目覚めは如何か
カーテンを開けると太陽が優しく照らして、窓からは心地良い風が入り肌を撫でる朝。
バッサァァ!とダイナミックに掛け布団を引っ剥がして、不快そうな顔をする主人の柔らかいほっぺを突きながら声をかけます。
わたしが拾われてから、かれこれ数カ月。この生活にも慣れたものです。とても楽しくて幸せです。
「起きて下さい、セイア様。朝ですよ」
「…んん、おきてるさ……、…」
「いいえ、起きていません。あまりワガママを仰るのなら……い た ず ら ☆ しちゃいますよ?」
「ッッッ!起きているさ、起きているとも」
「あら残念。おはようございます、セイア様。さっさと顔を洗って身支度を済ませて来て下さい。朝ご飯が待っています」
「君、日に日に私の扱いが雑になっているのではないか?主人だぞ、私は」
「だからこそ、セイア様と仲の良い浦和様から学んでいるのです」
「それは間違っているな。今すぐ講師を変えようじゃないか。そうだね、例えば………………クッ、曲者しか居ないじゃないか、どうなっているんだトリニティは!?」
今日も元気にお目覚めになられたセイア様は、いつもの様にブツクサ言いながら身支度を済ませに行きました。手伝っても良いのですが、本人が出来る事は本人が行うべきだと浦和様に言われているので、わたしは手伝いません。
その間に、ベッドシーツを回収して洗濯しておきましょう。洗えない物は干しておきます。お日様と風に当たりフカフカになったお布団、良いですよね。それに飛び込むのは、家事を行う者の特権です。
「早く席に着きたまえ。朝ご飯が冷めてしまうだろう」
「待って居て下さったのですか?先に食べていてもよかったのですが…」
「ひどいじゃないか、そんなに私がそんな薄情な奴に見えるのかい?ほら、早く座ると良い」
「まあ、見えますね。セイア様は結構、人とズレていますから」
「君だけには言われたくないな。昔はもっと素直で可愛げがあったというのに…誰の影響だね?ハナコかい?」
「それはおそらく、百合園セイア様と言う方ですね」
「ふむ、厄介な者が居るものだね」
「全くです」
朝ご飯を食べて、本日の予定を伝えます。
なんとこのセイア様、意外にも偉い人なのですよ。こう見えてお仕事が沢山あるのです。
桐藤様程ではありませんけどね、あの方は本当にお忙しいので…なんとかお手伝いして差し上げたいのですが、わたしには権限が無いのでどうしようもありません。わたしに出来る事と言えば、百合園様に発破をかけながら、効率的にお仕事をしていただく為の段取り程度でしょう。
まあ今日はお休みなので、今から仕事を始めればお昼前には終わる筈です。と言うか、終わっていただかなければ困ります。予定があるのです。
「ごちそうさま」
「お粗末様でした。着替えたらお仕事を始めましょうね」
「…気が乗らないな、明日でも良いんじゃないか?」
「かしこまりました。浦和様には『嫌な事を後回しにして仕事を先延ばしにした挙げ句、やりきれずに他者へ迷惑をかけたので、しばらくは謹慎中。日を改めて欲しい』と伝えておきます」
「やめてくれ、私が悪かった」
「では着替えて来て下さい。準備は既に出来ておりますので」
昨日の内に必要な物は揃えておきました。後はセイア様が書類を確認し、裁定を行うだけにしてあります。目覚める前に部屋の温湿度を合わせて快適な空間にしましたし、集中力を高めるらしいアロマを焚きました。
後はBGMに歌でも歌ってみましょうかね。
歌で思い出しました。
聖園様と一緒にキリエを歌いました。その後、カラオケなるお店にも行きました。あれは、セイア様が絶対に行かない場所ですね。流行りの曲をいくつか教えていただいたので、今日はそれをお披露目してみましょう。うるさいと言って、すぐに止められると思いますが。
多分、仕事自体はすぐに終わるでしょう。昼食を浦和様と食べる約束をしていますし、セイア様は浦和様に格好悪い所を見せたくないそうなので。全部終わらせてから会う、と昨日は言っていました。
「さて、仕事を始めようじゃないか」
「がんばれ♡がんばれ♡」
「……ハナコか」
「こうすればやる気が出て早くなると伺ったので。どうですか?」
「どうもしない。自分の仕事をしてくれ」
「かしこまりました。ご用命とあれば、すぐにお呼び下さい」
わたし、一応メイドなので家事をしようと思います。浦和様をお迎えしたら後はおまかせして、わたしはお出かけです。
本日は遊びに誘われていますので。どこかのセイア様とは違って、わたしはお友達が多いので。帰ったら自慢しようと思います。
今日はスイーツを食べに行ってきます。
名前を呼ばせない方針で固めましたが、やっぱりムリかもしれない。
読み返してみて、イブキが名前を呼ばないってのに若干の違和感が……まあいいか。うん、いいね。ヨシ!