配分絶対間違えてる。
シュバルトside
スノーベルが急参戦でユウキの救出を手伝うだけでなく、ボス攻略にまで手を貸してくれることとなった。
「サポートと言ってもどうしたらいい? 見ての通り俺は戦力としてカウントできねぇぞ?」
「僕としてはその短剣の詳細が聞きたいけどね……」
スノーベルが持つ武器。2本の短剣の柄尻に長い縄を通して繋げた特殊な武器だ。
何処でそんなのを手に入れたんだろうと、気になるもののそれは後だ。
「とりあえず君はネズハと同じ役割……紋章を潰して」
「オーライ……任された」
スノーベルはネズハと反対の位置へ走っていった。
ボスの頭の位置をしっかりと確認しながら、先ほどと同じように、ラインを踏み、手足を出して攻撃していく。
前と違うとすれば、紋章が手足のラインを走っていることだろうが、こちらには、
「ネズハこっち頼む!」
「はい!」
「スノーベル! こっちよろしく!」
「おう……っ!」
遠隔攻撃持ちの2人が駆け巡る紋章を的確に潰していく。
とは言え、紋章が移動するものだから顔から放たれるデバフボイスを止めきれずに喰らってしまい、ボスの攻撃を避けきれずに捕まってしまったり、衝撃波による麻痺を貰ってしまう者もいた。
だが、数人で組んで動いていることで、危険域にHPが減る事はなかった。
「順調だな…!」
「これ以上初見殺しが無いといいけど……っと!」
上から落ちてくる足の緑色の衝撃を跳んで回避する。
「そろそろ残り2本か……」
「変化は……なさそうだね」
まだ変化はしないようで安心したが、最終ゲージになった途端、大きな変化があると考えた。
上からの足の踏みつけ攻撃を回避する。丁度よく、目の前に弱点の紋章が通った。
「ラッキー……オラァ!」
僕は既に溜められている、剣撃エネルギーで高出力解放斬りをぶちかます。
『ヴォォォォォオ!?』
相当効いたのか、天井のゴーレムのから、悲鳴のような野太い雄叫びを上げる。HPも4割強削り結構効いたと判断する。剣撃エネルギーを全て消費して、ボス相手に与えたダメージとしては上々だ。
しかも今の一撃がこたえたのか、足が戻らないままになっていた。
「みんな! この足を袋叩きにするぞ!」
動けなくなった足にレイドメンバーが集まり、総攻撃を始める。
両手持ち武器の重たい一撃が、片手持ち武器の鋭い一撃が痺れた足を襲う。
フルアタックの上、オコタンの長物のリーチが高い位置にあった紋章に当たり。それを喰らったら、流石にフロアボスとは言えどHPゲージを削り切りられ、最終ゲージへと突入した。
「ラストゲージ突入! ポーション足りない人いたら、教えてくれ!」
「ちっと危ねぇ!」
「わしもじゃ!」
ハフナーとウルフギャングが申告したので、僕は回復ポーションが6本ほど入ったポーチを実体化させて2人に手渡す。その間にフロア全体を走っていたラインがこれまでとは違う動きを始める。
「シュバルト壁のラインも!」
ミトが叫ぶ。
「なにが起きる……」
青くらい部屋が徐々に赤系統の色へと変化していく。
ラインが天井へ集まる。その中心が土煙のようにモヤがかかる。そこからボスの顔が再び現れたと思えば、その横からさっきまで攻撃してきた手が現れ、胴体も現れる。
「全員! 後退!」
流石に不味いと思い下がるように叫ぶ。
ゴーレムがついにその全容を露わにする。
「で、でっかぁ……」
「す、すごく…大きいです…」
今まで戦ったゴーレムmobよりも遥かに大きく、このボスフロアがかなりの大きさだと言うのに、このゴーレムは直立することもできず、腰を低くし軽く屈んだ状態でこちらを見下ろしていた。
「人型なら最初の作戦が使える! A隊、ブロック! B、C隊はヘイト管理でアタック! 最後の1本全力で削るぞ!」
「「「「「応!!!」」」」」
雷鳴のような勇ましい声で皆が答える。
それに反応したのかゴーレムがその巨体を動かして、こちらへ襲いかかってきた。
掬い上げるように巨大な拳が迫り来る。
それを盾持ちタンクのシヴァタとリーテンが前に出てその拳を盾で受け止める。
ガキン!と大きな音と共にギャリギャリと擦れる音が響く。
「「オォォォオ!」」
2人は勇ましい声と共にその拳を上に逸らす。
「今だ! 突っ込め!」
エギルが2人の後ろから斧を振りかぶりながら突撃する。両手斧単発SS《ディバークル》、ナイジャンの両手鎚単発SS《ダウンスパイク》、ハフナーとウルフギャングの両手剣SS《カタラクト》と《サイクロン》が炸裂。
「アスナ! 俺達もやるぞ!」
「うん!」
「防御力の弱そうなところを探そう!」
「良いわね。アキレス腱とか小指とかね!」
キリトが踵付近にバーチカル・アークをアスナが小指の付け根付近に細剣SS《ダイアゴナル・スティング》を喰らわせる。
「こっちもやってみるか!」
「膝裏とか内腿とか痛そうだよね!」
2人に触発されたテリーとフィリアも痛そうな部位を狙う。
テリーが膝裏にシャープ・ネイルをフィリアが短剣SS3連撃《スロート・ステップ》を放つ。
「効いてる…!」
「半分切った!」
そんな中、壁の出っ張りを走る者が1人。
「ここからなラ!」
アルゴだ。額の紋章目掛けて斬りかかろうと飛びかかろうとした時だった。ゴーレムの顔が彼女の方に向き、その目を赤く輝かせる。
「ヤバっ!」
危機を感じ取った彼女は攻撃の構えを解き、身を翻して攻撃の狙いから外れようとする。
しかし、ゴーレムの目から熱線が放たれる。
「アルゴ!」
「任せて! フッ!」
ミトの鎖鎌がゴーレムの目線とアルゴを離すようにぶつかる。
初撃こそ当たりはしたものの、熱線は彼女から逸れ、それ以上のダメージを喰らう事はなかった。
「フィー…危なかっタァ……シュバルトがくれたマントがなかったら大火傷だったヨ」
「渡しておいてよかったよ」
「それと、上から確認したケド。紋章は動いていないみたいダ」
なるほど、なら積極的に狙っていくか?
そう考えていると、隣に立つユウキが良いことを思いついたのか、肩を叩く。
「なら、下で注意を引いて貰いながら、アルゴみたいに壁の上から攻撃するってのはどう?」
「グッドアイディアだ。それで行こう」
「みんなに伝えてくるわ」
ミトが前線で戦うメンバーへ作戦を伝える。
「それで、誰が壁を登るんダ?」
「僕とユウキで行こう。それで良い?」
その問いに彼女は、目を大きく目を見開く。
「うん…! ボクやるよ!」
力強く答えた。
「なら決まりだな。その盾重いだろ。仕舞っとけよ?」
後ろからスノーベルが声をかけてくる。
「スノーベル……そうだね」
僕はストレージに盾だけを仕舞う。その前にしっかりと剣撃エネルギーは一度チャージしているので、オーバーヒートして、弾かれる心配はない。
「んじゃ、俺はネズハくんと端から妨害に徹させてもらう」
そう言って彼はネズハの隣へと走っていった。
「よし……行くぞ!」
「うん!」
熱線が僕達へと襲いかかる。
「させない!」
再びシヴァタとリーテンがゴーレムの前に出てその熱線を防ぐ。
「額の紋章を!」
「ああ!」
「任せて!」
僕とユウキは走り、ゴーレムの攻撃を誘発させ、叩きつけ攻撃を躱し、その腕を駆け上がる。
それに気づいたゴーレムが僕等を払い落とそうと腕を動かす。
「ユウキ!」
「シュバルト!」
その手を避けるために大ジャンプ。そして両足を合わせて、互いを足場にして、フロアの壁まで跳ぶ。
そしてミトが注意を引く為に腕を登る。
「デカブツ! こっちを見なさい!」
ミトの声が聞こえたのか、ゴーレムが彼女を睨みつける。
熱線攻撃を何度もこの戦闘で目にしてきたので、すぐに飛び退く。そしてそのままゴーレムの鼻頭目掛けて根本をぶつける。
「シュバルト! ユウキ! 最後は派手に決めちゃって!」
「「ああ!/うん!」」
怯んだゴーレムの頭へとジャンプをする。
ユウキの瞳と僕の視線が交差する。
互いに何をするのか、何を使うのかがわかった気がする。
僕が上段に剣をユウキが横水平に剣を構え、同時に剣を振るう。
一撃、二撃、三撃と互いの剣がぶつかる事なく、その連撃を額の紋章へと与える。
そして最後の四撃目を振るう。
「「これで終わりだぁぁぁぁあ!」」
剣がゴーレムの顔に突き刺さる。自身の死を拒むように、刃が進まない。
「はぁぁぁぁあ!」
「やぁぁぁぁあ!」
剣を進めようと僕等の叫びがフロア中にこだまする。僅かにだが、剣が動く。そのまま腕を動かし、ゴーレムの顔面を十字に切り裂く。
練習なし、1発本番で僕とユウキによるソリッド・スクウェアが決まった。
HPを削り切られたゴーレムは絶命の悲鳴を上げ、破裂しポリゴン片が部屋中に散っていった。
12月31日、17:38。フスクス・ザ・ヴェイカイント・コロッサスは急造精鋭攻略レイドによって討伐されたのだった。
─────────────────────────
倒した。非常事態が起きたが、誰1人欠ける事なく、フロアボスを倒すことができた。
良かった。
ユウキが喰われた時はどうなるかと思ったが、生きていてよかった。
「シュバルトー!」
攻撃を隣で決めたユウキが、感極まったのか、抱きついてくる。
僕は彼女をしっかりと受け止める。
別の場所ではシヴァタがフルプレ状態のリーテンを嬉しそうに抱き抱えていた。
「やったね!」
「うん」
「シュバルトが指揮を取ったからここまでやれたんだよ!」
僕の指示ミスで死にかけた筈の彼女は、なんてことないように笑って言う。
「そうかな……そうだといいな……」
そんな自信は持てないが、ユウキがそう言うのならそうなのだと思いたい。
僕は抱えている彼女を下ろして、アイテムストレージを確認する。ボスからのドロップ品、そしてLAB(後日わかったことだが、ユウキにもこれが手に入っていた)を見たが、目的のアイテムは自分のストレージには入っていなかった。
「どうしたのシュバルト?」
「ユウキ、君のストレージにフラッグは入ってる?」
「ちょっと待ってね………ううん。ボクの所には入ってないよ。シュバルトは?」
「僕もない」
僕はここにいるレイドメンバーに聞くことにした。
「みんな! 喜んでいる所、申し訳ないんだけど、ギルドフラッグがドロップしてないか、確認してくれないかな?」
レイドメンバーは次々とストレージを確認する。
「俺の所にはないぞ」
「オイラも手に入ってないゾ」
テリーとアルゴも手に入れてないようだ。次々と未所持報告が上がる最中、1人だけが違う報告をする。
「フラッグってこれか…?」
なんとドロップしていたのは途中参加のスノーベルだった。彼は自身のストレージから実体化した白い旗を地面に突き立て、こちらに見せる。
「それだ!」
彼はそのまま旗を僕に手渡す。
「俺には無用の物だからな。シュバルトがそれをどうするかは知らんが、やるよ」
そう言って彼はフロアボスの部屋から上層へ続く階段のある扉へ歩いて行った。
「スノーベル! ありがとう!」
感謝の言葉を叫ぶ。彼はそれに対して、手をぷらぷら振るだけだが、答えてくれた。
「さてと……そろそろJWの奴らも来るだろうし……これは僕が渡しておくよ。みんなは先に帰ってて」
「良いのか? 俺達がいた方が良いと思うぞ?」
「人数揃えて待つのも良いけど、そこまで長話するわけじゃない。先に戻って、カウントダウンパーティーの準備をしててよ」
「わ、わかった」
シヴァタはそう納得して、レイドメンバーと共に上のは層へと上り、その先の転移門から五層の主街区へ戻るのだった。
ユウキだけが隣にいるままだが。
「行かなくて良いの?」
「ボクはシュバルトと戻りたいから良いの。それにこの後来る、JWと話す為に残ったんでしょ?」
「ありゃりゃ。バレてたのか」
「それは当然だよ」
「そっか……」
数分ほど待っていると、下から大人数で階段を登ってくる足音が聞こえてきた。どうやらJWのレイドパーティが到着したようだ。
「な、ビーター!?」
レイドパーティの1人が驚いた声を上げる。
「やぁ」
「ふ、フロアボスは…!?」
「もう倒したよ」
「な、なんだと……!?」
1人のプレイヤーがそう言う。
まあ抜け駆けしようとしたら、先にボスを倒されていたのなら自分達が抜け駆けされたのなら、そんな反応になるだろうね。
すると1人のプレイヤーが前に出て口を開いた。
「……それはそうと、ボスのドロップ品のフラッグはどうしたんだ」
「ドロップしたよ」
僕はスノーベルから預かったフラッグを実体化させる。
「フラグ・オブ・ヴァラーちゃんとここにある」
「それをどうするつもりだ」
「これは君達に渡すつもりだよ」
「は?」
誰かはわからないが、1人が間抜けな声を漏らす。
「君達がこれを欲しいのは知っている。抜け駆けするほどって言うのもね」
「ど、どこで知ったんだよ!」
「それは答えられない」
それに対して不満の声が次々と上がる。そして遂にJWのギルドリーダーである、ドライアが動いた。
「……まさか貴様。旗だけ渡してそれで終わりだと言うのか?」
「僕はそのつもりでいる。これ以上、君達に譲渡する物はないよ」
「やはり貴様は卑怯者のビーターだな…!」
「……」
ドライアは更に前に出て、更なる要求をする。
「貴様がボス戦で得たcolの8割も寄越して貰おう」
それが当然だと、目の前の男は言った。
「これでも有情だと思え。本来ならば、貴様が手に入れたアイテム、col全てを寄越して貰うのだからな」
フン、と男はこちらを見下すように、先程言った物を寄越すように、手を伸ばした。
「良いよ。ほら」
僕はトレード画面を表示して、ドライアへ旗と攻略報酬であるcolの8割を渡す。それを受け取った彼は一度頷く。
「……確かに受け取った。では我々は一足先に五層の主街区へ戻らせて貰おう」
「なら、階段先にある転移門から行くと良いよ。ここから歩いて戻るよりは早い」
「そうか」
そう言ってドライアは、レイドメンバーを率いて、そのまま階段へと向かって行った。
その移動中、ブラブラと歩くプレイヤーが口々に「またビーターの良いところ取りかよ」、「そんなに独り占めがしたいのかよ」、「卑怯者がよ……いつか痛い目に合えばいいさ」と言うのだった。
今日手伝ってくれたメンバーの大半にすら、明かしていないモノがあるのだ。悪く言われてしまうのは仕方がないし、当然だろう。
彼等の姿が見えなくなるのを確認した僕は大きく息を吐いた。
流石に今回は気疲れした。ユウキ達、ギルドメンバーにやっかみをかけられることにならなくて良かった。
みんなからもcolを寄越せなんて言われたらどうしようかと。
僕だけが物を取られるのなら、いくらでもくれてやるつもりだ。
「さて、僕達も戻ろっ……か…? ゆ、ユウキ?」
振り向いた先で僕が目にしたのは、涙が流れている彼女の頬だった。
「なんで……こんなの……あんまりだよ…!」
光の当てられた黒曜石のように煌く瞳から流れる涙は止まらず、ぽたりぽたりと石床に落ちて、シミを作る。
そんな彼女を見て僕は何事かと、焦る。
「なんで君があそこまで言われなきゃいけないの……この世界に閉じ込められているプレイヤーの為に戦って、奔走して……命を落とすかもしれないのにずっと戦って…! ずっと重い責任まで背負っているのに……!」
なぜ泣いているのかわからないでいるまま、ユウキの声は止まらない。
「おかしいよ…! βテスターが嫌いだって理由だけで、シュバルト達を排斥しようとして、勝手な行動をして、毎日来る日も、君が精神すらすり減らしてまで集めた情報を利用しているのに……それなのに、あんな風に、悪く言われるのは絶対に間違いだよ…!」
ああ、彼女は僕なんかの為に涙を流しているのか。
理解がいったが、反応に遅れてしまう。
だが、黙っているのは流石に悪い。
「……僕は別に誰かに讃えて欲しいとか、そんなことでここにいるんじゃないよ、それに責任に関しては開発者としての当然のものだし、のうのうとはじまりの街で留まらないでいたのは、言わば無責任だと言われない為だよ」
僕は泣きじゃくるユウキの頭に手をポンと乗せる。
「だから君が、僕の為に涙を流す必要はないんだ」
僕がそう言った、すぐさま彼女は肩を掴み、こちらの瞳を見てくしゃくしゃの顔のまま言う。
「ボクが泣くのは、他の誰でもない、ボクが決める事だよ……!」
そう言って、ユウキは涙を袖で拭い、潤んだ瞳のまま、穏やかに笑いながら言う。
「…なら、ボクがシュバルトを褒める。君がボクにして欲しいこと、なんでも言って…?」
「ああ、いや、別に何かするなんて……そう言ってくれるだけで良いよ」
「なら、勝手に決めるね」
ユウキは肩を掴んだ手に力を入れて、僕をしゃがませようとする。僕はそれに従うほかなく。膝を折り曲げるしかなかった。
しゃがんだのを確認すると、装備していたチェストプレートを解除して、僕の頭を軽く抱擁する。そして、泣いている子供をあやす様にゆっくりと、優しく、落ち着かせるように、髪を何度も撫でる。柔らかい手のひらと、布越しとは言え、暖かい体温が僕の中の何かを少しだが、解かしていく気がした。
こんな風に頭を撫でられたのはいつぶりだろうか。家族が殺されて、師匠に引き取られてから、一度もない気がする。
「お疲れ様でした……今日はゆっくり休もうね」
労りの言葉を彼女は僕にかける。
その聖母の様な優しさに、僕はいつの間にか流していた涙に気づくことはなかった。
─────────────────────────
あの後どれくらいユウキに撫でられたのか覚えていないが、満足した彼女に手を引かれて、五層の主街区にまで戻り、カウントダウンパーティに参加し、飲みの物を取り寄せ、ギルドメンバーで集まり、新年のカウントダウンを始める。
「10! 9! 8! 7! 6! 5! 4! 3! 2! 1!」
そして年が明ける。
「ゼローー!」
壁に空撃ちされたSSの色とりどりのエフェクトと、夜空に打ち上げれられた花火によってカルルインは眩く輝いた。
「あけまして……」
「「「「「おめでとうーー!」」」」」
かちんとグラスを合わせ、中に入っているドリンクを飲む。
「無事に新年を迎えられてよかったな」
「ねー……抜け駆け作戦があるなんて知った日にはどうなるかと思ったよ」
フィリアがやれやれと肩をすくませながら、そう言う。
「あの花火どこで手に入れたんだ?」
「はじまりの街のすみっこにある、怪しい店で売ってたみたいよ」
「へー…モンスターに「残念だけど圏外じゃ使えないわよ」ソウデスカー」
風情がないなキリト…花より団子かな?
「さてと……飲み物取ってくるよ僕」
椅子から立ち上がり、下の階へ向かう。
「待ってボクも行く!」
その後ろを、ユウキが追ってくる。
暗い通路を2人で歩く。カツンカツンと、足音が反響する。
「次何飲む?」
「見てからかなあ…」
そんな話をしている中、嫌な気配を感じとる。いつか襲われた時にみたいな、粘っこいくて、ドス黒い悪意の様なものが、後ろから着いてくる気がして、咄嗟に後ろを振り向く。
「シュバルト…?」
「いや、なんでもない」
そう言って前に向き直り、走る。
再び同じ様な悪意を感じ取り、振り向く。カンテラの灯りを回しながら見渡すも、プレイヤーの姿などは見当たらない。
「……?」
前を向いたその時だった。
「It's show time……」
ゾクリと背筋が凍る。
「……誰だ」
背中に尖ったものが当てられる。
「おぉっとぉ…暴れるなよぉ? 少しでも怪しい動きをしたら、ナイフでズブリだぜぇ…?」
突如現れた男が耳の近くで脅すように、語りかける。
「ここは圏内だ。ダメージは与えられないぞ」
「おいおい、しっかりしてくれよ……ハンターさんよぉ。圏内は城の前庭までで、城内はダンジョン扱いだぜぇ?」
確かにカルルインは圏内外がわかりづらいが…まさか見落としたのか?
「現実ならいざ知らず、仮想世界じゃ大したダメージも入らないよ」
「いいねぇ威勢が良くて。確かに、ちゃちなナイフじゃ……だがもしこいつにレベル5の麻痺毒とダメージ毒が塗られている……なら話は違うだろう?」
「は?」
今作れる毒はレベル1までのはずだ。だが、それはβまで。製品版で変わってしまっているのかもしれない。
「目的は何?」
「そりゃ簡単だ。面白いからだよ」
ヒヒヒッと笑う謎の男。
「面白いだって…?」
「そうさ、嬢ちゃん。こんな
「そうかお前がモルテ達の元締めか…!」
「流石に気づくよなぁ…? んじゃ早速だが、地下室へ行こうぜ? 殺人鬼が人を殺す場所と言えば地下室って相場が決まっているだろぉ?」
愉快に笑いながら言う。
凍った背筋が震える。だが、確信を得て僕は行動をとる。
視線でユウキに何をするか伝える。
「わかった。お前の言う事を聞く」
「よーし。んじゃ早いとこ移動しちまおうぜ」
僕は一歩前に出たと同時に、後ろへステップを踏む。
ガキリと、硬いもの同士がぶつかる音が鳴る。
やはり、圏外は嘘か!
僕は腰に帯刀しているローズダガーを抜刀。そのまま突進系SSベーシックバイトで突撃。圏内によるアンチクリミナルコードに弾かれるものの男と距離を離す。
「ユウキッ!」
「うん!」
追撃にユウキが剣を構える。
「ハッハァッ!」
男は笑いながら拳大の球体を転がす。それが床に落ち、割れると同時に煙幕が僕等を包む。
それに怯まずユウキはソニックリープを放つも、煙の先に当てたのは石柱だった。
そんな僕らを嘲笑うように、奴は「また会おうぜ。ハンターさん!」と言ってこの空間から、姿を消してしまった。
「逃げられたか……」
「今のどっちだったんだろう……?」
「声にエフェクトがあった、おそらくだけど、眼帯マスクの方だと思う」
「……そっか」
祝いの雰囲気の中、暗い未来を感じずにはいられなかった。
第五層、完!
ユウキがシュバルト君を撫でるシーンに挿絵が欲しくなる。
誰か〜シュバルト君を撫でるユウキを描いてくれ〜
それかわしに画力を、恵んでくだされよ〜
スノーベルの短剣。
おそらく物作り系スキルで作った縄で短剣2本を繋げたもの(イメージとしては鬼滅の宇髄天元の日輪刀の小型バージョン)
普通に使うなんてこんなん困難である。
シュバルト
初めてのレイドリーダーを務め切った。
2度とこんなことはしたくない模様。
その後、JWの自分勝手な物言いに諦めをつけて、受け入れていた。
ユウキを泣かせてしまったことに後悔しつつも、今後どうしたら泣かせずにできるか考えている。
ユウキ
JWのレイドメンバーに悪し様に言われるシュバルトを見て、耐えきれなくなったのか、泣いてしまった。
シュバルト君を癒す為にできる事をしようと、彼を撫でた。
これは聖母ですね。間違いない。
眼帯マスク男
モルテ達の元締めの1人。
シュバルト君とユウキに接触。
誰ぇ? 誰なの!?