ばぁどばぁど、あんらっく   作:インチネ・ズィ・マゼタルーノ

1 / 15
ブルアカ要素…どこ? 1/3


暗がりの部屋

 

 

 

 

 

 ここは薄暗く、物が少ない彼女の居場所だ。四方を壁に覆われて、天井から伸びた消えかけた電球が明滅している。追い立てられるように逃げ込んだ先、ほんの少しだけ安心できる場所。

 

 身体中に浮かび上がる痣と火傷、治りかけたかさぶたは剥がれて血を滲ませる。いつもならすぐに消える小さな傷が、今は長く残って治らない。全身から痛みの信号が届けられているハズだが、それらを無視して無理矢理に意識の外へ弾き出す。

 

 体力が、活力が尽きかけている。

 

 傷の手当てを放り出して、自然治癒に任せる事に決めたらしい。手当てをしようにも、ここにはそもそも道具が置いていないのだから。

 

 

「ばぁどばぁど、あんらっく…今日もまた、ツイてない…」

 

 

 のっそりと緩慢な動きで1枚の毛布に包まり、溢れた独り言。こんな日々、慣れたもの。だとしても文句の一つも言いたくなって然るべきだろう。

 彼女は人形で、退屈な存在だとしても、心が無い訳ではないのだから。

 

 

 こんな時、誰かが手を差し伸ばしてくれたなら。

 ありもしない幻想を妄想して、ため息と共に吐き捨てる。

 

 いつかあったあの陽だまりを、失くさぬように持ち続けていたのなら。いつか見た燈火を、追う事が出来たなら。この暗がりから抜け出していたのだろうか。

 後悔だけが積もる思考を振り払う。今さら変えられる事でもないが、それでも過去の『もしも』が彼女を蝕んでいる。

 

 苦しいのは楽しさを知っているから。

 寂しいのは温もりを知っているから。

 

 忘れられない優しさが彼女へ与えられる罰なのだとしたら、犯した罪は計り知れない。

 彼女はもう、救われる事は無い。そして、救いを求める事もない。徒に傷付けられる日々に諦めを、ただ過ぎていくだけの時間を眺めているだけ。

 

 変化はいらない。

 痛みに耐えるだけなら、もう慣れたから。

 

 刺激はいらない。

 憂鬱に身を委ねる事に、もう慣れたから。

 

 希望はいらない。

 もう、絶望の苦しみに耐えられないから。

 

 

 

 一度見た太陽は暖かくて、一度感じた風は柔らかくて、一度訪れた奇跡は美しかった。思い出は彼女の心を守るが、同時に彼女を苦しめる呪いのように貫いている。

 

 貼り付けただけ、自分を誤魔化すだけの無感情も限界に近い。先に壊れるのは心か身体か。永遠の沈黙までを指折り数えて目を瞑る。このまま、目を覚まさなければいいのにと。

 

 

 

 

 

 

 この小さな暗がりの中。

 太陽を奪われた彼女は、冷え切った身体を震わせた。

 

 

 こんな時、誰かが手を差し伸ばしてくれたなら。

 

 いつかあの時、手を取っていたのなら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ほんと、ブルアカ要素どこ行った?
透き通るような世界観を返して…返して…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。