マスゴミのブルアカ 作:連載停止
思ってる以上に高評価がやって来てびっくりした
黒い煙が立ち上る場所へと一台の黄色い装甲車が走っていた。
装甲車にはクロノススクールの校章であるカメラフォーカスと方位磁針を合わせたマークと、黒い文字で『報道』と大きく書かれていた。
この装甲車は報道部の専用車両。
戦場での報道のために設計・開発された装甲車で、俺が運転していた。
……というよりは、俺のマイカーを報道部によってペイントされたのがこの姿だ。
元はこんな黄色くないカラーだったんだがなあ。
そんな装甲車の内部で、早瀬さんは叫ぶように言い放った。
「なんで!? どうして私たちが行かなきゃいけないのよ!? それも、ミレニアムのセミナーである私がっ!」
「ごめんね、ユウカ。連邦生徒会は今人手が足りないから……」
「むぐぐ……」
連邦生徒会は『主人公』のことを『先生』と呼び、新たな組織『
また、『先生』の存在は連邦生徒会長の失踪した現状、サンクトゥムタワーの制御権を取り戻すために必要なファクターでもある、と。
『先生』がそれを成すためにはシャーレのオフィスにあるものを使う必要があるのだが、肝心のシャーレのある地区が今しがた攻撃を受けていたのだった。
現状を深く憂慮した連邦生徒会は、レセプションルームにいた
キヴォトスの正常化、その一手を。
「もうすぐシャーレがある外郭地区に入ります。戦闘の準備を」
目的地まであと10キロ程だろう。
後部座席にいる彼女らに声をかけた。
「分かりました」
「戦術指揮は私が執るよ」
「えっ、先生が?」
「うん、任せてくれるかな?」
先生の発言に大小はあれどみんなは驚愕する。
みんなは疑念と疑惑を目に補助席に座る先生を見るが、先生は微笑みながら彼女たちの方に振り返って、言った。
「信じてほしい」
その自信に満ち足りた言葉には何とも言えぬ納得感があった。
それは先生が大人だからなのか。
先生が『主人公』だからなのかは分からなかったが……
「了解しました。先生の指示に従います」
「先生、よろしくお願いします」
「信じます、先生」
「お、お願いします、先生!」
今の発言で、彼女たちは先生を信じる決断をしたようだった。
「この車両はできる限り現場に近い場所で停車、みなさんを下ろしますので頑張ってくださいね」
あ、後方支援が必要になったら言ってくださいね。
後ろに積んでる武器をぶっぱなしますので!
グレネードランチャー、ロケットランチャー、スナイパーライフル。
あるいはこの装甲車に備え付けられた機銃か。
敵に応じて撃ち込みますからね!
「……使えるのかい、璃修君」
「トリガーを引く程度なら、キヴォトスの子供でもできますからね。造作もないですよ!」
できる限り車を現場に近づかせていけばいくほど、銃声が大分大きくなってきた。
そして視界ぎりぎり、道路の奥に米粒のように小さくはあったが敵の戦士が大勢にいるのを確認できた。
「アンタ、あれが見えるの!? ギリギリ水平線の先端って位置じゃない!」
「目はいい方なんですよ!」
それはそうと、ここらが限界か!
「それじゃあ、前線は任せましたよ、みなさん!」
「頑張ってね! ――さあ
戦術指揮を始めるよ」
いやー……こうして見ると、やはりキヴォトスの女子生徒というのは戦闘技能が半端じゃない。
「計算完了! 悲しみも、怒りも! すべて因数分解してやるわ!」
早瀬さんはミレニアムの技術力と持ち前の計算力を合わせた電磁シールドを展開。
緻密な計算によって構成されたシールドは、弾丸をシールド上で滑らせて早瀬さんの負傷を防いだ。
「閃光弾、投擲します!」
トリニティ自警団の
スケバンたちは一瞬のうちに目に多量の光を浴びたことで周りが見えなくなり、そのすきを突かれる形で彼女の愛銃セーフティーによって撃たれた。
「目標補足、アーマーピアッシング弾、装填……攻撃します」
正義実現委員会の羽川さん、彼女のインペイルメントから放たれた特殊弾。
それは重装甲の戦車を軽々と撃ち貫いた。
その戦車が旧式だったのもあるが、それでも戦車の装甲を撃ち貫くのはとんでもないことであり、彼女の狙撃の精度が伺えた。
「ユウカちゃんが負傷している。チナツちゃん、回復薬を彼女に」
「わかりました」
ゲヘナの風紀委員の救護担当である火宮さんは戦場を駆け、怪我人に即座に利く回復薬を投与していく。
そこまでの大怪我でなければ治癒してくれる、ドラッグストアでちょっとお高めの薬品を自主的に改良したものだという。
そして何よりも――これらは先生の指揮の下でより効率的に回っているのだ。
さすがは『主人公』戦えなくとも素晴らしい技術を持ち備えている、というわけなんだなと惚れ惚れする指揮能力だ。
やはり、こうしてみるとキヴォトスというのはとんでもない少女たちがいるのだなと感じてしまう。
そして、それに比例するかのように凄まじい『主人公』が現れるのだなとも。
他の報道部員たちが言うように、俺を校内に留めておこうとする人がいるのも無理はない。
こんな戦場、ヘイローのない人には荷が重すぎる。
だが、だからと言って俺は報道をやめるわけにはいかないのだが。
「何こいつ! 他のやつらとは比べ物にならないんだけど!」
「この強さ……まさか、矯正局から」
「考察は後回しにしてください、スズミさん。今は彼女を倒すことだけに集中を」
次々とこちら側が優勢になっていく戦場。
しかし、ある場面から先への一手がうまく繰り出せなくなった。
そこにいる仮面をつけた女。彼女が手ごわく、うまく攻勢に回れなくなったのだ。
「あの仮面、どこかで見たような……」
『こちら、連邦生徒会。敵の主犯が分かりました』
「主犯?」
お、連邦生徒会からの通信。
七神さんが資料を片手に説明した。
『
「狐坂……七囚人か! 敵は強いですよ、ここは俺も一発――」
「いや、待ってくれ。彼女が後退していく。……撤退かな?」
そういわれてみてみると、確かに狐坂は彼女たちの攻撃を搔い潜りながら後退していく姿が目に映った。
「うふふ、このくらいで私は失礼」
「逃げられてるじゃない! 追うわよ!」
「待ってください、今の目的はシャーレのオフィスの奪還です」
「ええ、このままシャーレ周りの敵を撃破していくべきでしょう」
「むう……分かったわ!」
そうして、狐坂のことはなかったかのように一同はシャーレ周りのスケバンたちを一掃していくのだった。
「シャーレ周りの敵の撤退を確認。作戦は終了だよ」
『先生にはこれからシャーレのオフィス内にあるとあるものを起動してもらいます。説明のために今からそちらに私自ら向かいますので、入り口前で少々待機していてください』
「わかった。それじゃあいったん行ってくるね」
「はい。お気をつけて」
三大学園のみなさんはどうするおつもりで?
「私はサンクトゥムタワーに行って制御権を取得できたのか確認しに行きます」
「送る必要はあるかな?」
「大丈夫です。この周囲のパトロールも兼ねて徒歩で戻るつもりですので」
そりゃよかった。
それじゃあ気を付けて。あとキヴォトス青春新聞の定期購読お願いしますねー!
「…………さて、と」
「はあ……あれが先生なんですね。びっくりしてしまいました」
割とイケメンでびっくりしたか?
「――あなたは……」
クロノススクール、報道部!
キヴォトス青春新聞の報道者、河澪璃修だ。
「クロノススクール……報道部が何の用で?」
分かってるだろ?
取材だよ。
「……」
シャーレの取材もしたいが、今はそれよりもどこに消えていくか分からない七囚人の一人へ取材しておくべきだと思ってな。
「ずいぶん無謀なのですね。私が七囚人だと知っておきながら、その体で私に会いに来るなんて……」
なんとでも言うと言い。
無謀は当然、ヘイロー抜きで取材なんて、死にに行くのと当然なのは承知だ。
でも。
俺はそれでも真実を激写したい。
お前の真実を。
「真実――具体的に何を取材したいのですか? 場合によっては……協力してあげてもいいかも、しれませんね」
そうだな、じゃあ――その仮面の裏。
お前の素顔を激写したい。
「それは――大きく出ましたね」
俺の激写は頼まれて撮るもんじゃねえよ。
そこにあるから撮れる、そんなもんだ。
お前の素顔がそこにある、俺はそれを見逃せない!
「……なんて、なんて面倒な殿方ですこと」
「覚悟しろよ狐坂ワカモォ! お前の真実、激写してやる!」