SAO-絶剣と怪物狩り   作:小説大工の源三

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星なき夜のアリア
剣の世界に閉ざされて


 

 11月4日金曜日。竜翔は学校を休み、アーガスで作業をしていた。

 『カタカタ』とパソコンのキーボード音が静かな空間に鳴り響く。

 あれから1年の時が経ちソードアート・オンライン、βテスト版が配信され、2ヶ月で終了し、その間に攻略されたのは第10層のボス部屋までだった。

 それから1ヶ月で製品版が完成した。

 最終調整を終え、外を見るともう既に真っ暗な夜闇に包まれていた。

 

「殊原君。1つ質問させて欲しい」

 

「晶彦さん? 何でしょうか?」

 

「簡単な質問だから、そこまで気を張らなくて良い」

 

「はい…」

 

「君にはβテスト版の製作に協力してもらったが……製品版の方には本格的に参加しなかったことの理由を聞きたくてね」

 

 そんなありふれたような質問だった。

 

「そうですね……1番の理由はネタバレは嫌なので」

 

「ほう……つまり、初見プレイがしたいということか」

 

「はい……」

 

「そうか……引き留めてすまなかった。夜も遅い、タクシーを呼んである。それに乗って帰りたまえ」

 

「ありがとうございます。それとソフトの方も2本融通してもらって…」

 

「なに、気にすることはないさ。君の友人にもこのゲームを楽しんでもらえるのなら、こちらとしても喜ばしいことだからね」

 

「それではお先に失礼します」

 

 竜翔はアーガス本社を出てタクシーで自宅へと帰る。

 

「どうしようかな……蒼眞はβやってるから製品版あるとして……木綿季達にどう説明したらいいか……」

 

 とても楽しみにしている3人の少女を思い浮かべる。

 この中の内、1人だけが貰えないのだ。

 

「すごく気が重い……」

 

 そう言いながら、冷蔵庫の中で冷やしているラップに包んだご飯を電子レンジの中に入れる。

 

「うーん……めんどくさいしTKGにしよっと」

 

 そう言って冷蔵庫から生卵ととある瓶を取り出す。

 

「やべっ、卵これが最後の一個じゃん……今度に買いに行かないと……」

 

 そう考えながら冷蔵庫の扉を閉める。

 

「ソ◯チ豚丼のタレ♪!」

 

 温まったご飯をお椀に移して、ほどよく崩し、真ん中に卵を入れる窪みを作る。

 卵を割り、ソ◯チ豚丼のタレ♪をかけて混ぜる。

 

「いただきます…」

 

 ものの十数秒で食べ終える。

 そのまま風呂に入る。

 

 自室に戻り、少し部屋を片付けようと、電気をつける。

 自身の存在がわかったのか窓を『コンコン』と叩く音が聞こえる。

 

「木綿季か?」

 

 窓を開けると、そこには案の定木綿季が手を振っていた。

 

「お帰りー!」

 

「ただいま……で良いのかな?これの返答に毎回悩むんだけど」

 

「細かいことは気にしない気にしない♪それで、製品版幾つ貰えた?」

 

「あー……ごめん、2つしかもらえなかった」

 

「そっかぁ……なら1つは琴音に渡してよ」

 

「良いの? 3人揃ってからどう渡そうかと思ってたんだけど」

 

「うん。もしも2つだったら、ボクと姉ちゃんでじゃんけんで買った方が先にプレイするって決めてたから」

 

 どうやら紺野姉妹はもしもの事を考えていたようだ。

 そのことに少し気分が軽くなった。

 

「それじゃあ、今そっちに渡すから、棒っここっちにだして」

 

「うんちょっと待ってね…」

 

 一度、部屋に戻った木綿季はさっきノックした棒──100均で買えるような突っ張り棒を竜翔に向ける。

 

「それじゃあこれに引っかけるから落とさないでね」

 

 ソフトを袋に入れて、棒に引っかける。

 

「はい。戻していいよ」

 

「了か〜い」

 

 スルスルと棒が木綿季家の窓に戻る。

 

「竜翔、ありがとね」

 

「どういたしまして」

 

「日曜日からだよね?」

 

「うん。明日、琴音に渡す予定」

 

「楽しみ〜……」

 

 あからさまにワクワクさせてる木綿季を見て、微笑ましく思う。

 

「その前にじゃんけんで勝ってからだけどね」

 

 一気に気を落としてしまった。

 

「そこなんだよねぇ〜よし!今からじゃんけんしてくる!」

 

 ドタドタと足音を立てて部屋を出ていく。

 よほど大きな声を出しているのか、『じゃんけんポン! あいこでしょ! あいこでしょ!』と、双子の声が聞こえてくる。

 『ヤッタァ!!!』と大きな声が聞こえた。

 

「この声は……木綿季が勝ったな…」

 

 ドタドタと再び足音が鳴る。

 

「竜翔、竜翔!勝った!」

 

 喜びながら、窓を開けて、Vサインでこちらに報告する。

 

「明後日が楽しみ〜レクチャーよろしくね!」

 

「勿論、任せて。製作者側の知識を叩き込んであげるからね」

 

「そこはお手柔らかに。ムフフ〜ワクワク〜! 竜翔、おやすみ!」

 

「おやすみ、木綿季」

 

元気一番な少女とのやり取りが終わった。

 

─────────────────────────

 

 翌日、琴音の家に赴き彼女にSAOのソフトを手渡し、SAOサービス開始の日曜日となった。

 

「さて……琴音はフィリアで蒼眞はβ版と同じでテリー。木綿季が本名で……」

 

 木綿季が本名で登録したと聞いたときはやめとくよう伝えたが、どうせすぐに改名するから良いと言ったので、それ以上は何も言わなかった。

 

「それじゃあ行きますか……リンクスタート!」

 

 色々な光が視覚に流れ込み、ありとあらゆる五感が現実世界からシャットアウトされ、全ての情報が仮想世界へと送られる。

 

「ついに戻ってきた……アインクラッド……」

 

 右手を縦に振りステータスウィンドウを開く。

 《Syubarut(シュバルト)》それがこの世界の殊原竜翔の名前だ。

 

「さてと……みんなを探さないと」

 

 目印にしている始まりの街の転移門の右上で待機している。

 

「えーっと……シュバルト…であってる?」

 

 声をかけてきたのはロングヘアーの紫髪の女性だった。

 

「そうだけど……ユウキ?」

 

「うん! 竜翔のアバターかっこいいね」

 

「そこまでこだわってないけどね」

 

「チャチャっと作ったんだ」

 

「うん。あとは2人を待つだけだね」

 

 数分後、β版と同じアバターのテリーとその後ろに明るい茶髪の女性プレイヤーを連れていた。

 

「テリー、後ろのがフィリア?」

 

「ああ、偶然見つけた」

 

「運が良かったね。それじゃあみんな揃った事だし、狩りに出かけますか。2人は武器何を選択したの?」

 

 SAOでは初期ログイン時に初期からある武器種のうち1つを選択することができる。

 

「ボクは片手剣だよ。一番シンプルだからね」

 

「私は短剣にしたよ。なんとなくビビッってきた」

 

「シュバルト、お前は全武器使えるんだよな?」

 

「そうだね。3人ともこれはオフレコだよ?」

 

 シュバルトは3人に自身がSAOで主に担当したものを話した。

 

「このゲームのソードスキル殆どデザインしたから全武器種使えるんだ」

 

「なら安心だね。よろしくお願いしますシュバルト先生!」

 

「ご教示ください!」

 

「早速フレンジーボアを征伐しに出かける後に続け! 者共!」

 

 4人は始まりの街を出て、mob狩りを始めるのだった。

 

─────────────────────────

 

「とりゃあ!」

 

「せい!」

 

 シュバルトと、テリーの指導から1時間が経過し、2人はソードスキルを難なく発動することができるようになっており、さらにシステム外スキルのブーストをもあっさり習得していた。

 

「どうどう!?」

 

「うんバッチリだよ2人とも」

 

「覚えが良いな。このまま行けば攻略の最前線も走れるぞ」

 

「ホント?」

 

 そのまま4人は、フレンジーボアを狩り続けて夢中になるあまり日が落ち始めた頃になってやり過ぎていたことに気がついた。

 

「やっば……そろそろ姉ちゃんと交代しないと」

 

 そう言って、ユウキはメニューを開き操作する。

 

「アレ? ログアウトボタンがない」

 

 素っ頓狂な声を漏らす。

 

「そんなバナナ。メニューの下の方に……ホントだ。ない……」

 

「竜翔、GMコールもダメだ」

 

「うん……」

 

 どうしたもんかと4人が悩んでいると、鐘の音がフィールドに鳴り響く。突然の事に辺りを見渡していると、周囲で立ち尽くしていた、他のプレイヤーが次々と転移していく。

 遂にはシュバルト達も転移させらてしまった。

 

「……ここは始まりの街?」

 

「でも何で強制的に転移させられたの?」

 

 そんなユウキの疑問はすぐに解決した。

 上空が赤く染まり、ローブを纏ったナニカが現れた。周囲のプレイヤーがどよめく。

 

『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』

 

「ってことは茅場晶彦か?」

 

「そうなるね……」

 

 蒼眞の予想は当たる。

 

『私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ』

 

「やっぱりか……」

 

『プレイヤー諸君は、すでにメインメニューからログアウトボタンが消滅している事に気がついていると思う。しかしこれはゲームの不具合では無い。繰り返す。これは不具合では無く、<ソードアート・オンライン >本来の使用である』

 

「なん…だと…こんなの僕は聞いていないぞ…!」

 

 開発段階で、開発メンバーにそんな話は上がっていなかった。

 

『諸君らは今後一切、この世界からログアウトすることはできない。……また外部の人間の手による、ナーヴギアの停止あるいは除装も有り得ない。もしそれが試みられた場合………』

 

 ローブ姿の茅場晶彦は一呼吸おいて続ける。

 

『ナーヴギアの信号素子が発する高出力のマイクロウェーブが諸君の脳を破壊し、生命活動が停止させる』

 

「……ね、ねぇ竜翔。そんなことできるの?」

 

 震える声で尋ねる。

 

「……できる。電子レンジと同じ要領で頭の血液を沸騰させれば殺すことはできる」

 

「そんな……」

 

 絶望したように膝から崩れ落ちる。

 

『より具体的には、10分の外部電源切断、2時間のネットワーク回線切断、ナーヴギア本体の解除、または分解または破壊の試み……以上のいずれかに該当すると脳破壊シークエンスが実行される。この条件は、すでに外部世界では当局およびマスコミを通して告知されている。ちなみに現時点で、プレイヤーの家族や友人等が警告を無視し、ナーヴギアの強制解除を試みられた例が少なからずあり、その結果。残念ながら、213名のプレイヤーがアインクラッド及び現実世界からも永久退場している』

 

 ゲームマスターの無慈悲な宣言がより現実味を帯び始める。

 

「嘘だよ……こんなのゲームのオープニングだよ……ねえそうだよね蒼眞?」

 

 フィリアのテリーに縋りつくその声は泣き声が混ざっていた。

 

『諸君が、向こうに置いてきた肉体の心配は必要ない。現在、ありとあらゆる情報通達手段により、この状況を報道している。よって諸君等のナーヴギアが強引に外されることはほとんどないと言ってよかろう。2時間の猶予の間に諸君の現実の身体は病院その他の施設へと搬送され、厳重な介護態勢の元に置かれるはずだ。よって、諸君は安心してゲーム攻略に励んでほしい』

 

「な、何言ってやがる! この状況で呑気にゲームで遊べって言うのか!」

 

 遂に蒼眞からも叫び声が上がった。

 

『しかし、充分に留意してもらいたい。諸君にとって、ソードアート・オンラインは既にただのゲームではないということだ。もう一つの現実。つまりこのゲームにおいてあらゆる蘇生手段は機能しない。ヒットポイントがゼロになると同時に諸君等の脳はナーヴギアによって破壊される』

 

 視界左上に表示されている緑色のゲージが無くなるとプレイヤーは死ぬ。マイクロ波に焼かれて死ぬ。

 トライアンドエラーがRPGの醍醐味だというのに、それができない。無理ゲーにもほどがあるだろう。

 

「馬鹿馬鹿しい……ここに全員引きこもるだろうが……」

 

 蒼眞の言う通り、危険を犯す者などいる訳もないのだ。

 そんな全プレイヤーの思考を読み取っているかのように次の託宣が降りる。

 

『諸君が、このゲームから解放されるには、アインクラッド最上部。つまり第100層を攻略し、ゲームクリアすることのみだ。クリアした瞬間、生存プレイヤー全員が安全にログアウトされることを保証しよう』

 

「そんなの出来っこないよ…! だってβでさえまともに攻略できてなかったんだよ!」

 

 木綿季が叫んだ。βの情報を得ていたせいで余計に絶望している。

 

『それでは最後に、諸君のアイテムストレージに、私からのプレゼントを用意してある。確認してくれ給え』

 

 その場にいるプレイヤーが同じ行動を取る。ストレージを確認すると、表示されたアイテム名ほ手鏡。それをタップしてオブジェクト化し、覗き込む。

 写るのは自身のアバターの姿。

 

「これがなんだって言うんだ?」

 

 竜翔が疑問に思っていると、突然アバターが光に包まれ視界を染め上げる。2、3秒で光はおさまるが、何が変わったのか周囲を見渡す。

 

「おい、竜翔。リアルの顔になってるぞ…」

 

「そういう蒼眞こそ……」

 

 隣にいる蒼眞の姿が現実と同じになった。周囲のプレイヤーも同様だろう。

 悲しいかな、ネカマのプレイヤーもいたのだろう、女装した男の姿がチラホラと見える。

 

「ねぇ……何でこんなことしたの……竜翔……! 何か知ってるんでしょ! 答えてよ! 早く!」

 

「……ごめん。僕は何も聞いてない」

 

 理解を拒む木綿季は竜翔に掴みかかり問い詰める。開発に関わっている彼ならば知っている筈だと思い込んで。

 だが竜翔も知らない。地獄のような世界になるなんて聞いていなかった。

 

『何故このようなことをしたのか、諸君はそう思っているだろう。大規模テロなのか、身代金目的の誘拐なのか。答えはどれでもない。この状況こそが目的だ。私はこの世界を創り、ゲームを開始した時点で目的は達成されているのだ……以上で、ソードアート・オンラインのチュートリアルを終了する。諸君等の健闘を祈る』

 

 そう言って赤いローブは消え、空も元に戻り、夕焼けが街を照らしていた。

 現実を飲み込んだのかゲームプレイヤーから囚人へと変えた人々が叫び始める。

 

「…木綿季」

 

「話しかけないで! ……竜翔も茅場の仲間なんでしょ!」

 

 木綿季──ユウキは拒絶したように竜翔を突き飛ばす。

 

「ユウキ……」

 

「やだ……やだよ……死にたくないよ…!」

 

 琴音──フィリアは両腕で自身の身体を抱きしめ座り込む。

 

「………っ!」

 

 竜翔──シュバルトは何かを決意したように3人を置いて駆け出す。メッセージ画面を開き、はじまりの街に留まるよう送信する。

 

「とにかくこの騒動を落ち着かせるためにできることは……」

 

 シュバルトは目立ちそうな人を探す。1番目を引いた人物へと駆け寄る。トゲトゲしたサボテン頭の男性に声をかける。

 

「すみません……少しいいでしょうか?」

 

「な、なんや! 今、話するどころやないやろが!」

 

 気が動転しているようだが、話を進めるために宥める。

 

「落ち着いて聞いてください。僕はβテスターです。これからゲームの情報を集めに行きます。まとめた物を本にする予定なので、その間プレイヤーが特にニュービーがこの街を出ないように声をかけて回ってもらえませんか?」

 

「……アンタが直接教えてくれへんのか」

 

「僕1人では、ニュービー全員に指導することは時間が足りません。なので、攻略本を制作してそれらを無償で配布する予定です」

 

「……アンタの他に同じことするっちゅう奴はおるんか?まさかアンタだけっちゅうわけないやろな?」

 

 シュバルトは一瞬言葉につまる。置いてきた友人を思い出すが、それを捨て、嘘を吐く

 

「…はい。だからお願いできますか?」

 

 頭を下げる。数秒後、男性から返事が返ってくる。

 

「……わかった。ワイがこの辺の連中に声かけたる。アンタ名前は?ワイはキバオウってもんや」

 

「僕はシュバルトと言います」

 

「シュバルトはんか。宜しゅうな。すぐ連絡取れるようフレンド登録しようや」

 

 男性──キバオウから協力を得ることができた。彼と握手を交わし、フレンド登録する。

 

「あんま無理するんちゃうぞ……それで死んだら詐欺師やからな」

 

「はい…」

 

「気いつけてな!」

 

 キバオウはそう言ってはじまりの街を走って行った。

 

「さて……まずは武器を他に入れなきゃね」

 

 スモールブレードを抜刀し、フィールドを駆け抜ける。幸いにも念の為と複数購入しており、武器の耐久値を気にする必要はない。

 

「ここからなら、一直線で森に入れる……」

 

 シュバルトは狼mobを蹴散らしながら走り抜ける。

 

「……それに、もう皆の場所には戻れないだろうし」

 

 チラリとはじまりの街を見て、自嘲するように溢す。

 デスゲームを開発した自分はもう友人の元へ戻ることはできないと考えていた。

 自分にはそんな話は聞いていなかったなんていうのは通じない。製作に協力したからには、その責任を果たさなければならない。

 そう心に決めてフィールドを駆け抜けていく。

 しばらく走り続けていると、鬱蒼とした森へと辿り着く。

 

「ここで先に報酬アイテムを獲得しておけば時短になる。よし行くぞ!」

 

─────────────────────────

 

 一方で、はじまりの街に残るよう言われた蒼眞──テリー達はまだその場に留まっていた。

 シュバルトからは3人に『これから第一層の攻略本を作るから、それまでは街から出ないようにして。出るにしても安全な行動をお願い』とメッセージが届いていた。

 

「フィリア、ユウキ。とりあえず宿に移動するぞ」

 

 そう言って2人の手を取り、近くの宿屋に入る。

 

「ねぇ……テリー……シュバルトは?」

 

 落ち着き、世界に順応したのかプレイヤーネームで呼ぶ。

 

「……アイツはポーション買いに行ってる。ちょっと時間かかる見たいだから今日は早いとこ寝ちまおう。アイツも明日には帰ってくる」

 

「……わかった。おやすみ」

 

 フィリアは部屋に入る。その前にテリーはフィリアにとあることを耳打ちする。

 それを見送ったあと、俯いたままのユウキが顔を上げて、口を開く。

 

「……蒼眞。ボク……どうしよう」

 

「どうしようってどうした?」

 

「あの時……竜翔に……酷いこと言っちゃった」

 

「話してくれ…」

 

 ユウキはさっきシュバルトに言ってしまったことをテリーに話す。

 

「竜翔はこんなこと知らない筈なのに……ボク……竜翔と茅場が同じだって言って……」

 

「で、お前はどうしたいんだ?」

 

「……それはもちろん謝りたいよ。許されなくてもいい」

 

「そうか……」

 

 テリーは最初に届いていたメッセージとは別に届いたメッセージを読む。

 

『テリーだけにこれは伝えておくね。僕は君達とは別行動を取る。このゲームを作った人間として責任を取らなきゃいけない。もし君達が攻略しようとするなら、会えるのはボス攻略する時くらいだ。このことはユウキ達には話さないで欲しい』

 

 一方的なメッセージ。まるで自分達には安全な所で甘い汁を啜ってくれ、と言わんばかりだ。

 そんな話をテリーは聞き入れることはしなかった。

 

「ユウキ。アイツは今、攻略本を作るために奔走している」

 

「え……竜翔はポーションを買ってるんじゃないの…?」

 

「あんなもん、フィリアを寝かせる為の方便だ」

 

「……ボクのせいだよね。ボクが竜翔を拒絶したから……竜翔は一人でフィールドを……」

 

 後悔に染まった声でユウキは泣きそうになる。この世界では感情を隠すことが難しい。

 

「だったら行動するしかないだろ…」

 

「……うん。そうだね。許して貰えなくてもいい。ちゃんと謝らなきゃ」

 

 ユウキはギュッと拳を握り、次会う時に必ず謝ろうと誓った。

 

「……テリーはフィリアにどう説明するつもりなの?」

 

「正直に話すしかないだろ……理由説明すればいい」

 

「そんな単純なことかなぁ?」

 

「と、思ったろ? フィリアいいぞ」

 

「え?」

 

 テリーがフィリアの入った部屋を向いて声をかけると、寝たはずのフィリアが扉を開けて出てきた。

 

「き、聞いてたの?フィリア」

 

「ごめんね。テリーから一対一で聞きたいって言われたから…」

 

「そ、そっか……」

 

「どうするんだ?今からでも追いかけるか?」

 

「うん。善は急げって言うからね」

 

「わかった。今ならまだmobも湧いてるだろうから、レベルを上げながらアイツを追いかけるぞ。心当たりはあるからな……」

 

「ホント!?」

 

「ああ。βと一層はそこまで変わらないだろう。厄介なmobが増えてる可能性は絶えないがな。ただアイツも情報を集めるならβと別の行動をとるかもしれん」

 

「それでもいいよ。ボクは早くシュバルトに謝りたいんだ」

 

「命の保障はないからな……」

 

 テリーはスモールブレードをオブジェクト化して腰に携える。2人も剣と短剣を取り出し、宿屋の扉を開けてフィールドに向かう。

 

「アンタら!どこへ行くんや?」

 

 関西弁のトゲトゲヘアーの男に呼び止められた。

 

「これからフィールドに向かうんだが?」

 

「っつうことはアンタβテスターやな」

 

「そうだが……」

 

「もしかしてアンタがシュバルトはんの協力者か?」

 

 目の前の男から、彼の名前が聞けると思わなかったのか、テリーは目の前の男の肩を掴み、問い詰める。

 

「っ! アイツはどこに行ったかわかるか!?」

 

「お、落ち着けやアンタ!」

 

「す、すまん……」

 

「……いや、その慌てようっぷり見るに、アンタら置いてかれたんやな」

 

「ああ……シュバルトに街の宿で待機するようにな……連れがニュービーだったもんだから……」

 

「なるほどなぁ……すまんな…ワイもシュバルトはんがどこ行ったかわからんのや……」

 

 男性は彼の向かった先はわからないと答えた。

 

「そうか…すまんな、脅すような真似をして」

 

「気にせへんでええよ。ダチの安否が気になってもうたんやろ?」

 

「ああ……」

 

 男性は腕を組み、うんうんと頷いたあと少ししてから口を開く。

 

「ひとまず自己紹介からやな。ワイはキバオウやアンタは?」

 

「俺はテリーだ」

 

「テリーはんやな。また、縁があったら会おうや。ワシはここら一体のニュービーが死なんよう声かけて回っとる」

 

「そうか……キバオウさん。アンタも無理はするなよ」

 

「おう!」

 

 キバオウは再び街を走り始めた。

 それを見送った3人は、改めてフィールドへと向かうのだった。

 

 

 




因みに作中に出た豚丼のタレTKGは美味いぞ。
そんなことXで呟いたらソラチに見られたゾ。

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軽いキャラクター紹介

殊原竜翔
イメージCV 宮野真守

北海道出身。
小学生にして天才的なプログラミング能力を持ち、自身を引き取った柊蓮の下で更なるスキルアップし、重村ラボでも学びSAO製作に茅場晶彦からもスカウトを受けた。
好物はコアップガラナ(天然伏流水使用)
得意料理は卵を使う料理。
卵が材料に一つでもあれば究極クラスまで上がる。

今作はありふれの別作と違って、鬱展開や、シリアスめに書いて行こうと思っています。
キャラクターを虐めていくのつもりです。(^ ^)
もちろんハピエン厨なマーリンお兄さんな作者なので、ハピエンで終わらせるつもりです。
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