レックが意識を失ったバーバラを抱えて海底宝物庫からテレポートしていった後、グランマーズは自身に魔法の聖水を使った。
そして、魔力が回復すると右足首を骨折しているハッサンを宙に浮かせた。
「さあ、今のうちに船に乗り込むぞい。」
「分かったわ、おばあちゃん。」
「では、行きましょう。」
ミレーユとキラはハッサンを連れてグランマーズと一緒に船に向かっていった。
海底宝物庫を後にした後、キラは舵を担当しながら大急ぎで浮上をしていった。
「ハッサン…。ごめんなさい…。私が受け流しをしたせいで…。」
ミレーユが声を震わせながら何度も謝り続けるのに対し、目を覚ましたハッサンは「気にするな。あれは事故なんだ。お前のせいじゃない。」と言って彼女をなだめ、ほとんど無駄と分かっていても自分にベホマを唱え続けた。
やがて船が海上に姿を現すと、ミレーユはきせきの剣や星降る腕輪、力の盾などの装備品をその場に置き、ルーラを唱えてハッサンとともにマーズの館に向かって飛び立っていった。
一方、船に残ったグランマーズはトヘロスを唱えてモンスターとの遭遇を避け、キラが舵を握って陸地を目指していった。
彼らが船を降りて上陸すると、その場所にはチャモロ、アモス、ターニアがいた。
「おお、お前さん達。ここにおったのか。」
グランマーズは彼らを見るなり、即座に声をかけた。
「おばあさん、こんにちは。こんな偶然もあるんですね。」
ターニアは笑顔で声をかけた。
(※実際はグランマーズが水晶玉で事前に彼らの位置を確認しており、意図的にその場所に向かって進んでいきました。)
「それにしても、船には2人しかいなかったんですか?」
「レックさん達は一緒じゃないんですか?」
アモスとチャモロが問いかけると、キラは申し訳なさそうな表情をしながら海底宝物庫で起きた出来事を話した。
「えっ?それじゃ、バーバラさんとハッサンさんは大丈夫なんでしょうか?」
ターニアが心配そうに問いかけると、グランマーズは持っていた水晶玉を使って、まずはバーバラを映し出した。
すると、彼女はカルベローナの住人達の手によって集中治療を受けていた。
これだけでもショッキングな光景だったが、次にマーズの館を映すと、そこではミレーユがハッサンの右足をガチガチに固めていた。
『ぐあああっ!』
『ごめんなさい。私のせいで…。』
『いいんだ。それより、もう謝るのはやめてくれ。俺もつらくなるからよ。』
『そんなこと言われたって…。しかも私、自分がみんなを海底宝物庫に誘ったせいで、あなたを骨折させてしまった…。それだけでなく、マダンテのせいで…。』
『だからやめろって!彼女なら大丈夫だ。きっとレックやカルベローナの人達が助けてくれるさ。そしてグリンガムのちゃんねーからムチをもらって、これから超大活躍をしてくれるさ。』
『そうなったらいいけれど…。』
『それより、お前は今ハッスルダンスの特訓中だろ。早く資格を取って、実戦で使えるようにしてくれよ。』
『無理よ…。他の踊りも含めて、こんな気持ちで踊れるわけないわ…。』
ミレーユは深い自責の念に襲われていることもあって、ハッサンから何を言われてもガックリとうなだれたままだった。
「そう言うわけじゃ。残念じゃが、彼らはしばらく戦力になれんじゃろう。」
グランマーズは映像を消すと、これからは3人が主導権を握りながら冒険をしてくれるようにお願いをした。
「分かりました。では、私達がお兄ちゃん達の代わりに頑張ります。」
すでに賢者の領域に入っているターニアは心の中でメラメラとやる気をたぎらせた。
アモス「では、私達がその船に乗せてもらってもいいですか?」
「うむ、どうぞじゃ。頼んだぞい。」
「ありがとうございます。私達で何とか乗り切ってみせます。」
チャモロをはじめ、3人はお礼を言った後、早速船に乗り込んでいった。
そしてキラとグランマーズは船が出航するのを見届けた後、ルーラでマーズの館に向かって飛んでいった。
3人は海賊やモンスター達との遭遇を避けながら航海をした後、魔術師の塔に向かっていき、現地にいるモンスター達に声をかけることにした。
するとスライムナイトのピエールが加わり、旅に同行してくれることになった。
「どうもありがとう!一緒に頑張りましょうね。」
「分かりました。レックさん達の抜けた穴を埋められるように、精一杯貢献させていただきます。」
大喜びのターニアに対し、ピエールはあくまでも冷静だった。
そしてチャモロは魔物マスターに、アモスは戦士に転職した。
彼らは色々な場所をまわって情報を集めるうちにピエールがパラディンの条件を満たしたため、転職をした。
そして次の目的地が不思議な洞くつと判明すると、チャモロはグラコスの槍に力のルビー、アモスはきせきの剣に力の盾、ターニアは氷のやいばに星降る腕輪、ピエールは炎の剣にプラチナメイル、プラチナシールドといったアイテムをそろえた。
現地は難解な仕掛けがある上に、何かを守っているせいなのか、敵も強かった。
そんな中で、ターニアは先制でメダパニやラリホーマ、チャモロはおたけびを多用した。
相手は耐性持ちが多いため、成功率自体は決して高いわけではなかったが、それでもある程度攻撃の頻度を減らすことに成功した。
そしてピエールはせいけん突きやばくれつけんで戦い、アモスは通常攻撃で回復をしながら、時にはまわしげりやせいけん突き、さらにはしっぷう突きを使った。
相手に隙が出来るとターニアはマホトラでMPを補充しながらイオラやベギラゴン、そして道具使用でのヒャダルコで攻撃役にまわった。
この日は目的のアイテムまでたどり着けなかったが、ターニアがバイキルトをマスターしたため、翌日から早速使うことにした。
「これはありがたいですね。相手にかなりのダメージを与えられます。」
「しかもせいけん突きが決まればタフな敵でも一発KOですね。」
ピエールとアモスは彼女の呪文に感謝しきりだった。
その後、チャモロは焼けつく息、アモスははやぶさぎりを覚えたため、攻撃のバリエーションがさらに広がった。
そして3回目の訪問で、彼らはついにスフィーダの盾を入手した。
洞くつを後にすると、ターニアはすぐさまカルベローナに飛んでいき、家の前でレックに会った。
「お兄ちゃん。はい、これ。」
「ありがとう。これで僕の守備力が上がるよ。」
「どういたしましてよ。お兄ちゃんのために役に立ててうれしいわ。」
彼女は満面の笑みを浮かべた後、バーバラに会わせてもらえないか問いかけた。
「それはごめん。彼女は今、面会お断りの状態なんだ。」
レックはバーバラが病気になってしまい、家から出られないこと。
そして、自身が彼女の濃厚接触者になってしまったため、屋外でも5分以上人と会話が出来ないことを伝えた。
「それじゃ、私はなるべく早く会話を済ませないといけないわね。」
「うん。せっかく来てくれたのに、ごめんね。」
「気にしないで。それよりバーバラさん、元気になるかしら。」
「うわさによれば、賢者の石を使えば治るかもしれないって言われたんだ。だから自分でそれを入手しに行きたいけれど、これじゃ出かけるわけにはいかないから、代わりにお願いしてもいい?」
「分かったわ。私達はこれからそれに関する情報を集めて、きっと手に入れてみせるからね。」
「ありがとう。じゃあ、僕はもう時間だから、家に入ることにするね。」
レックは寂し気に会話を切り上げると、妹に背を向けた。
ターニアはその姿を見届けた後、ルーラを唱えて飛び立っていった。
彼女をはじめ、チャモロ達が色々な場所を巡って情報集めをした結果、賢者の石はベストドレッサーコンテストで手に入ること。
そのためには男性部門、女性部門、モンスター部門の3つに一人(一匹)ずつが出場して総合でトップの成績を収める必要があることを聞いた。
「そうなると、私達には準備が必要ですね。」
「これからみんなの装備品を分けてもらいましょう。」
「私も仲間モンスター達のところに向かいます。」
チャモロ、アモス、ピエールは早速作戦を立てることにした。
そしてターニアはすぐさまマーズの館に向かって飛び立っていった。
現地ではミレーユとグリンガムがおり、グランマーズはどこかに出かけたまま不在だった。
ミレーユは未だに深い自責の念に襲われている影響で、ターニアに説得されても不参加を宣言したが、それでも彼女はあきらめなかった。
「お願いします。どうしてもそのコンテストで総合優勝して、賢者の石を手に入れたいんです。」
ターニアの懸命の説得を聞いているうちに、ミレーユは少しでもバーバラへの償いをしたいという思いから、ついに参加を決意した。
すると、グリンガムが自分の装備品を使うことを提案してきた。
「どうかしら?あなたはスーパースターだし、私のアイテムを身に付ければ、女性部門できっと優勝出来ると思うわよ。」
彼女はそう言うと、誘惑の剣やまふうじの杖、天使のレオタード、水の羽衣を用意してくれた。
「あの、本当に使わせてもらっていいんですか?」
「ええ。役に立つのであれば、喜んで貸し出すわ。」
「ありがとうございます。では、絶対に優勝して、期待に応えてみせます!」
ミレーユはこれらのアイテムを受け取り、グリンガムと一緒に奥の部屋に入っていって試着をした。
その後、コンテストには彼女に加えて、チャモロとピエールが踊り子に転職した状態で参加することになった。
彼らの装備は次のとおりだった。
チャモロ … 炎の剣、神秘の鎧、魔法の盾、スライムメット、スライムピアス
ミレーユ … 誘惑の剣、天使のレオタード、シルバートレイ、銀の髪飾り、ガラスのくつ
ピエール … プラチナソード、プラチナメイル、プラチナシールド、プラチナヘッド、蝶ネクタイ
(※プラチナヘッドはテリーから借りました。)
最初に行われたのは男性部門で、チャモロの他にブラスト(3番)や、以前、キラーマジンガ戦を模擬したゲームを紹介してくれたキュウジ(4番)が登場した。
ブラストは全身を重装備で固めており、いかにも騎士団長という雰囲気を出していた。
一方、キュウジは金属バット、野球のユニフォーム、グローブ、野球帽、運動靴を身に付けており、右投げ左打ちの外野手としてのリアクションでアピールをした。
審査の結果は3人がほぼ横一線の状態だったが、わずかな差で優勝したのはブラストだった。
「ちょっと!何で私じゃないんですか!」
チャモロはやれるだけのことはすべてやった上での参加だっただけに、不満タラタラだった。
「まあまあ。私はコーディネートボーナスをいかんなく発揮しましたし、順当な結果だと思いますよ。」
ブラストはチャモロの主張をあっさりと退けた。
一方のキュウジも3位だったことに納得出来ず、悔し紛れに自分の帽子を取って地面に叩きつけた。
すると彼は5厘刈りにしていたことが判明した。
「君はコンテストのためにそこまで気合を入れていたのかね。気に入りましたよ。」
審査員の一人であるダンテはキュウジにボーナス点を加えることにした。
「それは不公平です!」
「それなら私だって!」
ブラストとチャモロは抗議の意味を込めて、自身のかぶりものを外してアピールをした。
「な、何と!君達はピッカリだったんですね!」
ダンテは彼らにキュウジ以上のボーナス点を入れたため、結局順位はそのままになった。
(※ブラストの頭についてはマンガ版の7巻参照。)
「うおおっ!これはまぶしいっ!」
「これ、ピッカリ選手権になってね?」
他の2人の参加者は意外な状況に戸惑っていた。
次の審査にはミレーユが登場し、参加者の中にはアリーナ(3番)やサラ(4番)がいた。
(※サラはYou Are Thereの12話以降に、スーパースターのバーバラをイメージしたキャラという形で登場します。)
彼女達も色々な準備をしていたが、アリーナは職に就いておらず、サラは装備がはがねのムチ、身かわしの服、魔法の盾、風の帽子、スライムピアスということもあって、ポイントの伸びはいまいちだった。
一方のミレーユは天使のレオタードが反則級のカッコよさを誇っていたことや、マスター目前のハッスルダンスの効果も手伝って、文句なしでトップの座を勝ち取った。
「まいったわ。まさかこんなに差をつけられるなんて。」
「私もブラストさんに続きたかったけれど、残念だわ。」
「私にはどうしても勝たなければならない理由があるの…。」
負けてもサバサバしているアリーナとサラに対し、ミレーユは勝ったにもかかわらず笑顔がないままだった。
「どうしたの?確か、あなたはバーバラさんのために参加するって聞きましたけれど。」
「バーバラさんに何かあったんですか?もし良かったら教えてくれませんか?」
アリーナとサラが「バーバラ」と言い出したことで、ミレーユは突然「やめて!」と言い出した。
それを聞いて彼女達だけでなく、他の参加者達もビクッとした。
「お願い。彼女の名前を出すのはやめて…。私、彼女にマダンテを使わせたせいで、彼女の目を見えなくさせてしまった…。彼女を病気にさせて、取り返しのつかないことをしてしまうところだった…。」
心に深い傷を背負ったままのミレーユはとうとう気持ちをこらえきれなくなり、泣きながら両手で自分の顔を覆った。
その姿を見て、アリーナ達は「ごめんなさい。」と謝った後、彼女に寄り添い続けた。
そしてミレーユは表彰式で顔をくしゃくしゃにしながら光のドレスを受け取った後、足早に会場を後にしていった。
30分後。今度はピエールがモンスター部門で登場した。
元々のカッコよさに加えてコーディネートボーナスも加えた彼は、その勇ましい姿を堂々と審査員にアピールした。
その姿を見た他のモンスター達はもはや彼には勝てないと認識したのか、結果が出る前にがく然としていた。
結果はピエールが文句なしの1位を獲得し、彼はスライム格闘場のFランクを免除されることになったたため、賞品としてキラーピアスを受け取った。
さらに総合成績で見事に優勝を勝ち取ったため、賢者の石をもらえることになった。
彼は大喜びしながらチャモロのところにやってきた。
「本当にありがとうございます。これでバーバラさんの治療に行けますね。」
「はい。ミレーユさんがいないのは残念ですが、早速表彰式に行きましょう。」
その後、チャモロとピエールは胸を張って賞品を受け取った。
一方、カルベローナでは自分のまわりにバリアをはったグランマーズが、ベッドに横になっているバーバラに少しずつ食事を与えた。
食事が終わると、彼女は食器の片付けを済ませた後、レックにもバリアをはり、一緒にバーバラの部屋に入っていった。
彼女はすでに眠りに落ちていたが、少しずつ顔色が良くなっていくのが確認出来た。
「これなら体は間違いなく回復に向かっていくじゃろう。もう大丈夫じゃ。」
「本当ですか?それは良かったです。おばあさん、ありがとうございます!」
それまで祈るような気持ちだったレックは、心の底からほっとした。
「さすがパデキアの根っこの効果は凄いのう。もしこれでもはっきりと事態が好転しなければ、賢者の石との合わせ技にかけるつもりだったが、うまくいって良かった。わしが未来の世界に行ってアリーナに会い、根っこを分けてほしいとお願いした甲斐があったぞい。」
「彼女に会ったら、みんなでお礼を言いたいですね。」
「うむ。そうじゃのう。」
彼女も自分の作戦が予想以上にうまくいったことで、心の底からほっとしていた。
しかし、仮に病気が治っても目はまだ完治するわけではないため、今後は賢者の石を使って治療をすることにした。
翌日。バーバラはまだ目がかすんでいるものの、歩ける状態にまで回復した。
それを確認したグランマーズは彼女にバリアをはり、一緒に家の外に出てきた。
そこにはチャモロ、ピエール、そしてバリアをはってもらったレックがおり、バーバラは一人ずつ順番にお礼を言った。
しばらくするとアリーナがみんなにあいさつをしにやってきたため、ピエールは彼女にキラーピアスを手渡した。
「わあっ!ありがとう!未来に帰ったら、この武器で敵をなぎ倒してみせるわ!」
彼女は早速それを装備し、2度攻撃の練習をした。
次にバーバラはレックに連れられてアリーナの方に向かっていった。
「この度はあたしのために、パデキアの根っこを恵んでくれて、本当にありがとうございます。」
「どういたしましてよ。みんなは一人のためにって言うじゃない。とにかく、あなたが元気になってくれて良かったわ。早く体と目を完治させて、大活躍をしてね。」
「はい。約束します。」
バーバラは顔こそ判別出来なかったが、それでも頭を下げてお礼をした。
その後。いよいよアリーナが未来に帰る時間がやってきたため、グランマーズは彼女に時空を超えるアイテムを使用させた。
そしてアリーナの体が光に包まれ、やがて見えなくなっていく様子をみんなで見守った。