シュバルトside
クエストに必要なアイテムを集め終え、休息を取る為に主街区へ戻った僕達は、毎層恒例の各々の自由時間を過ごしている。かく言う自分もそのはずなのだが──
「ねぇ、ミトこのブーツどう?」
「デザインはいいけど……濡れた場所だと、滑りやすそうね……」
「確かに……でもこっちは性能がいいのに、ちょっと見た目がイマイチだよねぇ」
毎度の如くユウキとミトの2人がいるのだ。
確かに? 僕を1人にしたら何しでかすかわからないだろうね。だからといってここまで監視することないでしょうに……
「……ん?」
2人から視線を外した先に、クエストマークの金色の『?』が浮かんでいる男性NPCを見つけた。しかしそのNPCは誰にも相手にされるどころか、攻略組らしきプレイヤーにも気にされずにいたのだ。
流石にこれは気になってしまった。買い物を楽しんでいる2人には悪いが、すぐに終わると思い、そのNPCの所へ行く。
「すみません。何かお困りごとですか?」
そうNPCに声をかけると、そのNPCはこちらに振り向くと、ようやく助けが来たと喜ぶような表情を見せる。
「おお、この私が困っているのを見抜かれるとは……貴方はまさか狩人様の力をお持ちなのですね…!」
どうやらモンハンスキル関係のNPCのようだ。
「ええ。と言っても半人前ですがね」
「その力をお持ちなだけでもとても強い方でしょう……それでは本題に入らせていただきます……実は──」
どうやら西の渓流で2匹の竜が暴れており、その2匹を討伐して欲しいとのことだ。討伐対象の名前は『フロース・ザ・フォックス』と『スパーク・ザ・ウルフ』だ。
とりあえずは、その依頼を受注し、その後どうしようかと考えていると、後ろから感じていた視線の方へ振り向く。
「ふぉお!?」
ジト目で睨まれていたのは察していたが、2人がとても近い距離にいた事に、間抜けな声を上げてしまった。
「ねぇシュバルト……どうしてボク達に黙って離れて行くのかなぁ? かなぁ?」
「何のために私達がいるかわかっているのかしら…?」
「すぐに終わるから、いいかなぁ…って」
そんな事を言うと、更に2人の目がキツくなる。
「それで、その依頼の内容は?」
「モンハンスキル関係での討伐依頼」
「……ボク達も行くからね」
「ちゃんとみんなと相談するから…」
「本当に?」
「疑い過ぎだって……」
身から出た鯖なので何も言えないが。
ともかく夜ご飯を外で食べた僕達は、全員で泊まる宿屋に戻り、先程の依頼の内容を、共有した。
「なるほどな……」
「スキル獲得の時みたいに、2匹同時狩猟だから、危険度は高い……参加人数は多い方がいいけど、キークエの方も進めなきゃ行けない」
「パーティを三つに分けるか……」
「フロース・ザ・フォックスは僕が相手にするとして……誰を連れて行こうか……」
「1番連連携慣れしてるユウキとミトでいいだろ。あと1人をどうするかだが……」
「そうだね……」
僕は今いるメンバーの中で誰にするか考える。
大体の面子がコンビ若しくはトリオを組んでいるが故、それを崩すのは良くない。そうなると、選択肢は2人だ。
「ラヴィナスに頼んでみるか……テリーはスパーク・ザ・ウルフに行くんでしょ?」
「ああ」
「誰と行くのさ」
「とりあえずフィリアとサーニャ、ソーキ達の内1人からだな……そろそろ別メンバーともやれるようにはなった方が良いと思ってな」
「なるほどね……とりあえず3人に話しておこう」
「そうだな……」
そうして、僕達はモンハンスキル関係のクエストのことのを伝えて、参加の有無を聞いたところ、ユウキとミトは「当然参加する」と言い、ラヴィナスも「お手伝いさせてください」と言い、この4人で狩猟をすることとなった。
テリーもフィリアとサーニャ、ソーキを連れて狩猟へ出るとメッセージを送ってきた。
そして残りのメンバーは途中のキークエを進めることとなった。
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翌日、僕達はクエストで指定されているポイントに4人で向かう。僕が今回使うのは久しぶりのCアックスだ。モンハンスキルにはFroth・The・Foxという名前から判断した『泡沫の舞』とそれに合わせた『死中に活』と盾を使うので『ガード性能+1』、『ガード強化』を発動させている。
そして編成として、前衛が僕とユウキ。遊撃にミトとラヴィナスで常に前衛がタゲを受け持ち、遊撃の2人で攻撃の妨害や、行動の報告をして、前衛が不意打ちを喰らわないように声掛けをする作戦だ。
「確かにここにいるって話なんだけど……」
滝が流れている場所で辺りを見渡していると、薄桃色の鱗と濃い紫の体毛を持つモンスターが底の浅い川を泳ぐように這って現れた。
そしてこちらを威嚇するように咆哮を上げ、様子を見るように歩く。僕達が逃げないと判断すると再び咆哮を上げて唸り声を漏らし始めた。
「全員戦闘体勢!」
それぞれが武器を抜き、フロース・ザ・フォックスに切先を向ける。
「作戦通り行くぞ!」
僕が泡狐に剣を振るう。
ガキン!
胴体の鱗にあっさりと弾かれてしまった。
「固…!」
まるで石の壁をスコップで叩いたみたいだ。
泡狐が引っ掻き攻撃を僕に向けて振り下ろしてくるので、盾で受け止め、それを打ち払い、体術SS弦月で蹴り上げるのだが、首を捻らせた泡狐に躱されてしまう。
「そう簡単にはいかないか……」
僕は追撃の噛みつき攻撃をバックステップで躱し入れ替わるようにユウキが前に出る。
彼女も剣を振るうものの先程の僕同様、固い鱗に阻まれ、まともにダメージを与えられない。
「ここもダメ!?」
色々な場所を切るのだが、どこも弾かれてしまう。
あの綺麗な鱗の強度は、今の僕達の武器では無理だという事だろう。ならば他の部位を攻撃して、肉質の柔らかい所を探すしかない。
「ミト! ラヴィナス! 投擲武器で弱点部位を探してくれ!」
ラヴィナスも投擲スキルを持っていることは確認済みである。
「了解!」
「わかりました!」
その間、僕とユウキはヘイトを2人に向けられないように、攻撃を続ける。尻尾の叩きつけや、這いずるようにこちらへ突撃してくる攻撃を大きく余裕を持って回避する。
「シュバルト! ナイフは頭、背鰭、尻尾に刺さった!」
「他の場所は全然刺さりませんでした!」
その時、泡狐の顔が離れている2人の方へ振り向いてしまった。おまけに口に何かを溜めるような動作を始める。
「不味い! 2人ともその場を離れろ!」
僕の叫びを聞いた2人は咄嗟にその場を離れようと走る。ミトは射程から離れることができたが、ラヴィナスが何かに足を滑らせてしまい、前から倒れてしまった。
「くっ…!」
僕は急いで転んでしまった彼女の前に立ち、盾を構える。
泡狐の顔が一度上を向く。口から高圧縮されたであろう、水圧レーザーを吐き出してきた。それをラヴィナスに向けて振り下ろす。
「やらせるかっての…!」
僕は盾を斜め上に傾け、振り下ろされる水圧レーザーを上手くジャストガードする。
「意外と重いな……ん?」
水圧レーザーを受け止めていると、足元に違和感を覚えた。妙に滑る、水場とはいえこれは明らかにおかしいのだ。
ふと、泡狐が水面を滑っている時の、姿を思い出す。滑る奴の腹の飛沫の色が妙におかしかった。
もしかしたら、ラヴィナスはこれに足を取られてしまって、転んだ可能性がある。
「確かに奴の名前は『Froth・The・Fox』……泡を使うのなら滑る技を使う……いや、それだけじゃないはず…!」
盾に阻まれ、攻撃を通すことができないと判断したのか、こちらを無視して、ユウキ達の方へ滑りながら突進していく。
「2人とも! 滑らないように気をつけて! コイツ、泡みたいな粘液を出してる!」
それを聞いて対応する間もなく、泡狐は口から大きな泡を正面三方向に吐き出す。
「きゃあっ!」
「なにこれ!?」
大きな泡を受けた2人の身体に巨大なシャボン玉が纏わりついており、武器を地面に落としてしまっていた。
「ユウキさん! ミトさん!」
「早く逃げろ!」
しかし上手く動けないのか、ワタワタするような動きしか取れずにいた。その際で、2人はモロに泡狐の尻尾薙ぎ払いを喰らい、浅瀬に転がされてしまった。
2人のHPは危険域にこそ落ちずに止まったが、3割強と、次はない状態だった。
「ラヴィナス! 君は2人の元に! 僕は全員を庇う!」
「わ、わかりました!」
2人の安全を確保する為にも1秒でも長く、引きつけ、盾にならなくてはならない。
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テリーside
俺はフィリア達を連れて森の奥までスパーク・ザ・ウルフを探している。
「フィリア、ソーキ、電気が弾けたりするような音が聞こえたか?」
「……今聞こえたよ」
「俺も聞こえました」
「聞き耳スキルは便利ですわね……私も取った方がよろしいのでしょうか……」
「今後もソロを貫くのなら取った方が良いだろうな……」
そんなことを話しつつ、フィリアとソーキが聞こえた音の方へ向かって行くと、ついに目的である大型mobと遭遇することができた。
胴体部を覆う碧色の鱗と所々のパーツにある黄色の甲殻。帯電しているのか、バチリバチリと青い雷が弾けている。
「全員、感電対策のゴム装備はしているな?」
3人からコクリと頷くのを見て、俺は先制攻撃として、ソニックリープを放ち、帯電しているとはいえ無防備な背中に一撃を喰らわせる。
『グルルラァ!?』
不意打ちのSSはかなり効いたのか、驚いた鳴き声を上げる。
「行くぞ!」
俺は雷狼の正面に立って攻撃を誘う。
その間にソーキ達が背後に立って攻撃をするという基本的な戦法だ。
雷狼が頭上に翳した、右前足に電気エネルギーを溜め、それを俺目掛けて振り下ろしてくる。
それをバックステップで避けるが、電気を纏っていたせいか、それの余波によるダメージを軽く受けてしまった。
「ちっ……電気を纏っていたのを失念していた……喰らったらひとたまりもないな……」
右足か振り下ろされた跡を見て、俺は戦慄した。
焦げた地面。ここが水場であれば、全員が感電していた可能性もあった。
「だが、今回の俺は壁役に徹する他ないな……」
盾持ちが俺しか居ない。ジークかノーチラスのどちらかを連れて行くことも考えたが、そうなると攻撃面が不安になる。サーニャの魔剣も火力は高いが、継続して攻撃する必要がある。続けることが出来なければ、火力が足りなくなる。なので、ソーキを連れて行くことにしたのだ。
「うおっ!?」
奴は頭の角のような甲殻で突き上げが俺の目の前を過ぎていく。更にはムーンサルトのように回り、そのまま尻尾を叩きつけてくる。
「犬らしく機敏な動きだな…!」
激しい動きでこちらが攻撃する隙を見つけることができない。だが奴が俺を見ている間、フィリア達は安全に攻撃ができる。
「だからと言って、俺が攻撃をしないとヘイトがそっちに向いちまうから、攻撃はしないとな…!」
俺は単発SSを何度も繰り出し、ヘイト値をコントロールする。
時折、危ない場面もあったが、盾を駆使し、攻撃を逸らして直撃を避けていく。
サーニャの魔剣が赤くオーラを纏い続けている。継続的に攻撃が出来ている証拠だ。ソーキも僅かな隙を突いて大技を叩き込んでいる。
この調子で攻め続けたいが、何をしてくるかわからない。何が来ても良いように、余裕を作り、不意打ちを避けなければならない。
「っと……お前の相手は俺だが、お前を倒すのは俺以外だっ!」
雷狼が後ろのフィリア達を狙おうとするので、ホリゾンタル・スクエアで大きめのダメージを与えて、こちらに釘付けにする。
しかし、この状況に痺れを切らしたのか、奴は身体を青く発光させる。周りから同じ色の光の球が雷狼に集まっていく。
「テリー! 離れた方が良いかも!」
「そうだな…! 嫌な予感がする…」
俺は一度距離を置いて、様子を見る。
『アオオーン!』
遠吠えを上げると、奴の身体から青い電気がバチバチと走り始め、背中の甲殻と鱗が光る。
「やばいんじゃないっすか…?」
「ええ。近寄ることが危険な雰囲気ですわ…!」
雷狼は一気に距離を詰め、右前足を振り翳す。
「不味い! 全員回避!」
俺が叫ぶと同時に、全員、雷狼から距離を取るよう、バラバラに転がっていく。
奴の左前足の叩きつけの衝撃が広がり、電気が地面を走る。それに当たることはなかったが、次に俺ではない者が狙われてしまった。
「フィリア!」
先に目をつけられたのは1番近くにいたフィリアだった。
雑に叩きつけられた左前足の一撃目と違い、しっかりと狙われた右前足の叩きつけが彼女を潰そうと振り下ろされる。
「くっ……!」
素早い身のこなしで、それを回避するが、本命であろう、三撃目が避けた先のフィリアに振り下ろされそうになる。
「フィリアァァァア!」
俺は彼女に突撃し、剣を捨て、身体を抱えて前に飛び込む。
「ぐあっ…!」
フィリアは無事だったが、俺の右足が奴の叩きつけを避けきれずに、潰されてしまう。
「テリー!」
膝から下の右足の感覚が失われる。どうやら爪が悪さをしたようで、部位欠損の状態異常になってしまったようだ。
「副団長!」
しくじった。部位欠損は時間経過で治るが、凡そ3分は足手纏いになってしまう。
「ソーキ! 奴を引きつけて!」
「了解です!」
そうしてフィリアが俺に肩を回して、そのまま戦場から距離を取らせる。
「すまん……」
「ううん。私が避けきれなかったのが悪いよ……」
「いや、あれは流石に無理だろう。むしろ死なずに足だけで済んでよかったさ」
「とりあえず、テリーは回復するまでここで休んでて。私達であいつを引きつけるから」
そう言ってフィリアは雷狼が暴れる戦場に走っていく。そうこうしている間にも俺の欠損の時間は減っていく。
「あと、2分半……早く治ってくれ……」
俺は状態異常のカウントダウンを見続けるのだった。
シュバルト組
シュバルト君は万が一を備えて対泡スキルを取りましたが、ここまでとは思わず、ピンチな展開に……
おかしいな、もう少し余裕の展開にするつもりだったのに……
テリー組
こちらもピンチに。
欠損ってかなり焦ると思うのに、焦ってるのに割と冷静なの何なん?
フロース・ザ・フォックス
タマミツネ君
泡泡でアワアワする展開になった。
スパーク・ザ・ウルフ
ジンオウガ君
最初は不意打ちにより、状況不利になったが、超帯電状態になってからは形成逆転。
ピリピリとひりつく展開に。