シュバルトside
ディアベルが咄嗟に合わせてくれて助かった。
彼が腹の読み合いができなかったらこのいざこざが収まらなかっただろう。
とはいえ、金切り男のジョーが黙っているのは意外だった。
何か企んでいるのだろうか。
「しっかし、ディアベル達は良く乗ってくれたな……」
「テリーがさっき、彼と少し話したのよ」
「テリーが?」
「ああ、ここで合流する前にな、俺達が野営地で暴れている時に、一緒に暴れてくれてな。その後、ドライア達とクエストのことで変ないざこざが起きるかもって」
「そしたらこうなったと」
「おう」
テリーナイスだそれは。
僕は内心でテリーに感謝をしながら、キズメルの仇討の最後を見守る。
彼女の剣が、鷹使いの首を刎ねたことで、決着がついた。
「ユウキ……終わったよ」
「うん……お疲れ様……」
2人はそう言って互いを抱きしめる。
「なぁ、シュバルトさん。アレってどう言う事なんだ?」
「鷹使いに殺された妹さんの仇討を果たしたのさ」
「妹ねぇ……美人だったのか?」
「いや、知らないよ。まぁ多分、ユウキとアスナに似てるんじゃないかな?」
僕は大天幕の裏でキズメルと話した日の事を思い出す。
『どことなく、ユウキとアスナはティルネルに似ている』
『そうなんだ…どの辺が?』
『自分の意志を貫こうとしている所だ。我々にも鷹使いに相当する、狼を連れる者もいてな……その狼の子犬を拾い、育てたいと私を説得した時と似たような目をしていた』
そんな会話だ。
アスナはどうか知らないが、ユウキは双子の姉がいる。キズメルとティルネルは双子だと聞いたからそう言ったところも似ている。
その時、3人の近くにうっすらとキズメルに似た少女の姿を幻視した。
「そうだ、アレをやるか」
「ええなアレやるか」
と、何やらやる気なリンドとキバオウ。
「えー…やるの?」
その2人とは対照的にやる気の低いキリト。
「いいじゃないか。こう言うのは滅多にやる機会がないんだからな」
意外にもテリーは乗り気のようだ。
「それじゃあ、シュバルトさんは1番奥で立って、彼女達を迎えてくれ」
「了解…」
そのままFWKのメンバーは2列に分かれ、手に持つ剣を上で交差させて花道を作る。
その光景を見たキズメルは一度、唖然とした顔になったが、すぐに笑みを浮かべてこちらへと花道をくぐる。
「く…ふふ。全く、中々どうして、人族と言うやつは……」
そして花道を潜り抜けたキズメルのハイタッチを交わし、ユウキとは拳を突き合わせた。
「ねぇ、シュバルト。ボクを落下から助けてくれた時、どうやってあの高さまで跳んだの? 結構高かったよね?」
「えっとね。妨害者を追っ払った後、柵の上から入ったは良いんだけど、結構森エルフが集まっててね、おまけになんでか黒い鎧を纏ったおっさん3人が追っかけて来たんだよ」
びっくりだね、騒動起きてるからバレないと思ったらいきなり見つかったんだもん。
「とりあえず高いところに逃げようと天幕の上に跳んだら、おっさん達も登って追いかけて来て、焦って逃げたら、上でユウキが落ちて来てるからどうしたもんかと思って」
ユウキがあんなところにいるとは思わなかったね。
「悩んでいたら飛びかかってくるもんだから、3人のうち1人を踏みつけて跳んだんだよ。モンハンスキルに踏みつけ跳躍っていう、パッシブスキルがあったからね、そのおかげで高度も稼げた」
まぁその時、踏みつけたおっさんが『俺を踏み台にしたぁ!?』って言ってたが、きっと気のせいだ。
どこぞのガン◯ムの黒い3連◯じゃないんだ。
鎧は黒かったが、違うったら違う。どことなく顔も似ていたけど違う。絶対に違うんだ。
と、自分の中で否定している。
その後なのだが、ディアベル達が僕達と協力したからなのか、彼らの方でもクエストが進行した。
おそらく、僕らのルートに統合されたのだろう。
とはいえ、迷宮区の攻略を放置はしないので、このまま僕達がクエストを進める。
次の迷宮区攻略会議を二十日にするようで、急足でクエストを進めることとなった。
まずはこの手に入れた司令書を届ける。
そのまま次のクエストを開始する。第七章《蝶採集》で巨大蝶を探して倒すだけのクエストで、ミトのヴァリアブル・シックルの投げる部分や僕の投剣スキルがあるので余裕で終わった。βでも息抜きクエストだったのでこんなものだろう。
第八章《西の霊樹》では、前に持ち帰った極秘司令書を読み、この野営地を森エルフが強襲すると知った司令官が秘鍵を秘密裏に4層へと持っていくのでそれを護衛するのだが、当然このクエストでは襲撃されないはずもなく、アンノウン・マローダーと言う盗賊6人に襲われる。βだと4人だったのが増えていたので焦ったが、β通り鍵は奪われてしまった。
その後の第九章《追跡》ではその盗賊を追いかけるのだが、目印を探すのだが、βだとアホみたいに時間がかかるったかのクエストはキズメルがいた事により、大幅に短縮する事ができた。
先頭に立った彼女が「あそこだ」「次はあれだ」「ここにある」とあっさり見つけまくったお陰で、あっさりと盗賊の隠れ家を見つけることができた。
その後、司令官へ報告し、休息&次のクエストの準備を済ませて第十章《秘鍵奪還》を開始する。
流石に迷宮区とは言わないが、広いダンジョンを攻略する事になるので、地下1階なボスを倒し、戻ってから地下2階を攻略する。
そしてそのダンジョンの最奥に辿り着くと、盗賊のアジトを発見。隠密能力の高いテリーとフィリア、そしてキズメルが潜入、そして黒でも森でもないエルフ。壊死したような黒緑の肌を持つ《フォールン・エルフ》を発見する。
僕達はテリー達のサポートで、《フォールン・エルフ・ウォリアー》を撃破し、この層のクエスト最終ボス、《フォールン・エルフ・コマンダー》を討伐。
大量の財宝と共に翡翠の秘鍵を取り戻す事に成功したがキズメルの表情はどこか浮かない表情だった。
「皆……《フォールン》どもが森エルフと手を組んでいると知った以上、この秘鍵は早急に上層へと届けなければならない。確実を期す為には私が直接運ぶ必要があるだろう……」
その事にユウキが驚く。
無理もない。ここまで長い間、彼女と行動を共にしていたのだ。寂しくなるのも仕方がない。
「それに、其方達では霊樹の門を潜ることができない……」
「そっか……」
「それは残念だね……」
「ああ……」
僕とユウキの声に、軽く頷き返したキズメルは、こちらを見て、少し考えてから、僕ら2人を抱きしめて、2人にしか聞こえない声量で囁く。
「一月前に妹を失ってから、わたしはずっと死に場所を求めて、戦場を彷徨うように戦い続けていた。あの日、カレス・オーの白騎士と刃を交えている時、ようやく妹の元へ行けると思っていた。だが……そなた達が現れ、私を救った。きっと、ティルネルが導いてくれたのだろうな……」
僕達がもっと早く三層に来ていれば、妹さんも救えたのだろうか。そんなことを考えてしまう。
「また、会えるよね?」
「ああ、聖大樹の導きが必ず、我らを導いてくれる」
そう言うと、彼女は回していた腕を離す。
「ではしばしの別れだ。《天柱の塔》に同行できぬことを許してくれ。だが、お前達が守護獣に負けるとは思っていない。難なく蹴散らして、来るのを4層で待っているぞ」
そう言って彼女は霊樹のうろをくぐり、その姿を消した。それと同時に彼女のHPバーも消えてしまった。
これにてエルフクエスト、三層編が終わった。
野営地司令官から労いの言葉と共に示された選択式の報酬アイテムを獲得した。
その中にフロアボス特攻がある物は何もなかった。どうやらデマ情報だった。
僕はその中にある打撃耐性とSSの威力アップのマジック効果のついた軽鎧を貰った。
ユウキは通常攻撃の威力が上がる腕当てを貰ったようだ。テリーは片刃の片手剣を貰い、フィリアも僕と同じ軽鎧を貰った。
キリトは転倒耐性と跳躍力にブーストのあるレザーブーツを、アスナとミトはキズメルが愛用していたマントと同じ素材のフーデット・ケープを貰った。
今までは事務的な、それこそ、一般NPCのような司令官が、僕達が報酬を貰い終わると椅子から立ち上がり、どこか憂慮するような顔を作り、口を開く。
「我らエルフは長命ではあるものの、肉体の強さは其方達よりも脆い…。地下迷宮で戦ったフォールン・エルフは、いにしえの大地切断以前に、聖大樹の力によって無敵の肉体を手にしようと目論んだ者どもの末裔だ。そのような奴らが森エルフと手を組み、秘鍵を狙ったとなれば、非常に不味い事態だ。我ら先遣隊はしばしこの地に留まり、奴らの痕跡を調査したのち、4層の砦に戻る。そなた達には引き続き協力してもらえると助かる」
「無論。友人の為に力を貸すよ」
「ボク達に出来ることならいつでも言ってください!」
「うむ。期待しているぞ……そなた達であれば砦の将軍殿も手厚いもてなしをしてくれるだろう。このまま紹介状を持っていくがよい」
そう言うと、司令官は卓上か細く丸めた羊皮紙をこちらに差し出す。それを受け取った僕が一歩下がると、司令官はこちらを呼び止める。
「そなたらは、天柱の塔を上り、4層へ行くのだったな」
「あ、はい……」
「ならば、守護獣の、毒を用いた攻撃に気をつけるのだな。この野営地で毒消しの薬を充分に用意していくと良いだろう」
「ありがとうございます…」
そう言って、僕達はそのまま天幕を後にした。丁度昼になったのか、それを告げる角笛が鳴り、食堂からいい匂いがしたので、昼食を取る為にそこへ移動する。
「なんと言うか……」
「情報をもらえたけど……」
「攻略に必須なアイテムではないが……」
「聞けて良かったと思うよ」
と、あの流されていた噂が嘘か真かわからなくなった。
「とりあえず報告はしておこうか」
そんなこんなで僕達は準備を済ませて、ディアベル達にクエストの顛末を報告した。
「なるほど……」
「特攻アイテムではないけど重要な情報だな」
「せやな、何も知らずに突っ込んだらアカンかったな…」
FWKは言うが、JWは不服そうな顔したまま、こちらを睨んでいる。
だが、これ以上の話はないので、このまま攻略会議を始める。
そしてその翌日、フロアボス討伐を開始。
誰1人ピンチとなることなく、余裕を持って攻略を完遂した。
「今回は余裕で攻略できたね」
「うん…次はこうはいかないと思うけれど、ピンチにはならないように討伐したいね」
攻略を終えた僕達は龍歴院はそのまま第4層へと向かっていた。
「また会えるかな?」
「会えるさ。クエストはまだ続いているし、それに約束したからね」
上へ登る足の動きを早めるのだが、この後待ち受けるβとの大きな違いに僕達は、唖然とするなんて知る由もなかった。
森エルフのおっさん黒騎士3人組。
決してどこぞの宇宙世紀に出てくる黒い三連◯ではない。
ただ3人揃って突撃してきただけだ。
1人目はシュバルトの踏み台にされた。
シュバルト
ひとまず、エルフクエスト三層編を終えて落ち着いた。
ユウキ
キズメルとの別れに寂しさを覚えるものの再会を約束し、前へと進む。