魔王討伐のために世界を旅している主人公のレック、そして仲間のハッサン、ミレーユ、バーバラ、チャモロ、アモス、ターニアは、ぺスカニで人魚ディーネに出会った。
本来人魚と人間は相いれない関係であるため、途中で様々な紆余曲折はあったものの、7人は彼女を無事に姉のディーナのところまで送り届けた。
「みなさん、本当にどうもありがとうございます!あなた達のおかげで人間を信じられるようになりました。」
「お礼として、あなた達にこれを差し上げましょう。私達はいつでもあなた達を見守っています。頑張ってくださいね。」
ディーネが深々と頭を下げながらお礼をした後、ディーナは重要なアイテムであるマーメイドハープを差し出した。
「ご親切にありがとうございます!これから大事に使わせていただきます。」
レックはみんなを代表する形で深々とお辞儀をした後、ありがたくそれを受け取った。
「あなた達も、どうか幸せに過ごしてくださいね。」
「はい、分かりました。」
「みなさんも気を付けて。」
ディーネとディーナはミレーユに対して笑顔でこたえてくれた。
そんな彼女達の姿を見届けながら、7人は人魚の集う場所を後にしていった。
なお、現時点で彼らの熟練度は次のとおりだった。
※左端が現在ついている職業です。
※全員がメラミとホイミを習得しています。
※ターニアはホイミンの位置づけとして仲間に加わっています。
レック … 僧侶:7、魔法使い:5、武闘家:2(目標:賢者経由で勇者)
ハッサン … 武闘家:7、僧侶:4(目標:パラディン)
ミレーユ … 魔法使い:5、踊り子:6、遊び人:5、武闘家:2(目標:スーパースター)
バーバラ … 戦士:7、武闘家:5(目標:バトルマスター)
チャモロ … 盗賊:6、商人:8、魔物マスター(使い):3(目標:レンジャー)
アモス … 武闘家:5、盗賊:6(目標:バトルマスター)
ターニア … 僧侶:4、魔法使い:5(目標:賢者)
その後、一行はしばらく船旅を楽しんだ後、モンストルの近海にやって来た。
「この辺りでそのハープをひいてみようか。」
「そうね。そろそろ海底に潜ってみたいから。」
「海底って、どんなところなのかしらね。」
「まるで浦島太郎という物語みたいです。」
レック、バーバラ、ターニア、アモスが会話をすると、ハッサンはハープを持っているミレーユ向かって「それじゃ、頼むぜ。」とお願いをした。
「分かったわ。さあ、人魚のみなさん。私達に力を貸して。」
彼女が演奏を始めると、辺りには美しい音色がこだました。
すると大きな球形の壁のようなものが姿を現し、船を包み込んだ。
「わっ、すごいですね。これは。」
船の舵を握っているチャモロをはじめ、一行は思わぬ光景にビックリだった。
やがて船はゆっくりと沈んでいき、やがて全体が海面下に入っていった。
「わあっ!たくさんのお魚達が泳いでる!」
「すごーーい!これは見ごたえあるわね!」
ターニアとバーバラをはじめ、みんなはすっかりその光景に見とれていた。
そうしているうちに、船はやがて海底までやってきた。
「それじゃ、ここからは水平移動をしていくことにしましょう。」
「とはいえ、闇雲に進んでも仕方ねえな。どこに行けばいいんだ?」
「そうねえ。何か目印になりそうなものがあればいいけれど。」
チャモロ、ハッサン、ミレーユが話し合っていると、レックが彼らのところに歩み寄ってきた。
「とりあえず、右90度のところに、何かの入口みたいなものが見えた気がしたんだ。ちょっと行ってみてくれないか?」
「分かったぜ。チャモロ、頼む。」
「かしこまりました。ハッサン。」
彼が舵を回すと、船はゆっくりと向きを変えていき、その方角に向かって動き出していった。
彼らが向かっていった先には、何らかの施設があり、それは倉庫というには大きなところだった。
船がその場所に接近していき、着岸すると、ハッサンとアモスは一足先に下船した。
「おーーい、いかりはしっかりとつないだぞ。」
「それではみなさん、降りてきてください。」
2人が声をかけると、レック達は次々と彼らに合流した。
(※なお、チャモロは見張りのため、船内に残ることになりました。)
6人が内部に入っていくと、そこには一人の兵士がいた。
「おっ!何だ?ここに訪問者が来るとは。」
それまで寝ぼけていた彼はレック達に気が付くと途端に目を大きく見開き、スクッと立ち上がった。
レック「あの、すみません。ここはどこですか?」
「ここは海底宝物庫という場所です。君達はどういう目的でここにやってきたんですか?」
「目的って言われても、ただ単に何か施設らしきものが見えたので、やってきただけなんですけれど。」
「何ですかそれは。ここはレベルが30にも届かず、上級職にもろくに就いていないような人が来る場所ではない。さあ、帰った帰った。」
兵士はまるでエジンベアの兵士のようにレック達の前に立ちはだかり、通せんぼをした。
「そんなこと言わずに通してくれよ。何かあるんだろ?」
「確かに『海底宝物庫』って、さっき言っていましたよね。」
ハッサンとアモスがそう言うと、兵士は「あっ!」と言わんばかりに口を押えた。
「ってことは何かあるのね。ねえ、おじちゃん。あたし達にそれを見せて。」
「おじちゃんって何ですか!私はキラと申します!そういうあなたは何という名前なんですか?」
「あたし?あたしバーバラ。ヨロシクッ!」
「では、バーバラさん。私と勝負をしませんか?」
「勝負?どんな勝負なの?」
「そうですね。腕相撲なんてどうでしょう?」
「腕相撲ってなあに?あたしにも作れるの?」
「違いますっ!」
キラは苦笑いを浮かべた後、ルールを説明した。
「ふうん。相手の手の甲を机の上につければ勝ちなのね。」
「そう言うことです。ただし、あなたは女性ですからハンデとして両手を使ってもいいですよ。」
「両手?ということはどういうふうにやればいいの?」
「こうするんですよ。」
キラはなかなかやり方を理解出来ない彼女のために、再度ルールを説明した。
そして彼は誰か一人に審判を担当してほしいという要求をした。
「分かりました。では、私がやりましょう。」
アモスは真っ先に名乗り出た。
「くれぐれもこのお嬢さんにひいきはしないでくださいよ。」
「もちろんです、キラさん。公平にジャッジします。では2人とも、よろしいですか?」
「OKよ。」
「よろしいです。」
バーバラとキラは机の上に右ひじを置くと、右手でお互いの手をしっかりと握った。
そしてバーバラは右手の甲に左手をかぶせた後、アモスはその上に手を置いた。
「それでは行きますよ。レディー…。」
「レディーってあたしのこと?」
「あららら…。」
バーバラの発言を聞いて、一同は思わずずっこけてしまい、せっかくの雰囲気が壊れてしまった。
(※参考までに説明しますと、レディー、ゴーのレディーはReady、女性のレディーはLadyです。)
あらためて気持ちを立て直し、両者が準備を整えると、アモスは再度「レディー…」と声をかけ、「ゴーッ!」と言うのと同時に手を離した。
そして…!
「イエーーーイ!勝ったわ!」
バーバラは満面の笑みでみんなのところにやってきた。
「マジかよ。開始0.5秒で終わっちまったじゃねえか。」
「今、彼女が戦士に就いているのはダテではないわね。」
「さらに、きせきの剣で毎日素振りをしている成果が出たわね。」
ハッサン、ターニア、ミレーユは思いもよらない結果に思わずビックリだった。
そんな彼らをかたわらに、バーバラはレックとハイタッチをした後、2人一緒に戦闘終了時のモリーのポーズをした。
「イタタタ…。何だ、あのお嬢ちゃんは。かわいい振りして割とやるじゃないか。」
あっさりと負けてしまったキラは左手で右手を押さえながら、悔しさに顔をしかめていた。
レック「それじゃ、勝負に勝ったわけですから、ここを通してくれますか?」
「そ、それは出来ない。こんな形で負けを認めるのは私のプライドが許しませんから。」
「往生際が悪いですね。じゃあどうすればいいんですか?」
「私と1対1で勝負しましょう。勝ったら今度こそ通すことにします。ただし、相手が女性ならハンデとして2対1でも良しとします。ただし、バーバラさんは既に参加しましたので、除外とさせていただきます。」
「分かりました。では、こちらで相手を決めることにします。」
キラの提案を受けて、レックは誰が彼と勝負するのか相談を持ち掛けた。
「それなら私がやるわ。」
「いいの?ミレーユは魔法使いなのに。」
「大丈夫。ターニアと組めばこちらは2人で挑めるから。」
「えっ?私も参加するんですか?」
ターニアは思わぬ依頼を受けてしまい、思わず怖気づいてしまった。
「大丈夫よ。私にいいアイデアがあるわ。」
「何ですか?」
「実はね。」
ミレーユはターニアの耳元で自身の考えた作戦を打ち明けた。
「あの…、本当に大丈夫なんでしょうか?」
「任せて。とにかくあなたは炎のツメでメラミを放ち続けてね。」
「はいっ!分かりました。」
ターニアはこれまでほとんど控えにまわっていただけに、不安でいっぱいだったが、勇気を振り絞って参加を決意した。
「では、よろしくお願いします。」
「私もメラミで全力を尽くします。」
「よろしい。では、私と2対1の勝負をしましょう。」
キラがお辞儀をすると、ミレーユとターニアもつられるようにお辞儀をした。
そしてアモスが再度「レディー、ゴーッ!」と合図をすると、いよいよ勝負が始まった。
それから5ターン後。女性2人はノーダメージで勝利をおさめた。
「あの…、確かに勝てましたが、いいんでしょうか?こんな形で決着しても。」
「何言ってるの。勝てばいいのよ。私としてはちょっと勇気のいるやり方だったけれどね。」
ターニアは恐れ多い気持ちでいっぱいだったが、ミレーユは何食わぬ顔をしていた。
一方、何も出来ずに負けてしまったキラは余韻に浸りながら仰向けに倒れていた。
(ま、まさか、星降る腕輪を装備した金髪美女が毎ターン先制であんな特技を使用するとは…。結果的に何も出来ずに負けてしまったが、私は幸せだ。それに、意外なことに肩こりが治った…。多分、多くの男性読者が「キラ!代わってくれ!」と言っていることだろう…。)
一方、アモスとハッサンはまだ目を大きく見開きながら見とれていた。
「ちょっとバーバラ!何てことしてくれたんだよ!」
「こんなのあんたには見せたくないわ!」
レックはバーバラにじゃまをされた影響でほとんど勝負を見られず、不満タラタラだった。
それからしばらくして、レックにベホマをかけてもらったキラは、宝物庫の奥へと6人を案内した。
そして左右への分かれ道のところで、これより先に進みたければ、自分が召喚する相手を倒すという条件を付けてきた。
レック「どんな相手なんですか?」
「これです。」
キラは持っていたアイテムを駆使して、まるでポ〇モンのようにモンスターを召喚してきた。
その姿は最先端の技術を駆使した機械のようだった。
「これ、名前は何と言うんですか?」
「これはキラーマシン2と言います。まだ試作品ですが。」
「そうですか。では、僕達はハッサンとアモスさんを加えた男性陣3人で挑んでみようと思います。」
レックは自信をみなぎらせながら2人に参加を要請した。
「分かったぜ。見たことはねえが、実力試しにちょうど良さそうだぜ。」
「私も全力でやらせていただきます。一切の手加減はしません。」
彼らもやる気満々な状態で勝負を受けて立った。
そしてハッサンはバーバラが所持しているきせきの剣と力のルビーを受け取り、レックはミレーユが所持している星降る腕輪とゲントの杖を受け取った。
「では、私が審判を担当することにしましょう。用意はいいですか?」
「はい、キラさん。いつでもOKです。」
レックがそう言って身構えると、他の2人も続けざまに身構えた。
「それでは開始します。レディー、ゴーッ!」
3対1の勝負が始まると、レックはルカニ、ハッサンはせいけん突き、アモスは変身を選択した。
しかし、相手はそれよりも先に先制攻撃を仕掛けてきた。
そして…。
5分後。船内で嫌な予感を感じ取っていたチャモロは、船を降りて宝物庫の内部に入っていった。
すると奥からはバーバラがレックを、ミレーユがハッサンを、ターニアがアモスを連れてゆっくりとこちらに向かってきた。
「どうしたんですか!?3人とも傷だらけじゃないですか!」
「あっ!チャモロ!ちょうどいいところに来てくれたわ!」
「どうかMPが続く限り彼らにベホマをかけてあげて!」
「みんなかなりの大ケガなんです!どうかお願いします!」
バーバラ、ミレーユ、ターニアの要請を受けて、チャモロは足早に男性陣3人のところにやってきた。
そして一人ずつ順番にベホマを何度も唱え続けた。
(お願いレック!どうか頑張って!)
(大丈夫!絶対に大丈夫だからね!)
(海上に出たらおばあちゃんのところに行って、診察を受けさせてあげるわ!)
すでにほぼMPを使い果たしているバーバラ、ターニア、ミレーユは祈るような気持ちで見守り続けた。
その後、チャモロのおかげで容体が安定したレック、ハッサン、アモスは、4人の手を借りながら一人ずつ船内に入っていった。
そして女性3人がいかりを外して船に乗り込んでいったのを確認した後、チャモロは船を出向させていった。
一方、宝物庫の中に残ったキラは未だに呆然とその場に立ち尽くしていた。
(し、しまった…。研究開発段階のキラーマシン2のつもりが、間違って完成形のキラーマジンガを召喚してしまった…。そのせいで、大変な大ケガをさせてしまった…。)
彼は自分の不手際のせいで、レック達にトラウマになりそうな光景を見せてしまったことをひたすら後悔していた。