マスゴミのブルアカ 作:連載停止
「なるほど……璃修君は彼女たちの取材に」
「あと、予定が空き次第アビドス高等学校の取材にも行きますね。取材料は弾みますから」
「本当ですか? やりましたよ、みなさん! 臨時収入です!」
「うーん、そんなこと言ったってアビドスに高額の取材料を払ってまで聞きたいことってあるのかなー?」
「本来なら連邦生徒会のレスポンスの遅さについて尋ねようかと思っていましたが……シャーレの先生がすでに来ているので……どうしましょうか?」
「いや、それはそっちで考えなさいよ!」
「まあ、彼女たちの取材が終わり次第、ぼちぼち考えますよ。それについては「璃修~?」」
俺が先生とアビドスの生徒たちに事情の説明と自己紹介を済ませたところで、浅黄さんが俺を大声で呼んだ。
ここ人様のお店だぞ?
「ねー璃修、そっちのお話は終わったの? わたし早く社長の中学生時代を聞きたーい!」
「ム、ムツキ! 別にそれぐらい、私からしてあげるから、ね?」
「えーでも、そういっていっつもはぐらかすんだから、こういう時にちゃんと聞いておかないとね?」
「あれ……? ムツキ様とアル様は幼馴染と聞いていたのですが……?」
「あーそれ? 実は社長と私、中学校で別々になっちゃったのよねー。社長ってば自宅近くの中学なんかじゃなくってちょっと離れたところの商業学校を選んじゃったのよ。『私はあなたのような考え無しのギャルとは違って、未来を考えてますから!』って。おかげでちょっとふれあいの時間が減っちゃってさー、大変だったよー?」
「ム、ムツキ……!」
「ちゅ、中学生の頃から将来を見据えていたんですね、アル様! 素敵です……!」
「おっと、取材相手が待ってるから、今はこれで」
「うん、取材頑張ってね、璃修君」
さて……アルが困りすぎない程度に、昔のことを語ってやるとしようか。
それから1時間ほど経って。
アルの昔話もある程度話して、それでアルが赤面になって硬直して、そんなアルがアビドスの生徒たちの慰めを受けて立ち直って。
ラーメンも伸びきるぐらい、長い時間をかけてあの店で談笑を続けたのだった……
「お、美味しかったです! 今日はありがとうございました」
「正直、助かったよ。今日はラーメン一杯分しかお金がなかったから……」
いやどんだけ金欠なんだよ。
もう破産寸前じゃないか。
いやよく破産してないな。
「ほんとに会社としてやっていけてるのか……?」
「心配無用よ! 今回の依頼でアビドスを襲えば、それなりの収入を――」
「は、アビドスを襲う?」
「あ」
依頼内容、バラしちゃってるじゃん……
あきれた目でアルを見てると、開き直ったかのように――いや、マジで開き直って言い放った。
「ふ、ふふふ……バレてしまっては仕方がないわね。そうよ! 私たちの受けた依頼はアビドス高等学校の攻撃及び奪取! これが成功すれば、それなりに高い収入を得られるのよ!」
「そ、そうか……」
「……」
「……」
……っていうか、これ……アル、まだ気が付いてないのか?
マジで気付かないとかあるのか?
だって彼女たち、自分の高校が金欠で借金まみれとか言ってただろ?
それに、このあたりの学校ってアビドスだけじゃ……
「それにしても、このあたりには彼女たちのような立派な人がいるのね。先人たちが遺してしまった借金を返して、母校を守り抜くだなんて! ロマンチックで嫌いじゃないわ!」
「あー……えっと……?」
隣にいる、アルの社員たちの顔を見る。
「……」
「……」
「……?」
冷や汗を流す鬼方さん、びっくりとした顔をした浅黄さん、そして何がどうなっているのかわかっていない伊草さん。
マジで気付いてないのか、アル……
「ん? どうしたのよ、そんな顔して」
「いや……言っていいのか、これ?」
「あー……私が言うよ」
「え? 何、どうしたのよ」
「いや……彼女たち、アビドスの子だよ?」
周囲に沈黙が走る。
いや、正確に言うとアルに沈黙が走った。
アルはその顔を笑顔のまま数秒間硬直させ――
「…………なんですってえええええ!!!??」
そして、絶叫した。
「ほほほ本当なの!? 嘘でしょ、ねえ、そんなことってあるの!!?」
「マジで気付いてなかったのか、嘘だろアル……」
「あの制服、あれはアビドスの物だし……それにこの近くの高校もアビドスだけだったし……はぁ」
「じゃ、じゃああの人たちがターゲットなんですね!? 私がい、今からでも始末してきましょうか!?」
「いやいや、どうせ今から攻撃始めるんだから、その時暴れよっ、ハルカちゃん?」
「な、なんていうことなの……あの子たちがアビドスだなんて……? うう……なんていう運命の絡み合わせ……」
「あ、ついでに言うと、彼女たちと一緒にいた大人の人、あの人シャーレの先生だからな」
「ええっ!? あの人が!? パッとしなかったけど!!?」
まあ、見てくれはパッとしない大人だろうけど、その内にはとんでもない力が秘められている。
先生にはそれを感じているのだ。
まあそれ以前に今のアビドスには連邦生徒会の支援がシャーレの代理権限で届いている、という状態で準備は万全といったところ。
正直なところ……今のアルに何とかできるとは到底、思えないが。
「ほら、何してるのアルちゃん? 仕事しなくちゃ」
「バイトのみんなが命令が下るのを待ってる」
「ほんとに……? 私が、今から、あの子たちを……?」
大分テンパってるな。
そういえば中学時代のアルも重大なことが緊急で現れたら慌てていたっけ。
……いや、そうだな。
「ううん、ここで弱々しくしてたら、私っ、本当のアウトローになれない! 一企業の長として、立派に立ち上がらなくちゃ!」
そんな状況でも、アルはやるべきことを忘れることだけはしなかったな。
「行くわよみんな! 仕事の時間よ!!」
その意気を叫んだ瞬間、俺は無意識にカメラのシャッターを押した。
「って、あれ?」
「璃修君、今アルちゃんの写真を撮ったの? ――きゃあ、すっごい綺麗に取れてる! さっすが報道部!」
「ちょっと!? なんで勝手に取ってるのよー!?」
なんでだと聞かれると……きっと、この記憶の一致は、俺にとっての『激写』の対象だったからとしか、言いようがなかった。
今日の俺のカメラのSDカードには、
砂嵐が嘘のように止んだ青空の下で、立派に社長として社員たちに命令を下す、かつての姿と瓜二つなアルの姿が記録された。