シュバルトside
第十三層のフロアボス攻略の後処理を終えた僕達は、先に向かっている、テリー達の後を追う為に、渓流のフィールドを歩いていた。
「さてと、リクから来たメッセージだと、既にリクが主街区に向かったみたいだから、僕達も行こうか」
本来なら、有効化された転移門から移動する方がいい。だが、僕は今、団員の抱える問題を改善する為に、転移門を使わないで、主街区へ向かうことにしたのだ。
「すまない団長。僕のせいで長々と歩かせてしまって」
「気にしなくていいよ。どっちにしろ、レベリングの為にmobは倒さなきゃいけないんだ。そのタイミングが早くなるか遅くなるかな違いだけだよ」
そう言って、僕達はこの周辺に出てくるmobを倒しつつ、主街区に向かう。
この辺に出てくるmobは亀や、キノコや蛇のようなものが多い。
「調子はどうだいノーチラス」
「前みたいなことにはなっていないよ。状況とかも違うからあまり参考にはならないな……」
「そっか」
「そこまで強いのは出てこないからね」
「そうね。亀もデカくて硬いのだけだし、頭を叩けばいいわけだし」
「キノコは小さいから、HPは少ないし」
キノコは胞子に気をつけて胴体を狙えば囲まれるような事はない。蛇も噛まれなければ毒を気にする事もない。
のだが……
「……そうだね」
「ああ、苦戦しないことにこしたことはないな……」
女子陣の発言に僕とノーチラスは微妙な反応になってしまった。
女子陣のこちらを見る、不思議そうな目から逃げつつ。先へ進んでいると、mobの集団の中心にプレイヤーカーソルが浮かんでいるのが目に入った。
なんとか倒しているのか、ポリゴン片が見えるのだが。いかんせん数が多く、後から増える数を相殺出来ずにいた。
「シュバルト! 囲まれてる!」
「ああ! 助けるぞ!」
僕は背中に背負っている槍を抜き、突進系両手槍SS《ソニック・チャージ》で3体のキノコmobを団子のように串刺しにする。
「やぁぁあ!」
ユウキもソニック・リープで2体同時に切っていき、ミトも突進系両手鎌SS《ラメンテーション》で広範囲のmobを吹き飛ばす。
僕は囲まれていたプレイヤーの姿を確認する。
性別は女の子、武器は短剣系、髪はミディアムくらいの焦茶色で、黄緑色の瞳の少女だった。
「えっ? えっ?!」
「そこのプレイヤーさん! こっち!」
3人で開けた包囲の穴からユナが囲まれていたプレイヤーを誘導し、ノーチラスがその後ろを護衛し、安全な場所まで連れていく。
その間に僕達はある程度のmobを蹴散らしてから、その場を離脱して、ノーチラス達と合流する。
「ふぅ……ここまで来たら大丈夫だね」
「うん。索敵にも反応してないから気を抜いても問題ないわ」
ミトの言葉で大丈夫だと判断したのか、目の前の囲まれていた少女は、地べたにドサリと座り込む。
「あ、あの、助けていただきありがとうございます…!」
「偶々僕達が通りがかっただけさ。僕はシュバルト、君の名前は?」
「わ、私はラヴィナスって言います!」
「ラヴィナスちゃんか」
目の前の少女の身長を見るに、おそらく小学校低学年くらいだろうか。それくらいの身長だ。
「君みたいな子供がこんな上層にいるなんて、すごいね?」
そう言うと、ラヴィナスが反論してくる。
「私…! 多分、みなさんと歳は変わらないと思います!」
「「え…?」」
流石に僕も驚いてしまった。
確かに身長の伸びが極端に悪い人もいないわけではない。僕のクラスメイトにも小さい人は実際いたのだから。
「それはすまない……君くらいの身長の同年代はあまり見かけないから」
「確かに私は特に身長が低いですもんね……」
落ち込ませてしまった。
「あーシュバルトが傷つけたー」
「いーけないんだーいけないんだー」
ユウキとユナの2人が、小学生の悪ガキのようなノリで煽ってくる。
「2人とも今日の夜ごはんの飲み物、クーラーポーションね」
「わー! ごめんなさーい!」
「それだけは勘弁してー!」
「手のひらくるくるだな2人とも」
僕のやり返しに慌てて謝る2人。それを呆れたように見るノーチラス。そんなちょっとおかしな雰囲気に、ラヴィナスは身体を震わせる。
「ぷっくくくっ……みなさん面白い人ですね」
「笑ってくれたのならそれはそれでいいんだけど……さてと本題に入ってもいいかな?」
「あ、はい……」
「僕達はこの後主街区に向かう途中なんだけど、君も一緒にどうかな?」
それに対して彼女は、
「そうですね……私もご一緒させてもよろしいですか?」
「それならひとまず、街までよろしくね」
そして、第十四層主街区《シャーディス》へ辿り着いた。
既に街にはリク達3人が待っているはずなので、彼らを探すことにした。ラヴィナスも目的がまだないそうなので、僕達に着いていくようだ。
「確かこの、建物に……」
「団長ー! こっち!」
ソーキの声が聞こえてくる方は振り向く。そこには丸机の席に3人で座っている彼らが見つかった。
「先行攻略お疲れ様」
「いえ、団長達も後処理お疲れ様です。それで…後ろの彼女は?」
「ああ、彼女はラヴィナス。フィールドでモンスターに囲まれていたのを助けたんだ」
「ラヴィナスって言います! 『歳は』皆さんと変わらないのでよろしくお願いします」
「そ、そうなんだね…」
年齢の部分を強調して言う。
身長の事、かなり気にしているようだ。
「それでテリー達は?」
「実は────と言う訳なんです」
「なるほどね……そんなクエストが」
どうやらキーになる可能性があると判断したようだ。もし、僕が同じ状況になったらのなら、同じことをしただろう。
「団長、副団長がクエスト休憩で戻ってくるみたいです」
「なら広場で待とうか。そっちの方が合流もしやすい筈だ」
建物から出て、テリー達を迎えに行くのだった。
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テリーside
「こっちに居るみたいだ」
シュバルトからのフレンドメールの案内通りに広場を見渡すと、先に主街区へ向かっていた、リク達と合流した彼等の姿を確認する。
彼も新しいプレイヤーを連れているそうなので、顔合わせになるようだ。
キリト達はしばらくフィールドを探索してから戻ると言っていたので、合流は後になりそうだ。
「テリー!」
「シュバルト。後処理お疲れさん。それで新しいプレイヤーってのは……」
「ああ、彼女はラヴィナス。ソロでもこの層のmobを倒せるくらいの腕がある」
後ろから小学生くらいの身長の少女がその姿を現す。
「よろしくお願いします」
「ああ、よろしく。それでこっちがサーニャって……」
テリーが銀髪ツインテールの少女を紹介しようとした時だった。その少女はラヴィナスを見た瞬間、声を上げたのだ。
「子供ではありませんか!? なぜ最前線に来ていますの!?」
流石に俺も面食らった。目の前にこんな小さな子供が最前線に現れるのは、普通ではないのだから。
「いけませんわ。彼女は早急に保護されるべきですわ」
「あの、私…みなさんと歳は「良い心当たりがありますの。一緒にいらしてくださいませ!」
ラヴィナスが言おうとしたことを遮って、サーニャは彼女の手を取り、そのまま強引に転移門へと連れて行ってしまった。
「ゆ、誘拐!?」
「行動が早すぎて、呆気に取られちまった!」
「とりあえず追いかけよう。彼女の行き先に心当たりがない訳じゃないし」
焦る面々の中でただ1人落ち着いているシュバルト。心当たりがあるようなので、彼の後をついていくこととなった。
シュバルトがサーニャが向かったと思われる場所へ俺達を誘導する。
そして到着した場所が、始まりの街にある建物の中でもかなりの大きさを持つ、宿屋だった。
「宿屋…?」
「まぁラヴィナスの身長を考えたら、ここに来るだろうなって」
「なんで知ってたの? 前々から知り合ってるわけじゃなさそうだったけど」
「スノーベルだよ。アイツから他の層のでのことを聞いたのさ」
そう言ってシュバルトは宿屋へと進んでいった。
おそらく、下層にいる俺達よりも歳が下のプレイヤーのことが気になったシュバルトがスノーベルに聞いたのだろう。
建物の前にいる2人を目にすると、彼女達の前にラヴィナスくらいの身長の少女がいるのが見えた。
「あっ! ニャーお姉ちゃんだー!」
「ご機嫌ようミナ。元気そうですわね」
「うん! 今日もギンとケインとワーム狩りをしてきたんだよ」
「ケインー! ニャーお姉ちゃんが帰ってきたよー!」
ミナと言う少女と何気ない会話をするサーニャ。
そこに、新たな声がサーニャに掛かる。
「ニャーお姉ちゃん、おかえりなさい! ……ん? ねぇねぇ、その子は誰?」
「私、ラヴィナスって言います」
「新しいお友達だね! あたし達より、ちょっぴりお姉さんかな?」
「そっかぁーよろしくね!」
ケインと呼ばれた糸目の少年がラヴィナスについて尋ねた。彼女が名前を言うと、ケインは隣で聞いてたミナと共に元気よくラヴィナスに挨拶した。
「ミナ、ケイン。サーシャに知らせてきてくださる」
「「はーい!」」
サーニャが二人に向かって言うと、二人は元気よく返事をし、奥の中に入っていった。
「サーニャさん、今の子達は?」
「こちらに来ていただければわかりますわ」
俺達は彼女の後ろを着いて行くことしかできないので、そのまま宿屋の中へ入る。
そこには先ほどの2人よりも幼い子供達の相手をしている女性がいた。
「サーシャ、お客様をお連れしましたわ」
「サーニャ…! お帰りなさい。それでそちらの方々が」
「ええ。先程フレンドメッセージで伝えた方ですわ」
「ギルド龍歴院のギルドマスターシュバルトです。よろしくサーシャさん」
「こちらこそ、始まりの街で保母の真似事をしていますサーシャです」
2人が握手を交わし、それから俺達も自己紹介をした。
どうやらサーシャさんは、始まりの街で身寄りのない小中学生のプレイヤーほぼ全てを集めてこの宿屋で暮らしてる。先程の2人に加えて、もう1人年長の少年の3人がフィールドに出てcolを稼いで、サーシャさんの手伝いをしていることで、その全員がなんとか毎日暮らせるだけの稼ぎをやりくりしているそうだ。あとは世界に適応して街を出た子供もいたそうだ。
「なるほどね……」
「俺達とは別方向で戦ってるんすね……」
俺達は少数精鋭のギルド故に、下の層のプレイヤーを気にかける余裕がなかったが、彼女達の行動は俺達が出来ないことをやっていたのだ。それはとても素晴らしいことだと思った。
「それでラヴィナス、貴女はどうしますの?」
「私ですか…!?」
いきなりとはいえ、サーニャがここまで連れて来たのはここで保護されるべきと判断して連れて来たのだ。最終的に決めるのはラヴィナス本人だ。
「ご厚意はとても嬉しいです。けれど、私は攻略組を目指しています」
「わかったわ。でも、もし困ったこととかがあったらいつでもここに来てね」
「はい。ありがとうございます」
そんな会話を俺達以外にも、物陰から3人の年長児がこちらを覗き見ていた。サーシャさんにバレて、彼らがちょっとしたお叱りを受けたのち、俺たちはクエストを進める前の休息として、ここの宿屋のスペースを借りることになった。
その際、ちびっ子達に武器だったらSSを披露して欲しいとせがまれてしまった。
俺達は、自身が使えるSSを披露し、最後にシュバルトとの同時SS、ソリッド・スクエアを見せたことで、大盛り上がりになった。
余談だが、サーニャが俺達のような同年代のプレイヤーを連れてくることは初めてだそうだ。サーシャさん曰くよほど信頼されているとのこと。
クエスト攻略は次の日に持ち越しとなったのだった。
ラヴィナス
キノコmobの胞子に群がったmobに囲まれていたところをシュバルト君達に助けてもらった。
実は、マスターするのに時間のかかる、とある趣味スキルを取っている。
因みにオリキャラではありません。クロスキャラです。
誰かわかるかなぁ?
プレイヤーネームはリアルネームと二つ名が由来になります。
シュバルト
実はスノーベルから、始まりの街で子供を保護しているプレイヤーがいることを聞いていた。
相変わらず枠外でスノーベルと話をしている。
サーシャ
原作2巻で登場したサブのサブキャラ
彼女の存在が子供プレイヤーを救っているので、攻略に集中しているシュバルト君からすると、とても助かっている。