SAO-絶剣と怪物狩り   作:小説大工の源三

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皆様あけましておめでとう御座います
今年も私こと、小説大工の源三をよろしくお願いします。


フロアがボス

シュバルトside

 

「総員! 回避! 上と下から攻撃が来る!」

 

 僕が叫ぶと、階段を登ってきた面々は焦るように回避行動を取る。やはりと言うべきか、反射的に行動したが為に、シヴァタとローバッカの2人の回避先が交錯し、接触してしまい、バランスを崩してその場に倒れてしまった。

 

「ぬああっ!?」

 

「うおおッ」

 

 おまけにターゲットにその2人が入ってしまっており、床から伸びてきた手が2人を最初のアルゴのように、高く持ち上げ、握り締められてしまう。

 

「シバっ!」

 

「ローバッカ!」

 

 二つの悲鳴が上がる。

 彼らのHPは並のプレイヤーよりは多いもので、HPの心配はないが、装備の耐久値だけは違う。握り締められてしまうと、アルゴのフードマントがあっさり破壊されたのを見るに、装備耐久値にダメージを与えるのだろう。

 

 2人を早く救出しなければならないが、混戦状態でSSを放てば同士討ちが発生してしまう。

 誰に指示を出すか迷っていると、ヘアバンドをつけた少女と目線が交差する。

 

「ユウキッ! 腕にアーク!」

 

「了解!」

 

 彼女は即座にバーチカル・アークで2人を握る腕を切りつける。

 ゴーレムの腕はダメージを受けた事により、握り締めていた手を開き、彼らを解放する。

 

「うわぁぁ!?」

 

「おわぁ!?」

 

 それなりの高さから2人が落ちて来るがそれをハフナーとリーテンが受け止める。

 

「もう撤退は無理ダ!」

 

 アルゴの言う通り、撤退するには階段付近の密集したラインを避けて動くことが難しい。その上ラインが動き始めている。

 であれば、安全地帯の壁に寄って一度落ち着くのが最優先だ。

 

「全員! 最寄りの壁際へと走ってくれ! エギル! 貴方は、ネズハの移動のサポートを!」

 

「わかった!」

 

 自分含めた、レイドメンバーが壁際に退避し、攻撃が止まったことを確認し、フロアボスの現時点で判明している情報を伝える。

 

「今のでわかったと思うが、ラインを踏まなければボスからの攻撃はない! その攻撃はターゲットサークルに狙われたプレイヤーへの、両手両足による攻撃だ! 手で掴まれると、HPと防具に対して耐久値を削ってくる! 足はストンピングによる押しつぶしと、そこから発生する衝撃波による攻撃に注意してくれ! 今わかっていることはこれで以上だ!」

 

「なら、こうしている間は攻撃はされることはないが、することもできないんだな?」

 

「ああ! 最初の作戦は使えなくなったけど、パターンさえ掴めば大きな被害は出ない筈だ!」

 

 レイドメンバーが頷く。

 

「フルレイドじゃなかったのが幸いだったな……少数精鋭で来たことで、なんとか静止できる……」

 

 テリーの言葉は最後まで続かなかった。

 フロアの天井から何かが現れる音が鳴る。楕円形の石の塊で、それにラインや窪みがあり、その並びは今まで倒してきたゴーレム系の顔だ。

 フロアボスの名前と僕とユウキがダメージを救出の為に与え、少しばかり減少したHPゲージが顕になる。

 

「【Fuscs the Vacant Colossus】……虚な…巨像…?」

 

「βと名前も全然違う…!」

 

 名前から行動の傾向を読み取る事は、第二層のフロアボスでテリーが見つけたものだ。

 奴の正体を名前の意味から想像する。

 

「巨像はゴーレムのこととは言え……虚?」

 

 僕が考えていると、コロッサスが吠える。

 ダメージこそなかったが、防御力ダウンのデバフアイコンがHPゲージの横に点灯する。

 咆哮がトリガーとなったのか、床のラインが動き始める。

 

「ユウキ! ミト! アルゴ! 今から僕がラインを踏んでボスの攻撃を誘発させる出てきたら手か足に攻撃してくれ!」

 

「わかった!」

 

「了解!」

 

「おいサ!」

 

 僕は前に走り、ラインのない広めの空間で止まる。そして右からこちらへ動いて来るラインを視認する。

 

「3、2、1……行くぞ!」

 

 わざとラインを踏んでボスの攻撃を誘う。僕の足元にターゲットサークルが出現するので、その場からすぐさま離れて、掴み攻撃を回避。

 その腕にSSを叩き込む。僕に続いてユウキ、ミト、アルゴの3人もSSを叩き込み、大きなダメージを与える。

 

「HPは……今のでゲージの2割か」

 

「……4人の攻撃でこれって…長期戦になりそうね」

 

 ミトの言う通り、このダメージ量、そして少数精鋭のレイドメンバー数。長期戦は避けられない。

 

「俺たちもやってみるぞ!」

 

 次にテリー達のパーティが僕の時と同じようにラインを踏んで回避からの攻撃を行う。

 

「喰らえ!」

 

「せやぁ!」

 

「はあっ!」

 

「そこっ!」

 

 同じように約2割ほど削る。

 

「慣れないうちは回避に専念してくれ! もしいけると判断したら数人で固まって誘発役と攻撃役に分かれて攻撃! ネズハは壁際で待機! さっきの咆哮が来そうになったらチャクラムで額の紋章を狙ってくれ! ミトは攻撃優先だけど、ネズハができない時は君の鎖鎌でボスの額を!」

 

「「「「了解!」」」」

 

 レイドメンバーも勇ましく答える。

 それからは両手持ち武器を持つメンバーの攻撃が僕らより大きなダメージを与えたり、ネズハのチャクラムによる妨害もあり、順調に攻略が進んでいく。

 流石攻略組精鋭と言うべきか。要領をすぐに掴み、誘発役も攻撃するくらいには余裕を持って回避出来るようになっていく。

 1本目、2本目、3本目のHPゲージが消滅していく。

 

「いい感じに削れてきてるね……」

 

「ああ、もう直ぐ半分になる」

 

 さらに攻撃を続けていき、遂にフロアボスのHPを半分手前まで削った。

 

「よし……全員、パターン変化注意!」

 

 僕がそう呼びかける。

 どんな変化が起きるかボスの顔や手足を見ている最中、壁際で戦っていたネズハが驚いた声を上げる。

 

「シュバルトさん! 壁が!」

 

 言われるままに、壁を見る。

 なんと、足元に走っているラインと同じような光が壁からも走り始める。

 

「おいおい…やばいんじゃないカ?」

 

「…このまま、ボス戦を続けるのは不味いかもね」

 

 ここまできて、撤退は惜しいが、深追いは禁物。作戦を練り直そう。

 

「一時撤退! ユウキ! 先導!」

 

「了解! みんなこっち!」

 

 ユウキを先頭に、レイドメンバーは階段へと向かう。

 僕は攻撃が来ないか、ラインを避けながら、辺りを見渡す。

 

「シュバルト! ボスの顔がないぞ!」

 

「は? 本当だ…!」

 

 テリーの指摘に僕は焦るように見上げる。

 視線の先にはあったはずの顔が消えていた。

 

「ど、どこに行ったんだ…!?」

 

 その時、僕の全身に細かい針で刺されたような悪寒が走る。何かやらかしてしまったような。そんな気分になる。

 ユウキ達撤退組に何か起きてしまうのではと、そう思って彼女達の方へ走ろうとした時だ。

 

「シバ!」

 

 リーテンの悲鳴が上がる。

 

「うわぁあ!?」

 

「危ない!」

 

 シヴァタが何者かに突き飛ばされ、床を転がる。

 

「うぐっ……!」

 

 数秒前まで階段があったはずの場所に、天井から消えていたフロアボスの顔が盛り上がっており、巨大な口に胸の部分まで咥え込まれたユウキの姿が飛び込んできた。

 

 何があった!? 階段はどこに!?

 

 前身が驚愕と焦りで凍り付いたように身体が固まる。ここが現実世界なら、ふらついて、しゃがみこんでしまっていただろう。

 

 筋肉(STR)自慢のメンバーが口を開こうと、ゴーレムの口に力を入れ、アスナとフィリアの2人がユウキを引っ張り出そうとしている。

 HPは大きく減ってはいないが、握り締め攻撃同様、防具に対してダメージを与えている。

 彼らの邪魔をさせないように、固まった身体を動かし、ラインを踏んで、攻撃を引きつける。

 

「階段が口になりやがった!」

 

 ゴーレムの口に手をかけてながらハフナーが叫ぶ。

 

「エギル! 額の紋章は!?」

 

 しかしチョコレート肌の巨漢は攻撃をする事はなかった。

 

「ダメだ! こいつに紋章が無ぇ!」

 

「「何ィ!?」」

 

 馬鹿な! ゴーレムであるなら中核である紋章が無くなるはずはない!

 

「腕や足が生えたり消えたり、なんたんだこのボスは…!」

 

 キリトが悪態を吐く。

 

「クソっ…! そう言うことか…!」

 

「どう言うことだシュバルト…!」

 

「虚な巨像……つまりこのフロア自体がボスなんだ!」

 

「魔法のゴーレムだからって、こんなの無茶苦茶だ!」

 

 テリーの叫びに重なるようにハフナーの絶望的な叫びが重なる。

 

「ダメだ! 外れない!」

 

 焦る最中、ユウキのチェストプレートがガリガリと悲鳴を上げている。いつ壊れてもおかしくはない。

 

 紋章を探すのか、それともユウキの延命の為に行動するか、どちらを優先すべきか悩んでいると、何かが砕ける音と共に、ユウキの悲鳴が聞こえて来る。遂に彼女のチェストプレートが破壊されてしまったのだ。

 それが僕の焦りを早くする。

 

「ユウキ!」

 

 居ても立っても居られず、僕はユウキのもとまで走る。

 ラインを確認する事もせずに走る。ターゲットサークルが現れ、行手を阻むように手足が現れる。

 

 その時だった。

 その悲鳴の後に再び何か、固いものが挟まるような音が聞こえてきた。

 

「他にも誰かいるのか…!?」

 

 何者かが現れたのだった。

 

─────────────────────────

 

ユウキside

 

 やらかした。

 シヴァタさんを助けたはいいけど、ボク自身が捕まってしまった。

 いま、レイドメンバー全員がボクを救出する為に奔走している。

 ボクのチェストプレートをボスの口が破壊する。このまま身体をハサミギロチンのように両断される、その時だった。

 

 口の間に何かを突き立て、これ以上閉じないようにする、プレイヤーが下から現れた。

 

「っと……大分やばいみたいだな……」

 

「き、君は…?」

 

「名もなき一市民だ」

 

 そう言って、男の子のプレイヤーが下から手を伸ばして、ゴーレムの口に手をかけ、そのまま登って来る。

 シュバルトとはまた違った癖っ毛。猫っ毛とでも言うのだろうか、そんなふわふわした髪質の少年プレイヤーが現れた。

 

「シュバルト! お前んとこのお姫様はまだ大丈夫だ! 早くこの状況をどうにか出来る方法を模索しろ!」

 

 そう叫び、彼に発破をかけた。

 

「スノーベル…!? いや、なんで…? わかった!」

 

 どうやら彼がシュバルトとテリーの友人のようだ。第三層、第四層と情報の手助けをしてくれていた、フリーの情報屋だ。

 

「あいつなら、大丈夫だな……」

 

 そう言う彼は確信めいた表情でボスの口に2本目の金属の棒を挟むのだった。

 

─────────────────────────

 

シュバルトside

 

 スノーベルが来てくれたなんて……

 

 予想外の助っ人に僕は、困惑と喜びを感じつつも、ユウキを助ける為に、どうするか思考を続ける。

 ゴーレムの紋章。あれは、必ずどこかにある。

 

 しかし、だ。

 ゲームのギミックとして考えるのであれば、床や壁に紋章が移動している事は考え難い。

 なら、何処に紋章があるのか。それは自ずと見えて来る。

 

「テリー、ミト、キリト、ネズハ、アルゴ! ラインを踏んで手足を出してくれ! その何処かに弱点の紋章があるはずだ!」

 

「任せろ!」

 

「了解!」

 

「おう!」

 

「やってみます!」

 

「わかっタ!」

 

 名前を呼んだメンバーは散開し、ラインを踏み、攻撃の為に現れる手足に描かれているラインを確認する。

 

「見つからない!」

 

「こっちもだ!」

 

「もう一度だ!」

 

 早く見つけないとユウキの命が危ない…!

 

 2度目のトライ。自分のところに落ちてきた足には紋章は見つからなかった。

 

「ありましたああああ!」

 

 ネズハの叫び声が響く。

 彼の前の足に紋章が見つかったようだ。

 しかし彼は衝撃波を躱す為にジャンプをしたは良いものの、紋章に気を取られていたせいか、着地に失敗してしまい、転倒(タンブル)状態になってしまう。

 

「ネズハ!」

 

「俺は大丈夫です! 紋章を!」

 

 ミトに鎖鎌で攻撃して貰うことも考えたが、今彼女は紋章のある足と正反対の位置にあり、いくら射程や追尾性能があったとしても間に合わない。

 次に取れる手段は近場のプレイヤーが近接攻撃で叩くしかない。

 近くにいたキリトがいの1番に駆ける。それに追従するように僕は盾を捨てて走る。

 キリトがソニックリープを放とうとしたのを確認する。

 

 無理だ。届きそうにない。なら取れる方法は一つ。

 

 僕は第三層で黒い三◯星のような森エルフと相対した時のことを思い出す。

 

 取れる手段はそれしか無いッ!

 

 いつのまにか隣を走り、同じ行動を取ろうとしているアルゴに気づかず、同時に飛びながら叫ぶ。

 

「「肩を借りるぞキリト!/頭を下げろキー坊!」」

 

 僕はキリトが使おうとしていたソニックリープを、アルゴは同じ突進系のSS《アキュート・ヴォールト》を使い、キリトの両肩を踏み台にして紋章目掛けて飛翔する。

 

「「届けぇぇえ!/当たれぇぇえ!」」

 

 僕らの斬撃が命中する。

 紋章には僕の\とアルゴの///が交差するように刻まれていた。

 後方では重低音のゴーレムの叫び声が響いていた。

 

 音の圧力に押されたようにユウキが宙へ吐き出される。

 空中で姿勢を直した彼女はそのまま地面に着地する。

 

「ユウキッ!」

 

 地面に着地し、壊れたチェストプレートとは別のチェストプレートを装備する彼女に駆け寄る。

 

「大丈夫かいッ!?」

 

「シュバルト…! 平気だよ。彼のお陰もあるから」

 

 僕から床に捨て置いた盾を持ちながら近寄る少年プレイヤーをユウキは指差す。

 

「よっ。なんか厄介事になってるみたいだな」

 

「スノーベル……助かったよ」

 

「ああ〜その、なんだ。ここまで来ちゃった訳なんだが……パーティ加入させてもらって良いか?」

 

 切り出し方に困ったように彼はそう言う。

 

「それは勿論だよ」

 

 僕は彼にパーティ申請を送り、彼がそれを受け、パーティに加入する。

 

「んじゃ俺は何をしたら良い?」

 

「サポートお願いするよ」

 

「了解。レイドリーダー」

 

 スノーベルの加入により、フロアボス戦は佳境へと突入した。

 

 

 





シュバルト
レイドリーダーとして、ディアベルの代わりに指揮を取る。
上手く指揮を取れているかわからないが、確実に失敗したと考えている。
ユウキを、レイドメンバーを危険に晒したことは、確実に失敗だ。
これからそれをどう乗り越えるか。

ユウキ
危ない橋を渡った。
タンクでも無いのに、あんな無茶をしたら死んでまうて。
今章では映画プログレッシブのアスナの立ち位置になっている

スノーベル
今章ではミトの立ち位置を少しばかり担った。
どうしてここに来たのか。目的はわからない。だが友人のシュバルト、テリーを裏切る事はしないはず。




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