シュバルトside
4人の新たなメンバーを迎えた、我らが龍歴院。その4人を面接していない面々に紹介する。
「というわけで、ウチのギルドに彼ら4人が加わった。戦い方とかの把握もしたいから、これからフィールドで狩りでるよ。情報を集めるのも兼ねてね」
そういうわけで、僕達はフィールドに出て、少し格上の敵mobと戦うっている。
1時間ほど狩りを続けて分かったことだが、ノーチラスは動きに固いところがあるものの、堅実さがあり、危ない場面はほとんどなかった。未知の、敵mobと相対する際には、彼のような硬い守りは必要になる。次にリクは、メンバーとの連携で別の人に繋ぐ際に発生する、僅かな隙を埋める動きが上手い。どうしても入れ替わりのタイミングは無防備にならざるをえない。そのタイミングで、敵mobの動きを牽制できるのは、地味ながらもとてもありがたい。そしてジーク。彼は敵mobの動きをしっかりと観察し、決定的な隙を見つけ、そこに大きな一撃を叩き込む。ノーチラス同様に堅実だが、両手剣の一撃の重さは攻め寄りの立ち回りで違いを出している。最後にソーキだ。彼は感覚の思うままに動いている。それでいながら連携に支障をきたすどころか、最善の動きをするのだ。更に攻めの嗅覚が鋭いのか、完全な隙がないはずだというのに、彼の一撃で怯みが発生し、そのまま連続SSを使い、大きく削りを入れる。
新戦力は、期待以上の実力だった。そんな彼らがウチに加入してくれたことは、本当に幸運だったのだろう。
最近では、血盟騎士団という新たな攻略ギルドが現れて、そっちにも下の層から上がってきたプレイヤーが加入していったのもある。人材ガチャは人数でやるものだ。そして今回、4回回して全てSSRだったのだ。
「うーむ……みんな優秀すぎて、逆に困ったな」
改善することを強いて言うレベルのものだが、ノーチラスは動きの硬さの改善、リクは連撃の繋ぎだけでなく、自身でも攻めに入るタイミングを見つける、ジークは積極的な攻めをする、反対にソーキは落ち着いて攻めることを、戦闘に取り入れることができればさらにステップアップできるだろう。
改善点を聞かれてしまったので、僕はそのまま彼らに伝えた。
「ほれみろ! お前は落ち着きがないんだよ!」
「そう言うお前は、積極的にだろうが!」
と、スノーベルから言われたように喧嘩を始めたので、僕は視線を動かして収まるまで放置する事にした。
「それはそれとして……!」
僕は誰もいない方に振り向きながら、ポツンと置かれている岩を見る。
「そこに隠れてる人。出てきてくれるかな?」
僕が指を刺しながらそう告げると、岩陰から薄茶色の髪の少女がひょっこり出てきた。
「バレないと思ったんだけどなぁ〜…なんでわかったの?」
「なんとなくだね。それに視線が通り過ぎる? みたいな感じもあったし」
なんかこう、僕の近くか僕の向こうにいる何かを見ていた気がした。上手く説明したできないが、透明な線が僕の身体を掠めている、感じがしたのだ。
「それで君は何者かな?」
その問いに答える前に、ノーチラスが声を上げた。
「ユ、ユナ…!? な、なんでここに!?」
どうやらノーチラスの知り合いのようだ。
「ノーくんは相変わらずだね。ずっと後ろにいたのに、全然気づいてくれないんだもん」
かなり親しげのようだ。リアルでも交友があるのだろう。
「改めて、私はユナ。仲良くしてくれると嬉しいな」
「こちらこそ。僕はシュバルト、こっちがユウキ」
そんなこんなでそれぞれ自身の名前を言っていく。
「それでも君はなんで僕ら…ノーチラスのことをつけていたのかな?」
「最近ノーくんが、私を置いてどこかへ行くから気になって着いてきたんだ」
「ん? ノーチラス。お前、彼女に説明してないのか?」
「言うタイミングを逃したんだ……」
顔を逸らしながら言うノーチラス。
反応を見るに、おそらく、伝えるのを普通に忘れていたのだろう。
「実はつい先日に、僕達のギルドにノーチラスが加入してくれたんだ。それで、顔合わせも兼ねて、フィールドでの実戦とか色々確認してたんだ」
「へー! ノーくん、攻略ギルドに入団したなら言ってよ!」
「す、すまないユナ…」
ユナがノーチラスに詰め寄る。そんな彼女に彼はタジタジなようで、上手く言い返す言葉も出てこない。
「そういえばユナさん。ここまで一人で来たんですよね?」
「そうだよ。アクティブモンスターに見つからないように慎重に隠れながらね。
どうやら、最前線序盤でも通用する隠密能力を持っているようだ。
「あと、そんなにかしこまらなくてもいいよ。歳もそんなに変わらなさそうだし」
そう言うので、言葉を崩すことにした。
「だとしてもユナ。一人でフィールドに出るのは危ないだろう」
「ぶー。ノーくんだって前までは一人でフィールドに出てたじゃない」
「僕はいいんだよ」
「それなら私だっていいじゃない」
「ユナは耐久力が高くないだろう」
「当たらないようにするもん」
新たに、言い合いメンツその2ができてしまったようだ。
「二人とも仲が良いんだね」
フィリアがそう言う。
「幼馴染みだからね。幼稚園から中学までずっと一緒だったの。SAOも一緒に始めたんだよ。だから、ノーくんが最前線まで行くって聞いて着いてきちゃった」
「きちゃった、じゃないって……戦闘が苦手な癖に、こんな上まで来るのは無謀すぎるよ」
「さっきも言ったけど、アクティブモンスターは引っ掛けなかったし、私の短剣スキルなら、上の層でも通用するって褒めたのはノーくん自身じゃない」
「いや、言ったよ…言ったけどさ。それはしっかりとパーティ組んで、タンクや回復役を確保した話だろう」
「なら、ここのメンバーに私も参加したら、戦ってもいいんだね?」
「え? あ、いや……それは」
助けを求めるようにノーチラスがこちらを見る。
これ以上は彼がユナを説得できそうになさそうだ。
「ユナには休憩が終わったあと、レベリングに参加してもらおうかな」
流石にここまで粘る彼女を追い返すのは気が引けてしまうし、ここまで来た実力も確認してみたい。
このメンバーであれば、危険になるようなことはないだろう。
「ギルドリーダーさんは話が早くて助かるな〜」
そう言うわけで、現在のメンバーが12人。僕、ユウキ、テリー、フィリアで一つ、キリト、アスナ、ミト、リクで一つ、ノーチラス、ユナ、ジーク、ソーキの4人3パーティで分ける事にした。
ノーチラスの心情も考えた結果のメンバーだ。彼も「ユナは自分が守る」と言っていたので、大丈夫だろう。
「それじゃあ、僕達から順に少しレベルが上のモンスターを狩って行くよ。今のみんなのレベル帯なら、名前の色は白っぽい赤だから、そこまで強くはない。だから落ち着いて対処すれば、余裕で倒せる」
そう言うわけで僕が敵として選んだのは、青い鱗が特徴的なルースレスディノだ。コイツはそこまで強くはない上に、身体もそう大きくないので、一人でタコ殴りにされなければ死ぬことはないだろう。
「それじゃあ行くぞ!」
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ルースレスディノの群れをそれぞれのパーティが倒したのを見て再び休憩に入る。
ユナの動きは攻略組の動きとしては、そこまですごいとは言えないが、光るものがあった。同じように短剣を使うフィリアのように、戦闘を重ねていけば、最前線でも通じるだろうと思うほどだ。
ノーチラスも彼女のカバーに入る動きが、休憩前の時よりも素早く反応しており、これがボス戦でもできれば、戦力にカウントできる。
彼の動きが硬い理由はまだわからないが、予想するのなら、ユナのように守りたい存在がいると、動きが良くなるのだろうか。
そう考えていると、先程戦闘を終えたユナがこちらに声をかけてきた。
「ねぇギルドリーダーさん。私の動きどうだった?」
「即戦力とは言えないけど、動きは悪くないよ。もし攻略組を目指すのなら、相応の特訓とかは必要になるけどね」
「そっか〜」
ユナは『うんうん』と悩んだ後、何かを閃いたのか、ノーチラスに視線を一瞬だけ向ける。それに気づいたのか、彼は首を軽く傾げた。そして彼女は閃いたことをそのまま口に出す。
「私も龍歴院に入れてくれないかな?」
「は?」
真っ先に間抜けな声を出したのはやはりノーチラスだった。
「ユナ…!? なんでだ…!?」
「このまま特訓したら攻略組になれるって言われたし」
「でも危ないだろう…!」
「ノーくんは私のこと守ってくれないの?」
「それは当然守るさ…!」
「ならいいでしょ?」
ノーチラスはユナとの口喧嘩に弱いようで、今回も押し切られそうだ。
僕としては来る者は基本的に拒むつもりはない。それこそ、PK集団の気配を感じるようなプレイヤーではない限りはだ。
「それで、ギルドリーダーさん。改めて、私も入れてください」
「僕としては拒む理由はないからね。よろしくユナ」
「よろしくね、シュバルト」
新たに、ユナを加えた事で、人数不足の問題も、戦力の向上も、先日に加入した4人込みで、解消することができた。
「それじゃあ、街に戻ろうか。キッチン付きの宿屋で今日の、夜ご飯でも食べようか。リクエストある人いる?」
そう聞くと、加入したばかりの面々が不思議そうな顔をしていた。
「キッチン付きって、誰か料理スキルを取ってる人がいるんですか?」
「ん? ああ、僕が大分序盤にね。モンハンスキルでスキル枠に余裕ができたものだから、それで早急に埋めたんだ」
味覚エンジンを担当したから、自分でも試したくなったんだよねぇ。どう味付けしたらどんな味になるのかとかは気になるものだ。
味のステータスやバロメーターが、どう動いているのか。それの確認も兼ねてのものだが。
料理スキルも熟練度が上がってきたことで、Cランク食材も使えるようになった。レパートリーも増えたし、狩りで手に入った食材+店売りの食材で今までより美味しいものが作れるはずだ。
「肉だな」
「米ぇ!」
なんて言う人達がいるので、作り甲斐がある。
テリーとソーキがリクエスト?を出すので、丼もので何か作れるか考える。
「とりあえずは今日倒した恐竜肉あるし、それを使ったものになるね……」
恐竜って鶏肉に近いとか創作では良く聞くけど、SAOだとどうなんだろう。カーディナルがどう設定してるかは食べないとわからないな。
まぁ味見は必要だ。
「団長さんも趣味スキル取ってるんだ」
「そうだけど、『も』ってことはユナも?」
「うん、《歌唱》スキルを取ったんだ。SAOを始めたのもこれが理由なんだ」
「そうなのか……」
その理由でデスゲームに囚われてしまったのか。第一層にいると聞いた料理屋をしているプレイヤーも、そう言った理由なのだろうか。
SAOは最新の技術を盛り込んだVRMMORPGとして、注目を浴びていたのだ。そんなプレイヤーが他にもいて、巻き込まれて解放を待っているというのだ。
早くクリアを目指さねば。
「いつか、大きな舞台でいっぱいの人に歌うのが夢なんだ」
「いつか叶うといいね」
「もし、その夢が叶ったらボク、聞いてみたいなぁ」
「その時は招待するよ!」
そんな会話をして、街へと戻り、店売りの食材アイテムを買い、宿屋で料理を作る。
Cランク食材アイテムのディノの肉の一つを切り分けて、その一つを焼いて味付けなしに食べたところ、よく知る鶏肉の味がしたので、今日の夕食は、同時に手に入れたディノの卵も合わせた、親子丼擬きを作る事にした。
因みに僕の料理を初めて食べた5人には好評だったようで、おかわりも頼まれてしまった。
その時、ユナが「料理スキルも取った方がいいのかな……?」なんて言っていたが、スキルに余裕ができるまで、無理に取らない方がいいと伝えた。
劇場版ヒロイン、ユナ参戦!
ノーチラスが出るなら彼女もね?
それはそれとしてユナの口調は大丈夫かな……
そして今回、ギルメンが空気すぎる…! ありふれの時もそうだけど、キャラを増やすと出番が……!
あと1人、今後の展開(クッソ遠い未来)のために加入すると言うのに……
シュバルト
どうあがいても地雷。
クリアしないと、この地雷は撤去されないどころか、地雷の威力と数が増えそう。
それはそれとして、新たに加入したメンバーの実力を見るために、実戦かつレベル上げで確認した。