ゾンビ化したムドーとキラージャックが退却していった後、レック達は後を追うようにヘルクラウド城に向かっていった。
現地に入っていくと、そこではムドーの弱々しい声とデュランの怒りの声が響き渡っていた。
『デュ…、デュラン…様…。わしに…、何とぞ…、もう…、一度…、チャンスを…。』
『だめだ!勝手な行動は許さぬと言ったはずだ!』
『わしは…、レック達を…倒す…。それを…叶えるため…、だけに…、やっと…戻って…、きたのだ…。』
『デュラン様!私達からもお願いします!』
『我らも勇者を憎むムドー様の気持ちに賛同したんです!』
『どうか我らにもう一度チャンスを!』
弱々しいムドーの声に続いて、キラージャック達もすがるようにお願いをした。
『ならぬ!規則を守れぬような者など必要ない!おろか者よ!立ち去れい!』
大激怒したデュランは大声で怒鳴った後、何やら必殺技のようなものを繰り出した。
すると辺りにはまぶしいほどの閃光がほど走り、ムドー達の悲鳴が聞こえた後、やがて静寂が訪れた。
「ムドー達、やられたの?」
「それで間違いなさそうね。」
「デュランって、すごく強そうだな。」
「果たして勝てるんでしょうか。」
バーバラ、ミレーユ、レック、アモスはその実力と威厳に圧倒されていた。
一行が城内を進んでいくと、彼らはやがてデュランの前にやって来た。
そこにはムドーとキラージャックの姿はすでに無く、別の手下達の姿があった。
「勇者達よ、よくぞ戻ってきた。私はとてもうれしいぞ。さあ、今こそ真剣勝負をする時だ。」
デュランは敵対関係であるにも関わらず、レック達に親し気に話しかけてきた。
しかし、彼に勝たなければこの城は救われないため、レックは前回負けた雪辱を果たす気満々だった。
「まあ、そう慌てるな。まずは私の部下と勝負をしてもらおう。」
「分かりました。誰と勝負になるんですか?」
レックが問いかけると、デュランはキラーマジンガとランドアーマーを2匹ずつ呼び出した。
「またですか。強敵ですね。」
「キラーマジンガだけでも強いのに!」
「何だか嫌な予感がしてきました…。」
アモス、ハッサン、ターニアをはじめ、一行は思わず後ずさりをしたくなった。
「どうした?怖気づいたのか?戦わなければ負けとみなすぞ。」
「いえ、戦います。」
「そうか。ならば、2組に分かれることにしよう。それでいいか?」
「はい。分かりました。」
話し合いの末、デュラン側はキラーマジンガとランドアーマーが一匹ずつ2回に分けて勝負をすることになり、こちらはレックを除いて3人ずつが参加することになった。
1回戦はミレーユ、ハッサン、ターニアが挑むことになり、ターニアはバーバラから星降る腕輪を、ハッサンはアモスから力の盾を受け取って装備した。
彼らは色々作戦を練った後、勇気を振り絞って立ち向かうことにした。
「では、今から勝負を開始する。準備はいいか?」
「いいぜ。デュランのおっさんよお。」
「フフフ。威勢のいいマッチョマンだな。気に入ったぞ。では、全力を振り絞るがよい。」
2人が口で張り合った後、いよいよ勝負が始まった。
するとターニアはメダパニを唱えてランドアーマーを混乱させた。
キラーマジンガはミレーユに集中攻撃を仕掛けてきたが、それを察知した彼女は素早くスカラを唱えたため、何とか耐えることが出来た。
(メタルキングの盾と合わせて守備力を上げてもこんなにダメージを受けるなんて。)
彼女の姿を見たハッサンはベホマを唱えてミレーユのダメージをリセットさせた。
次のターンでミレーユは真っ先にアストロンを唱え、そのターンの行動を無効化させた。
そんな中、混乱しているランドアーマーはキラーマジンガを攻撃してしまった。
(※その後、ミレーユはアストロンを5回続けて唱えました。)
ダメージがある程度蓄積してきたのを確認すると、ターニアはミレーユにバイキルトを唱え、攻撃力の上がった彼女はキラーマジンガに強烈な通常攻撃を浴びせた。
そのキラーマジンガはハッサンとミレーユに攻撃してきたが、ダメージが分散したため、彼らは踏みとどまることが出来た。
ランドアーマーの同士討ちの後、ハッサンはキラーマジンガにせいけん突きを浴びせた。
次にターニアはハッサンにバイキルトを唱え、ミレーユはハッスルダンスで受けたダメージをかなり回復させたが、その直後にキラーマジンガの2度攻撃を受けたターニアがその場にへたり込んでしまった。
(くっ!彼女をこんな目にあわせてしまったか。こうなったら少しでも早く決着をつけるしかない!)
腹をくくったハッサンは再度せいけん突きをヒットさせ、さらに捨て身でようやくキラーマジンガの動きを止めた。
残ったランドアーマーは正気に戻ったがミレーユがメダパニダンスで再度混乱させ、さらにバイキルト状態で総攻撃を浴びせた結果、最終的にミレーユ達の勝利に終わった。
戦闘後。デュランはターニア、キラーマジンガ、ランドアーマーを回復させ、動ける状態にしてくれた。
次はバーバラ、チャモロ、アモスが最強装備の状態で同じ組み合わせの相手に立ち向かっていくことになった。
(僕と故障してしまったロボットは参加出来ないけれど、どうかみんな無事でいてくれ。)
レックが祈るような気持ちで見つめる中、いよいよ2回戦が始まった。
すると、みんなに察知されないように魔力をためていたバーバラが一気にその力を解き放った。
「くらえーっ!マダンテーーーッ!!!」
彼女の叫び声と同時に辺りは目が開けられなくなるほどのまぶしい光に包まれていった。
「まさか。こんな手に打って出るなんて!」
「気づいていたら間違いなく止めたのに!」
ミレーユとレックは彼女が海底宝物庫でこの呪文を唱えた後にどうなってしまったのか。そしてここまで立ち直るのにどんな思いをしてきたのかを知っているだけに、大きなショックを受けていた。
光がおさまった後、バーバラはうつむきながら立ち尽くしており、一方のランドアーマーはまるで丸焼きになったような姿をしながら気絶していた。
一方、キラーマジンガはある程度ダメージこそ受けていたものの、ランドアーマーの身代わりの効果もあって、まだ動いていた。
「まさかあのカメがかばってくるなんて!」
「このままではいけません。何とかしなければ!」
チャモロとアモスは大慌てでメラミとせいけん突きをヒットさせた。
一方のキラーマジンガはまだ立ち直れていないのか、このターンでは攻撃してこなかった。
「バーバラ!」
レックはまだ戦闘中にもかかわらず、今にも倒れそうな彼女を受け止めた。
「大丈夫か?すぐに治療をしてあげるからね!」
彼は両腕でバーバラの体を包み込むと、即座にベホマを唱えた。
「コラコラ!君、邪魔をするな!まだ勝負は終わってないんだぞ!」
「そんなこと言ったって、バーバラが!バーバラが!」
デュランの忠告を聞いてもレックはすっかり気が動転していることもあって、即座にリレミトを唱えてその場を後にしていってしまった。
「何だあいつは。あの女がそんなに大事な存在なのか。」
デュランは勝負そっちのけでこの場を去ったレックにあきれながらも、勝負を再開させた。
ここから先はチャモロがベホマを唱えながらアモスがせいけん突きというパターンで行動することにした。
しかしキラーマジンガはその意図を読んだのか、次のターンで2度攻撃を浴びせてきたため、集中攻撃を浴びたチャモロは回復が間に合わずにKOされてしまった。
回復手段を失ったアモスはせいけん突きをヒットさせて早期決着を試みたが、まじんの鎧のせいで次のターンの行動が遅れてしまい、結局負けてしまった。
その後、デュランはみんなに回復処置を施してくれたが、マダンテを浴びたランドアーマーはそれでも回復せず、手下のモンスターに連れられて退場していった。
(※後に入院することになりました。)
「うむ。この勝負、1勝1敗であったか。本来ならレックが次の相手と1対1の勝負をするつもりで考えていたのだが、彼がいない以上、不戦敗にするか。」
デュランが一行を城の外に飛ばそうとしたが、一行は不戦敗という扱いに納得出来なかったため、一斉に反対をした。
「それでよ、次の相手ってのは誰なんだ?」
「良かろう。では今から呼びだしてくるぞ。」
ハッサンの質問を受けて、デュランは仲間呼びをした。
すると青い服を着た人間がその場に姿を現した。
(あっ、あの姿はっ!)
ミレーユは信じたくない光景を見てしまい、思わず固まってしまった。
「お前達、人間と戦うことに抵抗があるのかね?まあいい。彼の名はテリー。力と強さを求めて私のもとにやって来た少年だ。これから彼と1対1の勝負をしてもらう。」
デュランの紹介を受けたテリーは戦う気満々だった。
そして彼はまずチャモロを指名し、勝負が始まった。
素早さの高いテリーは先制でライデインやはやぶさぎりを駆使し、チャモロは後手になりながらも通常攻撃とベホマで対抗した。
しかしテリーがマホトーンを唱えたため、回復手段を失ったチャモロはじわじわと追い込まれていった。
結果、HPを削り切られる前に彼は降参を宣言し、テリーの勝利になった。
勝負の後、デュランはチャモロとテリーのHPを全回復させた後、今度はアモスが相手をすることになった。
彼は回復手段がホイミしかないため、とにかく攻撃を重ねて早期決着をしなければならず、積極的にせいけん突きを仕掛けた。
一方のテリーははやぶさぎりに加えて次のターンでまじんぎりを繰り出してきた。
攻撃は見事にヒットし、会心(痛恨)の一撃を受けたアモスはフラフラの状態になってしまった。
しかしその時、テリーも体に故障が発生したせいか、「ぐああああっ!!」と叫び、痛がりながらその場にうずくまってしまった。
「どうやらこれ以上の勝負は無理なようだな。ということで、引き分けとする。しかし、どうした?テリー。」
「な、何だか…、腕に…変な音が…。」
「それはいかん。今すぐ回復させるぞ。」
デュランは即座に回復処置を施した。
しかしそれでもテリーは患部をおさえており、痛みで顔をしかめたままだった。
「むむっ。これは大ケガだな。即座に検査が必要になるし、手術が必要になるだろうな。」
デュランが部下に命じてテリーを連れていこうとすると、そこにミレーユが「待って!」と言いながら2人のところにやって来た。
「ミレーユ、よせ!やられるぞ!」
「こちらに戻ってきてください!」
ハッサンとターニアの心配をよそに、ミレーユは彼を説得した。
「俺の邪魔をするな…。」
「テリー、私よ。ミレーユよ。お願い。目を覚まして。」
「ミレーユだと?」
「そうよ。」
「フンッ…。誰かと思ったら…、姉さんの名前をやすやすと…名乗りやがって…。俺の姉さんはもういない…。もういないんだ!」
「それは違うわ。テリー、あなたの姉は私よ。」
「そ、そんな…。嘘だーーーーっ!!」
衝撃的な発言を聞かされたテリーは激痛の中で叫んだ。
「嘘なんかではないわ。あなたの姉は私よ。私、ずっとあなたを探していたの。」
ミレーユは昔、ガンディーノで一緒に過ごした日々を打ち明けた。
「ほ、本当に…、姉さん…なのか…。」
「ええ。ずっと会いたかったわ。もうどこにも行かないで。治療なら私がすすんで行うから。」
ミレーユは涙を懸命にこらえながらテリーを優しく包み込んだ。
思いもよらない場面を前に、ハッサン達だけでなく、デュランとモンスター達も勝負を忘れて2人を見つめていた。
その頃、バーバラを連れてカルベローナにやってきたレックは、気が狂ったようにまだベホマを唱えていた。
「お願いだ。どうか無事でいてくれ。」
未だに気持ちが動転している彼は、急いで町に入っていこうとした。
すると、「レック…。」という声が聞こえたため、彼ははっとした。
「バーバラ。気が付いたんだね。大丈夫だよね?命に関わるような状態じゃないよね?」
「あたしは大丈夫よ。だから心配しないで。それより、こんなに力いっぱい抱きしめられると…、苦しいんだけれど…。」
「えっ?ええっ!?あっ、ご、ごめん!」
はっとしたレックは慌てて彼女の体を離した。
「ごめん、バーバラ!ぼ、僕…思わず…。」
「いいの。ちょっと息苦しかったけれど、すごくうれしかったよ。こんなにあたしのことを思ってくれたんだって思えたわ。こんな人、多分2度と会えないだろうなあ…。」
バーバラは顔を真っ赤にしながらもじもじしていた。
一方のレックは未だに恥ずかしさを抱えながらも、何とか冷静さを取り戻した。
「とにかく無事でよかったよ。でも、どうしてそんなに元気なの?」
「多分、これのおかげだと思うわ。」
バーバラは自分の服に手を入れ、何かを取り出した。
するとそれは石のような物体だった。
「あっ、賢者の石が!」
「違うわ。これは命の石よ。賢者の石は確か…。」
彼女が確認のためにそれを取り出すと、こちらは純粋な青い光を放っていた。
「良かった。こちらは無事だったわ。」
「ところで、命の石って?」
レックはそれまで名前も聞いたことが無いだけに、思わず首をかしげた。
バーバラは事前にグリンガムからこのアイテムをもらっていたことを話した。
「どうやらこれがあたしを救ってくれたようね。でも、もらった時はもっと青かったけれど、その時より黒ずんでいるわね。多分あともう一回マダンテを唱えたら砕けるかもしれないわね。」
彼女はそのアイテムを両手で包みながら感謝をすると、賢者の石と一緒に大切にしまった。
「さあ、レック。あたしはMPこそ使い果たしてしまったけれど、グリンガムのムチで戦力になれるから、急いでみんなのところに戻りましょう。」
「分かった。行こう。」
「うんっ!」
2人は手をつなぐと、レックのルーラで再び飛び立っていった。