エクストラスキル:怪物狩り
シュバルトside
宿屋で休んだ後、これからアルゴ達とこの層の情報を集めるのだが、先に済ませておきたいクエストがある。
「さてとクエストの内容が変わってないか確認もしないと…」
アルゴ達にメールを送り、この層の西の外れにある、森へと走る。
「……で、この森の奥にあるボロ小屋を探すわけなんだけど」
これ自体も骨が折れる。
薄暗い森の中で、木に付けられている印を探し、それを追う事で小屋を見つける事が出来る。
「戦闘を避けるために、mobに見つからないようステルスしなきゃ」
エクストラスキルのクエスト内容がどんな物に変わっているのかわからない。
この辺りの敵mobは平原と違って虫系がメインなので、ネペントや嗅覚の鋭い動物系mobよりは
「……見つけた見つけた」
何かの紋章が木に刻まれているのを見つける。
「えっと確かここから……」
僕はコートの内ポケットに入れたメモ帳を取り出す。
二層の主街区の図書館的な建物の一冊の内容の一部を書き留めた物だ。
「うん、ここから北西にある木だ」
正直言ってこのクエストを探すまでが鬼畜すぎる。
作者みたいな方向音痴には絶対見つけられない。
それから十数分ほど森を中を歩き、ようやく小屋を見つけることが出来た。
「……戦闘もなく、見つけられてラッキーだね」
この実績のせいでまた幸運のお守りとしての価値が上がってしまいそうだ。
「失礼しま〜す……」
小屋の中には、目に包帯を巻き、頭上にはクエストNPCである証拠の『?』が浮かんでいる杖をついた老人が椅子に座っていた。
「……ん…旅人か?」
「ええ、貴方が伝説の狩人と聞いたので。その技と知恵をご教授いただきたく、この小屋へ参りました」
「……そうかい」
老人は何か考え込むそぶりを見せる。
「……お前さん、コイツを見てくれるかね」
老人が出した羊皮紙にはモンスターが四角に収まるように描かれていた。
「こやつの名はリオレガス《空の王者》とも呼ばれておる。この森の奥地の主じゃ……お前さんにはそいつを狩猟してもらう。見事、狩猟に成功した暁にはお前さんには儂がモンスターハンターとして培った技術と知恵を授ける」
そう言うと頭上の『?』が『!』に変わる。
クエスト受注が完了した。
「お前さんには忠告だ……奴の足には毒がある。引っ掻かれれば無事では済まんぞ……それに最近ヤツ気が立っておる……咆哮が2つ……気をつけて挑むが良い」
老人からの忠告を聞き終え、小屋を出てため息を一つこぼす。
「……クリア出来るかなぁ…これ」
β時代の内容とごろっと変わってしまっている。
βだと鳥竜種系を20匹狩猟だったのに、製品版だと、大型モンスターの狩猟に変わっている。
「何はともあれ、やらなくちゃね。これクリアしたら万能スキルが手に入る訳だし」
僕は森の奥へと足を進めるのだった。
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ユウキside
昨日、フロアボスとの戦闘や牛のレアモンスターに追っかけられたりと、かなり疲れたボク達は宿のベッドに倒れると、ぐっすりと眠ってしまった。
「……すごい深く眠っちゃった」
目を覚ましたのが、既にお昼頃。時間にして11時。学校があったら完全に遅刻だ。
「……肉体的な疲労はないって、言ってたけど、精神的疲労はあるんだね。慣れなきゃ」
急いで身支度を済ませようと、メニューを開くと新着メッセージが届いている。
「差出人は……シュバルト?」
メッセージを開き、内容を確認する。
『この層にある、エクストラスキルのクエストを受けてくる。このクエストはβだと1人でしか受けられないクエストだったから、連れていけない。ごめんね。ユウキはアルゴとミトの2人と情報を集めてて。』
と送られていた。
また彼は1人でやっていた。
「シュバルト……昨日手伝うって言ったばっかじゃん……」
1人でしか受けられないクエストとはいえ一言伝えて欲しかった。
とりあえずは、アルゴとミトの2人と行動することだ。
2人にメッセージを送る。
「ミトは……宿屋に来るけど……アルゴは遅れてくるんだ。何かあったのかな?」
下の大広間に降りると、既にミトが席に座っていた。
「寝坊してごめんなさい」
「昨日あんなことあったんだもの。しっかり寝れた方が良いわ」
ミトは気にしていないようだった。
「それで貴女の幼馴染は…」
「うん……また1人で行っちゃった」
「仕方ないんじゃないかしら。あのクエスト、1人用なんだし」
「それでも一言伝えて欲しかった……」
「帰ってきたら、目を離さないようにしましょ」
「そうだね……絶対逃さない」
シュバルトにはボクが頼れるって事を証明しなきゃ。
そう決意して、ボクは宿屋の食堂で注文したお昼ご飯を食べる。
「ミーちゃんユーちゃん待たせたナ」
「アルゴさん! ボクは今起きたと言うか寝坊してたから…」
「まぁあれだけの戦闘の上に初めてノフロアボス戦ダ、思ってたより疲れてたんだろうサ」
そう言ってアルゴさんは食堂で注文した、チーズトーストを食べる。
「それで、アルゴ。今日はどうするの?」
「この層のフィールドのモンスター情報だナ。ドロップアイテムと行動パターン。あとはフィールドで採取できるアイテムの確認になるナ」
「流石にドロップ率とかは確認しないんだね」
「そうね……そこまで調べられないもの」
その通りだ。
シュバルトでさえわからないものをどう調べろと言う事だ。
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シュバルトside
歩き続けておよそ30分。ようやく目的のエリアに到達。
「さて……これからそのリアレガスを探さなきゃいけないんだけど……」
気合いを入れ直した時だった。
頭上から突風が吹き下ろしてくる。おまけに大きな影も現れる。
「向こうさんからお出迎えとはね……」
赤い甲殻に覆われた飛竜。
「そんじゃま……ハンティングスタートだ!」
『キシャァァァァア!』
リオレガスは咆哮する。接敵時における威嚇だろう。
やはり大型モンスターの叫び声はとてつもない。油断すると後ろに飛ばされそうだ。
「地道に削るとしますか!」
僕はリオレガスの足元まで走り、転倒させるために足を切り付ける。
奴は鬱陶しそうに足を振り、僕を払いのける。
後ろに飛び、口に炎を溜め込む。
火球ブレスだろう。僕めがけて3発放たれる。
「あっつぅい!」
直撃こそしなかったが、火球が体の横を通る。爆炎とその熱は隠しボスのドロップアイテムのマントにより、炎属性のダメージが抑えられている。
あの時、ボスを倒せてよかったと、心の底から思った。
それからは長い戦いだった。
奴が火炎を吐けば、ギリギリで回避、滑空による体当たりは飛んで、すれ違いざまに背中へ剣を突き立てながら回避し、空中からの足による引っ掻き攻撃は距離をとって横へ回避。喰らえば毒を貰ってしまうため、これは最優先で注意。
尻尾の振り回しは剣で受け流す。
正直なところ、盾を買っておけば良かったと後悔している。
「そろそろ倒れてくれないかなぁ……」
リオレガスも体力が少ない為、足を引きずりながら移動していた。それを確認し、長引かせない為にもトドメを刺そうとした時だった。
「これで……っ!?」
右上から火球が降ってくる。
「うげぇ……そんなことあるぅ?…」
空から緑の甲殻に覆われたもう一匹の飛竜が降りてくる。
「気が立っているってそう言うことか……」
番の竜。
雄の竜に危機に駆けつけたのだろう。見るからに激昂している。
「とにかく先にリオレガスを仕留めないと……」
僕はリオレギスを無視して、リオレガスに切りかかる。
逃げられて体力を回復されるのは大変面倒だ。
「せぇあぁ!」
リオレギスがそれをさせまいと火球を吐くが、走る時の歩調をずらしながらかわす。
スレスレで火球が通り過ぎる。
「待てぇ!」
空へ逃げようとするリオレガスに飛びつく。腰に持つ、ナイフで背中を滅多刺しにする。
「落ちろぉ!!」
背中の痛みでバランスを崩したリオレガスは、地に落ち体勢を立て直そうともがいている。
「ここでトドメを刺す!」
僕はリオレガスの頭や肉質の柔らかい腹を切り裂く。
ホリゾンタル・アークがクリティカルで入ったことにより、残りわずかな体力を削りきった。
「よし…次っ!」
リオレガスの討伐を確認した僕はリオレギスの討伐へと走る。
『キシャァァァァア!』
番を殺されたことに更に激昂し突進してくる。
「ここぉ!」
喰らい付こうとしたリオレギスの横へと回避しながら切り付ける。
「そこっ!」
『グルルルァ!!』
リオレギスの頭を避けられたが、翼にぶち飛ばされる。
「グァッ!?」
避け切れなかったか。
幸いそこまで威力がなかったようで、ダメージは少なかった。だが、蓄積したダメージは僕のHPを2割まで削っていた。
「んぐっ……ぷはっ……これで回復は無し……」
最後のポーションを飲み干し、剣を構える。
「……そうだ」
僕はクイックチェンジを使い、予備のアニールブレードをもう片方の手に装備する。
これによりイレギュラー装備状態になり、SSが使用不可能になった。
だが今回は通常攻撃に重きを置く為、さしたる問題ではない。
「SS使う隙が今のコイツにない……行くぞっ!」
剣を振り回す。
翼を足を、尻尾を切りまくり、攻撃をかわす。リオレガスの時とは違い、回避重視の戦闘に切り替え、継続的にダメージを与える。
更に数十分が経過し、遂にリオレギスの体力を削りきった。
「はぁ……はぁ……死ぬかと思った……」
2体同時狩猟とか2度とやりたく無い。
そう考えながら僕は小屋まで足を運ぶ。
帰り道は長く、狩猟の疲れもあり中々小屋まで辿り着くのに時間がかかってしまった。
「戻りました……」
小屋に入ると、老人は見えていない筈の目で僕を見る。
「……この気配…お前さん、あの2匹両方をやりおったな」
「ええ、まぁ。襲われたので」
老人は笑みを浮かべて、立ち上がり、僕の手を掴む。
「お前さんは儂の期待以上の逸材のようだな……」
そう言うと、壁の棚に置かれている、古ぼけた箱を取る。
「お前さんのような奴ならコイツを渡しても問題はあるまい……」
そう言って箱を開けると、中には無骨なナイフが大切そうに置かれていた。
「これは……?」
「儂が昔愛用していた、剥ぎ取りナイフじゃ……」
それを手に取り、アイテム情報を見る。
歴戦のハンターが使った剥ぎ取りナイフ。
滅多なことでは刃こぼれせず、常に最高の切れ味を保つ。
しかし、武器としては役に立つことはない。
このナイフは高い攻撃力も無く武器として使う事はおろか、短剣より短く為、SSを使う事もできない。
おそらくは大型モンスターにしがみついた際にこのナイフで身体の一部を剥ぎ取ることができ、素材と共に微々たるダメージを与えられるのだろう。
このナイフをクエストクリアの報酬に実装した記憶はない。
「コイツには何度も世話になったが……儂がハンターを引退してからは使ってなくてな……今じゃ骨董品になってしまっておる。だがお主のような者ならばコイツを渡しても問題あるまいと思った。コイツ受け取って貰えんか?」
老人はこのナイフがこのまま日の目を見ることなく、自分と共に朽ちることが嫌だと、僕にこれを譲ると言うのだ。
「わかりました…このナイフ使わせてもらいます」
「そうか…! この老耄の頼みを受けてくれるか……」
老人は心から嬉しそうに笑いながら涙を流し、僕の手を握る。
「そのナイフがお主の旅の助けになると良いな……」
そう言って老人は椅子に座り、疲れたのか眠ってしまった。
「さてと……クエストも終わった事だし、街に戻りますか」
来た道を戻るだけなのでサクサクと進み、戦闘時間が長びき日は沈んでいる。主街区の光が見える所まできたので、走ることにした。
「ユウキ達はもう宿屋に戻ってるかな……」
メッセージを送ると、すぐに返信が来る。
「んじゃさっさと戻りますか」
宿屋へ戻り、最初に目にしたのは既に料理をテーブルに並べ始めているユウキ達の姿だった。
「ただいま〜」
「シュバルト! おかえり!」
「お疲れさん。例のスキルは手に入ったのか?」
「勿論。これで色々融通が効くようになるから、試せることが増えたよ」
「んじゃ、βと同じ様なことができるのか」
「ちょっと〜βテスターだけの話しないでよ」
「そうだよ。ボク達わからないんだからさぁ」
おっとうっかりしてた。
「というかオイラ達も知らないんだから説明して欲しいゾ」
「そうよ、私だって知らないんだから」
と言うことで、今回獲得したスキル『モンスターハンター』の説明とスキル獲得のクエストの情報を共有する。
「スキルの内容は、装備スキルの統合だね。どんな武器も防具もこのスキル一つで済む。つまり、今使ってる片手剣のスキルだけじゃなく両手剣のスキルも使えるし、防具も自由に装備できる」
「スキルの枠はどうなってるんだヨ!」
「統合されてるから枠空きになるね」
「このスキルを全プレイヤーが獲得したら」
「攻略に選択肢が増えるけど……このクエスト、実はレベルが上がれば上がるほど難易度上がるんだよね……βと同じなら、だけど」
「レベルオイラと同じくらいだったんだナ」
「……流石に茅場晶彦もこのスキルをそう簡単にくれる訳ないだろうからな……βの仕様のままだろうよ」
「なら早急にその事を攻略本に載せないとナ……」
クエストの仕様を知らない人がこれを偶然見つけて受けてしまったら大変だ。
オマケにこのスキルを過去に入手したテスターが今回のクエストの内容を知らないで受けて死なれても困る。
「そのスキルの内容はそれだけなの?」
「あとは、このスキルの熟練度を上げる事で耐性とか戦闘補助のスキルMODが取れるけど、熟練度上がるのは遅いし、MOD一つつけるのに必要な熟練度は100区切りで最大10個まで獲得可能。一応付け替えはできるけど……あんまりそれする人はいなかったね……」
「それはまたやばいスキルね……」
「……てかお前今、レベル幾つだ」
「11だよ。フロアボスの時は6だね」
「…よく生きてたなオイ」
「正直死ななければ安いからね」
と、そんな言葉を漏らすと、ユウキとミトの視線か突き刺さる。
「……これからキチンとレベル上げるからさ」
そう言って2人を納得させる。
「それで、クエストの内容って何?」
フィリアが話を戻す。
「βだと、鳥竜種系の小型mobを20匹を倒す事だったんだけど、今回は大型モンスターの狩猟に変わってた」
『ガタン!』と音を立ててユウキが立ち上がる。
「な、なんで辞めなかったの!」
「…このスキルが必要だったから。それだけだよ」
「……そっか。今後そんな1人でしか受けれない上に必須なクエストない?」
「今の所は無いよ」
「もしそんなクエストあったら次はボクが受けるから」
「いやいや、ユウキに危険なことさせられないって」
そこからは互いに譲らないと言い争いになる。
「おーい。痴話喧嘩するのは構わないケド、オイラ達いるの忘れないで欲しいナー」
アルゴが割り込むと、僕とユウキはハッとなり席に座る。
流石にこれは恥ずかしい。うん。
「とりあえず、ご飯食べよう!」
注文した料理が不味くならないウチに食べる進める。
「ふぅ……美味しかった」
「料理スキルとったら自分でももっと美味しいの食べれるのかな……」
「スキルと食材ランクの高いので作ればね……」
「いつか美味しいの食べたいね……」
キリト達はこの間に体術スキル取りに行ってます。
シュバルト
まーた1人で行動してる。
こいつには危険なところに突っ込んでる。
ユウキ
過保護具合に磨きがかかりそう。