キラーマジンガが倒せない   作:地球の星

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Quest.12 ロボット

 病気から立ち直り、視力もかなり回復したバーバラは、行動制限が解除されたレックとともに町の外を歩いた。

 すると彼らは傷ついた動物達に出会ったため、バーバラはリハビリも兼ねてホイミを唱えた。

 幸い傷は徐々に回復していったものの、一回唱えるたびにMPを4消費してしまった。

 彼らは「ありがとう。」と言っているかのように頭を下げ、お礼に薬草を置いて去っていった。

「バーバラ、良かったね。」

 薬草を拾い上げたレックは優しく声をかけた。

「でもあたし、魔力もかなり落ちているし、これじゃ戦力になれない…。あたし、このまま役立たずになってしまうのかな…。」

 バーバラはみんなから冷たい言葉を浴びせられることを恐れているのか、うつむいていた。

「そんなことないよ。病気も治ったし、目も見えるようになってきた。それに、呪文もこうやって唱えられるじゃないか。」

「でも…。」

 レックは何とか彼女を元気付けようとしたが、効果はないままだった。

「ごめんね。僕があの時、君をグレイス城に誘ったせいで…。」

「ううん。レックのせいじゃないわ。あたしが城の中に入っていったせいで…。」

「君のせいじゃない。そもそも君がいなかったら、オルゴーの鎧は手に入らなかったんだから。」

 彼はその時のエピソードを話しながら、何とかバーバラを励まそうとした。

 

 それは2人が魔法のじゅうたんを手に入れて、空を飛び回っている時のことだった。

 彼らはまずダーマ神殿に行き、レックは賢者に、バーバラは僧侶に転職した。

 その後は現実の世界に降り立った後で再度魔法のじゅうたんを使用した。

 次に訪れた場所はグレイス城で、ここはすっかり廃墟と化していた。

『ここ、何だか嫌なにおいがするわね。気分悪くなりそう。』

 当時、ほとんど目が見えなかったバーバラでも、嫌な予感を感じていた。

 すると、しばらく進んだ先に、レックは何か見覚えのある物体を見た。

『あれは…。もしや、キラーマジンガ?』

『えっ?モンスターがいるの?』

『ああ。一体だけだけれど、まるで仁王立ちしているようにそこにいる。まるで何かを守っているみたいだ。』

『そう?あたしはそんな雰囲気感じないんだけれど。』

『いや、確かにそこにいる。君には見えないだろうけれど、間違いない。』

『うーん…。』

 いまいち納得出来ないバーバラだったが、レックは1対1での戦闘になることを覚悟した。

『バーバラ。少しの間の辛抱だからね。』

 彼はそれまでつないでいた手を離すと、マグマの杖を持って身構えた。

『待って。やっぱりここに敵はいないわ。だまされてはダメ。』

『いや、いるんだよ。』

 レックは一人で勝てるのだろうかと不安になりながら、それでも戦おうとしていたが、一方のバーバラはその場所に何かあることを感じ取っていた。

『ここはあたしにまかせて。』

 彼女はあろうことか、キラーマジンガの立っている場所に向かって歩き出した。

『やめてくれ!やられるぞ!』

『絶対に手を出さないで!あいつに構ってはダメよ!』

『うわああっ!やられる!』

 レックの脳裏には思わず彼女がなす術なく倒されるシーンがよぎった。

 しかしバーバラはお構いなしにその場所を調べ、何と隠し階段を見つけた。

 するとキラーマジンガの姿は跡形もなく消えてしまった。

『えっ?どうなっているんだ?』

 レックは目の前で起きていることが信じられず、立ちすくんでいた。

『良かったわ。うまくいって。』

『バーバラ。これって一体?』

『レック。あなたは何者かが作り出した幻覚にほんろうされる形になっていたの。』

 

(あの時、君のおかげで僕達は城の地下に入っていけたよね。そして異臭やほこりが漂う中を一緒に進んでいって、風神の盾やオルゴーの鎧を手に入れたよね。でも、地下から出てきた時、君の体調は明らかにおかしかった。その時点で熱を出していたし、せき込んでいた。あの時はごめんね。僕が城の地下を色々探索したせいで…。)

 レックは自分のせいでバーバラを病気にさせてしまい、さらに自身が濃厚接触者になってしまったことを今でも悔やんでいた。

 

 その日。2人は何度も呪文を唱え続け、レックはついにベホマラーをマスターした。

 一方のバーバラはベホイミを唱え始めたが、回復量が50に満たないにも関わらず、消費MPは10だったため、とても実用的とは言えなかった。

 しかもはがねのムチで通常攻撃の練習をした時にはムチが自分に当たってダメージを受けてしまい、風神の盾を使ってもそよ風程度の風しか起こせず、まして特技を使おうものならたちまち体に故障が発生しそうな状況だった。

(このままでは彼女の立場が危うい。何とかしなければ…。でも、誰かに相談したくても、誰に相談すればいいんだ…。ミレーユに会おうものなら間違いなく彼女を落ち込ませてしまうし、アモスさんやチャモロ達に会ってパーティーに加わっても足手まといになるだけだし…。)

 打開策を見いだせずに彼が思い悩んでいると、ふとそこに一人の男性兵士が現れた。

「君達、こんにちは。」

レック「キラさん。どうしてここに?」

「いやあ、君達のことが気になってね。それでカルベローナに来たんだ。」

 キラはレックとバーバラに会うなり、2人が落ち込んでいることに気が付いた。

「どうしたんだい?悩みがあるのなら、話してくれないか?」

「でも、話したところでそれが解決するわけでは…。」

「そうか。だが、悩んでいるのは君達だけではない。実は私もなんだ。」

「えっ?キラさんにも悩みが?」

「ああ、そうだ。」

 レックが驚く中、キラはこの度海底宝物庫が閉鎖になったため、今後、どのように生活すればいいのかと考えていることを打ち明けた。

バーバラ「どうしてそうなったんですか?」

「別の兵士の話では、先日、アークボルト在住の方達が現地を訪れてきたんだ。」

 彼は続けざまに、ブラスト達が最高レベルの戦闘を選んだ結果、保護者達が目を覆いたくなるような光景を見てしまい、『こんなところは危険過ぎます。閉鎖を要求します!』と言い出してきたことを伝えた。

 兵士は存続を要求したが、一人対大勢では勝ち目はなく、結局押し切られたため、そのまま閉鎖に追い込まれる結果になってしまった。

「それじゃ、あたしが使う予定になっているムチはどうなるんでしょうか?」

「大丈夫。グリンガムが大事に持っているし、いずれ君に渡すつもりだ。」

「そうですか。それなら良かったです。でも…。」

「でも、何かね?」

「あたし、病気は治ったけれど、通常攻撃すらまともに出来ないし、このままじゃムチをもらっても…。」

 バーバラは自分の今の状態を話し、このままではみんなから役立たず呼ばわりされるのではないかという不安を打ち明けた。

「それ、以前のグリンガムに似ているね。」

「えっ?どういうことですか?」

「彼女は今でこそ、あのムチの攻撃力をいかして立派に戦力として活躍しているが、以前はHPも攻撃力も低く、明らかに打たれ弱かったため、みんなからは冷たい目で見られていたんだ。そして、私は彼女が悔しい思いをしているところを何度も見てきたんだよ。」

 キラは続けざまに、彼女が前線で戦うと決めた時のことを話してくれた。

 彼を含めて周りの人達が驚く中、グリンガムは本気だった。

 しかし、ただでさえ逆風や偏見にさらされ、さらに度々ケガをしていたため、否定的な目をする人はますます多くなった。

 そんな中でもキラは手に入れた命の木の実や力の種を惜しまずに彼女に与え、さらに自ら進んで稽古相手になって彼女を鍛え続けた。

 そして頑張って貯めたお金で強力な武器を購入し、その攻撃力も手伝ってようやく戦力になる目途が立ったことを教えてくれた。

「それって、あたしと何だか似ているわね。」

レック「そうだね。バーバラが戦士になると言い出した時も、最初は賛否両論あったからね。彼女は賢者になるべきだという意見が多数を占める中で、君はHPを減らしたくない。これ以上控え要員のままでいたくないという思いから、反対を押し切って転職をしたよね。」

「それでもあたしは弱いままだったけれど、レックは我慢してあたしを起用し続けてくれたし、自分の装備を後回しにしてまではがねのムチを購入させてくれた。そして力のルビーときせきの剣が手に入れば即座にあたしに持たせてくれたよね。」

「うん。みんなからは『ひいきだ』とか言われたけれど、君が活躍出来るのであれば、僕は誰に何と言われようと、みんなを敵にまわそうと構わない。そんな覚悟だったから。そして君は見事に実戦で結果を出して、実力でみんなを納得させたよね。」

 レックはそんな彼女の活躍ぶりを誰よりも間近で眺めていた。

 そしてその姿がまぶしかったからこそ、このような状態になってしまったことを余計につらく感じていた。

 2人の話を聞いているうちに、キラはグリンガムに会って話をしてみないか提案をした。

「ぜひ会わせてください。」

「僕からもよろしくお願いします。」

 バーバラとレックの同意を受けて、キラは早速ルーラを使い、彼女のいる場所へと向かっていった。

 

 3人がその場所にやって来ると、グリンガムは何とキラーマジンガ一体の改造をしていた。

「おーい、どうだ?作業は順調か?」

 キラが冷静に問いかけるのに対し、レックとバーバラは彼女が因縁の敵キャラを扱っていることに驚いていた。

「どうしてそんな物騒なものを改造するの?」

「またあたし達、襲われたりしないわよね。」

「大丈夫よ。そうならないようにしているの。このキラーマジンガはね、闇雲に誰かを襲っていたわけじゃないの。宝物を渡すのにふさわしい人かどうかを見極めるために行動していたのよ。」

 グリンガムは出来るだけ悲惨なことが起きないように心掛けていたものの、なかなかその調整がうまくいかず、レック達にトラウマ級の記憶を植え付けてしまったことを謝った。

「とにかく、これからは戦闘時に君達が助っ人として召喚出来るようにしてあげるわね。きっと役に立つはずよ。」

「本当に僕達に扱えるんですか?」

「ええ。自分が主であることを覚えさせた上で、このアイテムを使えば呼び出せるわ。その際MPを20消費する上に、1日の使用回数も限られているから、乱用は出来ないけれどね。」

 グリンガムが説明をしていると、ついに改造が完了した。

 そして召喚に必要なアイテムを差し出してきた。

 レックはそれを受け取ると、キラーマジンガに向かって使用した。

「アナタ…、ワタシノ…、アルジ…、デスカ?」

 その機械は彼に向かって話しかけてきた。

 レックは最初こそ動揺していたが、勇気を出して主であることを伝え、自己紹介をした。

「アナタ…、レック…。ワタシノ…、アルジ…。ヨロシク…。」

「こちらこそよろしくお願いします。これから僕達のために戦ってください。」

「ワカリマシタ…。アナタノ…、タメニ…、タタカウ…、シマス…。」

 キラーマジンガは以前とは打って変わり、礼儀正しく接してきた。

「ありがとうございます。これからお互い協力して頑張りましょう。」

「ワタシモ…、ガンバル…、シマス…。」

 こうしてキラーマジンガが仲間に加わってくれることになった。

「良かったね、レック。」

「うん。本当に夢みたいだ。あんなに怖い思いをさせてきたものが、まさか仲間になるなんて。」

「それはあたしもうれしいんだけど、これってあたしは扱えないの?」

「ごめんなさいね。そのアイテムは一人しか登録が出来ないの。だから、あなたには扱えないわ。」

「ええっ?つまんないの!」

 バーバラは自分が主になれなかったため、思わず顔をしかめた。

「ところでキラさん。僕、ちょっと聞きたいことがあるんですけれど。」

「何かね?レック君。」

「キラさん達はこれに何て名前を付けているんですか?」

「名前かね。私達は『キラーマジンガ』としか呼んでいなかったのだが…。」

「ええっ?嫌よ、そんな名前。カッコ良くない!」

 バーバラは突然会話に割り込み、不満をぶつけた。

「ねえ、レック。もっといい名前を付けてあげようよ。」

「例えば、どんな?」

 レックが思わず困惑していると、バーバラは10秒ほど考えてから「ええっとねえ…。ロボット!」と言い出した。

「何よ、その名前。」

「単純すぎじゃね?」

 グリンガムとキラは思わず苦笑いしながら吹き出してしまった。

「ええっ?あたしはいいと思うんだけれどな。ねえ、どう?レック。」

「そうだなあ…。よし、採用!」

 レックは最初こそ思い悩んでいたが、その場のノリという感じで同意をした。

「ちょっと!本当にいいの?」

「みんなに笑われそうなんだけど…。」

「大丈夫。バーバラが付けてくれた名前だから。喜んで使わせてもらうよ。」

 レックは迷いを吹っ切り、そのキラーマジンガをロボットと呼ぶことにした。

「ワカリマシタ…。ワタシハ…、ロボット…。コレカラ…、ヨロシク、…オネガイ…、シマス…。」

 彼は自分の新たな名前を名乗った後、レックの持っているアイテムの中に入っていった。

「良かったわね、レック。これでますます強くなれたわよ。」

「うん、それはうれしいんだけれど、僕ばかりが強くなっていいのかな…。」

 レックはまだ弱いままのバーバラのことが気になり、素直に喜べずにいた。

 するとグリンガムが過去の自分と彼女を重ね合わせたのか、バーバラの面倒を見ることを提案した。

「えっ?あたし、本当に世話になってもいいんですか?」

「ええ。私がマッサージをしたり、温泉に連れていったりしながら治療をしてあげるわ。その上で私のムチの使い方を教えてあげるし、ベホイミやベホマの唱え方も教えてあげるからね。」

「あの、本当にいいんですか?」

「いいわよ。それにレック君ではマッサージも温泉も無理でしょ?」

「た、確かにそうね。」

 バーバラは照れながら思わずレックを見た。

 彼もまた、何を妄想をしたのか顔を赤らめた。

「それじゃ、君はしばらくバーバラさんと離れて、ゆっくり過ごしなさい。」

「キラさん、どうしてですか?」

「君は今、休養が必要な状態だ。顔を見れば分かる。」

「うっ、それは…。」

 レックはバーバラをこんな状態にしてしまったことへの後悔の念や、彼女を少しでも早く元の状態にしてあげたいという焦りから、精神的に疲れている状態だった。

 それはバーバラも同じで、彼女もレックに対してかなり気を使っており、きゅうくつな思いをしていた。

「そう言うわけだ。どうかしばらくの間はリラックスして過ごしてほしい。」

「分かりました。」

「あたしもそうします。」

 2人はお互い離れ離れになることを気にしながらも、いさぎよくキラの提案を受け入れることにした。

 そして彼らは込み上げる気持ちをこらえながらお互いハグを交わした後、バーバラはグリンガムのルーラで温泉施設のある場所へと飛び立っていった。

(グリンガムさん。どうかバーバラを宜しくお願いします。彼女を元気な体にしてあげてください。)

 レックは遠ざかる彼女達の姿を見届けた後、この後の戦闘で早速ロボットを召喚した。

「こんなの聞いてないよーっ!チクショーッ!訴えてやる!」

「バトルをやめて~。マジンガ止めて~。」

「何回やっても何回やってもこんな奴倒せないよ!」

 コテンパンにされたモンスター達は泣き言を言いながら次々と降参していった。

 

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