悪魔の実 Sレア   作:もやしモン

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第ニ話 肩にでっかい重機乗せてんのかい!?

 

「腹減ったな」

 

 冷蔵庫を開け、何かないかと探ってみる。

 

「……豚バラと、ニンニク、卵……お、米もあるな。じゃあ、チャハーンだな」

 

 まずは、フライパンに油を引いて、豚バラ、大葉、スライスしたニンニクを炒める。

 次に、卵、ご飯を入れるが、ここで、最初に米に卵を混ぜておくといい感じにパラパラになる。マヨも少々。

 塩、コショウで味を整えて……なんかあったポン酢をさっと入れると。

 

「完成。食欲無くてもさらりと食えるポン酢チャーハン!」

 

「ふぁ……ちょっと、寝過ぎちゃった…って、あんた何してんの?」

 

「ご飯作ってたんだ」

 

 ちょうど飯が出来上がった時に、2階から降りてきたミス・バレンタインが目を見開いて驚いた。

 

「ご飯って……だって、いつも部屋にいてお腹空いたら出てきて『飯は?』って言ってくるあんたよ? なんで今日に限って、熱でもあるの?」

 

「いや、君は俺の嫁か?」

 

「なっ!? ななな、んなけないでしょ!!! 埋めるわよ!?」

 

 ああ、良かった、結婚してるのかと思った。

 

「普通に筋トレして腹減ったから作っただけだ。ミス・バレンタインも食べるか?」

 

 戸惑いながらも一緒の席についてもらい、手を合わせる。その仕草も彼女は驚いていたが、まぁ、別人だから仕方ない。黙々と食べていると、彼女も恐る恐る食べてくれた。

 

「お、美味しい!!」

 

 それはそれは美味しそうな顔をして食べていた。

 やばい、今の顔、国宝レベルでは? これ、拝観料取られるやつだろ。

 

「そ、そんなにか?」

 

「本当に美味しいわ! こんな美味しいの初めて食べたもの!!」

 

 ああ、今、感動で涙を手で隠して、男泣きしている。

 

 母さん、あなたが俺に押し付けた家事がここで役に立ったよ。ありがとう。その母はたぶん、今もテレビの前で煎餅かじってるけど。

 

 これで少しでも心の距離が近づければ……

 

「あ、でも、まだ覗いたの許してないから」

 

「はい、ごめんなさい」

 

 全然ダメでした。

 

 

 ────

 

 

 それから数日後、とある島にたどり着いた。

 

 次の仕事が来るまでは自由時間だということで、宿で休むことになった。買い物は明日行くことになったが、昨日のお詫びを買ってきた。

 

「お菓子を買ってたんだが、食べるか?」

 

「……あんた、女の子はみんな甘いもの好きとか思ってる?」

 

「え? 違うの?」

 

「いや、好きだけど、もっといろんな種類買ってきなさいよ。それで私の好みを把握しなさい。女の子に渡すプレゼントっていうのは、相手をしっかり見て、よく観察して、それとなく出すのよ」

 

 なるほど、メモメモ。

 

「……そうか、せっかく君が熱心に雑誌で見ていた、チョコレートケーキを買ってきたんだけど」

 

「チョコ!? 先に言いなさいよ!!って……あれ? なんであなたが知ってるの?」

 

「君をよく観察して」

 

「うわっ、それストーカーよ、ストーカー……でも、まぁ、いいわ。チョコに免じて許してあげる」

 

「ハハッ、気をつけるよ」

 

 メモメモ

 

 

 ──翌日──

 

 

 ミス・バレンタインから、傘が壊れたから新しいのを買いたいと2人で町へと繰り出したわけだが。

 これが長いのなんのって。すべての傘を吟味し出す勢いだ。

 

「ねぇ、この傘どう?」

 

 うわっ!? 男が聞かれたら最も困る質問ベスト3に入るやつ!! んなもん分かるか!! 似合ってるって言っても絶対不機嫌になるんだよな!!しかも、今選んだやつ、前のと全く一緒だろそれ!!

 

「え……えーっと、良いんじゃないか?」

 

「やっぱりそう思う!? 前のと違って持ち手のとこに水玉が付いてるから可愛いわよね!」

 

 いや、握ってるから何も見えんが、そうらしい。

 

「そうか。ミス・バレンタインはオシャレだな」

 

「当然よ!」

 

 こういう時はとりあえず褒める。良し悪しなんて分からんからな!!

 

 何本か買ったみたいだが、全部黄色。違いもよく分からん奴ばかり。それでもちゃんと見ているあたり不思議なもんだ。

 別の店を探している時に、気になっていたことを聞いてみた。

 

「ミス・バレンタインは、鍛錬をしないんだな」

 

「しないわよ。だって私、強いし?」

 

 うわ、自信家だ。でも嫌いじゃない。

 それだけ社長? を信用してるってことか。社会に出たことないから分からないが、そういうものなのだろうか?

 まぁ、前の任務も、俺があれこれ勝手に苦戦してるだけで、彼女は飄々としてたしな。

 

「答えにくかったら言わなくていいんだが……ミス・バレンタイン。君は何故この組織に?」

 

「あら、女が生き残るにはどこかの組織に入るのが一番よ、それ以外に道なんてなかった……」

 

「……本当は何になりたかったんだ?」

 

「キャハハハ!! 忘れちゃったわ。どうせこの道にしか進まないんだし、それにお金には困らないしね」

 

 笑ってるけど、目が少しだけ、寂しそうだった。

 

 

 ────

 

 その後、とりあえず筋トレ用品がいろいろあったから買ってきた。

 

 それと、本だ。

 

 一応爆発の仕組みとかの本と、歴史の本、この世界はスマートフォンなんてものがないらしく、ニュース・クーという新聞屋に頼むようだった。

 新聞なんて読んだことなかったから、なかなか読むのに苦労するが、これはこれでいい暇つぶしだ。

 

 記事としては、シャンクスって人が四皇って呼ばれるようになったらしい。

 あとは、バーソロミュー・クマって人がソルベ王国の国王になったとか。

 

 えーっと、後は、今、この世界は大航海時代。

 海を見渡せば海賊たちが現れ、それを狩る海軍や賞金稼ぎがいるとかか。

 また、とんでもない世界に来てしまったな。

 

 より一層、鍛錬に励まなければと心に決めた。

 

 

 ──次の日──

 

 爆発訓練、再開。結果:全然ダメ。

 

「……ダメだ、全然爆発出来ねぇ…」

 

 焦げた匂いだけが残る手のひらを見つめ、俺は肩を落とした。砂浜に響く、耳鳴りのような静寂。

 

 一度暴発させてからというもの、一向に成功しなくなってしまった。

 爆発というのがそもそも縁のないものだから、イメージしにくいというのもあるだろうが、それにしてもうんともすんとも言わないのは困ったものだ。

 

「何してんのよ、もうお昼よ。ご飯は?」

 

 後方の木陰から、聞き慣れたツンとした声。ミス・バレンタインが、腕を組んで俺を見下ろしていた。

 

「ああ、もうそんな時間か。すまない、能力が使えなくなってしまって」

 

「は、はぁ!? 大変じゃない。それで次の任務失敗なんて洒落にもならないわよ!?」

 

「面目しだいもない」

 

「とにかく、何とかしなさい! それまでご飯抜きだから!!」

 

「えぇ!?」

 

「返事は!?」

 

「シュア!! 」

 

 こうして、命がけの訓練がスタートした。

 

 

 ────

 

 ぎゅるるるるるると、腹の虫が鳴り響く。

 

 腹が、減った。それはもう、笑えるぐらいに。

 

「……なんで、空に、たくわんが見えるんだろうな……」

 

「アンタ、それたくわんじゃなくて、アタシの傘」

 

「たくわんがしゃべった…?」

 

 振り下ろされた傘の柄が、Mr.5の頭に“カン”という音よりも、腹の鳴る音のほうが勝っていた。

 

 

 

 ──何度目かの挑戦──

 

 

 

 両手を前に突き出し、力を込める。頭の中でイメージするのは、炎でも火薬でもない。“起爆点”──つまり、感情だ。

 怒りじゃダメだ。焦りもダメ。……爆発ってのは、冷静な中にある熱だ

 

「俺のこの手がボムボムと燃える!!」

 

 と、手のひらが熱を帯びた──と思った瞬間、爆発した。

 

「出た! 出たよ! 線香花火かってくらいだけど!」

 

「自分で爆発してテンション上がるとか、変な人……」

 

「……ったぁ……けど……出た。やっと、出た……!」

 

 思わず顔がほころぶ。自分の爆発で初めて喜んだ瞬間だった。

 

「おめでとう」

 

「ありがとう! よし、今の感覚を忘れずにもっかい!!」

 

 俺のこの手が赤く燃えさかるように!! そうぼうぼうと!! ……ぼう?

 

「ぎゃああああああ!!!」

 

 爆発の加減を間違え空中へ飛び上がった。髪の毛がアフロ化し、そのまま地面に顔面激突。犬神家状態とかした。

 

「アホ!! なんで自爆してんのよ!!」

 

 ミス・バレンタイン、ため息混じりにバケツで水ぶっかけられ無事鎮火。

 

 

 

 

 その後も何度もリトライをし、ついに

 

 

 

「すぅ……はぁ……… 右ストレェェェェトォォ!!」

 

 右肘を可能な限り引き、足を踏み締め、腰を回した瞬間に、肘を爆発。その拳は三日月を描き、空を切る。爆発と体術の合わせ技、

 

 見事な右フックの完成だ。

 

「いや、別の技になってるじゃない」

 

「あれ?」

 

「爆発に振り回されてるけど、まぁ、いいわ」

 

「むぐっ!!」

 

 口に丸ごとレモンを突っ込まれてしまった。息を吸う為、頑張って咀嚼する。

 ハチミツの甘みと、レモンの酸っぱさが絶妙で、体に栄養が行き渡っているように感じた。

 

「美味し?」

 

「おいしぃ……」

 

「そっ、じゃあ、はい」

 

「うおっ!?」

 

 いきなり、腕を肩に乗せられ、彼女は一歩、二歩と砂を蹴って歩き出す。

 俺の足はもつれ、完全に彼女に引きずられる形になった。

 

「いや、大丈夫だって! 歩けるから!」

 

「足プルプルさせて何言ってんのよ。パートナーなんだから、助け合わないとダメよ」

 

 言葉とは裏腹に、支える腕は丁寧で、歩幅を合わせるようにゆっくりと進んでくれる。

 熱で霞む視界の中、彼女の横顔がやけに近く感じた。

 

「……ごめん」

 

「いらないわ。それよりも他にあるでしょ?」

 

「ありがとう、ミス・バレンタイン。俺、頑張るよ」

 

「はい、素直でよろしい」

 

 俺は抵抗をやめ、彼女の肩に身を預ける。

 砂漠を吹き抜ける風の中、そのぬくもりだけが確かな救いに思えた。

 

 

 ────

 

 そんな彼女の看病と傷の痛みに耐えること1週間。

 

 傷がようやく塞がった。背中の鈍い痛みもほとんど消え、再び筋トレを始められるようになった。

 

「ニーライト爆拳(ボンバ)!!」

 

 右腕を引き、左を前に──肘を爆発。

 拳に加速を与え、威力は倍増……のはずが

 

「ぎゃぁぁあ! 肩がァァァ!!!」

 

「もぉ〜! 何やってんのよ!」

 

 爆発の勢いに肩が耐えきれず脱臼。慌てて駆け寄ってきたミス・バレンタインが、慣れた手つきで肩を戻してくれる。

 

 最近は、これが日常になりつつある。

 

 能力で威力を上げられても、体がそれに耐えきれない。だからこそ、筋トレで体を作る必要がある。

 

「そういえば、あなた、服のセンス変わったわよね。前はコートばっか買ってたし、それに髪も切ったの?」

 

「能力を使うと服が破れるからな、上は羽織るだけでいい。どうせ動くと暑くなるし。髪はまぁ、気分転換だ」

 

「まぁまぁね」

 

 何気ない言葉だけど、それだけで嬉しかった。

 

 今の俺は、肩を守るために剣道の小手のような防具を装着している。

 掌は空いてるから、接触による爆発も問題ない。

 

「その格好なら、明日の任務もバカにされないでしょうね」

 

「ああ。オフィサー・エージェントとの」

 

 初対面は緊張する。でも、少しだけ楽しみでもある。

 

 この世界に来て、いろんなことがあった。

 

 怖かった。逃げたくなった。泣いた。殴られた。爆発した。

 でも、そんな中でも、少しずつ──自分が変わっていくのが分かった。

 

 “逃げない”って、こんなにも難しくて。

 “誰かを守る”って、こんなにも怖くて、でも温かいんだ。

 

「……なぁ、ミス・バレンタイン」

 

「なに?」

 

「ありがとう」

 

「……ふっ。急にどうしたのよ、あんぽんたん」

 

 ふと、彼女がこっちを向いて、ちょっとだけ口元を緩めた気がした。

 

 






次回 嘘と虚勢とオカマ道


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