ヘルクラウド城でテリーと再会したミレーユは彼を改心させた後、デュランから許可を得た上できせきの剣、力のルビー、メタルキングの盾をその場に置き、テリーと一緒に現地を後にしていった。
(これらはハッサンが装備し、彼がこれまで装備していた炎の剣はチャモロが装備。)
そのため、現地に残ったのはハッサン、チャモロ、アモス、ターニアの4人だけになってしまった。
「ここまで人数が減ってしまったのは計算外だったが、いよいよ私と勝負だな。今こそ全力で戦おうぞ。」
デュランの意気込みに圧倒された彼らには、もはや断る選択肢は残されていなかった。
「とにかくやるしかありません。」
「みんなで全力を尽くしましょう。」
「俺も足のことを気にはしていられないぜ。」
「私も呪文で何とか貢献します。」
チャモロ、アモス、ハッサン、ターニアは勇気を振り絞って立ち向かうことにした。
勝負が始まると、デュランは先制でムーンサルトとはやわざを使い、全員にかなりのダメージを与えてきた。
その影響でターニアはバイキルトを急遽取りやめてベホマラーを唱えた。
続いてチャモロはまぶしい光を放ったが失敗してしまい、アモスとハッサンはそろってせいけん突きを仕掛けたが、両方とも失敗してしまった。
デュランは隙ありと言わんばかりにかまいたちを使ってアモスにダメージを与え、さらにマホターンを唱えた。
(幸いダメージは一人だけだったわね。それなら。)
ターニアは回復を他の人に任せることにして、自身はハッサンにバイキルトを唱えた。
彼女の思惑を感じ取ったチャモロはベホマでアモスのダメージをリセットさせた。
続いてアモスはばくれつけんを使って3回ヒット、ハッサンは通常攻撃をヒットさせた。
ターニアは次のターンでアモスにもバイキルトをかけ、チャモロはスクルトを唱えたが、直後にデュランは凍てつく波動を使ってきた。
「ええっ?そんなまさか!」
「せっかく唱えたのに!」
「ハハハハ。とんだ計算違いだったな。私がいつまでもこれらの対策をせずにいると思ったか!」
ターニアとチャモロがショックを受ける一方で、デュランは高らかに笑った。
「こうなったらゴリ押すまでだ。」
「やるしかありません!」
ハッサンとアモスはそろってばくれつけんを使い、8回中6回攻撃をヒットさせた。
幸いこちらは攻撃を受けていなかったため、ターニアは炎のツメでメラミを放ち、マホターンをすり抜けてダメージを与えた。
その後、チャモロは通常攻撃を当て、デュランはムーンサルトとかまいたちを使った。
(※かまいたちはアモスにヒット。)
そしてアモスは再度ばくれつけんを使い、ハッサンはアモスにベホマを唱えた。
(このままダメージを受けていては、誰かがやられてしまうわ。)
ターニアはベホマラーで全員を回復させた。
そのおかげでみんなはデュランのムーンサルト2連発に耐えることが出来た。
しかしHPがかなり減ってしまったため、アモスのばくれつけんをはさむ形でチャモロとハッサンはベホマを唱え、それぞれ自身とターニアを全回復させた。
その後、4人は回復に追われるあまりに攻撃回数が減ってしまい、しかもデュランはなかなかタフな体をしているため、勝負は持久戦になりつつあった。
するとその時、レックとバーバラが手をつなぎながら駆け足でやってきた。
「みんな、遅くなってごめんね。」
「すまない。離脱してしまって。」
バーバラとレックは苦戦している4人を見て、即座に謝った。
「ほう。戻って来たか。それに娘さんは無事だったか。それは良かった。」
デュランは2人を見て攻撃の手を一旦止めた。
さらにそれだけでなく、みんなのHPとMPを全回復させてくれた。
「えっ?いいんですか?」
「敵なのに、どうして?」
レックとバーバラは自分達も回復させてくれたことに驚き、思わず問いかけた。
「私は卑怯な手を使ったりはしない。純粋に精一杯戦いたいのだ。それに、お前達の愛の力を見せてほしいからな。」
「あ、愛の力って!」
「あたし達、そんな…。」
思わぬ発言を受けて、彼らは思わずドキッとした。
「おおっ!愛の力か!」
「確かにお似合いですね。」
2人はハッサンとアモスにもイジられたため、顔が真っ赤になった。
「ハハハハ。まあ、私だって妻がいるし、子供達もいる。彼らは必要な時にそばにいない、そんな私を支えてくれるし、私も彼らの味方だ。たとえ世界を敵に回したって味方だ。お前達もそうなってほしいものだな。」
「だから、そんな言い方しなくても!」
「………。」
レックは思わず両手を前に突き出し、バーバラは何も言えないまま両手を顔に当てて恥ずかしがっていた。
やがて彼らの気持ちが落ち着くと、2人はHPをかなり回復させたデュランに立ち向かっていくことにした。
するとバーバラはついに特技を解禁してばくれつけんを繰り出し、レックは通常攻撃を浴びせた。
「ほう、さすがだな。では私も全力で応戦するぞ。」
デュランはムーンサルトを浴びせ、2人にかなりのダメージを与えた。
「なかなか強力な攻撃ね。」
「じゃあ、僕が回復を担当するよ。」
「分かったわ。お願いね。」
次のターンでバーバラははやぶさぎりをヒットさせ、レックはベホマラーを唱えた。
一方のデュランは相手が2人なのに配慮してか、2回攻撃を取りやめ、かまいたちでレックを攻撃するにとどめた。
それでも彼はかなりHPを減らしたため、今度はバーバラがベホマで回復をさせ、レックが会心の一撃を出した。
その後も2人は回復をしながら攻撃を繰り返し、デュランもはやわざ、ムーンサルト、かまいたちを駆使してきた。
細かい頭脳戦といった形は一切なく、純粋な叩き合いという形だったが、それでも勝負はなかなかつかず、またしても持久戦になりつつあった。
「これではきりがない。どうする?」
「一気に大ダメージを与えるしかないわね。」
「それじゃ、あれを使うのか?」
「多分、一回なら大丈夫なはずよ。」
「でも、危険だぞ。君をそんな目にあわせるわけには…。」
「大丈夫。レックやみんながついているから。」
バーバラは状況を打開すべく、覚悟を決めている様子だった。
それを見ていた他の4人はいてもたってもいられなくなり、自分達も加わることを決意した。
「おおっ、全員で参加するのか。良かろう。1ターンだけそれを許可しよう。お前達の渾身の力を見せてみろ。」
デュランはそう言うと、はやわざ、ムーンサルト、かまいたちを一気に繰り出してきた。
その影響で集中的にダメージを受けたアモスは一気にKOされてしまい、チャモロもHPを大きく減らしてしまった。
チャモロは本来ならここで自身にベホマを唱えるところだったが、少しでも早く決着をつけるために炎のツメのメラミを叩き込んだ。
続いてターニアはバイキルトを唱え、攻撃力の上がったレックは強烈な通常攻撃を叩き込んだ。
さらにまじんの鎧を外したハッサンはばくれつけんを4発とも決め、最後に行動することになったバーバラは懸命に魔力をため込んだ。
(ブボール、グリンガムさん。レック、そしてみんな…。どうかあたしを守って!)
一方のデュランはその姿を見ても微動だにせず、まるで「さあ来い!」と言わんばかりに彼女を見つめていた。
そしてバーバラはありったけの魔力を集め終わると、今度は一気にそれを放出した。
「くらえーーーっ!マダンテーーーーッ!!!」
彼女の叫び声とともに体は再びまぶしく輝き、もの凄い威力の攻撃がデュランに向かっていった。
「見事であった。私にここまでのダメージを与えるとは。人間の底力というものを見せてもらったぞ。」
デュランは素直にレック達の実力を認めると、アモスを立ち上がれる状態にした上で、全員のHPとMPを回復させてくれた。
「では、私がここで活動するのもここまでになる。この城はゼニス王に明け渡した上で、私は家族を連れて別世界に行くことにする。」
そう言う彼の表情はすっかり穏やかなものになっており、まるで家族思いの父親のような感じだった。
レックはこれまで戦ってきたボス敵とはまるで態度が違うことが信じられず、どうしてそのようなことをするのか問いかけた。
「確かに私は大魔王に使えるモンスターという身だ。それもあって、私はここまでの地位を手に入れた。しかし、それと引き換えに私は仕事中心の生活を送ってしまったせいで、妻と子供達には本当に申し訳ないことをしてしまった。だからこそ、これからは家族のために過ごそうと思ってな。」
デュランはこれまでのことを反省し、これからは新たな世界で家族とともに一から新たな生活を歩むことを告げた。
「そう言うわけだ。私の行いは大魔王からすれば許されるものではない以上、このままでは家族を含めて粛清されてしまうであろう。だからこそ、私は大魔王の力が及ばない場所に行き、家族とともに別世界を旅しながら過ごすことにする。その前にテリーに一声かけたかったが、仕方がない。彼の世話を頼んだぞ。」
彼はそう言い残すと、穏やかな表情をしたままその場を立ち去ろうとした。
するとレックは「待ってください!」と言いながらデュランの前に駆け寄ってきた。
「何かね?」
「もし、別世界に行ったら、一つお願いしたいことがあるんですけれど、いいですか?」
「ほう、私にお願いか。どんなことかね?」
「あの…、みんなの前で言うのも恥ずかしいんですけれど…。もう一人のバーバラを探してもらえませんか?」
レックは顔を赤らめながら言い切った。
「えっ?もう一人のあたし?」
「うん。君とずっと一緒にいられるようになりたいんだ。」
彼は今のままではいつか自分とバーバラが引き離されてしまうため、それを解決したいことを伝えた。
「僕、彼女が初めてマダンテを唱えて倒れた時、胸が張り裂けそうな気持ちだったんです。もし彼女がいなくなってしまったら、自分の幸せが永久に無くなってしまうような気がして…。」
彼はバーバラが一命をとりとめたものの、痛々しい姿になってしまったことや、彼女が治療のために一時的に離れ離れになった時に、どんな気持ちだったのかを正直に打ち明けた。
「ちょっと、レック。みんなが見ているのに、そんなこと言うのやめてよ。」
「だって僕、君がいなくなった時なんて考えてないよ。想像すら出来ないよ。本当に心の底から君と一緒にいたいんだ。たとえこの世界に本当の平和が訪れて、僕自身が長い間勇者として語り継がれる存在になったとしても、君がいなかったら幸せになんてなれないよ。多分、泣いてばかりの日々になりそうな気がするんだ。」
「……。」
レックの思わぬ発言にバーバラは顔が真っ赤になり、胸が苦しくなるほど高鳴った。
「だから、お願いします。たとえ無駄な努力になっても構いません。もう一人のバーバラを探してほしいんです。」
「あたしからもお願いします。あたしもレックと一緒にいたい。もしその願いが叶うのなら、カルベローナの後継者という立場を失っても、カルベローナに戻れなくなっても構わないです。」
レックに続いて彼の気持ちに後押しされたバーバラもすがる思いでお願いをした。
「そうか…。分かった…。結果がどうなるのかは分からんが、その気持ちにこたえることにしよう。」
デュランは彼らの願いを素直に受け入れてくれた。
「ありがとうございます。」
「どうかよろしくお願いします。」
レックとバーバラは泣きそうになりながらお礼を言った。
「では、私はもう時間だ。粛清を免れるためにも、家族を守るためにも行かなければならん。もしその願いをかなえた上でこの世界に戻ってくることが出来るのであれば、私も祝福するつもりだ。その時まで、さらばだ。」
デュランはそう言い残すと、まるでテレポートするようにその場を後にしていった。
それから間もなく、大きな地響きが起こり、どこからか騒々しい声が聞こえてきた。
ハッサン「な、何だ何だ?何が起きているんだ?」
チャモロ「どうやら大魔王が誰かを送り込んできたようですね。」
アモス「私達も巻き込まれてしまうかもしれません。」
「とにかくここを早く脱出しましょう。」
ターニアはとっさにリレミトを唱え、間髪入れずにルーラを唱えた。
そしてデュランを始末するために送り込まれたモンスター達の姿を見ながら城を後にしていった。
その頃、マーズの館では、テリーの診察を終えたグランマーズがミレーユと話し合っていた。
「おばあちゃん、腕は治りそう?」
「思ったよりも重傷じゃのう。治すためには手術するしかなさそうじゃ。」
「えっ?本当に?」
「ふむ。仮に手術が成功したとしても、完治までには長い時間がかかりそうじゃ。早くて半年以上、もしかしたら1年かかるかもしれんのう。」
「そんな…。せっかく再会出来たのに…。」
「とはいえ、ある程度動けるようになれば、たとえ剣が振れなくても他のやり方で何かしらの貢献は出来るはずじゃ。お前さんはそのために知恵を振り絞ってみなさい。」
「はい、分かりました。」
ミレーユは受け入れがたい現実を突きつけられながらも、弟の分まで頑張ることを決意した。
そしてテリーかららいめいの剣を受け取り、これからは自分が使用することにした。