東方短編集   作:文織

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寝ぼけてたのか間違って短編でこれだけで投稿しちゃった。
一応こっちに移動させておかねば・・・・・・

最近東方心綺楼をプレイしたので書きたくなった。
これは私のありったけの希望を込めて書いています。
様々な希望的観測や都合のいい展開が含まれます。
いつものように駄文警報。


心恋し妖怪

 希望の面がなくなったことに起因する宗教戦争が終わってから数週間の時が経った。

 秦こころには新たな希望の面が与えられ、現在はそれを使いこなす練習をしていた。

 

 

 

 ……ついでに本物の表情を作る練習も。

 今日も鏡の前に立って、表情を作る練習をしてみる。

 ……我ながら見事なポーカーフェイスである、自分ですらこの表情が楽しそうなのか悲しそうなのかがわからない……いや、楽しそうな表情ってどんな表情なんだろう?

 むにぃ

 唐突に後ろからほっぺたを摘まれて口元を持ち上げられ、不格好な笑顔のかたちにされる。

「えっへへ~もっと笑ったほうが可愛いよ~」

「な、なにふぉふる(なにをする)!」 

 口元を持ち上げられたまま口調だけ怒って後ろを振り返ると、そこにはもうすっかり顔なじみとなった妖怪が立っていた。

 古明地こいし、私が失った希望の面を拾い、あろうことか宝物にしてしまった感情を失ったさとり妖怪。

 しかし、感情がないというのに毎日楽しそうな笑顔である……少し羨ましい。

「現れたな宿敵よ!今日こそは希望の面を返してもらうぞ!」

「嫌だもん、もう私の宝物だもん」

「問答無用!」

 あの日から毎日のようにこの妖怪とは勝負をしている。

 もう新たな希望の面を与えられたのだから元の希望の面を取り返す必要もないし、どうせいつかあの面は効力を失ってしまうのだから問題ない。

 しかし、毎日こうしてこいしと勝負をしていた。

 こいしと勝負することはとても楽しいから、こうすれば楽しいという表情くらいは……もしかすると悔しいという表情も作れるようになるかもしれない、そう思ったから。

 今日もたくさんのギャラリーが集まってくる。

 みんな私たちの勝負を楽しみにしているのだ。

 美しく舞う薔薇を、私の面を使った様々な攻撃を、楽しみに来てくれている。

 それは嬉しいことだ、なのに嬉しい表情を面に頼ることでしか表に出せない私が少し悔しい。

「えへへ、いっくよ~」

 それに対するように笑顔で戦っているこいし。

「ゆくぞ!宿敵よ!」

 表情があるということが羨ましい。

 たとえそれが嬉しさや希望に関係のない笑顔であったとしても、だ。

 

 

 

 ここ最近毎日こころちゃんと戦っている。

 もちろん楽しいということもあるけれど、もっと大切なことがあるから。

(今日もちゃんと気づいてくれるかな?)

 だんだんと彼女が希望の面を使いこなすようになっていくにつれて人里の人が私に気づいてくれなくなっていく。

 寂しい。

 寂しいよ。

 これが寂しいっていう感情なんだ。

 でも今日もちゃんと気づいてくれた。

 こころちゃんは私に気づいてくれる。

 嬉しいなぁ。

 これが嬉しいって感情なんだ。

 もし希望の面がなくなったらまた誰も気づいてくれないのかな?

 そんなのやだなぁ。

 こころちゃんも気づいてくれないのかな。

 それはもっと嫌だなぁ。

 ずっとずっと、このままだったらいいのにな。

 こころちゃんと戦って、たくさんおしゃべりして、お姉ちゃんともおしゃべりして、また次の日に同じようにいろんな人と遊ぶ。

 でも、いつかそれも終わっちゃうのかな。

 やっぱりそれは寂しいなぁ。

 

 

 

 今日は私の勝利で勝負は幕を閉じた。

 かなりギリギリの戦いだったが、勝ててよかった……ん?

 ペタペタと自分の顔に手を当てる。

 少し……笑ってる?

 そうか、笑顔とはこうやって作るのか。

 やっぱり、私の考えは間違ってなかったんだ、あの子と戦っていればいつか笑顔が作れるんじゃないかと思っていた。

 宿敵とは口で言っているが、今や心友であると自負している。

 よかった、私でもちゃんと笑顔が作れるんだ。

 これからも笑顔を、それ以外の表情も作る練習をしてみよう。

 そしていつかあの子にいろいろな表情を見せてあげよう。

 私の最初の、一番の友達に。

 

 

 

 今日は負けちゃったかぁ。

 でも全然悔しくないや。

 さて、今度はどこに行こうかな。

 あれ、こころちゃんが笑ってる。

 そっか、笑顔が作れるようになったんだね。

 おめでとう。

 なのになんでだろう、全然嬉しくないの。

 ねぇ、こころちゃん、私ここに居るよ。

 おめでとうって言いたいの。

 でも全然嬉しくないの。

 どうしたらいいんだろう。

 わからないや。

 あぁ、また感情がわからなくなっちゃった。

 こころちゃんも気づいてくれないのかな。

 それは嫌だなぁ。

 でも寂しいと感じない。

 そんな自分が嫌になる。

 あぁ、今日はもう帰ろうかな。

 

 

 

「こいし……?」

 気付けばこいしはその場から姿を消していた。

 今日は先に帰ってしまったのだろうか。

 まったく、せっかく表情を作れるようになったというのに。

 大事な時に限ってすぐ居なくなるのだな。

 まぁ、どうせ明日も来るだろう、それまで今日は笑顔を作る練習でもしておこう。

 きっと笑顔を見たらこいしも驚くだろう、なにせさっきまで笑顔を作れなかったのだからな!

 

 

 

 あれから数日が経った、あの日以来こいしが会いにこない、どうしたのだろう。

 不思議に思った私は現在こいしが信者になっている妙蓮寺を訪れることにした。

「たのもー!」

 そう言いながら本堂に入るとそこには数人の信者と住職の聖白蓮がいた。

「感情が全て揃っても案外騒々しいのね……」

「こころはいるか?」

「いえ、ここ数日見てないわよ」

 少し落胆、ここならば会えるかと思ったんだが……

「そうか……」

 ここにも来てないとなると地下に戻ったのだろうか、昔は地下に住んでいたとこいしから聞いたきがするが。

「あら、貴方表情が作れるようになったのね」

「うむ、まだ数は少ないが」

「ということはあの道士の渡した希望の面を使いこなせているのですね」

「うむ、そういうこと……だな、いまいち何かが変わったという実感はないが」

「ふむ……それならばこいしさんが来なくなったことも納得ですね」

「……なんだと?」

 なぜ私が希望の面を使いこなすこととここにこいしが来なくなることに関係があるのだ。

「来なくなったというよりも、来てもわからなくなった、ですね」

「わからなく……」

「あなたの希望の面が完全となったことにより彼女の希望の面が効力を失い、希望と感情が失われた彼女は再び無意識の存在となり、見つけるのが非常に困難になってしまったのですよ」

 まあ、元に戻っただけですがね。と彼女は続けた。

 だが、私はその元のこいしを知らない。

 感情がなくなった状態の彼女を知らない。

 見つけることができないことも知らなかった。

 ……私が面を使いこなすことでそうなることも、知らなかった。

 

 私のせいでこいしは、感情を失ったのか?

 

「そうだこころさん、せっかくですしあなたも仏教に……て、あら、もう帰ってしまったのね」

 

 

 

 さらに数日が経った。

 あれからこいしを見かけない。

 幻想郷中を探し回ったが、どこにも見つけることができなかった。

 何が心友だろう、友人一人見つけられないとは。

 それでも今日も感情を作る練習をする。

「これが、笑顔」

 鏡の中の私が笑顔になる。

「これが、怒った顔」

 鏡の中の私が少しむっとしたような表情になる。

「これが……」

 鏡の中の私が……

「これが、悲しい表情」

 鏡の中の私が、涙で滲んで見えない。

 いろんな表情が作れるようになったのに、嬉しくない。

 私のせいでこいしは昔の感情のないさとり妖怪へと戻ってしまった。

 私が希望の面を使いこなせるようになったから。

 もう、会えないのだろうか。

 それは嫌だ……

 こいし、私は……

 

 私は間違ったことをしてしまったのだろうか……

 

 

 

 誰も気づいてくれない。

 聖も。

 霊夢も。

 魔理沙も。

 こころちゃんも。

 誰も、誰も私のことを見てくれない。

 

 もっとみんなとお話したいよ。

 

 もっとみんな私を見てよ。

 

 もっとみんなのことが知りたいよ。

 

 どうしてみんな気づいてくれないの?

 

 私はいつも一緒にいるのに。

 

 いつもみんなのそばにいるのに。

 

 いつも声をかけているのに。

 

 寂しいよ、独りは嫌だよ……

 

 感情が欲しいよ。

 

 どうしたらみんなわかってくれるのかな。

 

 みんなの心がわかればいいのかな。

 

 でも、それは………………

 

 

 

 

 

 

 会いたい。

 

 彼女に会いたい。

 

 無性に会いたい。

 

 感情なんて関係ない。

 

 気付いて欲しい。

 

 どうしても会いたい。

 

 こころちゃんに─

 

 こいしに─

 

 

 

 会いに行こう。

 

 初めて出会ったあの時、あの場所に。

 

 なぜだか知らないけどわかる。

 

 きっと彼女はそこにいる。

 

 感情がそう言っている。

 

 無意識にそう思う。

 

 あそこに行けばきっとまた会えるのだ。

 

 きっとその時は気づいてくれる。

 

 

 

 

 

 

 深夜の人里に二人の妖怪が浮いていた。

「また会ったな我が宿敵よ」

 片方は周囲にお面を浮かべ。

「そうだねこころちゃん」

 片方は複雑に絡んだ第三の目(サードアイ)を胸元に。

「我が宿敵よ、私の考えていることはわかるな?」

「うん、わかるよ」

「ならば言葉は必要あるまい、いざ尋常に勝負!」

「いくよ~!」

 人里の夜空を弾幕が飛び交う。

 

 心を模したハート型の弾幕が。

 

 感情を表した色とりどりの弾幕が。

 

 あるときは近づき拳を交え。

 

 また離れて弾幕を放つ。

 

 お互いの心を交換するような美しい弾幕は、今なお二人の心に強く刻まれている。

 

 

 

 今日も感情を作る練習をする。

「これが笑顔」

 鏡に映る私が笑顔を作る。

「これは怒った顔」

 鏡に映る私が少しむっとした表情になる。

「これは悲しい顔」

 鏡に映る私が泣き出しそうな表情へと変わる。

「感情に心がこもってないよ~」

「……感情を作る練習なんだからいいじゃないか」

 後ろを振り返ればサードアイを開いたこいしが立っている。

「今日もいざ尋常に勝負だ~」

 こいしがふわりと宙へ浮かびあがる。

「受けてたとうぞ我が宿敵よ!」

 私も後を追うように宙へと浮く。

 

 

 

 表情のない妖怪は表情を。

 

 感情のない妖怪は感情を。

 

 心恋しき妖怪たちは互の心を知った。

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