前回のあらすじ
ドス鳥竜「「こんちくわ」」
シュ「久しぶりだなぁ」
リク「初狩です。よろしくお願いします」
テリーside
シュバルト達が向かっている森とは反対にある、火山へと俺達は向かっている。
「火山に何かあればいいんだがな……」
なにもないとかがなければいいんだが。
火山へと通じる、砂漠を歩きながら、そこでの行動を考える。砂漠の時点で既に暑い。火山内部がどうなっているか、考えたくもない。
「しかし、この暑さだと、鎧を厚着しているプレイヤーは辛そうだな……」
「フルプレは熱がこもってやばそうだな……」
第五層ではタンクとして世話になったリーテンを思い出す。彼女の装備はガチガチのフルプレだ。あんなにガチガチだとクーラードリンク必須だろう。
シュバルトが作り方とかドリンクそのものを配布するだろうが、それで間に合いそうにはない。
「私達は布装備がメインでよかったよ……」
「それでも身体にじっとり張り付いて気持ち悪いわ……」
既にクーラードリンクを飲む始末だ。
効果はしっかりと発揮されており、暑さは感じられない。自身のHPゲージの横に青いドリンクのマークが点灯している間は、暑さを感じることなく行動していられる。
効果時間は大体、1時間だそうだ。
それだけあれば、探索や戦闘に集中できる。
「打撃武器使う人いないからあれと戦うのは避けるか……」
狙われないようマグマゴーレムから離れて移動をする。火傷の状態異常になると非常に面倒だ。
そうして、敵mobとの戦闘を避けつつ、火山まで向かっていると、目の前から、二又の大きなトサカを持つ黄色がかった、砂漠迷彩のような鱗を持つ中型の恐竜系mobがこちらに向かって来ていることに気づいた。
子分なのだろうか、トサカがなく、体格も大きいのより一回りほど小さいのが4匹ほど追従している。
「…シュバルトと離れていても乱入は起きるのか。もはや乱入じゃないな」
「どうする?」
「セオリー通り、盾持ちの俺とノーチラスで攻撃を防いで、キリトが奴を攻撃……だが、その前にここじゃ場所が悪い。向こうの広い場所で迎え討とう」
「わかった」
俺は足元の小石を恐竜目掛けて投げつける。
『グキャオ!』
大したダメージにはならなかったが、奴のターゲットが俺へと向く。
「よし、このまま誘導するぞ!」
タゲが外れない程度に距離を取りつつ、目的の場所まで誘き出す。
「……ここまで来たら大丈夫か。アスナは少し離れた位置で指揮。フィリアとユナは子分の相手を」
「了解」
「任せて」
「はーい」
俺は盾を構えてボス個体に突撃する。ボスの名前は《Great Dino Yellow》。鋭い牙を持つ細身の恐竜は、初撃を与えた俺に、その赤い眼をこちらに向けて吠える。
「なーんか、嫌な予感」
俺は念の為に入れていたシュバルト特製の対麻痺ポーションを飲む。
盾で攻撃を受け流し、そのままバク宙するように体術SS《弦月》を放ち、下顎を蹴り上げ、「スイッチ!」と言いながらノーチラスと入れ替わる。
「そこだ!」
ノーチラスのソニックリープが無防備なグレートディノイエローにクリーンヒット。更に横から、キリトがバーチカル・スクエアで追撃する。
グレートディノイエローが後ろに跳び退き、俺目掛けて大きく跳躍し、その鋭い牙で喰いつこうと、顎を大きく開く。
「易々喰らわん!」
前方に素早く跳び、真後ろに立った所で片手剣SS《スネークバイト》で細長い尻尾を切り裂く。
「今までやり合った奴らより楽だな……」
「この人数で子分持ちを袋にしてるからな」
「……苦戦した連中と比べるくらい弱いのか」
初遭遇のノーチラスにとってはこの戦闘は、今後の乱入への練習だ。彼をメインに据え、俺とキリトでカバーする方向に変える方が経験的に良い筈だ。
「ノーチラス。次からお前が、メインで攻撃だ。今後の為にも慣れておいた方がいい。俺とキリトでサポートはする」
「…わかった。やってみる」
ノーチラスは片手剣SSのレイジスパイクでグレートディノイエローとの距離を詰めつつダメージを与え、噛みつき攻撃を盾で弾き、剣で追撃する。
「子分の方は問題なさそうだな」
「視野の広いアスナがいるんだ。余程のことがない限り大丈夫だろうさ」
彼女の指揮能力はかなりのものだ。第十層以降で、シュバルトが前線に集中している間は、アスナの指揮で戦うことが増えてきた。
時折り、フロアボスでも、2パーティの指揮を任せることもある。
「そこだ!」
そんな中ノーチラスは、黙々と剣と盾でグレートディノイエローを追い詰めていた。飛び跳ねて動き回る奴相手に堅実に戦っており、盾持ち壁役として理想的な戦いをしていた。
「これで…とどめだ!」
ノーチラスのホリゾンタル・スクエアが決まり、グレートディノイエローはポリゴン片へと姿を変えた。
「ふぅ…」
「俺達が、手を出すまでもなかったな」
「出番なしだったな」
後ろで子分とやり合っているフィリア達も、危なげなく蹴散らしたようで、仲良くハイタッチを交わしていた。
それを眺めていると、ノーチラスが肩を叩く。
「テリー。さっきの奴からこんなのがドロップしたんだが、確認してくれるか?」
「ああ。見せてくれ」
俺はノーチラスから手渡されたドロップ品の詳細を確認する。
《グレートディノイエローの大牙》麻痺毒をもつディノイエローの中でもとても鋭い牙を持つ個体の物。それらを束ねるリーダーが持つ牙であり、その牙から射ち込まれる麻痺毒は、対象をしばらく痺れさせる。とある研究家がこれを集めている。
やっぱり麻痺毒を持ってやがったか。喰らわなかったが対麻痺ポーションを飲んで正解だったな。
「キーアイテムかもしれないな」
「モンハンスキルの襲撃なのにか?」
「狭まった考えは時に、判断の誤ちを引き起こす。最悪、フロアボスがモンハンスキルの襲撃に併合される可能性もある」
シュバルトがモンハンスキルを獲得した事に、関係なく現れる可能性だってある。あいつがスキルを取っているから、こうして序盤で対処できるように段階を積めるようになっているかもしれない。
「それは、不味いな」
「今のところ、俺たち以外にこういった襲撃がないが、いつか知らない場所で起きる……かもな」
「伝えた方がいいんじゃないか?」
「ああ。信頼できる奴には伝えたほうがいいな」
「そうだな……ディアベル達には必ず伝えよう」
キリトの言う通り、ディアベル達や、血盟騎士団のヒースクリフは大丈夫だろうが、JWの奴らは不味い。
第五層の抜け駆け阻止の後に、奴らと交渉を見届けたユウキから聞いたのだが。あいつら、シュバルトから旗だけでなく、
そんな事になればあいつは余計に責任を背負ってしまうだろう。
「そっちも終わったんだね」
「…ん? ああ」
「どうしたの?」
「いや、これからシュバルトのいない所でも、襲撃が起きるとなると少々不安だなって」
「そう…だね。私達は今みたいに対処してるけど、初見の時は危なかったもんね……」
スケアリーブルーとやり合った時のことを思い出したのか、身体をぶるりと震わせる。
「ともかく、俺達はこのまま火山に向かうが、一旦あそこの岩陰で休憩を挟むぞ」
グレートディノイエローを誘き出したせいで、火山とはかなり離れてしまった。
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フィリアside
「ふー……まさか襲撃が起きるなんてね」
「でも危なげなく倒せてよかったわ」
慣れた私やアスナは落ち着いているが、初めてだったユナは尊敬するような目でこちらを見る。
「すごいね。私ちょっとびっくりしちゃったもん」
「初めてなんだから当然だよ。私だって初見の時は危なかったし」
流石にあの時は、命の危機を感じた。テリーがいなければあのまま、凶悪な爪に切り裂かれ、命を落としていたかもしれない。
あの時の恐怖を思い出して、また身震いしてしまう。
そんな私を見たユナがストレージから、硝子瓶を取り出し、その中に入っている、色とりどりの球体を私に手渡す。
「はいこれ」
「ユナ、これなに?」
「町で売ってるの見つけたんだ。それ舐めて元気出して?」
どうやら飴のようだ。それを口へ運び、コロコロと舌で転がす。
「……レモンかな? これ」
「いいでしょ? はい、アスナさんも」
「ありがとう……いちごだ…!」
飴瓶をストレージにしまうのと入れ替えでユナは、別のアイテムを取り出す。ギターにしては小さい。
「もしかしてリュート?」
「正解〜特別に2人には、私が特訓中のスキルを見せてあげる」
取り出したリュートの弦を軽く弾く。その音色は、どこか懐かしさを感じさせる、素朴な音だ。
「SAOをプレイするきっかけは、ゲーム内で楽器演奏ができるって聞いたからなんだ。でもね、特訓してるのは演奏スキルだけじゃないんだよ」
そう言ってユナは目を閉じて、リュートをかき鳴らしながら歌い始めた。伸びやかに響く彼女の歌声は、ここが命懸けの戦いをするフィールドだと、忘れてしまうほど美しくて、温かみがあった。
歌い終えた彼女の周りに煌びやかな光が現れたような、そんな錯覚を覚えるほど、穏やかな空気が流れていた。
「……おしまい」
私は歌が終わると同時に、拍手をしていた。それほどまでに、綺麗な歌だったのだ。
「すごい……なんて曲なの?」
「私のオリジナルだから、タイトルはまだないんだ。それに、歌詞は未完成だし……歌も特訓中で、人に聴かせるのは、これが初めてだよ」
その事に、アスナも私も驚いた。特訓中でこのクオリティ。完成したら、本当に魔法でも起きたように、世界が包まれてしまいそうだった。
「すごい綺麗な歌だったよ。まるで魔法にかかったみたい」
アスナも同じ感想に至ったようだ。
「ふふ、本当に魔法の力があったら、役に立つのになぁ。《歌唱》スキルは、伴奏の精度が上がる以外になんの力もないんだよ」
「じゃあ、歌が上手なのは、ユナ自身の実力なんだね!」
「そう……なるのかな?」
特訓中の歌を褒められるとは思わなかったのか、ユナは照れたように目を逸らす。
「褒めてくれてありがとう……これからも頑張るね!」
「うん! また機会ができたら聴かせてね」
会話をしている内に、休憩時間が終わり、再び火山へと向かう為に、足を進めるのだった。
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テリーside
休憩を終え、このまま火山へと向かおうとした時だった。
「あっ! あそこ、見て!」
ユナが唐突に声を上げ、全員の視線を同じ方向へ誘導する。そこには赤いカニのmobに襲われている人がいた。頭上には金色の『?』マーク。どうやらクエストNPCのようだ。
「助けに行かないと!」
フィリアがカニへ駆け出す。
「なるべく2人1組になって動いてくれ! 名前の色はほんのり赤いだけだ! 苦戦するような敵じゃない!」
『Lava Crab』ラバークラブかで良いのか? 直訳すると溶岩蟹と言えば良いのだろうか。
溶岩蟹の甲羅へ一度剣を振る。HPの2割が削れる。レベル差があるとは言え、ダメージが低すぎる。どうやら甲羅の防御力が高いせいだ。
「なるべく関節を狙え! 甲羅を切ってもまともにダメージは入らない!」
この時、俺達とシュバルト達のグループは逆の方が良かったのではないかと思わざるを得なかった。
あいつの、Cアックスによる防御無視攻撃が欲しくなる。
とは言え、体術スキルを会得しているメンバーが4人いるおかげで、甲羅を蹴ったり殴ったりして、関節を切りやすいように出来た事で、あっさりと、9匹の溶岩蟹を蹴散らすことが出来た。
「ふぅ……雑魚相手に苦戦せず終わったな」
「固かったから長引いちゃったね」
「しかし、シュバルト達とは逆の方が良かったと思うな……」
「あー…Cアックス…」
フィリアと会話をしていると、襲われていたNPCがこちらに歩み寄ってきた。頭上のクエストマークが震えているのを見るに、クエスト受注ができる段階になったようだ。
「危ないところを助けていただき、なんとお礼を申し上げればよいか……」
「礼はいい。俺達は偶々ここを通りがかっただけだ」
「なんとご親切な……私も、あなた方ほどの強さがあれば《火蜥蜴の勇士》に挑んだのですが……」
「火蜥蜴の勇士?」
「この辺りで暴れ回っているモンスターの頭目です。普段は灼岩の洞穴で過ごしていますが。時折、人里までやって来ては、武装した人を片端から襲うのです」
襲撃系のクエストか?
そう予想するが、NPCの話は続くので、俺達はそのまま聴き続ける。
「どうやら、己の強さを誇示する為に、力試しを行っているらしいのですが……襲われる方はたまった物ではありません。なので、奴の気を引かぬよう、最低限の護身道具だけを持ってきたのですが、それが仇となり。囲まれていたのです」
「困った蜥蜴さんだねぇ」
「ええ……もし、出来ることなら、洞穴に潜む奴を退治していただけないでしょうか? 首尾よく退治出来た暁には村の宝を差し上げます」
「わかった。火山へ行くついでだ。引き受けよう」
「ありがとうございます……! ここからでは少し遠いのですが、皆様ならば、容易く辿り着けるでしょう。案内人には私の方から話をつけておきますので、よろしくお願い申し上げます」
そう言ってNPCは安堵した表情でその場から去っていった。
「いったん街に戻ろう。ボス戦があると分かれば、装備やアイテムを整えてから行った方がいい」
「そうね。ポーションも補給した方が良さそうだわ」
俺はシュバルトにクエストのことをフレンドメッセージで伝える。
『了解。僕達も一旦戻るから後で合流しようか』
「『わかった。気をつけて戻れよ』」
『そっちもね』
クーラードリンク
効果時間が原作の6倍に伸びたが、オープンワールドかつ、VRならこれから妥当な時間だと思う。
徹底的にシュバルトくんと対立する想像や行動を描かれるJWの皆様。
ですが正直なところ、こんな極限状態で石を投げられる相手が見つかれば、似たようなことをする人は確実に現れる訳ですし。そんな奴らは固まって行動することだってある筈なのです。(原作でもキリトをビーターと罵る奴もいるわけですし)
偏見かもしれませんが。
テリー
サブリーダーとして、メンバーを引き連れて行動。
シュバルト君の相棒として、奮闘中。
彼のスキルによる乱入が、本人不在の時でも起きたことから、そのうちシュバルト君の預かり知らぬ所でも、起きるのではないかと危惧している。
ユナ
SAOの歌姫。
オディスケやアリシゼーションで披露された歌はとても良い……
中の人が中の人ですからね……
グレートディノイエロー
ドスゲネポス。
麻痺持ちのモンハンモンスターと言えば、こいつなイメージ。
本当は火山まで行きたかったけど、長くなりそうなので分けました。