ヘルクラウド城での戦闘時に腕を痛めてしまったテリーは、ミレーユと一緒に現地を後にした。
ルーラで空を飛んでいる間もテリーは激痛で顔をゆがめるばかりで、見るからに痛々しい姿だった。
(お願い。すぐに病院に連れていってあげるから、もう少し辛抱して。そしてみんな。勝負の最中に離脱してしまってごめんなさい。)
ミレーユは心の中で懸命に弟を励まし続けながら、心の中で仲間達に謝った。
その後、アークボルトに降り立つと、彼女は城の入口で門番をしているガルシアを説得して、中に入っていった。
診察の結果、テリーは手術が必要と診断され、入院が必要なことや、完治まで相当時間がかかること。そして仮に治っても今まで通りに剣が振れるのかは分からないことを告げられた。
いずれにしても、持っていたらいめいの剣は到底使えず、さらに特技や呪文も一切使えない状態になってしまった。
「ちっ。これじゃ、とても戦力になんてなれやしねえな。こうなったら俺を酒場送りにするなり、好きにしろ。」
彼は覚悟をしていたとはいえ、それでもショックのあまりに打ちひしがれるばかりで、すっかり心が荒れすさんでしまった。
「そんなこと言わないで。あなたは私の弟。きっと私があなたを守ってあげるからね。たとえ、世界中の人達が見捨てたって、私はそばにいるわ。」
ミレーユはテリーに何を言われても文句を一切言わず、彼を支えていくことを心に誓いながらマーズの館に移動していった。
その後。ヘルクラウド城を脱出したレック達が合流したため、ミレーユはテリーの状況を詳しく説明した。
レック「つまり、ミレーユはこのままテリーと一緒に離脱してしまうの?」
「しばらくはそうなるかもしれないけれど、いずれは彼と一緒に復帰したいと思っているわ。」
「でもよ、足手まといになりそうな気がするぜ。」
「あたし達、きっと苦労すると思うけれどな。」
ハッサンとバーバラは内心テリーに不満を抱えていることもあって、素直に賛成出来ずにいた。
さらにチャモロやターニアも難色を示したため、姉弟の2人は徐々に四面楚歌の状態になってきた。
「フンッ!みんなそろって俺をのけ者にする気か!いいだろう。俺の方から出て行ってやるよ。俺に集団生活は合わねえからな!」
「テリー!そんなこと言わなくても。」
「止めるな!どうせ俺は所詮腕を痛めた足手まといだ!こんな奴、いねえ方がお前らにとっても都合がいいだろ!お前ら!はっきり言ってみろよ!!俺に消えろって言ってみろ!!」
彼はただでさえパーティー内での不協和音を感じていたこともあってとうとうキレてしまった。
その自暴自棄になった姿はハッサン達にとってもショッキングなもので、彼らは反省しながらも、素直にごめんなさいが言えずにいた。
「バカッ!そんなこと言わないの!」
ミレーユはピシッと彼のほおを叩いた。
「何だよ!姉さん!姉さんまで俺を!」
「違うわ。私はあなたの味方よ。あなたは私の宝物であり、希望よ。何度でも言うけれど、私は決してあなたを見捨てたりはしないわ。」
彼女は思わず泣きそうな表情になりながら、弟を説得した。
そしてようやく冷静さを取り戻したのを見ると、今度はレック達の方を向いた。
「みんな。もしテリーを役立たずと言ったり、出ていってほしいと言うのであれば、私も出ていくわ。」
「えっ?それってマジっすか?」
「本気で言っているんですか?」
「ミレーユさんがいないと困ります。」
アモス、チャモロ、ターニアは思わぬ発言にビックリしてしまった。
「本気よ。もし彼を追放するのであれば、その前に私を追放しなさい。」
いつもは明るく、笑顔を絶やさないミレーユだったが、この時ばかりは見たことも無いような怖い顔をしていた。
「分かった。ミレーユ、テリーのケアを頼んだよ。僕はいつでも帰りを待っているからね。」
レックは申し訳なさそうな表情をしながら、彼女にテリーの心のケアを頼んだ。
「ええ。任せて。きっと彼を立ち直らせて見せるから、あなた達は何も心配しないで旅を続けてね。」
「うん…。」
ミレーユの提案を受け入れた後、ハッサンやバーバラ達は失礼な態度を取ってしまったことを今度こそ謝った。
マーズの館を出た後、6人は各自で行動することにした。
凍てつく波動を覚えた勇者のレックとバトルマスターに復帰したバーバラは、魔法のじゅうたんに乗って世界のあちこちを飛び回り、熟練度上げをしながらもう一人のバーバラに関する情報を聞いて回った。
その中で、下の世界でカルベローナの住人だった人に会って話を聞いた。
(この人、もしかしたらバーバラなのかな?もしそうなら…。でも、もしそうだった場合、融合したらどうなるんだろう…。)
レックは淡い期待を抱きながらも、複雑な気持ちになっていた。
しかしバーバラはその人が自分自身ではないことに気が付いたため、結果的にその複雑な気持ちが吹き飛ばされてしまった。
2人はその後も一緒に居続けられる方法を探し続けたが、有力な情報は手に入らなかった。
(このままでは本当にバーバラと離れ離れになってしまう。)
(やっぱりあたし達は一緒になれない運命なのかしら…。)
旅を続ける彼らの表情にはやがて不安や焦りがにじみ出るようになっていった。
ハッサンとチャモロはゲントの村に行き、それぞれ足とのどに問題が無いことを確認した。
彼らはアモスとターニアに合流すると、天馬の塔に向かっていった。
現地ではまずフロストギズモ2匹とヘルジャッカル3匹との戦闘になった。
星降る腕輪を装備したチャモロは早速おたけびでフロストギズモAとヘルジャッカルB、Cをひるませ、はやてのリングを装備したターニアはイオラを唱えた。
するとひるまなかった相手はどちらも氷系の特技で攻撃をしてきたため、一気にHPを削られた。
「これはいけません。早く決着をつけなければ。」
「じゃあ、高火力の技をぶっ放していくぜ!」
戦闘が長引くと危険と判断したアモスとハッサンはそれぞれさみだれけんとしんくうはをヒットさせ、残りはヘルジャッカル3匹になった。
次のターンでチャモロは焼けつく息を浴びせて相手を動けなくし、ターニアのベギラゴンで決着をつけた。
(戦闘後の回復はチャモロが担当。)
次に出会ったのはあんこくまどう2人で、先制攻撃をしてきた相手はベギラゴンとマホトーンを使い、ダメージとともにターニアの生命線でもある呪文を封じこめてしまった。
(呪文がだめなら道具使用しかないわね。)
ターニアは炎のツメを使用してAにダメージを与え、続いてチャモロがおたけびでAをひるませた。
ひるまなかったBは通常攻撃をしてきたが、ターニアはうまくかわした。
そしてきせきの剣を装備したアモスははやぶさぎりでAに攻撃を浴びせたのと同時に回復を行い、ハッサンはさらにせいけん突きで降参させた。
次のターンになるとハッサンはBに捨て身、アモスはしっぷう突き、そしてチャモロとターニアが2人がかりでメラミを浴びせて、相手の行動前に決着をつけた。
その後も彼らは少し歩くたびに戦闘になったが、チャモロはおたけびや焼けつく息を多用し、ターニアはバイキルトやマヒャドを有効活用した。
そしてアモスは高火力の特技を惜しまずに繰り出し、ハッサンは特技を使いながらターン最後の回復役で活躍をした。
「いやー、なかなか相手は強力でしたね。」
「常に全力で戦わないといけませんね。」
「1回でクリアはちょっと無理でしょうね。」
「じゃあ、アイテムを頂いてずらかろうぜ。」
アモス、ターニア、チャモロ、ハッサンが話し合いをしながら歩いていると、今度はキラーマシン2ではなく、何故かキラーマジンガ3体が現れた。
ターニア「こっ、これは。何だか凄く嫌な予感がしてきましたね。」
ハッサン「ああ。初めての海底宝物庫に来た時のトラウマを思い出すぜ。」
アモス「ということは、何回やっても何回やっても倒せないでしょうね。」
チャモロ「それではみなさん、私の腕前を見せる時が来ましたね。」
心の底から冷や汗をかいた4人は迷わず逃げるを選択した。
彼らの行動は一旦失敗しそうになったが、幸いチャモロがレンジャーだったこともあって間髪入れずにもう一度逃げ出し、今度は成功した。
物陰までやってきた4人の顔はすっかり青ざめていたため、ターニアは即座にリレミトを唱えて現地を後にしていった。
ミレーユはテリーの手術の手続きや資金集めに奔走し、アークボルトで行われた手術当日には手術室の外でじっと終わる時を待ち続けた。
やがて手術が終了し、彼が手術室から出てくると病室に案内し、優しく声をかけたり食事を提供したりしながら入院中の彼に寄り添い続けていた。
その後。退院することになったテリーはミレーユと一緒にピエールのところに行き、彼からドラゴンのさとりを受け取った。
「ピエール君、どうもありがとう。ありがたく活用させてもらうわ。」
「どういたしまして。きっと役に立ててくださいね。」
「はい。きっとそうするわ。」
ミレーユは彼にお礼をした後、ダーマ神殿に行き、テリーをドラゴンに転職させた。
そして腕を三角巾で吊り上げた状態の彼は治療をしながら、新たに仲間に加わったドランゴと一緒にドラゴンの特技を覚えていくことにした。
それから間もなく、彼は口から炎を吐けるようになった。
しかしダメージとしてはわずかなものだったため、実戦では到底役立ちそうになかった。
「ちっ。こんなんでは到底役に立てんな。」
「それでも…、炎…吐ける…。これから…、上達…、きっと…する…。ギルルルン…。」
「とはいえ、お前も心の中では役立たずと思っているんじゃねえだろうな。」
「そんなこと…ない…。テリー…、これから…、楽しみ…。ギルルルン…。」
テリーの装備品を受け取ったドランゴは自身と一緒に彼の成長する姿を見つめていくことにした。
その気持ちはミレーユも同じで、いつも弟を優しい目で見ていた。
(※その後、ドランゴはアモスからドラゴンキラーを受け取りました。)
天馬の塔を経由して一旦狭間の世界に足を踏み入れ、元の世界に戻ってきたハッサン達は、現地で販売されている強力な装備品を手に入れるために金策に精を出すことにした。
そのさなかで4人はレックとバーバラに合流したため、それぞれの近況について話し合った。
レック「へえ。そちらの世界にはみかがみの盾などがあるのか。これは是非ともほしいな。」
ハッサン「ああ。でも欲しい分だけそろえるとなると、相当お金が必要になるけれどな。」
バーバラ「あたし達はテリーの治療費でお金がかさんだから、長い道のりになりそうね。」
ターニア「それでもあきらめるわけにはいきません。みんなで頑張っていきましょう。」
「ところで、もう一人のバーバラさんに関する情報は得られましたか?」
チャモロからの問いかけに対し、バーバラは何も言えず、レックは逆にゼニスの城や狭間の世界で手掛かりが得られたのかを聞き返してきた。
「それに関しては私達も現地で聞いてみましたが、今のところ何も…。」
アモスの申し訳なさそうな表情を見て、レックとバーバラはそれ以上何も言えなくなってしまった。
やっぱり運命は変えられないのだろうか…。
そんな不安を感じながらも、彼らは仕事などをこなしながらお金を集めていった。
ある日。レックとバーバラはキラに会い、キラーマジンガのロボットを修理してもらうことにした。
その上で、これまでお世話になった力の盾を彼に返却することにした。
「キラさん。この盾、今までありがとうございました。」
「これはこれは。あの『いつかきっと返しに来なさい。立派な勇者になってな。』という言葉を覚えていてくれたんですね。」
「はい。そしてその約束通り、立派な勇者になれました。その上で、これを果たせてよかったです。どうか受け取ってください。」
「分かりました。」
キラは喜びながら盾を受け取った。
しかし、彼は何だか表情が沈んでいたため、疑問に思ったバーバラはその理由を問いかけた。
「実は、グリンガムに会えなくなってしまって。そのショックがぬぐえずにいるんですよ。」
「そうなの。あたしも彼女にお礼を言いたかったんだけれど、残念ね。でも、どうしてそうなってしまったの?」
「実は、彼女は元々別の世界から来た人なんです。そして諸事情により、元の世界に帰っていってしまったんですよ。」
キラはグリンガムと一緒に行動するうちに仲良くなっていき、いずれ引き離されると分かっていてもお互い惹かれ合うようになった。
彼らは出来ることならずっと一緒にいたいと思っていたものの、運命は残酷なもので、それを変えることは出来ないままだった。
「じゃあ、もう会えないの?2度と?」
「ああ。奇跡が起きない限り、もう会うことはないでしょう。」
彼はガックリと肩を落としていた。
さらに彼は一人ぼっちになって以降、夜寝付けなくなり、食事もまともにのどを通らなくなり、脱け殻のようになってしまったということだった。
「僕達で元気付けることは出来ないんでしょうか?」
「すまない。その気持ちには私としても応えたいんだが、それは出来そうにない。彼女の代わりになれる人などこの世にはいない。恐らくこの心の穴は世界中にいる他の誰をもってしても埋めることは不可能だろう…。」
「それほどまでに大きな存在の人だったんですね…。」
「きっとグリンガムさんも同じ気持ちでしょうね。」
レックとバーバラはこのままでは自分達もいずれ引き離されてしまう運命だけに、不安な気持ちがどんどん込み上げてきた。
(このままでは僕達もキラさんと同じ運命になってしまう。どうすればいいんだ。所詮いくら願っても、運命には逆らえないものなのか…。)
(イヤ…。イヤよこんなの…。離れるなんてイヤ…。お願い。誰かこの願いを叶えて。たとえあたしが普通の女の子になったっていいから…。)
彼らは出来ることなら大魔王を倒さずにこのままでいたいとさえ考えるようになっていた。
しかし、そのままではやがて世界が支配されてしまうため、それは許される選択肢ではなかった。
もはや世界の平和のために、自分達の幸せを引き換えにするしかないのか…。
自分達はもう出会わない別々の道を進むために、やがて来る大魔王との決戦に挑むことになるのだろうか…。
次回が最終回です。