マスゴミのブルアカ 作:連載停止
何をやってるんだよ、姉さん!
『…………』
これが、姉さんがその高校でしたかったことなのか!?
それが姉さんが望んだ『正義』なのか!?
『…………』
違うだろ!
姉さんはそんなことのために、そこに行ったんじゃないだろ!
……何とか言ったらどうだ、姉さん!
『…………』
――っ、そうかよ。
それが姉さんの選択なら――俺はそこに行かない。
俺は、俺なりの方法で――『真実』を掴み取って見せる。
姉さんの薄っぺらい『正義』よりも、確かな『真実』を!
……懐かしい夢を見てたな。
とてもとてもくだらない、姉との最後の会話……いや、それ以下か。
「……まだ、意識を留められるのですか。案外丈夫でございますね」
ああ、思い出した。
今は狐坂ワカモとの戦闘をしてたんだった。
だがまあ、ヘイローのない俺がヘイローを持った凶悪犯なんかに敵うわけもなく。
あっけなくボコボコにされて、今の今まで意識が飛んでいたのか。
情けないなあ……勇ましく戦ってみれば、このザマか。
「その割には、ずいぶんと多芸でございましたが。忍術まで会得していたとは驚きでした」
以前百鬼夜行で忍術を習った甲斐があったもんだよ。
変わり身の術は無意識に使えるように訓練していたし、変わり身用の人形も忍者オタクのあの子ほどではなかったが2ケタ個ほどは常備しているつもりだった。
まあそれら全て悉くを破壊されたらもうどうしようもなかったんだがな!
しかし……まあ、なんだ。
この惨敗のおかげで知れるものもあったしな、万事オーライってやつだ。
「……はて、今の戦いであなたが知れる事とは、ございましたでしょうか?」
あんた、思った以上に優しいな。
俺を一発も撃たなかったなんて。
俺との戦いを銃床や格闘でやって来ていたが……実際のところ、きちんと銃弾を使えばもっと早く終わっていただろう?
「……銃弾が無駄になると思ったからですが?」
なんとでも言っておけ。
その目に映る『哀れみ』こそ、その優しさの証明なんだからな。
「……目?」
えっ、狐坂は気づいてなかったのか。
自分の仮面、その
「――!? ……いつの間に……」
ほんと、いつの間にできたんだろうな。
俺がグレランを放ったときか、ロケランを放ったときか、スナイパーライフルを放ったときか、それ以外か。
結果として、偶然だ。
偶然、その仮面は割れた。
俺の実力とは程遠い。
「……もう、撮ったのですか?」
ああ。
このカメラの中にデータは格納された。
壊したいなら壊していいぞ?
どのみち、俺にはもう抵抗できないからな。
「いつの間に…………いえ、それは私の慢心が生んだ傷痕として、あなたに渡しておきましょう」
え、いいの?
ケジメとかつけられたりしない?
「それを公開しようがしまいが、あなたの自由です。――いい手土産を貰えましたね、璃修君?」
――ああ、帰ったら自慢できそうだ。
礼を言うよ。……やっぱり、あんたは優しいんだな。
「……そういうあなたは、とても厄介な殿方でございますね」
報道部棟・第一編集室
ただいまー。
「あっ、お帰りなさい璃修君って何ですかその怪我は!?」
いやうるっさ。
相変わらずですね、風巻さん。
「戦ったんですか!? 戦ったんですよね!? だから現地取材はやめた方が良いとあれほど……!」
軽傷! 軽傷だからこれ!
骨にヒビが入った程度の軽傷だから!
きちんと治療すれば数日で治る程度の傷だから!
「ほ、本当ですか?」
キヴォトスの薬は高性能だから、骨折ぐらいなら1~2週間で治せるのだ。
すごいね。
「まったくもう、たとえ軽傷でも、見てる方からすると大分重症なんですよ、これ」
そうですか?
キヴォトスの女子生徒からすればこの程度の怪我って日常茶飯事的な印象がありますけど。
「それは前線にしょっちゅう立つ極めて高い実力を持つ武闘派たちに限りますから。私たちのような文化系にこんな怪我は目に毒なんですよ……」
「普通文化系でも銃は持たないんじゃ……」
「自衛は必要ですからね」
そうですか……
まあそんなことはどうでもいいんですよ。
俺は今すぐ今回の取材で得た情報を記事に纏めなくちゃいけないんですから「璃修くんっ!!!」
「大丈夫だった!? すごい怪我してるけど!?」
「大丈夫ですから! 離れてください川流さん!」
いきなり川流さんに飛びつかれるとは……その豊満で無防備な肉体は普通に不健全だから勘弁願いたいのもだ。
しかし……なんでいるんだ?
「なんでって、心配だったんですよ私!」
「今日のシノンちゃん、放送に集中できてなかったからね」
そうなのか?
ちゃんとしてくれよー、クロノススクールの顔だぜ、川流さん。
「誰のせいだと……」
「そういえばさ、連邦生徒会に行ったんだよね、その怪我、誰にやられたの?」
「あー、七囚人の一人にちょっと、な」
「「七囚人!!?」」
「なんでそんな奴と戦ってるんですか……」
「よく生きてたねえ……」
まあその怪我の分だけ良い収穫もあったぜ。
まず、これだ。
そう言って、俺は二人に先生から貰ってきたカードを渡した。
「これは?」
「連邦生徒会長の置き土産、連邦捜査部シャーレの部員証だ。二人の分を用意してもらったよ」
「シャーレ……?」
「これを身に着ければ、まあ……他校の自治区での戦闘が容認されるってよ」
「「えっ!?」」
すげーだろ?
「「他校で
先生からの許可が下りれば、だけどな。
でもまあ、今までの手段よりも容易に取材に赴けるだろうな。
「わぁぁぁっ、ありがとうございます」
「すごいよ、これで取材行き放題だよっ!」
二人が気に入ったようで良かったよ。
さてと……明日の新聞の編集を始めないとな。
だいぶ遅いから急がないと。
今日は徹夜だな!
「ふうん、あの殿方、結局報道しなかったのですか……
……ふうん…………」
「ふーっ、朝までかかっちまったよ……さてとっ」
俺の部屋の本棚にある、一冊のスクラップブック。
そこには『激写クリップ』と書かれており、俺の今までの『激写』を記録していた。
「ふふふっ、これでようやく半分か」
『激写』は他人には見せられないものだ。
仮にこれが他の報道部のみんなが撮ったのなら報道を辞さないだろうが、俺はそんなこととてもじゃないがもったいなくてする気にならない。
これは俺の挑戦、俺の努力、俺の血と汗の結晶のようなものだ。
実際に血を流したのは現行の3割程度ではあるが、それ以外も俺の挑戦の結晶だ。
今回の『激写』は狐坂の右目。
弾ける炎のような金色の瞳。それが割れたキツネの仮面から覗いている。
主席行政官と先生のゴシップも保存したかったけど、まあ迷惑だったからな。
空気悪くしちまったし。
「さて……」
明日はどこに取材に行こうか。
俺は部屋のキヴォトス地図に目を向けて、次の特ダネがありそうな場所に目星をつけ始めた。
「エデン条約前だからゲヘナかトリニティの取材をするべきか……ミレニアムプライス前だからミレニアムに行くべきか……」
そういえばイワン・クパーラも間近か。彼女のことだから今年も早めに開催されるだろう。
その前に
どれに手を付けようか。
俺は心を躍らせながら、次の取材先を決めるのだった。