また会うのは2週間後だ。その時はまた成長してるんだろうな……彼は。
彼はそう……この世界の救世主だった。だが、力がいけなかった。
そのバッドエンドの要素の一つがこの街。王都『ケインベル』
ここに主人公達は2週間後に来る。楽しみにしてる暇はない。俺は直ぐ様友人と連絡を取った。
『ワタリドリ』
その友人の名だ。ワタリドリという名の通り各地を転々とするやつだ。だがもうワタリドリは居ない。
元ネタとなったワタリドリを知ってるのはこの時代には居ないんじゃないだろうか?
悲しいことだ……だが美しくもある。
知っているのは俺達だけ。そんな自慢があるのさ。
ワタリドリは5日後らしい。それまで都内を探索でもするかと勢いよく飛び出したは良いものの、屋台の多さに目を引かれた。
「野菜炒め……いい匂いだ。黒胡椒なんて中々手に入らないだろうに……」
「食ってくかい?」
「いくら?」
「一盛り2カムだ」
2カムと言うと1800円くらいか?やっぱり高めらしい。
換金したての金で二盛り買った。そこしこ大きな野菜炒めに舌鼓を打つ。
やはりもやしがしなってなければ野菜炒めではないな。硬い部分が少し良い味を出している。
「うま……うま……………、……ん?」
俺を見ている少女。目線の先は俺の野菜炒めだ。
「………」
クソほど気まずい空気が流れる。それでも俺は食べ続けるが、あともう少しといった所で箸の手を止めた。
「……………チッ」
俺は丁寧に皿を置いてその場を去った。すると少女が食い付くように野菜炒めを食べる。
あんなものを食ったらあと2日間は食事が不味く感じるだろうな……なんて考えるが、良いことをやったんだ。その程度の不幸は感じておけ。
「………美味かったな」
たまには行ってやろう。
***
今日は嗜好を変えてフランクフルトにした。マスタードも載ってる。ピクルスも沢山。オニオンの上にケチャップまでもある。
少し湿ったハンズに挟み完成したはホットドッグだ。
自分で作ったものはクソほど美味そうだ。だがまだ食べない。
もう一つ作り2つ同じものを作った。
俺は片方を3分の1食べるとベットの片隅に座ると少女へ渡した。
「食え」
手渡しではなく投げて渡す。上手くキャッチしてほとんど崩れず手元に来た食べ物に困惑顔だが食べると顔の周りに美味しいのか星が出る。当たり前だろう。
俺はもう一つのホットドッグを手に取り食べる。少女は俺に見られながら食ってるが、それを気にせず小さい口で一生懸命食べている。まあ俺が作ったホットドッグだ。店なんかではなくレストランで出せるレベルのホットドッグだろう。無心で食べるのも板しか無い。
「……フン」
ワタリドリが来るのが遅いから話し相手にとあの時の少女を宿に連れてきた。
だがコイツはまるで喋らん。案内出来ない無能だ。そのくせ夜はしようとウサギになるのだから……マジでなんの役にも立っていない。唯一コイツが食ってる所を見てると自尊心が良くなる程度だ。
「………飼われは飼われか」
こんな事をやってるのは俺だけではない。この少女のようにホームレスの少年少女達は売られている。それがこの国の法律だ。
主人公はそれを壊し、少年少女達による未来ある平和な世界を作るために王を殺す。
そして第二王子によって法律は撤廃されるんだ。そんなストーリーがここで行われる。
だが、その後の未来は悲惨だ。
王が死んだと聞いてすくさま戦争が始まった。だが、敵の奇抜な作戦によって追い詰められたこの国は投降をし、少年少女達は元の生活に逆戻り。それどころか街の人達は虐殺されてゆくのだ。
元王様であればとそんな噂が広まる前にこの国は消え去る。所詮、犬は犬なのだ。
「お前。自由になったらなにをしたい」
食べ終わり手についた玉ねぎを舐め取っている少女にそう聞いた。
だが、返答は無く。俯向いて何も考えられないと言うかのよう。
「………お前は自由になったら。何でもして良い世界で何を求める?何故彷徨う?その先に苦労しか無くても進み続けたいと思う理由はなんだ?」
少女は更に俯く。言葉はわかるはずだ。彼女は理解している。だが、想像出来ない。
そんな世界が。そんな苦しい世界が。
「……………ハァ」
俺は風呂に入ろうと部屋の扉に手をかけた。
「……、…を………」
少女の言葉が俺の手を止める。
「………とを……つく……」
言葉に出して良いのか?そう疑問するかのように掠れ声な少女。
「………ッ!!」
覚悟したかのようにベットから降りて俺に近づく。
「おっとを!!つくりたいです……」
確かに聞こえた。夫を作りたいと。結婚したいと願う少女の声が。
その声が……
「……………」
扉を閉める。
部屋の外に出た俺はドアノブから手を離せずに居た。
少女の声は美しかった。もう少し成長し、しっかりとした環境で育てばアイドルよりも清楚な出で立ちで佇む美女になるだろう。そう思わせる顔と声。
そんな彼女が願うは夫。聞かなくてもわかる。どうせ結婚は幸せだからだとかそんなんだろう。
たが……
その声はあまりにも……
「………マジョめ…」
魔女の音色に似すぎていた。