ばぁどばぁど、あんらっく   作:インチネ・ズィ・マゼタルーノ

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くっ…間に合わないか、密かな目標が…


貴女の持つ刺激に心打たれて

 

 

 わたしは今日も眠ります。

 廃棄処分を待つ退屈さを紛らわす為に。

 

 なんて清々しい空なのでしょうか。既にわたしの居場所は廃墟となっていて、当時の面影を微かに残すばかり。まぁ愛着もクソもありませんし、哀愁を感じようにも無理があるってもんです。

 最後に下された命令は『待機』ですので、ただただこの場所で待機しています。

 

 

「ばぁどばぁど、あんらっく…なんて退屈なのでしょう」

 

 

 ああ本当に退屈です。

 せめて命令にもう少し自由があれば良かったのですが、残念な事に『この部屋で待機』と言われてしまったのでは仕方がありません。天井も無く、壁は崩れて扉は開きっぱなしでも、わたしはここから出られないのです。

 

 ああ…本当に、退屈です。

 

 

 しばらく眠り、目が覚めたのは夜でした。時計が無いので時間は分かりませんし、カレンダーだって無いので何日寝たのかも分かりません。

 

 寝て、起きて、自己診断をして、寝て、寝て、起きて、自己診断の毎日です。

 

 つまらない。つまらないつまらないつまらない。なんて退屈で、平和な日々なのでしょう。

 

 

 このクソ平坦な時間は、唐突に破られたのでした。

 

 

 

「…応援に来てみればもぬけの殻……いい加減アコを休ませないと不味いわね、はぁ…順番に休暇を…イオリとチナツは大丈夫かしら……」

 

「おや、お客様でしょうか?」

 

「誰?…え、だれ」

 

 

 ずいぶんと久しぶりのお客様です。この建物が廃墟となって、壁が崩れだしてからは初めてかも知れません。

 あれ?そもそもわたしにお客様が来ること自体初めてでは?これはいけません。おもてなし?とやらをしなければ、何をすべきなのでしょうか。

 

 まずは挨拶からさせていただきましょう。

 

 

「お初にお目にかかります。わたしはプロジェクト:GENESISにおける人型兵器、ALシリーズ試作機。始まりの1体にしてまあまあな失敗作。そして、この部屋で廃棄処分を待つ《出来損ない》でございます」

 

「…………は?」

 

「大変申し訳ありませんが、貴女様をもてなせるような物がありません。何卒ご容赦くださいませ」

 

 

 仕方ないではありませんか。本当にこの部屋には何も無いのですから。あるのは朽ち果てた木製の机と椅子、動かなくなって時計に壊れたベッド。ボロボロの毛布が1枚。

 

 もてなせるような環境でもありません。

 

 そんな事をわたしが思っていると、お客様は徐ろに銃を構えているではありませんか。

 

 

「わたしを撃つおつもりですか?」

 

「怪しい動きさえしなければ撃たない」

 

「なるほど。分かりました」

 

 

 とりあえず動かなければ良いとの事なので、大人しくしていましょう。

 なにやら聞きたい事があるご様子なので、質疑応答の時間です。1人ではないという事は、こんなに楽しい事だったのですね。お客様がどのような方かも知りませんけど。

 

 

「貴女の名前と、所属している学校を教えて」

 

「名前はありません。試作機や《出来損ない》と呼ばれる事が多かったです。学校?とはどのような物か分かりませんが、所属であればDivi:Sionになると思います」

 

「……そう、貴女はなぜここに居るの?」

 

「呼ばれるまでこの部屋に居ろと、待機命令を受けているからです」

 

「その命令を出した人はどこに?」

 

「分かりません。少なくとも、ここが廃墟と呼ばれる程度の時間は姿を見ていませんし、おそらく帰って来る事もないでしょう」

 

「それなのに、ここで?」

 

「はい。命令なので」

 

「なるほど…」

 

 

 考え込んでしまいました。

 

 わたしはお話が出来て楽しかったです。

 …この方もきっと、あるべき場所へ帰ってしまうのでしょう。名残惜しいですね。出来ることなら、たまにで良いのでお話ししてくださらないでしょうか?

 

 

「貴女。私が命令しても聞いてくれる?」

 

「はい。わたしへの命令権は全ての人に与えられています」

 

「よかった。なら、ついて来て」

 

 

 なんと、新たな命令をいただいてしまいました。従うほかありません。拒否するつもりもありません。だって『ついて来い』ですよ!ここから出られるんですよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

「──そう言う事だから、この子はしばらく風紀委員会(ウチ)で預かる事にしたわ」

 

「はぁ!?それは、まさか…ヒナ委員長と()()()一緒ということですか!!?」

 

「ん?…まあ、そうなるかな」

 

「〜〜〜〜ッ!!!!………」

 

「あ!アコちゃんが嫉妬で倒れた!」

 

 

 なんて事がありましたが、このゲヘナとか言う学校に編入しました。そして、わたしを拾ったのは風紀委員長らしいです。ヒナさんと言うらしいですね。

 

 

「それでは銀鏡さん、火宮さん。今後ともよろしくお願いします」

 

「ああ、よろしくな!」

 

「よろしくお願いします」

 

「待って下さい!私は認めませんよ!!」

 

「アコうるさい」

 

「アコちゃんさん。よろしくお願いします」

 

「私は!認めてませんよ!!!」

 

「アコ黙って」

 

 

 なんて楽しいの場所なのでしょう。

 私、このアコちゃんさんが好きです。元気いっぱいですね、楽しいです。

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 さて、今日もお散歩に行きましょう。

 わたしがヒナさんをはじめとする風紀委員会のお世話になって数日、今では立派なゲヘナ生です。

 

 そして実は、風紀委員会には所属しなかったのです!何せ弱いので。わたし、弱いので!

 戦闘訓練に参加して、アコちゃんさんや火宮さんに瞬殺されました。事務の方達とも手合わせをしていただいたのですが、なんと全敗でした。無念です…

 まあ?本気出せばスゴいんですけどね?わたしが本気出せば辺りは更地ですよ、更地。手加減が苦手なだけです。本当です。わたしに搭載されている機能だけは凄いんですよ、上手に使えないだけで。

 

 それはそれとして、今日もお散歩です。

 ヒナさんからいただいた命令は2つです。1つは『自由』にする事。過去の命令は全て無視するように言われていますし、今後与えられる命令も、わたしの意思で無視しても良いそうです。

 2つ目は困ったら『相談』する事。いつでもヒナさんに頼っても良いとの事なので、ありがたくそうさせていただきます。

 

 なので今日も自由にお散歩です。お日さまもポカポカで、とても気持ちが良いですね。

 

 

「あ!新しいお姉ちゃんだー!」

 

「あら、丹花さまではありませんか。どうかされましたか?」

 

「むー…イブキ!」

 

「失礼致しました。イブキさん」

 

 

 先日出会いましたのは、こちらのイブキさんです。なんと11歳ながらも飛び級をして勉学に励み、万魔殿という生徒会に所属しておられる才女なのです。わたしのように落第した型落ちの《出来損ない》とは違い、とても素晴らしいお方です。

 素直に憧れてしまいますね。

 

 そして何より、とても愛らしいのです!

 とても!愛らしいのです!!

 

 

「イブキね、今日は外でお絵かきするんだけどね…」

 

「なるほど。それは良いですね、よろしければご一緒させていただけますか?」

 

「うん!一緒に行こー!」

 

 

 わたしの今日の予定は、イブキさんとお絵かきです。

 イブキさんの小さなお手々に引かれて、やってきたのは、どこですか?ここ…

 

 まあ来た道は覚えているので、細かい事を気にする必要はありません。

 

 

「して、イブキさん。本日はどのようなものを描かれるのでしょうか?」

 

「ふっふっふー、じつはもう決めてるんだ~。それはね…学校!」

 

「…学校ですか。校舎を見るために、少し離れたこの場所に来たのですね」

 

「だいせいか〜い!あ、イブキのクレヨン貸してあげるね」

 

「まあまあ、これはどうもありがとうございます」

 

 

 イブキさんからクレヨンを借りて、わたしも人生初となるお絵かきに挑戦です。はてさて何を描きましょうか?

 

 

「〜♪〜〜♪」

 

 

 隣から聞こえるご機嫌なリズムに揺られて、わたしもゆったりクレヨンを動かします。

 穏やかな時間ですが、欠片も退屈だと感じません。それはきっと、独りではないからなのでしょうね。

 

 しばらくそうして居たのですが、何やら不穏な空気感を漂わせた集団がやって来ました。なんちゃらヘルメット団が2つですね、このまま戦闘が始まりそうです。というか、まず間違いなく始まるでしょうね。

 

 幸いにもコチラは気付かれていませんし、イブキさんを連れて早く移動しましょう。

 

 

できたー!

 

 

 あ、マズいですね。向こうに声が聞こえてしまったようです。どこから持ってきたのか、戦車の砲身がコチラを向いていますね。これ、絶対に何か勘違いされていますよ。

 

 ほら、撃って来ました。

 大ピンチです。

 

 

「イブキさん!伏せて下さい!」

 

「え?どうしたの!?」

 

「失礼します」

 

 

 さて、砲弾が迫っています。

 わたしに出来る事は、せめてイブキさんに覆い被さるだけでしょう。避ける事も、撃ち落とす事も、わたしには出来ませんから。せめて数十秒でも猶予があれば別なのですが、生憎そんな時間はなさそうですし。

 

 

 

 強い衝撃と爆音。焼けるような熱を感じると同時に、わたしは意識を手放しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キキキッ!貴様はこれで万魔殿の一員だ。今後はより一層このマコト様の威光を知らしめるべく励むのだ!」

 

「わーい!お姉ちゃんといっしょ!」

 

「はぁ…」

 

 

 なんで?

 

 わたしの意識が浮上した翌日。イブキさんに会いに万魔殿へ向かいました。一緒にお絵かきをしたり、本を読んだり、かくれんぼをしたりしました。楽しかったです。

 

 お昼の時間になり、わたしは食堂へヒナさんやアコちゃんさんの分のお食事を受け取りに行こうと思い、退出しようとしたのですが…何故か帽子とコートと腕章を着せられました。

 あと、羽沼さんの隣でやたらと写真を撮っている方。眩しいです、カメラを向けないで下さい。あまりいい思い出もありませんし。

 

 

「諦めた方が楽ですよ。こうなった先輩は話しを聞いてくれないので…」

 

「そうなのですか?分かりました。ですが一応、相談してからのお返事でもよろしいでしょうか?それと、本日は先約がありますので一度戻りたいと思います」

 

「ああ良いとも」

 

「ありがとうございます。羽沼さま」

 

「キキキ!弁えて居るではないか。下って良いぞ。…ああ、明日も同じ時間に来い。仕事を教えてやろう!」

 

「かしこまりました。イブキさん、また明日」

 

 

 今回は無事、笑顔で別れる事が出来ました。

 帽子やコートは、そのまま着ていく事になりました。…まだ返事をしていないのですが、もう万魔殿に所属する前提になっていますね。まぁ、わたしはそれでかまいませんけど。だってイブキさんと毎日会えるんですから、断る理由もありません。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 ──…という事なのですが、万魔殿に所属してもよろしいでしょうか?」

 

「自分で決めたのなら文句は言わない。頑張ってね」

 

「ありがとうございます。ヒナさん」

 

 

 ヒナさんとアコちゃんさんにお昼ご飯を持ってきて、食べながら相談してみました。後で食器を返しに行かなければなりませんね。

 

 

「はあ?認めませんが!?よりにもよってあのタヌキの所へ?恩を仇で返すつもりですか!許しませんよ!!」

 

「アコうるさい」

 

「議長はタヌキさんではありませんよ?羽沼マコトさまです」

 

「知ってますよそんな事!!なんで万魔殿なんですか!」

 

「イブキさんに毎日会えるとの事なので」

 

「なら仕方ありませんね……ってなると思ってるんですか!!」

 

「アコ、人の選択に口を出すの?ここはゲヘナ、自由であるべきよ。…まぁ、やり過ぎれば私も動くから」

 

「ヒナ委員長もヒナ委員長です。なんでそこまで彼女の肩を持つんですか!」

 

「だって、私の妹だから」

 

「先日よりヒナさんの義理の妹になりました。現在は寮の隣の部屋で暮らしています。昨日は2人でよるご飯を食べて、一緒お風呂に入りました」

 

「な゜゜ッ……………、……????????」

 

「この前、みんなに説明したのだけど…」

 

「そういえばその時、アコちゃんさんは倒れてましたね」

 

「そうだったっけ?」

 

「はい」

 

ブクブク……

 

 

 アコちゃんさんが泡を吹いています。 

 どうしたのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アコちゃん、私好きなんですよね。持ってませんが。
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