れていただろう……だが、運命はそなたらを我が死地へと導いた。この世界には、もはやいかなる神も存在しないはずなのだがな……」

 

 そう呟くと、キズメルはチラリとこちらを見る。オニキス色の瞳が薄く濡れている事に気づく。

 彼女達はこの世界で生きる、《人》なのだ。今や僕達も同じ存在なのだ。

 

「……僕にも…双子の弟が居たよ。平和な国で過ごしてたんだけどね……なんもない日に突然、殺人鬼に殺された……」

 

「……シュバルト……お前も……」

 

「……まぁ、小さい頃の話だ。聞き流してくれて構わないよ」

 

 自分でも何故この話を彼女にしたのかわからない。彼女が双子の妹を失っていたからなのか、それともまだ付き合いが短いからなのか。

 

「そろそろ寝ないとね……」

 

「そうだな……いつまでもクヨクヨしているとティルネルに叱られてしまいそうだ」

 

 僕達は天幕へと戻り、毛布へと包まり、柱にもたれ掛かり、瞼を閉じ、意識を手放す。

 深く眠れるかわからないが。

 

 おやすみなさい

 

 




テリー
なんだか不憫枠に…
でも元ネタの青い閃光的には不憫枠は間違いじゃないのがなぁ……

シュバルト
ボスのクエストからボスフロアまで駆け抜け、更にエルフクエストを受け、とあるクエストを受けていたが、ここまでノー休憩。
ユウキ達も同じだが、シュバルトが休憩させてたりするので、やはり一層の頃から変わっていない。
キズメルに弟のことを話したのは何故かはわかってない。多分似たようなナニカを感じたのかもしれない。


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