悪魔の実 Sレア   作:もやしモン

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第九話 お前、俺の〇〇になれよ!!

 バタン、とドアが閉まった。

 

 面接を終えたビビ──じゃなくて、ビィオラが部屋を出たあと、室内にはどこか乾いた沈黙が残った。

 

「……アズキバー試験って何?」

 

 ミス・バレンタインの目が、じっとこちらを射抜いた。湿った視線。呆れと皮肉がないまぜになった“ジト目”だ。可愛い。

 

「根性と、こっちの無茶に応えられるかの、ちょっとした度胸試し」

 

「まぁ……度胸があったのは認めるけどさ」

 

「それで、君の率直な意見は? 」

 

「……素直すぎる。こういう裏社会に来るような子じゃないわね。向いてないと思う」

 

「だよな……それなのに、ミス・オールサンデーが“合格させろ”って言ったんだよなぁ」

 

 面接を行う際に、ミス・オールサンデーは条件をつけた。面接の内容は問わず、合格させるようにと。

 

「理由を想像するなら……疑いを避けるためとかかな」

 

「誰に対してのよ」

 

「そこまでは分かんないけど、彼女がよっぽどの重要人物か、ミス・オールサンデーの関係者とか。オフィサーエージェントに面接させたっていう、表向きの“正当性”を演出したって感じかね」

 

 ちらっと横目で見たミス・バレンタインの顔は凄く険しい。嫌な事を聞いたと言わんばかりな表情だ。

 

「……考えるだけ無駄よ。なんか、深入りしちゃいけない気がする」

 

 ミス・バレンタインは椅子の背にもたれて、細い目をさらに細めた。窓から見える少女の後ろ姿が映っていた。

 

「そっか、じゃあ、飯でも食べるか? 良い店を事前にチェックしてたんだ」

 

「へぇ、気がきくわね。早く、行きましょう!」

 

 俺は軽く笑って、立ち上がった。

 

 

 ──────

 

 

「この肉まん、美味しい!」

 

 夜風に揺れる小さな屋台で、ミス・バレンタインは頬を膨らませながら、ほくほくと笑った。可愛い。

 

「でも、なんで肉まんなの? あっちの洋食屋、めっちゃ並んでたし、人気なんじゃない?」

 

「まぁな。でも、君が“中華の気分”って顔してたから」

 

 なんかで見たが、高級な店に来て1番高いのを食べるのは下手っぴとかどっかの班長が言ってた。その時の気分、1番食べたいものを食べるのが良いと。

 

「そんな顔、あるの?」

 

「ある。君はわかりやすいからな」

 

 彼女は一瞬ぽかんとした表情を浮かべ──それから苦笑して、肩をすくめた。

 

「……してたかもね」

 

 彼女はカップに口を近づけ、ふぅっと紅茶に息を吹きかけた。立ちのぼる湯気が夜の冷気に溶けて、ふわりと揺れる。

 

 港町の屋台通りはすっかり落ち着いて、周囲にはまばらな人影と、遠くの波音があるだけだった。任務のあとの、この緩やかな静けさ──こういう時間が、意外と好きだったりする。

 

「……よく見てるわよね、あんたって」

 

 不意にミス・バレンタインがぽつりと言った。その声のトーンが、いつもと少し違っていた。

 

「面接の話。あの子、緊張してたでしょ。自分でも“場違いだ”って思ってたと思う……それで、あんたがさ。アズキバーで空気、緩めようとしたんでしょ?」

 

「ハハっ、バレてたか。暗い雰囲気、苦手でな。つい、変な事を……」

 

「そういうの、余計なお世話じゃないよ。ちゃんと、届いてたわ」

 

 そう言って、彼女はまたレモンティーを一口。

 その横顔には、いつもの皮肉っぽさじゃなく、やわらかさが宿っていた。言葉が詰まった俺は、照れ隠しのようにスープをすすった。

 

「……俺のことよく見てんね」

 

「うん。思ってる以上に、ね。あんた、意外とわかりやすいわよ?」

 

 彼女はふっと笑った。

 

 その笑顔は、からかいじゃなかった。静かで、あたたかい──俺の知らない、彼女の“素顔”だった。

 そう言いながら、風がふわりと吹いて、落ちていたナプキンをさらっていった。

 俺がそれを拾い上げると、ミス・バレンタインがぽつりとつぶやいた。

 

「……ねぇ」

 

「ん?」

 

「一緒に任務をやり続けて1年は経つじゃない」

 

「そっか、もうそんな経つか」

 

 俺がこの世界に来て1年って事か。1年前は色々あったなぁ。いきなり殺されかけたり、ハックに出会って、革命軍と接点が出来たり、借金返済生活が始まったのもそうか。

 

「だから……これ」

 

 差し出されたのは、小さな砂時計の首飾りだった。

 

「え?」

 

「記念品よ。ペアになって一年なんだから」

 

 彼女はそっぽを向きながら言った。

 中に詰まった赤黒い砂が、夕陽に照らされてきらめいていた。

 

「ちょ、ちょっと……何か、感想くらい「俺はゴミクズだ」え!? めっちゃ落ち込んでる!?」

 

「記念日なのに、俺は……何も用意してない。死にたい…生まれ変わったら、オニオコゼハゼになりたい」

 

「いや、だって、あんた記憶無いって言ってたし、私があげたくてあんたに渡したのよ?」

 

「俺も渡したかった……」

 

「気持ちなら、いつも口で聞いてるわよ。ほら、さっきみたいに大げさに自虐するのやめなさい。面倒くさいから」

 

 言葉ではそういうが、その手つきは柔らかかった。彼女が俺の肩に軽く触れると、驚くほど自然に力が抜ける。温度が伝わる。それだけで、僕の中にあった小さな波が静まる。

 

「俺も君に贈るから、待っててくれ」

 

「そっ、期待しないでおくわ」

 

 静かなその言葉に、俺の胸の奥がわずかに震えた。嬉しくて、少し怖くて、たまらなく、あたたかい。

 

 それだけ言って、彼女は振り返らずに歩き出した。背中に気取ったところはなく、けれど、どこかいつもより少しだけやわらかく見えた。

 

 俺は受け取った袋を軽く振りながら、鼻で笑う。

 

「……あーもう。なんかまた惚れ直した気がするわ」

 

 

 

 ──────

 

 

 それから何日か経ったある日、任務が一段落した午後。

 昼下がりの港町は、強い日差しと潮の匂いに包まれていた。俺とミス・バレンタインは食料の買い出しのために、通りをぶらぶらと歩いていた。

 

「今日は、なんか機嫌良いわね、何かいいことあったの?」

 

「いやぁ、晴れてると気持ちいいだろ? ほら、俺ってほら、爆発男だから? 湿気とか雨は相性悪いし」

 

「へぇ、不発弾になること?」

 

「そ。だから、こんないい天気には、良いことが起こるって決まって「おせぇぞグズが!!」……ねぇわ」

 

 少し離れた裏路地から、がなり声が聞こえてきた。

 

「おい! 新人! 水汲んで来い!」

「いや、その前に荷物運びを先にやらせろ!」

「おらっ、グズグズすんな!!」

 

 威圧的な声の方をちらりと見やると、そこには数人の社員たちがいて、青髪の少女が両手いっぱいに荷物を抱えさせられていた。額には汗、肩は小さく震えている。──ビビ、じゃなくて、ビィオラだ。

 

 まだ年端もいかないような少女を、大の大人が数人がかりでこき使っている。その理不尽な光景に、俺の中で何かがチリチリと燃え上がる。

 

「ごめん、ちょっと行ってくるわ」

 

「え? 」

 

 俺はミス・バレンタインにそう告げると、歩を進めた。

 社員の一人がビィオラの肩を突き飛ばそうとした、その瞬間。

 

「そこまで」

 

「み、Mr.5!? オフィサーエージェントがなんでここに!?」

 

「おや? 俺を知ってるのか?」

 

 ──見たことない奴らだし、フロンティアエージェントの部下、ミリオンズだと思うが。オフィサーエージェントの顔を知ってるところを見るに、優秀な奴なのか?

 

「ふ、ふざけんな……! 鼻クソで敵を殺せる男って噂、ミリオンズの間じゃ知らねぇ奴はいねぇんだぞ!!」

 

 ──見事に不名誉だわ。なんだ、鼻くそで敵を殺せる男って。いや、事実、鼻クソは爆発するが。

 なんかもうちょっと、こう……あるだろ。

 

 俺は額に手をあててため息をつく。こういうとき、妙に情けなくなる。

 社員たちが困惑している間に、俺は荷物を地面にそっと置くと、ビィオラの肩を軽く叩いた。

 

「大丈夫か?」

 

「……あ、ありがとうございます」

 

 小さく頭を下げてくる彼女。その顔は汗と疲労が色濃く見えていた。それでも背筋を伸ばし、しっかりと俺に頭を下げてくる。しっかりしている。

 

「ちっ、コイツがトロいのが悪りぃんだよ」

 

「す、すみません」

 

「新人は失敗してナンボだろ。素人でも出来ることを割り振るのも、上司の勤めだ」

 

「何度も失敗されちゃ、こっちが迷惑なんすよね。教えたことすら出来てねぇんだから」

 

「……なるほど、一理ある。新人側にも問題はあると」

 

 俺がそう言うと、にやりと笑う男たち。

 

「そうそう。これは教育って奴っすよ」

 

「……教育ねぇ? 」

 

 にっこり笑いながら、足元の小石をつま先で蹴り上げる。

 指先で軽く弾いた瞬間──小石が小さな爆発を起こし、社員たちの足元でドカンと煙を上げた。

 

「あっつ!?」

 

「俺もお前らに教育しようか?」

 

 にらみを利かせてやると、社員たちは顔を引きつらせながら蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。

 

 ふむ、俺も随分と悪くなったもんだ。最初の頃なら、ビビってたが、今やこんな感じとは、成長というか、ぐれたというか。「あ、あの!!」ん?

 

「助けてくださって、本当にありがとうございます」

 

「全然いいよ。新人を潰す会社なんてクソだからな。若手が育たなきゃ成長なんてねぇんだからよ」

 

 まぁ、だからって、新人ばっか優遇されると俺らもやってらんねぇってなるけども。あとで、アイツらに酒でも持っていこう。

 

「でも、これくらいしか私出来ませんから」

 

「命令ねぇ……じゃあ俺の命令はどうするよ? “今すぐサボれ”。ほら、矛盾したな?」

 

 彼女は驚いたように瞬きをして、少しだけ笑った。さっきまでの作り笑いじゃない、自然なやつだった。

 

「ふふっ、そうですね」

 

「笑顔の方がずっといいな、君は」

 

 そう言ってニヤリと笑うと、…と、その瞬間。視線を感じた。

 

「……ふーん」

 

 横で腕を組んでいたミス・バレンタインが、ほんの一瞬だけ眉を寄せていた。

 

「どうかしたか?」

 

「別に?」

 

 ぷいっと顔を背ける。その横顔はいつも通り涼しげなはずなのに、どこか棘がある気がした。

 

「……ヤキモチ?」

 

「はぁ!? 誰が、誰に!? 馬鹿じゃないの!?」

 

 足をドンッと踏み鳴らし、傘を乱暴に肩に担ぐ。その仕草は怒ってるようでいて、耳までほんのり赤い。俺はたまらず笑ってしまった。

 

「何笑ってるのよ!!」

 

「そういうとこも推せるぞミス・バレンタイン」

 

「~~っ! ……もう知らない!」

 

 スタスタと先に歩いていってしまったミス・バレンタイン。ふむ、いじりすぎたか、後でチョコを差し入れなければ。

 

「……あの、お二人って仲いいんですね」

 

「意外か?」

 

「……正直、そうですね。犯罪組織と聞いていたので」

 

 さっきの奴らを見た後だとそう思うのも無理ないか。

 

「組織全員が仲良しってわけじゃないが、オフィサーやフロンティアエージェントはしっかりしてる奴らが多いな。

 お互いがお互いの足りない部分を補っている。社長もしっかりその辺を見ているんだろうな」

 

 さっきの奴らの態度から殺伐した組織だと思われているみたいだが、かなり自由な組織だ。

 任務さえきっちりやれば給料も良い、福利厚生もしっかりしている。ここ以外行く場所のない奴らには居心地がいいだろうな。

 

「おっと、追いかけなきゃ。それじゃあ、ビビ。また困ったら、呼べよ?」

 

「あ、はい! ありがとうございました!! って、ビビじゃ無いです!! ビィオラです!!」

 

 

 彼女のツッコミを背中に受けながら、ミス・バレンタインの後を追いかけた。

 

 

 ────

 

 

 けど、それっきり終わりにはならなかった。

 

 廊下の突き当たりの部屋から、紙をめくる音と、ペン先の擦れる小さな音が絶え間なく聞こえてくる。

 あいつだな、とすぐにわかった。時間は夜中だ。朝からこんな時間まで仕事をしている奴はバロックワークスにはいない。

 

 ここ数日、気になって様子を見ていたが、ビィオラの仕事は、重い荷物、無茶な雑用、理不尽な命令ばかりだった。だが、彼女は、率先してそういう損な役回りを受けているようだった。

 それは、彼女の性格からなのか、それとも、出世欲か、いずれにせよ、やり続ければ、体の方が先に壊れるだろう。

 

 ドアを軽く叩いてから顔を覗かせると、案の定、ビィオラは彼女が机にかじりついていた。帳簿の山が壁のように積まれ、ランプの光に照らされた横顔は真剣そのものだ。

 

「倒れる前に休んだ方がいいんじゃないか?」

 

 冗談半分に声をかけると、彼女はぴくりと肩を震わせ、振り向きもせずに返した。

 

「私は大丈夫です。これくらい、慣れていますから」

 

「いやいや、慣れてるとかじゃなくてさ。目の下のクマ、本物のクマより黒いぞ」

 

 余計なことを言ったと同時に、ビビがようやくこちらを向いた。彼女は小さく笑って首を振った。

 

「これくらいなんともありません。私は、やるべきことをやってるだけですから」

 

 ──こりゃ、どうしようもねぇな。

 

「よっこいしょ」

 

 俺は、彼女の隣に座り、帳簿を自分の目の前に置く。

 

「あ、ちょっと」

 

「2人でやればずっと早いだろ」

 

 軽く冗談めかして言いながら、彼女から一冊の帳簿を受け取った。開けばびっしりと書き込まれた入出金の記録。目を滑らせると、いくつか数字のズレが気になった。

 

「ここ、計算が一桁ずれてるぞ」

 

 指先で示すと、ビビの手が止まり、ぱちりと瞬きする。

 

「……本当だ。気づきませんでした」

 

「人間疲れてりゃミスも出るもんさ。ほら、俺がこっち直すから、君は新しい分を書いて」

 

「は、はい。分かりました」

 

 彼女は、再びペンを走らせる。だが横顔は先ほどよりわずかに柔らかく見えた。

 

 

 ────

 

 

「……ふぅ」

 

 ビビは、最後の帳簿を閉じると小さく息をついた。その横顔は、最初に見た時よりもずっと穏やかだった。俺は、先に終えていたため、淹れたてのお茶を彼女に手渡す。

 

「おう、お疲れ様」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 湯気が立ちのぼり、狭い部屋にほのかな香りが広がった。

 

「……美味しい」

 

「これでも、ミス・バレンタインに、お茶を出してるからな。ちょっと自信あるんだよ」

 

「へぇ」

 

 そんなやり取りを交わしながら、俺たちは静かに茶をすする。喉を通る温かさが、疲れと一緒に張りつめた空気を溶かしていく。

 

 ふと視線をやれば、ビビは湯飲みを両手で包み込みながら、ほっとしたように目を伏せていた。

 

「……少し、安心しました」

 

「ん?」

 

「……一人で背負わなくてもいいんだって。そう思えただけでも、少し楽になりました」

 

「嗚呼、やっぱ1人で抱えるより、支え合う方がずっと良い」

 

 代わりに、わざと大げさに椅子へふんぞり返り、胸を叩いてみせる。

 

「……一つ、聞いていいですか」

 

「一つと言わずいくつでも、スリーサイズまで教えるぞ」

 

 ビビの声は穏やかだったが、瞳は真剣そのものだった。

 

「なぜ、あなたはバロックワークスなんて……犯罪組織にいるんです?」

 

 いきなり聞きづらい質問をしてくる彼女に驚き、すぐに返すことが出来なかった。

 言い淀んでいると、彼女の方から話を切り出した。

 

「他人から奪うことは……間違ってる。人を傷つけて、自分だけ得をするなんて、絶対に許されないことです」

 

 火の明かりに照らされた彼女の横顔は、揺るぎなく真っ直ぐだった。純粋無垢というか、真っ直ぐな目。

 既に多くの人間を傷つけて来た俺には、とても眩しかった。だが、それから、目を逸らしはしない。誰かを傷つける覚悟は、もう出来ているのだから。

 

「……正論だな。だが、綺麗ごとじゃどうにもならない世界で、俺たちは生きている。海賊という暴力が蔓延る世界では、自分の命の為にも、他者を傷つけるのが人間だ」

 

「それだけが人間じゃありません。他者を慈しむ心を持てるのも人間です」

 

「理想論だな」

 

 俺は肩をすくめて、口元に皮肉な笑みを浮かべた。

 

「“慈しみの心”。聞こえは綺麗だが、それで腹は満たせない。刃を突きつけてくる奴を止めることもできやしない。

 現に、この世で一番優しい奴ほど、真っ先に食い物にされて消えていくのが世界だろ」

 

 視線を彼女に向ける。火の明かりに照らされた瞳は揺るがない。だからこそ、少し苛立ちを覚える。

 

「君の言う“心”が通じるなら、戦争も奴隷も海賊も生まれちゃいない。結局、人は自分を守るために誰かを傷つける。自分の大事なもんを守るために、他人の大事を踏みにじるんだ。それが人間って奴だ」

 

「……それでも、私は信じます」

 

 ビビの声はわずかに震えていた。だがその震えは恐怖じゃない。迷いながらも前へ踏み出そうとする意志の揺らぎだった。

 

「たとえ愚かだって笑われても、人を信じ、手を伸ばすことを諦めたら……私まで、この世界の残酷さに飲まれてしまうから」

 

 言葉を吐き出すたび、彼女の目は炎のように強くなる。

 

「傷つけ合うだけじゃなく、守り合う道を選べるのも人間です。私は……その可能性を諦めません」

 

 俺は黙り込み、しばし火の揺らぎを眺めた。

 喉の奥で笑いが漏れる。

 

「くくっ……はっはっは!! 良いね、ビィオラ・ビレンカ。最高だよ」

 

「え?」

 

 俺の声は、自嘲半分、羨望半分。強者に屈しない精神。俺よりはるかに弱い彼女が、曲げない心で俺に立ち向かってくる。

 暴力では無い、ただの言葉でだ。いいね、最高だわ。

 

「君、俺の部下になれよ」

 

「え……えぇぇぇぇ!!」

 

 俺はニヤリと笑い、耳にこだましたその声を心地よく感じながら、お茶をすする。

 

「な、な、なんで私がオフィサーエージェントの部下に……!?」

 

「そりゃあ、力をつけたいって言ったろ。だったら、現場で一番学べるのは俺らオフィサーのすぐそばだ。俺の座を狙ってみろよ」

 

「……でも、いいんですか?」

 

「でももヘチマもない。チャンスってのは掴むもんだ。君は掴めるかな?」

 

「……分かりました。私、頑張ります!!」

 

 

 いい目だ。さて、これからどうなるかな。

 

 

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