すまねぇ
そして今話は短いです。
シュバルトside
12月30日
ユウキ達とPvPの特訓をした翌日、フィリアが重大な情報を掴み、それをすぐに報告を受けたことで、さらに次の日に僕は再びディアベル達と話し合いを開かざるを得なくなってしまった。
キリト達にはエギル達アニキ軍団に、協力を頼めないかお願いしている。
「ディアベル……ごめんなさい」
「いや、これは流石に看過できないからな……」
「ホンマアイツらは……」
「……旗は兎も角、抜け駆けはなぁ」
彼らも流石に頭を抱えてしまった。
「どうする……?」
現在この場には、2ギルドのリーダー・サブリーダーが並び、情報を持って来たフィリアが座っている。
「フィリア、モルテと密談していた男の特徴って覚えてる?」
「えっと……甲高い声なのと、短剣がメイン武器なのくらいかな」
甲高い声に短剣使いか。
ボス攻略の時に大騒ぎしているあの男か?
「……すごく心当たりがあるんやが」
「ああ、俺もだ」
まぁ、特徴的な声だし、わかっちゃうよね。
「とは言え、糾弾するには確定的な証拠がない」
「そこだ。俺達は奴らを追い詰めるには何も持っていない」
「被害も大きくないのがな……」
被害が出なければ探偵も動かないように、奴らを牢屋に送る被害理由がない。
こちらに迷惑をかけているだけでは、理不尽だと言われて立場が危うくなる。
手詰まりだ。
「と言うか、JW全体があかん奴集団っちゅうんはないんやな?」
「うん。甲高い声の人が、アホって言ってたから」
「アホ……」
ドライアがアホと言われたことにキバオウが吹き出して笑った。
「ひとまず、抜け駆けの件をどうにかしないと」
先に案を出したのはリンドだった。
「俺達が先にフロアボスを倒すって言うのはどうだ? どうせ旗はいらない。抜け駆けは許さないだけで」
確かに、先回りしてフロアボスを倒せば、奴らもこう言った手を使うのを躊躇うようになるはずだ。
「せやけど、人数はどないするんや? あまり多人数で行動したら、気づかれてまうやろ。かと言って少なめの人数で行くんは危険や」
「そうなんだよ……βの5層のフロアボスってどう言うのなんだ?」
「確か、デカいゴーレムだ。迷宮区にもいるが、それの数倍の大きさのやつだったな」
「上手く壁役と攻撃役を回せばなんとか…ってところだね」
「……でも抜け駆けを防ぐのに、協力してくれる人っているの?」
「俺達は出るとして、7人」
「最低でも後10人は欲しいね……ボクはそう思う。役割を大きく分けてローテーションをしやすくすればデカブツ相手なら回せるはず」
ユウキが意見を言うのは初めてだ。彼女も、成長していると言うことか。
僕は上から目線で何を考えているのやら。
「エギル達が協力してくれたらな……キリトから連絡待ちか……」
「ウチからは4人だな。エギルさん達が参加してくれるのなら、タンクが2人、攻撃役、長物持ちが1人でバランスが取れる筈だ」
すると、キリトからメッセージが届いた。どうやら、エギル達の協力を得られたようだ。
「エギル達から協力を得られた報告が来た」
「おっし。メンバーを推薦しないとな……キバオウ、リンド。良さげな人員はいないか?」
2人は少し考えるが、こう言った話が上がることは予測していたのか、すぐにメンバーを告げる。
「青組からはシヴァタとハフナーを出そう」
「緑組からはリーテンとオコタンを出すで」
2人から、レベルと役割、基本装備の種類を確認する。
ハフナーが両手剣、重金属装備の攻撃役、シヴァタとリーテンが重金属装備の壁役、そしてオコタンが両手斧槍の中距離補助役。
エギル達は軽、重金装備且つ、両手武器の攻撃と壁役を両立したスタイル(1人は革防具)
重金装備が4人、軽金属が3人、革防具が1人。
リーテンのレベルが13と低めではあるが、装備かフルプレアーマーなので壁役としては問題ないだろう。
壁役は充分だが、
「これで15人か……」
後1人、遠隔攻撃ができる人が欲しい。
僕もチャクラムは持っているし、ミトも武器の特殊機構があるが、自分自身、手が回らなくなる、咄嗟に特殊機構を使えない可能性がある。それなら、純粋な遠隔攻撃役を連れて行く方が良い。
2層でチャクラムを渡した彼が何処にいるかだが。
「うーん」
「どうしたの?」
「いや、ネズハと連絡取れたらなって」
生憎、彼と連絡を取る為の方法がない。もし彼と同じ層にいるのならインスタント・メッセージが届くが、別の層にいるとしたら、フレンドメッセージを使わないと送ることが出来ない。
「ボク、彼とフレンド登録したから連絡できるよ?」
ユウキが彼とフレンド登録していたようだ。おそらく2層で体術スキルを手に入れる為のクエストの時に登録したのだろう。
「お、ナイス。彼に何処にいるか聞いてもらえる?」
「いいよ」
彼女は素早い手つきでキーボードを操作する。
「いま、地下墓地にいるって」
「じゃあ、主街区の墓地入り口で話すって伝えて」
「はーい」
「リンドとキバオウの選抜したメンバーとはテリーが先に顔合わせよろしく。僕はネズハに協力を頼めないか聞いてくる」
「お、おう」
僕は待ち合わせ場所まで走る。
遺跡の町の煉瓦の道は先日の雨の影響で濡れていたが、今日は乾いているので、滑るようなことはなく、スムーズに走ることができた。
「お、いたいた」
地下墓地の入り口にネズハがメニューを見て待っていた。
「待たせてごめんね、ネズハ。いや、ナタクかな?」
「ご無沙汰してます。お会い出来て嬉しいです! それとネズハでいいですよ。仲間達にもネズオって呼ばれてますし」
彼は、はにかんだように彼は笑いながら答えた。
「オルランド達は…?」
「みんなには先に戻ってもらってます」
「それは申し訳ないな。急な連絡だって言うのに」
「いえいえ、それでどうしたんですか?」
僕は周囲に誰もいないことを確認し、彼に要件を伝える。
「ネズハ、突然ですまないけど頼み事がある。かなり驚くことだから、叫ばないようにして」
「ええ、僕にできることなら、なんでも」
「よし、5層のフロアボスを倒しに行こう」
ネズハは、予想通り驚き、叫びそうになる自身の口を手で押さえる。
数十秒後、落ち着いた彼は、口から手を離して勢いよく息を吐き出す。
「ど、どういうことですか……!? フロアボス攻略は2つのギルドが主導しているんですよね、彼等の了承は……!?」
「実はね──」
僕はこれまでの経緯を説明する。
「なるほど……」
「という訳でね……無理なら断ってもらって構わない」
しかしネズハは、首を横にふる。
「その話、受けさせてもらいます。シュバルトさんに恩を返すチャンスなんですから」
「…ありがとうネズハ。それじゃあ明日の昼にまた」
僕は彼の手を握り、感謝の意を示した後、一度別れた。
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ユウキside
シュバルトがネズハとコンタクトをとっている間、ボク達はボス攻略に挑むメンバーと顔合わせをしていた。
「FWK青組所属のハフナーだ。よろしく頼む」
「同じく青組のシヴァタだ」
「緑組のオコタンです。よろしくお願いします」
「同じく緑組のリーテンです」
リンドとキバオウの2人の推薦で選ばれた4人と順番に握手を交わす。
「今回はこんな非常事態に協力していただいてありがとうございます」
「頭を上げてくれ、俺達もウチのリーダーから話を聞いて参加の意思を持って、この場に集まったんだ」
4人を代表してハフナーがそう言う。
「それじゃあ、日程は明日の昼13時。JWの連中よりも先にフロアボスを倒しに行く。質問がある人はいるか?」
ハフナーが手を挙げる。
「ディアベルさんからも聞いているが、旗は向こうさんにやるってのは知っちゃいるが、どうしてそれがわかったんだ?」
それに対してテリーが回答する。
「質問を質問で返すようで悪いが、まずハフナー達は今回の件はどこまで聞いてる?」
「連中の抜け駆けと旗の件だ」
「実はだな……」
テリーは昨日の夜の話をする。
「なるほど……それでわかったってことか…」
「俺としては連中のトップ層がどうなろうと知ったことではない。だが、下っ端で、純粋にギルドに加入した何も知らない奴が不幸を被ることを避けたい。それが俺の攻略の意思だ」
「つまり、みんな同じってことですね。であるなら、この攻略も達成不可能ではない筈です」
「ああ、奴らに好き勝手させてたまるか」
「シバの言う通りです。私も頑張ります!」
おう! と明日へのやる気を溢れさせるFWKの面々。とても頼もしい人達だ。ボクは心からそう思った。そして、彼等がモルテ達のように、スパイをしているとは思わなかった。
「それじゃあ今日はこれで解散だ。各々、しっかりと休息を取るように」
明日の攻略の為にボク達はこの場を離れた。
誰にも聞かれていないか周囲を見渡し、その場にいたフィリアにも聞き耳スキルで確認してもらう。
「いない?」
「大丈夫だよ」
「ならいい……」
「んじゃ戻るか」