ちょっと仕事が忙しくて執筆できませんでした。
シュバルトside
第3層での初めての攻略会議を終えた僕達はディアベル達と別れ、黒エルフの野営地へと戻った僕達はキズメルが貸してくれている、天幕で一休みすることにした。
流石に精神的に疲れたのか、天幕の柱にもたれかかっている内に眠ってしまった。
何もない空間で見覚えのある人が1人1人と実体化していく。顔だけは見えなかった──その顔を見なかった。見ようとしなかった。
1人が口を開く。
『お前のせいだ』
また1人口を開く。
『お前が黙っているから』
それはどんどん増えていく。
『お前がこのゲームを作ったから』
『お前がSSなんか作るから』
『お前があんなに作るから』
それでも耳を塞がない。塞ぐことができない。
それを良いことに、人影は口を揃えて言葉を紡ぐ。
『『『『大勢死んだ』』』』
『『『『お前が殺した』』』』
『『『『茅場晶彦の仲間』』』』
『『『『テロリストのクズ』』』』
『『『『死ねよ。死んで償えよ』』』』
そこで僕の目が覚めた。
ぼやぼやとした視界がドンドンクリアになっていくと同時に意識も覚醒していく。
嫌な夢……じゃないな。事実を突きつけられた夢だな。
自分がクズだと言うことを再認識できてよかった。
本当にギルドを作って良かったのだろうか。いや、ギルドの団長は権限でメンバーの中から、団長を引き継ぐ事が出来る。
ある程度、ギルドのランクが上がれば後はここにいるメンバーでなんとかなるだろう。
いずれ自分がいなくなっても良い。彼等は強いから、僕がどこかで
ギルドメンバーだけではない。ディアベル達も問題ないだろう。
彼のカリスマと指揮能力が有れば、犠牲者も抑えることはできる。
ドライア達には感謝だな。
自分がクズであることを再認識させてもらったのだから。
考えをまとめた僕は目を擦り起きようとした。のだが、目の前に黒髪ショートヘアーの少女がこちらを見つめていた。
「あ、起きた。おはようシュバルト」
「おはようユウキ……どれぐらい寝てた?」
「5分くらいかな?」
そんなに時間は経っていないようだ。
「ふわぁ……そのくらいか」
「まだ時間あるから寝てても大丈夫だよ?」
「いや、充分仮眠は取れたから起きてるよ」
「そっか……ねぇ……ドライア達が言ってたこと、気にしてる?」
ユウキはこちらの瞳をじっと見ながら言う。
黒曜石のように黒い瞳に僕の姿が写る。死んだような目をしていた。
「そんなことはないさ。クズなら君達を見捨てているからね」
結局、僕は誤魔化した。
臆病者だなぁ。なんて思いながら立ち上がり、身体を伸ばす。
「さてと…ご飯食べよっか」
彼女から、友達から目を背ける自分へ嫌気がさすものの、いつか死ぬ命が人の為に燃やし尽くされるのなら、それでいいと思って、ユウキから逃げるように天幕の外へと歩いていった。
いつも大事な所で彼女から逃げてるな……
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ユウキside
絶対気にしてる。
シュバルトは大丈夫だって言うけど、あの目は違う。
辛いことを堪えている目だ。
SAOに囚われるまでに一度も見ることはなかった目。
あの日、ドライアに言われた、言葉にシュバルトは何を思ったのか、わからない。けど、傷ついたことだけはわかる。
許せない。
さも当然のように自分達が正義だと言って、シュバルトを傷つけた彼らが。
とても憎く感じてしまう。
「……絶対、ボクが…ボク達が守るからね。キミが理不尽な目に遭わないように」
ボクは彼の後を追うように食堂天幕へ向かい、食事を済ませる。
あの攻略会議から3日が経過して、フィールドボスの攻略戦が行われ、初回の戦闘で討伐が成功し、死者も出なかった。
キリトがLABを掻っ攫ったが、ドライア達が睨んできたこと以外、特に問題は起きなかった。
あの攻略会議以来、シュバルトの寝つきが悪いようで、ボク達が寝てても起きていて、起きるよりも先に起きていた。
そのことにボクはあのギルドに対する、嫌悪感がドンドン溜まっていく。
ボク達はいつも通り、野営地に戻って、所持アイテムの整理をしていた、その時、衝撃のアイテムをアスナが持っていたことを当時のボクは知らなかった。
「そういえば、ウール系の素材アイテムってボク達で何かに使えないの? それこそ洋服を作ったりとか」
「可能だよ。裁縫スキルがあればね。僕が今持ってる料理スキルみたいに生産スキルだから、上げるのに相当時間がかかるけど」
そう聞くと大変そうだなと思った。
シュバルトが料理スキルを取って、毎日、簡単なご飯を作っているけど、それでも熟練度が50程度らしい。
そういえば、第一層でジャムパンを売っているプレイヤーがいるって聞いたけど、その人もとても苦労していそうだ。
「私も裁縫スキル取ったけど、まだ簡単な服しか作れないわ……」
「凝った服や、強い布装備を作るには熟練度が高くないと出来ないからな」
アスナは裁縫スキルを取っていたようで、生産スキルの苦労やらなんやらを語っていた。
「アスナ…貴女スキル枠足りてるの?」
ミトがそう問いかける。
ボク達のレベルからしてスキルスロットは4つ。アスナのスキルは細剣、軽金属装備が確定で、今の発言から裁縫で3つ埋めている。
スキルとかそう言う散策はマナー違反だから、詳しくは聞かなかったけど、彼女が生産スキルを取っているのは驚きだ。
シュバルトみたいに、βテスターだったり、モンハンスキルでスキル枠が空いてるならともかく、ニュービーの彼女が取ったのだから。
「んー、みんなには内緒」
「そこまで言うなら聞かないでおくわ」
そう言ってこの話は終わった。
「僕ちょっとお風呂入ってくる。みんなは先にご飯食べてていいよ」
そう言ってシュバルトはお風呂の天幕に向かった。
「どうしたらいいんだろう……」
「ユウキ?」
「テリー…」
「なんかあったのか?」
「うん。実はね……」
ボクはシュバルトの現状を説明する。
「……アイツ。すまんなユウキ俺がすぐに気付けばよかったんだが」
「多分、シュバルトは隠し続けるよ」
「だろうな……アイツ、現実じゃそんな事とは無縁だっただろうからな……いや、俺達と会う前のアイツを知らない……昔からそう言うのは隠すタイプの性格だったのか……」
彼がボク達と出会ったのは最近というわけではないが、それでも付き合いの長さはボク達4人と比べると長くはない。
家が隣のボクが1番長く、時点でテリー、フィリアの順番だ。
「しばらく、アイツのことを気にかけておこう」
「うん…」
守られてばかりなことを改めて認識した。
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シュバルトside
僕は一人で風呂に入っている。
「はー……やれやれ」
自分の事ばかり考えている。
「どうしたもんかな……」
身体を洗っていると天幕入り口の垂れ幕が、ふわりと向こうから持ち上げられた。
誰か入って来たのだろうか。
ここ数日は黒エルフのNPCが入ってきた記憶はない。テリー達だと思い、その方向を見た。
僕はそのことを後悔した。
視線の先にはカフェオレ色の肌。黒エルフだろうか。そして柔らかそうな曲線の身体。
「おや、入っていたのかシュバルト」
入って来たのはキズメルだった。
大事な所とかは見ていない。しかし、女性の裸体の一部を見てしまった。
「私も湯浴みさせてもらって構わないか?」
それに対して、僕は
「構わないよ。僕、すぐに出るから」
と言って出ようとした。
「そうだ。背中を流してくれないか」
「へ?」
間抜けな声が出た。
そして僕は彼女の頼みを聞いてしまった。『ティルネルの魂が聖大樹に召されてから、頼む相手がいなくてな』と言われてしまえば、僕は断ることができなかった。
「この頃、不思議な夢を見るのだ」
「夢?」
「ああ。数日前に私が森エルフの騎士と戦っていて、シュバルト達が飛び込んで来た夢をな。ただ、その時の状況は今と違い、お前達の仲間にユウキ達はおらず、お前達も未熟で、私はお前達を守る為に聖大樹の加護を解き放って相打ちになる。その私をお前達は悲しそうな目で見る夢だ」
「それは……」
βテストの記憶なのだろう。
「それはまた不思議な夢だね」
「そうだな。こうして私はお前達に助けられて、生きている」
「うん。っと背中はこれでいいかな?」
「すまない。助かった」
僕は彼女から離れ、このままお風呂から出ようとする。
「シュバルト。お前、何か悩みでもあるのか? それとも何者かに言われたことを気に留めているのか?」
彼女の言葉に僕は足が止まる。
僕の心の内を見透かしたように、当ててくる。
「……まぁ…ね」
「なら、背中を流してもらった礼もある。話なら聞くぞ?」
そう言われる。
彼女なら言えるか?
「この前、毒蜘蛛の巣に行ったとき、僕達とは別の人がいただろう?」
「ああ。顔を合わせるのを避けた者達がいたな」
「そのうちの何人かに、僕が犯した罪の一旦を指摘されてね」
「犯した罪? シュバルトがそのようなしたのか?」
「大勢の人を巻き込んだ大罪をね……」
「お前がそんなことをしたようには思えないが?」
「ユウキ達には知られているけど、他の人達には詳しく知られていない。それだけさ」
「その事をあの連中に知られていたと」
「うーん……テリーやキリト、ミトも似たような理由で責められていたけど、僕と違うからね」
話の内容は誤魔化しながらキズメルに説明する。
彼らは只の被害者だ。
このゲームの開発者の1人である僕は罪人だ。
なら、他の開発メンバーはどうなのか。
それは違う。彼らはシステム周りの設定などをしていただけ。
僕はこの世界の敵mobが使うSSを作った。
つまるところ、人を殺せる技を作ったのだから、それはおそらく、いつか現れるPKをするプレイヤーも使うのだろう。
ネズハ達レジェンド・ブレイブスに強化詐欺を教えた黒ポンチョに、眼帯男、それに付き従っているプレイヤー達は必ず使う。
そうすればドンドン僕の罪は重くなる。
「……私にはお前の悩みを聞くことしかできない。だがお前にはユウキ達がいるだろう。彼女達なら、受け入れてくれるのではないか?」
キズメルはそう言うが、それはできない。
「それは無理だね。言えない。それに僕の罪は僕にしか清算できない」
「……それは違う。罪の清算をする本人を支える事は誰にだってできる。それがユウキ達だ」
キズメルのオニキス色の瞳にじっと見つめられる。
「……いつか相談するよ」
僕は彼女の瞳の力強い視線に、頷くしかなかった。
「よし。思い立ったが吉日と人族は言うのだろう?ならすぐ相談するべきだ」
「待って待って!今すぐしたらユウキ達にキズメルと混浴したこと知られるから!」
「む、人族は一緒に湯浴みをしないのか?」
「夫婦だったり恋人じゃない限りはね……」
「そうなのか」
「うん。だから僕が先に出るからね」
「うむ」
そうして僕は天幕から外へ出て装備を戻し、食堂天幕へと向かう。
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それから、再び夜の時間になる。
全員、疲れ切ったユウキ達、女子陣はぐっすりと夢の世界へと旅立っている。
「起きる気配なしだ……」
「んじゃ行くとするか」
「森フィールドだったな、さっさと行こうか」
テリー、キリトの2人を連れて、野営地を出て、待ち合わせの約束をしているプレイヤーがいるところまで駆け抜ける。
「確かこの辺なんだけど……」
そのまま2分ほど待つ。
「先に着いてたのカ」
「アルゴ。今回は先に待たせてもらったよ」
二層での件があったのでね。
「んで、シュバルトお前、アルゴに何を頼んだんだ?」
「一昨日、頼んだ件があってね。僕が個人的に気になったプレイヤーがいてね。その事を軽く探って欲しくて」
「ディアベルに聞いたら快く教えてくれたゾ」
「そうなんだ。おっと、依頼分のcol渡すね」
「毎度アリ」
僕は彼女にcolをトレードで渡す。
「んじゃ、オレっちがが聞いた事を話すゾ。三層に来てからFWKに参加したのはモルテって言う、片手剣使いで、鎖頭巾を被っているプレイヤーだナ」
鎖頭巾といえば、ドライアのパーティにも武器は片手斧だったが、同じように鎖頭巾を被っているプレイヤーがいたのを思い出した。
そんなに鎖頭巾の性能がいいのだろうか。
「あの攻略会議にはいなかったけど、ただ単に出てこなかっただけなのかな?」
「おそらくナ。経緯も志願だったようだしナ」
「そっか。ならこの件はこれでお終いでいいよ。こう言うのはあまり深入りしない方がいいし」
「そうカ?」
「プレイヤーの情報のやり取りはあまりしない方がいいからな」
テリーの言う通りだ。
この世界ではそのやり取りで問題が起きて、事件にもなりかねない。今回やレジェンド・ブレイブスの時のように彼女に依頼した事は本当は良くないことだ。
「とにかく、今回ので依頼は終わりだ。また何か頼む事があったらメッセージする」
「あいヨ」
「街まで送ろうか?」
「そこまでしてもらわなくて大丈夫だヨ。それにシュバルト、お前その目。全然寝てないんじゃないのカ?」
「そんなこと……」
「アルゴ。お前の言う通りだ」
否定しようとしたところで、テリーに遮られてしまった。
「ちょっとテリー…何を」
「お前な、誤魔化してるつもりだがな、とっくに俺とユウキにバレてるんだよ」
まさか2人にバレていたとは。
やっぱり、2人には話した方がいいのだろうか。
「今は聞かないでおいてやる。明日あたり、俺とユウキの2人だけでも聞かせてもらうからな」
「了解……」
「それならよしだ。お前らはどうする?」
テリーはキリトとアルゴに対して僕の話を聞くか尋ねる。
「お前らがいいならオイラは聞かせてもらおうかナ」
「俺は……ごめん。遠慮しておく」
「そうか。なら野営地に戻るか」
僕達は秘密のやり取りを終えて、黒エルフの野営地に戻り、僕への詰問が行われるのだった。
シュバルト
めちゃくちゃマイナス思考に囚われている。
キズメルに説得されたが、話し合う勇気はない臆病者である。
なんでか悲劇のヒロイン状態だけど、SAO以降は吹っ切れるから…
ユウキ
シュバルトの異変に気づいた少女。
幼馴染の目は誤魔化せない。
テリー
相棒の隠し事に気づいた少年。
なんでこんなに過保護なんですかね。
前回作ったローズダガーの絵です。
下手くそですがどうぞ。
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