SAO-絶剣と怪物狩り   作:小説大工の源三

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お待たせしました。



湖の上の防衛戦

シュバルトside

 

「……もう朝か」

 

 久しぶりに、よく寝た気がする。

 ベッドから出ようと身体を起こそうとした時、隣でユウキが寝ていることに気づいた。

 

「……いつの間に」

 

 別の部屋で寝ていた筈だ。

 

「もし、君のおかげで眠れたのなら嬉しいけど、これっきりにして欲しいな……幼馴染とは言え異性なんだから」

 

 僕は彼女の髪を軽く撫でてからベッドから出て、ウィンドウを開き、いつもの戦闘服へ着替える。

 その後、朝ご飯を作り、机に並べる。そして2日かけて秘鍵を回収し、ついに森エルフが攻めてくる12月27日になった。

 

「さて……今日が四層での決戦だ」

 

「ここを乗り切るぞ」

 

「「「「「おう!」」」」」

 

「気合十分のようだな」

 

「キズメル!」

 

 準備を終えた黒エルフの騎士が後ろに立っていた。

 

「そうだキズメル。一つ頼み事をして良いかな?」

 

「私にできることならば」

 

「僕たちの船は幻書の術に収納ができないんだ。だからといって、その船を担いで天柱の塔を登る訳にもいかない。次の五層に行くにはどこかに船を置いていかないといけないんだ。だから僕たちの船を預かって欲しいんだ」

 

 その頼み事に彼女は快く頷いた。

 

「……もちろん。もちろんだとも。お前達の大切な船は、私が責任を持って預かろう。だが、一つ約束してくれ」

 

「キズメル?」

 

 彼女がそんなことを言うのはこれが初めてで、驚いた。

 

「またいつかこの城に来て、ティルネル号に私を乗せて欲しい」

 

「ああ、何度でも乗せてあげるさ」

 

 そう言って僕達は外へ出る。

 既に外の湖には黒エルフの騎士が十人乗りの船に乗って、戦闘体制をとっていた。

 そして敵船である森エルフの船は20隻もあった。

 見積もりが甘かったか。テリーが見ていた数にプラスアルファで既に持っていた船が使われているのか。

 戦力差はほぼ倍だ。

 

「今回、僕達は遊撃部隊。自由に動いて敵船を沈める」

 

「そこで、俺達の船は2隻。内1隻はアルギロの布を使って隠密しながら敵船を沈める」

 

「隠すのは衝角の付いているティルネル号の方だ。隠れて船を沈める。ただやりすぎると衝角の耐久も無くなるからやるとしたら3回まで」

 

「それ以上は船の耐久にも影響しちゃうんだね」

 

「そう。だからここぞって言う時に沈める。その時に布で隠れる」

 

「以上が僕達の作戦だ。他に質問はある?」

 

 全員無いようで、首を横に振る。

 

「それじゃあ出撃!」

 

 船に乗り込む。

 ティルネル号に乗るのはテリー、フィリア、キリト、アスナの4人。サファイア号に乗るのは残りの僕、ユウキ、ミト、キズメルの4人。

 

「まずはアレだ!」

 

 ガラ空きとなっている森エルフの船目指して櫂を漕ぐ。

 

「ぐっ、後ろから小型戦が来ています!」

 

「迎え撃て!」

 

 僕達の存在に気づいたが既に遅い。

 

「はぁあ!」

 

「でやぁ!」

 

 紫の剣士2人が背後から剣を一閃。森エルフの騎士を湖へ叩き落とす。

 

「ぐっ相手は人族に騎士1人!遅れをとるな!」

 

「口より手を動かしなさいってね!」

 

「おがっ!?」

 

 指揮官らしき森エルフの騎士をミトがヴァリアブル・シックルの根本を顔面にぶち当てる。クリティカルヒットした事により、体勢を崩す。

 

「そこっ!」

 

 僕は腰に下げているチャクラムを投げる。

 

「ぐわっ!」

 

 追撃のシングルシュートに指揮官も湖に落ちる。

 

「良し! 周りに森エルフの船はない。ミト、僕達も乗り込むぞ!」

 

「了解!」

 

 僕等も乗り込んでユウキとキズメルの援護に入る。

 

「おのれ! 人族ごときが!」

 

 森エルフの騎士の剣がライトエフェクトを纏い始める。

 あの構えはバーチカル・アーク。僕は盾を構えて受け止める。ジャストガードに成功し、反動を最小限に抑える。

 

「ミト! スイッチ!」

 

「せいやぁ!」

 

 ガードした僕と入れ替わるように、ミトが鎌を高速回転させ、そのまま横薙ぎに一閃。鎌SS《ラメンテーション》だ。

 回転力が加わった一撃は、森エルフの騎士を遠くまでぶっ飛ばす。

 

「シュバルト! スイッチ!」

 

「おう!」

 

 続いてユウキからのスイッチの合図が入る。

 僕は剣を横に構える。

 

「くらえ!」

 

 片手剣SSホリゾンタル・アークでダメージを与え、追撃として回し蹴り、体術SS《弦月》で横っ腹を蹴り飛ばし、船から落とす。

 

「キズメル、スイッチ!」

 

「了解した!」

 

 続いてミトがキズメルと入れ替わる。

 キズメルはバーチカル・アークで森エルフ騎士を湖へと沈める。

 

「流石キズメル……」

 

 僕が体術を上乗せして落とした騎士を剣だけで落とした。

 彼女のステータスの高さもあるのだろうが、僕自身の様々な装備を使う為の中途半端なステータスもあるのだろう。

 そのことは後にするとして、この船の森エルフ騎士は全て叩き落とすことができたので、別の船を沈める為に船へと戻る。

 

「味方の船は!」

 

 周りを確認すると既に2隻沈められていた。

 

「くっ……2隻沈んでる!」

 

「相手は3隻沈んでる……テリー達が沈めているとはいえジリ貧になりそうね……」

 

 戦力差は依然として倍のままだ。

 別の船が沈んでも、別の船がその倍を沈める。

 

「まずいな……」

 

 キズメルが呟くのと同時に、黒エルフ船隊の中央に陣取る指揮官が、こちらにシミターを振り翳しながら怒鳴る。

 

「そこの子船! 何をしている! さっさと敵の別動隊を止めろ!」

 

「何その言い方!」

 

 とユウキが怒るのも無理はない。あの指揮官は、戦いの前に、『お前達などアテにしていない』だの、『正規兵の足を引っ張るな』だの、散々偉そうなことを言っていたのだ。

 僕らβ組は『うへぇ』と言った表情になったものだ。

 

 とは言え、やるしかないのもまた事実。

 

「賭けに出る」

 

「何をするのだ?」

 

「船から船に飛び移る。それで敵を湖に落とす」

 

「ちょっと危ないわね……」

 

「でもやるならそれしかないね……よしやろう!」

 

「なら私はキズメルと行くわ」

 

「ボクはシュバルトとだね」

 

 組み分けも一瞬で済ませて、行動を開始する。

 近くにいる森エルフの船に飛び乗る。

 

「ドーモ森エルフ=サン。ハンターデス」

 

 そう告げるやいなや、足払いをかける。

 片足を上げて躱す森エルフ騎士目掛けて、ユウキが僕の後ろから片手剣SSレイジスパイクで突き飛ばす。

 

「そらぁ!」

 

 その間に、僕は片手剣と盾の状態の精鋭討伐隊盾斧を両手斧へと、変形させそのまま両手斧SS《ワールウィンド》で2人の森エルフ騎士を、まとめて湖にも沈める。

 

「おのれ汚い人族め!」

 

 森エルフ騎士が剣を振りかぶる。

 

「ぐっ…!」

 

 重たい一撃だ。両手斧モードのコイツも重量があるので、下手したらこっちが沈められそうだ。

 落ちたら落ちたで、水泳スキルで水中から奇襲するまでだが。本当にこのモンハンスキルが便利すぎる。

 

「シュバルト!」

 

 僕の後ろからユウキが声をかける。SSで援護してくれることを信じて僕は、森エルフ騎士の剣を弾く。

 大型獣の爪痕のような斬撃痕。片手剣SS3連撃の《シャープ・ネイル》だ。

 

「助かったよユウキ」

 

「うん。この調子で沈めて行こう!」

 

 そうして2隻ほど沈める事に成功した。

 しかしここで思わぬ事態が発生した。

 

「テリー達が見つかってる!」

 

「流石にアルギロの布の効果も限界がきたか!」

 

 僕とミトで敵船の指揮官の頭を遠距離攻撃で弾き、ユウキとキズメルがぶっ飛ばす。

 その隙にテリー達が動揺している森エルフ騎士を湖に突き落とす。

 

「すまん助かった!」

 

「いや、こっちも気づかなくてごめん!」

 

「ねぇキズメル! 神官達はおまじないとか使って援護してくれないの!?」

 

「無理だな。城に駐留している神官どもは、戦闘経験もないただの官吏にすぎん。今頃、城の地下にある隠し部屋でぶるぶる震えているだろうさ」

 

「デスヨネー」

 

 キリトが呆れたような予想通りだと言うような声を出す。

 そんな事だろうと思った。

 テリー達を援護して、こちらは引き戻す事に成功したは良いが、どうしたらいいかわからない。

 最悪な事に森エルフの船が陸に上がりそうだ。

 

「とは言えこの状況を打開できる何かが有れば良いんだけど……」

 

 フィリアの言う通り打開策が必要になる。

 その打開策が城主ヨフィリス閣下だとしたら? それなら黒エルフの士気も上がるはずだ。

 森エルフとの戦力差は当然、黒エルフ騎士の士気が低い目なのも気になる。

 

「城まで戻る! 森エルフを城に入れさせない!」

 

 僕はティルネル号の櫂を力一杯漕ぐ。

 そして城前の大桟橋に辿り着き、全員その上を走る。

 

「みんな! この場を任せてもいいか!」

 

「シュバルト君はどうするの?!」

 

「援軍を呼ぶ! 5分稼いでくれればいいから!」

 

 僕の声に皆、顔を合わせて頷く。

 

「行ってこい! 5分だろうと10分だろうと稼いでやる!」

 

 テリーが叫ぶ。

 

「お願い!」

 

 僕は走る。扉の前の衛兵に城主様からもらった指輪を見せつける。

 彼等が二手に別れ、その間を駆け抜けて扉を勢いよく開け、中の様子を確認する間もなく、勢いそのままに階段を駆け上がる。

 二階、三階とAGI全開で足を動かして登る。外で持ち堪えてくれている皆のために最短距離を走る。

 五階にたどり着き、城主様と初めて会った部屋を探す。

 

「ここだ!」

 

 衛兵のいなくなった扉。ここに城主様がいなければ無駄足になってしまう。

 

「城主閣下! 失礼します!」

 

 僕は子爵様がいることを祈りながら扉をノックする。

 

「入りなさい」

 

 どうやら中にいるようだ。

 

「失礼します」

 

 初対面の時と同じように椅子に座る彼は、今の戦況をある程度理解しているようだ。

 

「戦いは劣勢のようですね」

 

「ええ。こちらの船は、旗艦を含4隻が沈められて、桟橋に敵部隊の上陸を許してしまいました」

 

「そうですか……では、敵がここまで上がってくるのも、時間の問題というわけですね」

 

「……このままであれば、30分もすればそうなるかと」

 

「ならば、私はこのまま敵を待ちましょう。人族の剣士よ、これまでの助力に感謝します。お前は仲間達と共に城から去りなさい」

 

 その言葉に僕は、少しの怒りを覚えた。

 

「まだ戦場にいる戦士は戦っている……なのに真の指揮官たる貴方が諦めるのですか」

 

「……それは、最早言っても詮無きこと。若き人族のお前には理解できないかもしれませんが、長く戦い続けていれば、どちらかが必ず破れるのです。それが今回、我らリュースラの民だった。それだけです」

 

「……城主様。僕はまだ戦いますよ。僕だけじゃない、僕の仲間も、黒エルフの戦士達も最後の最後まで戦うはずです。貴方の病の話はキズメルから聞いています。でも、暗闇の中で死を待つのなら、せめて、外にいる戦士に一言声をかけてくれないでしょうか!」

 

 これでダメなら多分、フラグの回収忘れなのだろう。彼の病を治すアイテムを回収し忘れた僕の失態だ。

 

「人族の若者よ。ひとつだけ、私の問いに答えなさい」

 

 城主様の頭上に黄金の【?】マークが浮かぶ。

 

 クエストフラグを踏んだのか?

 

「なぜお前は、カレス・オーの民ではなく、リュースラの民に力を貸すのですか?」

 

 何故か。

 そんなことを考えたことはなかった。なんで考えなかったのか。そこに答えがあるのだろう。

 

 シンプルな理由なのだから。考える理由もない。

 

「キズメルが僕の友達で仲間だから。その仲間が護りたいものを一緒に護りたい。その為に力を貸したい。それだけですよ」

 

 後になって判明したことなのだが、SAOのプログラムには僕達プレイヤーの感情や心理状態をもモニタリングする機能が備えられていたことを。この時、僕が建前だらけの言葉を並べたのなら、あのクエストフラグはへし折れて敗戦していたのだろう。

 

「その言葉を真実だと信じましょう。ならば私も真実を以て答えねばなりませんね。若き剣士よ、お前が騎士キズメルから聞いたという病の話ですが──それは嘘です」

 

「う、嘘?」

 

「ついてきなさい」

 

 ゴゴンと音が鳴ると、後ろの壁が開く。どうやら外壁に隠し扉があったようだ。

 城主様はここを飛び降りる。五階の高さをだ。

 下を見ると、50センチほど張り出した窓庇が、一階の玄関付近まで続いていた。

 

「身軽だな……僕も急がないと」

 

 城主様の後に続くように僕も飛び降りる。

 地面に到着した頃には正門を開けていた。

 

「それでは行きましょう。お前の友人が戦っている戦場に」

 

 門の先いるユウキ達は、劣勢になりつつも侵攻を食い止めていた。

 

「ごめんみんな遅くなった!」

 

「ボク達は大丈夫! でも船が…!」

 

 船は四隻無事なのだが、どうやらこっちをメインに攻められた事で沈められなかった感じのようだ。

 

「シュバルトの方はどうなの⁉︎」

 

 ユウキの問いは、彼の存在で説明する必要がなくなった。

 

「私はリュースラの歌詞にしてヨフェル城主、レーシュレン・ゼド・ヨフィリス!!」

 

 そう宣言すると同時に腰のレイピアを抜剣する。

 

「リュースラの兵士たちよ! 私はいまこそ長きにわたる不在を詫び、そしてそなた達に希う! この戦には、王国の未来が懸かっている! 女王陛下の為に、友と家族の為に今一度立ち上がり、私と共に戦ってくれ!」

 

 その声に、黒エルフの兵士達は雄叫びを上げる。

 

 そして僕達のHPバーニの上に4つのアイコンが出現していた。攻撃力アップ、防御力アップ、ノックバックアップ、幸運判定ボーナス。これが僕らだけでなく今いる黒エルフの兵士達にも乗っているのなら、この劣勢も覆すことができるかもしれない。

 

 僕はノックバックアップのバフを利用するようにレイジスパイクを森エルフ騎士に叩き込む。

 

「おおう……すごいなぁ……」

 

 普段よりも遠くにぶっ飛び、湖にドボンと沈む。

 この調子で僕達は反撃を始める。

 

「恐るな! たかが城主1人増えただけ! 我らの優位は揺るがぬ!」

 

 森エルフ騎士達も陣形を整え、突撃をしようと構える。

 

「左右に避けなさい!」

 

 ヨフィリス子爵の声が聞こえてくるので、僕は反射的に飛び退く。

 黒エルフの兵士達も避けたのを確認した彼は、クラウチングスタートのように構えて、その後、一気に走り始め、細剣を突き出し、森エルフ騎士の陣形に突っ込んだ。

 

「アレは、細剣最上位SS《フラッシング・ペネトレイター》……!」

 

 僕がシンプル且つ、最強を突き詰めた細剣のSS。威力、範囲共に細剣最強のSSだ。

 それ相応の技後硬直も発生する。

 

「その首もらったぁ!」

 

 あのSSを喰らっても尚、生きている森エルフ騎士がヨフィリス子爵の首目掛けて剣を振り下ろす。

 

「させるかぁ!」

 

 キリトが、アニールブレードの刀身でその一撃をガードする。

 僕も加勢に行こうとするものの、森エルフ騎士が僕の前に立ちはだかる。おまけに、船を漕いでいる操舵手の森エルフも落ちている槍を拾って構えていた。

 

「邪魔だっ!」

 

 僕は盾で剣を受け止め、槍を剣で弾き、蹴りを入れて1人ずつ切りつけ、湖に殴り蹴り落とす。

 僕が苦戦している間、キリトが森エルフ騎士のリーダーらしき男のSS、シャープ・ネイルを受け止めていた。

 その最中、2撃目を受け止めた時、彼の剣から嫌な音が聞こえてきた。

 

 このままだとキリトの剣が折れる。

 僕は、すぐに森エルフ騎士達から離れ、高い所へ登り、メニューウィンドウを表示して、ストレージにあるアニールブレードをオブジェクト化させる。

 

 受け止め切ったキリトの剣が折れるのが見え、そのまま後方へとノックバックする。

 

「キリト! 使って!」

 

 僕は完全強化したアニールブレード+8(内訳はキリトの強化と同じもの)を投げる。

 

「助かる!」

 

 そのまま受け取ったキリトは鞘から剣を抜き、そのまま剣を振る。普段は一撃二撃で終わる筈の動きは続けて三撃、四撃まで繋がった。

 片手剣四連撃SS《ホリゾンタル・スクエア》だ。キリトの片手剣の熟練度か150に到達したのだ。

 

「キリト! 大丈夫!?」

 

「ああ。大丈夫だ! それに剣、ありがとうな」

 

 鞘に仕舞われ、折れた剣を握るキリト。

 

「いやいや、君にぶつからなくてよかったよ…」

 

 そんな心配があったが、無事キリトの勝利で、終わった。

 

「見事な戦いだったぞ、2人とも」

 

 キズメルが僕等を褒める。

 

「胸を張るといい。シュバルトは森エルフの襲撃を知らせ、劣勢だった戦いを立て直し、キリトは敵の指揮官を一対一の決闘で退けたのだから。そして何より、城に保管されている二つの秘鍵は無事に守られたのだから」

 

 すると、ヨフィリス子爵がキリトの元へ歩み寄る。

 

「お前の剣、惜しいことをしましたね」

 

「いえ、無茶な使い方をしたとは俺ですから……」

 

「剣のせいにしないのは良い剣士の証拠です。この状態であれば城の鍛冶屋に修復させることも可能ですが」

 

「うーん……いえ、この剣は溶かして、新しい剣か防具にします」

 

「であれば、我らヨフィリス子爵家伝来の品々を2つそなた達に、私からの心ばかりの謝礼として与えましょう。お好きなものを取りなさい」

 

「えっ、いや、そのっ……」

 

「ふ、2つもいいんですか?」

 

「無論。そなた達の仲間全員に与えましょう」

 

 なんと、エクストラ報酬だろうか。まさかの報酬2個という破格のリワードだ。

 すぐに皆へ報告する。

 流石に、報酬2つとは予想外すぎたのか、テリーとミトの2人が固まっている。

 僕はそろそろ新しい武器種が欲しかったので、両手槍と移動バフのついたブーツを、ユウキはSSの威力が上がるバフのついた胸当てと僕と同じブーツを、テリーはガード時の反動軽減バフのついたグローブとマジック効果付きのネックレスを、フィリアは収納量を増やすベルトポーチと麻痺、転倒耐性のバフがついたタイツを、ミトはユウキと同じ胸当てとブーツを、キリトは新しい片手剣と胸当てを、アスナはクリティカルボーナスのバフがある腕当てとブーツをもらった。

 

「ボクちょっと外に出てアルゴとメッセージのやり取りしてくるね」

 

 ユウキはそう言って駆け足で外へ出る。

 

「シュバルト、お前達はこの後、天柱の塔に登るのか?」

 

「ん? ああ。いつフロアボスのところまで行けるかわからないけどね」

 

「私たちは伝承でしか知りませんが、この層の守護獣は奇怪な力を使うと聞いています」

 

「なんですかそれは」

 

「名をヒッポカンプと言い、前半分が馬で、後ろ半分が魚の怪物です。どんなに乾いた土地も海に変えてしまう力を持っているとか」

 

 ヨフィリス子爵の言葉に続くようキズメルが話す。

 

「守護獣と戦う為には水に浮く為の手段が必要だと伝えられています」

 

 またもやエルフクエストでボスの情報を得てしまった。情けは人のためならずとはよく言うものだ。

 後ろから慌ててユウキが走ってくる。

 

「大変だよみんな! 攻略レイドが出発しちゃうって!」

 

「なにィ!?」

 

「誰だ、そんな強行したやつは」

 

「なんか、思ったより早くフロアボスの部屋まで到着して、ボスの偵察も出来ちゃったみたいで、最寄りの村で休憩だけしてさっさと攻略するのだ! って意見が出ちゃったみたいで……」

 

「誰がそんなアホなこと言い出したかは言わなくてもいいよ……」

 

 どうせドライア達だろう。

 

「ディアベル達はボクらを待とうって言ってたから、まだ待ってると思うけど、いつまで待つのかわからないし……」

 

 これは早急に向かった方が良さそうだ。

 キズメルに向き直り、

 

「キズメルごめん。僕達、急がないといけないみたいだ」

 

「もう少しゆっくりしていたかったけど、仲間が心配だから」

 

 そう伝える。

 だが、それを聞いた彼女は、なにを馬鹿なことをと言いたげに肩をすくめる。

 

「こういう時、人族は水臭いと言うのだろう? 私もついて行くさ、もちろん」

 

「「えっ」」

 

 更に僕達を驚かすセリフが続く。

 

「では私も行きましょう」

 

 なんと、ヨフィリス子爵も同行すると言ったのだ。

 

「「「「「「「えええええええーーーーーーーっ!?」」」」」」」

 

 更なる驚愕の事態に僕達は湖を震わすほどの叫び声を上げてしまった。

 

 

 

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