SAO-絶剣と怪物狩り   作:小説大工の源三

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大変お待たせしました


深海二万マイルが抱えてしまった物

シュバルトside

 

 あれから僕達は、火蜥蜴との戦闘で危険な状況に陥ることなく、HPを3割削った。行動パターンに変化は今のところ現れてはいないが、油断せずにやつの一挙手一投足を見逃さないように、背を向けないように立ち回っている。

 

「そこっ!」

 

『グギヤァアオ!?』

 

「はぁっ!」

 

『グルルラァ!?』

 

 ユウキとミトのSSがクリーンヒットかつクリティカルで命中したことで、7割程あった火蜥蜴のHPが5割近くまで減っていく。

 

 流石に焦りを覚えたのか、畳んでいた背中の翼を広げて天井近くまで飛び上がる。

 SSが発動したことを知らせる光が火蜥蜴の爪に灯る。

 

 距離からして突進系、そして階層の高さからしてそれなりの熟練度から使えるようになるものと推測する。

クローSS《パーチー・フェリス》だろう。

アレは錐揉み回転しながらこちらは突撃してくるSSだ。

 

「返り討ちにしてやる…!」

 

 僕は剣を上段に構えて、奴の攻撃を待つ。刀身は黄色のライトエフェクトで光っているが、SSと違いシステムアシストによる動きの補助は発生していない。

 

『グルル……グラァ!』

 

 予想通りパーチー・フェリスで突っ込んできた火蜥蜴を、僕はその攻撃を身に受け止める。それにより刀身のライトエフェクトがより一層輝く。

 

「シュバルトッ!?」

 

 ユウキの悲鳴が響くが、今回ばかりは我慢してもらおう。僕が今使う技は攻撃を喰らう必要がある物だから。

 

「《震怒竜怨斬》!」

 

 僕がそう叫びながら、剣を振り下ろす。

 

『グギャァァァア!?』

 

 相当なダメージが入ったのだろう。今のまでで1番の絶叫を火蜥蜴が上げる。

 HPゲージを見てみると、5割強あったそれは、僕の一撃で3割強一気に持っていったようで、2割弱まで削られたようだ。

 

 モンハンスキル専用SS震怒竜怨斬。

 これは両手剣装備時のみ発動できる技で、相手から与えられたダメージで減った自身のHPゲージ分威力を倍増させる物だ。

 他にも専用のSSが武器毎にあり、それを通称《狩技》と呼ぶ。

 これらを一度発動させて、見事命中させる事が出来れば、大きなリターンを得ることが出来るが、欠点として、発動するには狩技毎に設定されているゲージを溜めなければならないことと、大きな隙を作ってしまうことだ。

 

「また飛んだよ!」

 

「そうなんども逃すわけないでしょう!」

 

 ミトが鎌側を火蜥蜴の翼へと投げつける。

 

『グギィア…!』

 

 彼女の鎌に翼を切り裂かれた火蜥蜴は苦痛と憤怒の相半ばした叫びを上げる。

 

「やったか…!」

 

 ノーチラスがそう声を漏らしたその時だった。

 体勢を崩した火蜥蜴の異変にユウキか真っ先に反応する。

 

「いけない!」

 

 火蜥蜴は翼をすぼめて、下へと一直線に急降下してきたのだ。

 その先には、目を見開いて立ち尽くすユナがいた。

 

「避けろ! ユナ!」

 

 僕が叫ぶが、彼女が反応する間もなく、赤熱したクローが襲いくる。

 

「ユナ───ッ!!」

 

 ノーチラスが焦りながら彼女の元へ駆けるが、

 

「…きゃあッ…!?」

 

 火蜥蜴の攻撃が先に命中してしまい、ユナは壁際まで弾き飛ばされてしまい、そのHPゲージはみるみる減っていく。

 

「ユナッ!」

 

 壁にもたれるように倒れたユナにユウキが駆け寄り、自身のポーチから、ポーションを取り出し、彼女の口元へあてがう。

 

「ユナ、早く飲んで…!」

 

「……ノーくん……は…?」

 

 ユナの元へ走っていた筈のノーチラスは、瞳に怒りの炎を灯して、火蜥蜴の前に立ちながら、睨みつけていた。

 

「よくも……よくもユナを……!」

 

 完全に幼馴染を殺されかけた怒りで周りが見えなくなっている。

 

「ノーチラス! 一人で前に出ないで!」

 

 ミトが下がるように言うが、聞こえないのか、武器を構えて突撃してしまう。

 

「僕だって…! 僕にだって! たぁぁぁぁぁっ!」

 

 僕は何が起きても良いように、ノーチラスのカバーに入る。

 

『グラァ!』

 

 ノーチラスの怒りに任せた無謀な突撃を火蜥蜴は難なく受けて止めてしまう。

 

「くそっ!」

 

「無理をするな!」

 

「邪魔をするな! 僕は…僕がユナを守るんだ! …そこだ!」

 

 ノーチラスがソニック・リープで斬りかかろうとした時だった。

 火蜥蜴の口元がニヤリと笑うのが見えてしまった。

 

「ノーくん! よけて!」

 

 ノーチラスの剣を弾きながら、そのまま後ろへ突き飛ばす。スキルの硬直で動けない彼を、クロー突進SS《ラガマフィン》で腹部を貫く。

 

「ぐあぁ…っ!」

 

 ユナ同様にHPゲージを減らしていくノーチラス。装備構成のお陰か、彼女程減ることはなかったが、黄色の警告域にまで減ってしまった。

 

「ノーチラス! 下がれ!」

 

 後退するよう叫ぶが、彼は震えたまま動かなかった。

 

「う……うあ……あ……」

 

「ミト! ノーチラスを!」

 

「了解!」

 

 ミトはノーチラスの肩に身体を回して後ろへ下がらせる。

 

 しかし、彼に一体何があった? これまでの戦闘を見てきたが、いきなり今みたいなことは無かった。ノーチラス本人も、あのようなことで動けなくなるほど、心の弱い人間ではない筈だ。

 だとしたら別の理由、彼本人も気づいていない何かが、今のような状態を引き起こしたのだろうか。

 

「考えるのは後だ…!」

 

 僕はクイックチェンジを使い、武器を両手剣から、Cアックスへ換装する。

 火蜥蜴の攻撃をしっかりと受け止め、道中で溜めた剣撃エネルギーを使い、高出力解放斬りによる一撃と、ユウキのホリゾンタルスクエアの連携で、残ったHPを削り切る。

 

 フレイムリザードウォーリアーはポリゴン片へと姿を変えた。

 最後の最後で危険な状況になってしまったが、誰も犠牲になることなく、火蜥蜴を討伐することができたのだった。

 

─────────────────────────

 

テリーside

 

「このやろう!」

 

 ソーキのSSがグレートディノオレンジに命中する。だが奴はそれを意に介さず、こっちに走ってくる。

 

「流石にヘイトを稼ぎすぎたか…?」

 

 俺は後ろに下がり距離を取る。

 

「こっちみろ!」

 

 立て続けにソーキのSSがグレートディノオレンジに命中する。ようやく、ヘイトがソーキの方は向いたので、俺は背を向けた奴目掛けて跳び乗る。

 

「少しは効いてくれよ…!」

 

 腰から抜いた投擲用ナイフで背中を滅多刺しにする。その間、俺を振り落とそうと、暴れ回るので、脚でしがみつき、滅多刺しを続ける。

 

『グルルラァ! グルルォ!』

 

「大人しくしろっ!」

 

 俺が何度目かわからない攻撃を奴の背中に突き刺すと、ついにバランスを崩し、横向きに倒れる。

 

「袋叩きだ!」

 

 俺たちは畳み掛けるようにSSを繰り出す。色鮮やかな剣撃の軌跡がグレートディノオレンジの胴体を傷つけていく。

 それでもHPゲージは3割残っていた。

 

「まだか…!」

 

 さすがにタフすぎる。

 火山の中にいたり、毒を持っている生態だからという設定なのか、グレートディノオレンジはとてもしぶとい。

 起き上がったや奴は、ソーキにターゲットを向け、喉から何かが登っていくのが見えた。

 

「いい加減に倒れろ!」

 

 そう言ってソーキが突進系SSを発動させる。

 

「バカ! 毒液来るぞ!」

 

 毒液攻撃に気づいたジークが止めようとするも、既に発動してしまったSSはそのままグレートディノオレンジへと向かう。

 

「オラァ!」

 

 その一撃は頭部に当たり、毒液を吐き出そうとしたグレートディノオレンジは、頭をのけ反らせながら怯む。

 

「しゃあ! やっぱり怯んだぁ!」

 

 ソーキの考え通りだったようだ。

 シュバルトの評価通り、攻めのタイミングが鋭い。俺ですら攻撃を躊躇うタイミングだったというのに、彼は捩じ込むように隙を見つけ、作り出す。

 

「ナイスだソーキ!」

 

 毒液を吐き出せずに怯んだグレートディノオレンジは再び崩れ落ちる。

 

「削り切るぞ!」

 

 そして最後の総攻撃により、グレートディノオレンジはその身体をポリゴン片となった。

 

「ふぅ……なんとか無事に倒せたな」

 

「ええ、誰1人危険域に落ちず、毒を貰うこともなく」

 

 リクと一息ついていると、彼の視線が何やら『またか…』とでも言いたげなものになっていた。何があるのかと、視線の先を見ると、ジークとソーキが睨みあっていた。

 

 なるほどそういうことか。

 

「あのなぁ……なんでお前はそんなハイリスクハイリターンの行動を取るんだ!」

 

「ノーリスクハイリターンだからやったに決まってんだろ!」

 

「今回はそうだが、次が同じようになるかわからないだろう!」

 

「つーか今回は、火山内部だとクーラードリンクの効果が切れたら飲み直す必要あるだろ。その前に終わらせた方がいいと思うが?」

 

 と、言い争いが勃発していた。

 

「お前らー! シュバルト達の所いくぞー!」

 

 俺が声をかけるのだが、2人の言い争いは加速していくばかりだ。

 

「副団長、このポーションを飲ませましょう」

 

 リクは飲み物がしてはいけない色をしている液体が入っているポーションをポーチから取り出す。

 

「そうだな……」

 

 俺もポーチから同じポーションを取り出し、2人の元へ行く。

 

「いい加減に」

 

「止まれ!」

 

 俺達は2人にポーションを無理やり飲ませる。2人して『モガモガ』言ったあと、こちらを睨んだその時だった。

 

「おええぇあぁ!?」

 

「ま、不味い…!」

 

 2人して悶え始めた。

 それもそうだ。彼等にはシュバルトお手製のゲロマズポーションを無理やり飲ませたのだから。

 

「喧嘩してないでとっとと行くぞ」

 

「「うっす……」」

 

 キリト達とも合流し、シュバルト達の所まで向かうのだった。

 

─────────────────────────

 

シュバルトside

 

 火蜥蜴を倒した僕達だったが、勝利を喜ぶよりも先に、座り込んでいるノーチラスの様子を確認することにした。

 

「ノーチラス、大丈夫?」

 

「あ、ああ……今は問題ない」

 

「よかった。それでさっきのことなんだけど。あれは今日が初めて?」

 

「ああ…」

 

「そっか……その時、どんなことか起きたか説明できる?」

 

「……まるで身体が、足が動くことを拒否したみたいだった。自分の頭と身体の意思が一致しない……そんな感じだった」

 

 それを聞いた僕は、最初に考えたのが、ナーヴギアの異常だ。だがそれはないと捨てる。晶彦さんがこの機械を作る理由か、このSAOなら、そんな不具合を起こすような設計にするはずがない。外注先に問題があるのなら話は違ってくるが、今回はそれを捨てる。

 次に浮かんだのがFNCだ。過去に出会ったネズハのように、フルダイブとの相性が悪い部分が出たのかもしれない。特に脳波と直接やり取りしているこの機械と異常が起きている可能性だ。こちらの方が有力だと思っている。

 

「団長…僕は戦力外になるのか…?」

 

「いや、それはない。ただ今のような事が起きないような立ち回りを徹底することと、それの克服策を考える必要ができただけだ。ノーチラスの強さは僕が保証をするさ」

 

 僕自身もユウキがユナのようになったら、理性的でいられるかわからない。戦闘中のノーチラスのように、怒りで我を忘れてしまうかもしれない。

 

「とりあえず、依頼完了報告に行こう」

 

「そう…だね…」

 

 ノーチラスは立ち上がり僕の後を追うように、火山の外へ出る。

 外で待つ依頼人に火蜥蜴を倒したことを報告すると、かなりの報酬を貰うことができた。

 

「さてと……一旦街に戻ろう。襲撃で手に入れたアイテムを欲しがっているNPCがいるかもだし」

 

 合流したテリーから渡された、《グレートディノオレンジの頭蓋》を含めた4つのアイテムの共通説明分があるのだ。

 

 少し時間はかかったが、街へ戻った僕達はしばらく自由時間として、僕は件のNPCを探すことにした。

 

「さてとどこにいるかなあ?」

 

「研究者なら変な場所にいたりしてね」

 

「確かに、それなら端っことかにあるかもしれないわね」

 

 なんで自然と隣にいるんだこの2人は。

 

 そう思わざるを得ない。

 さっき自由時間って言った筈だ。こういう時、女子って女の子同士でウィンドウショッピングとかそんなことすると思うのだが。

 

「2人とも買い物とかしていいんだよ?」

 

「自由時間なんでしょ?」

 

「ならボク達が君についていくのも自由でしょ?」

 

「そうだね、うん」

 

 何を言ってもダメだと思い、僕は諦めてNPCを探すことにした。

 

 それからしばらく、街を隈なく散策していると、目の前に見知った金髪が現れると。

 

「ヨっ。両手に花とは贅沢な自由時間だナ」

 

「アルゴ。ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

 

「なんダ?」

 

 僕は探しているNPCの手掛かりがないか彼女に聞く。

 

「ンー……確か、街のここに変なNPCがいるって噂があったナ」

 

 アルゴは街のマップを広げ、場所指差す。そこはまだ僕達が探していない所だった。

 

「情報料いくら?」

 

「シュバルトがこの後手に入れる情報と交換でいいヨ」

 

「いいの? 変な情報かもしれないよ?」

 

「それだったら後でお金貰うからナ」

 

「わかった」

 

 僕はアルゴから教えてもらった建物へ向かった。

 そこには白衣をきて、手入れをしていないのか、ボサボサになった長髪の女性NPCが中で机に向かって唸っているのが目に入った。しかも頭上にクエストNPCだと示す『?』が浮かんでいる。

 

「なんだね…今私は忙しいのだけれど?」

 

「すまない。何か恐竜のボスが持っている特徴的な部位を探している人がいると、噂があって」

 

「……それで?」

 

「確認してもらいたい物を持ってきた」

 

 そう言って僕はストレージから4つの素材を机に並べる。

 

「こ、これは……! グレートディノ達の象徴…!」

 

 そう言ってNPCはそれをマジマジと見つめて、虫眼鏡でそれを観察し始める。

 

「……まさか、本物を持ってくる人がいるとはね……人生、待ってみる物だ」

 

 彼女はこちらへ振り向くと、勢いよく僕の手を掴み、捲し立てるよう、喋り始めた。

 

「とても助かった! 私はディノカラーを研究しているのだが、それの子分共は既に調べ尽くしたけれど、ボスである連中の研究が一向に進まなくてね! 誰かそいつを討伐して、素材やら何やらを持ってきてくれないか待っていたのだよ! いやー、何を渡したらいいものか! そうだ! 私の爺様が、使いこなせる物に渡してやれと言った首飾りがあったな! それを渡そう! 丁度3つある!」

 

 そう言って彼女は引き出しからボロボロになって風化したお守りを取り出す。

 

「私の方では鑑定できなくてね! ただ爺様が使っていた物で、狩人?だった頃、このお守りの不思議な力が力を与えていると聞いたのだよ! 君達のような強者ならば使いこなせるはずさ!」

 

 そう言って風化したお守りを僕の手に乗せて、再び机に向き直る。

 そしてクエストクリアのウィンドウが表示される。

 外へ出た僕達は勢いよく息を吐く。

 

「なんかすごい人だったね」

 

「でもこれなんだろう?」

 

「ボロボロよね……」

 

 僕はもらったお守りのプロパティを確認しようとタップする。

 

【風化したお守り】

 

昔、狩人が使っていたお守りが長い年月を経て、風化してしまった物。鑑定と力を解放させることができれば、新たな力を身につけた者に与える。

 

「まともに使えるようになるにはまた時間がかかりそうね……」

 

「未だに僕、リオレガス達の素材を持て余しているし……」

 

 まだあの鍛治爺が作ることの許可を貰うことが出来ていないのだ。

 いつになれば使えるのか、全く持って見当がつかない。

 そんな悩みを抱えながら僕らは残りの自由時間を過ごすのだった。

 

 




というかわけで13層編はここで終わりです…!
いきなり打ち切るような形ですみませんが、フロアボスはしばらく出てきません。
まあ原作でも出てきたフロアボスなんてプログレ除けば一層と、七十四層、七十五層の3匹だけですし……許してちょーよ?
狩技
モンハンXシリーズで登場した新システムの一つ。
狩技ゲージを溜めて強力な一撃を叩き込むorプレイヤーに便利な効果を発動させたりする物。
今作では、SSと同じ扱いで、ゲージさえ溜めることが出来ればいつでも発動できる。

今回発動した《震怒竜怨斬》は被ダメージに応じた威力上昇が発生する大技。
喰らわずとも相当な威力があるが、被ダメ込みならばその辺のmobのHPゲージを消し飛ばすことができる。
もしこれが三層にて行われたモルテとの決闘で使われていた場合。逆にモルテが殺されていた可能性もある。

シュバルト

狩技初披露。
初使用技はダメージを受ける必要のある、自己犠牲技。
コイツはご自愛しろください。

ノーチラス
FNCを患っていることが判明?した。
克服できるのか……

研究者さん



リメイク版シュバルト君


【挿絵表示】


中学時代に友人が紙に描いてもらったのをトレスしたものになります。
友人には許可もらってます。
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