日常で笑ってる奴が、笑えない過去を持っているのが性癖なだけですよ。
ハハッ!
「で?なんであたしらんとこに来た?」
「ちょっと面倒を見てほしい子がいるのよ。その子が入りたい部活を見つけるまでで良いから、身の回りの事を見ててほしいの」
「だから、なんであたしらなんだ!C&Cは託児所じゃねぇんだぞ」
「……この前ネル先輩が不必要な戦闘をして無駄に破壊した建物の修繕費と、アカネが必要以上に使った爆弾で広域を破壊した時の補填費用についてなのだけど──」
「うぐッ…」
「ユウカ、そのくらいで止めていただけますか?部長が言葉を返せなくなっていますので」
「てめぇも片棒を担いでんだろうが!」
「あら、私は反対だなんて一度も言っていませんよ。それに、新しい方のお世話が出来るだなんて、楽しみではありませんか?」
「あ゛ぁ?んだよそれ、はぁ~…わーったよ、やりゃあ良いんだろやりゃあ。どんな奴だ?ヘンな奴なら面倒見きれねぇぞ?」
「それは問題ないと思うわよ。ほら、今もあそこでトキと一緒にいるでしょ」
「あぁ?」
「あら?」
早瀬さんに連れられて、メイド部なる方達に会いに来ました。
メイドさんです。初めて見ました!
その部室に到着すると、早瀬さんはすぐに2人のメイドさんとお話をされてしまいました。わたしはどうしましょうか…?
「おや、初めて見るお客様ですね」
「はじめまして、本日よりミレニアムに編入することになりましたので、そのご挨拶に伺いました」
「これはご丁寧に、よろしくお願いします」
「こちらこそ、今後ともよろしくお願いします」
ずいぶんと落ち着いた方ですね。やはりメイドさんは穏やかな方が多いのでしょうか?
しばらく話して分かったのですが、こちらの飛鳥馬さんはなんと、えーじぇんと?なる仕事人でもあるらしいです。とても強いのだとおっしゃっていたので、きっとそうなのでしょう。
「──して、パワードスーツはありませんが、コチラが軽量フレームのアームギアです」
「おお!無駄のない駆動、使用者への負荷を減らす固定方式、着脱へのスムーズな移行!それにこのミサイルですか?少し特殊な素材を使っておりますね。…なるほど誘導が可能なのですか、素晴らしい技術です。これを扱えるとは、流石えーじぇんとです」
「ンフフ…」
パワードスーツの方も気になりますが、諸事情により現在は万全の状態では扱えないようなのでおあずけです。ですがかわりに見せていただいたこのアームギア、とても良い品です。これは…現在のキヴォトスの技術を知る一助になるでしょう。
それにしても美しい設計ですね、惚れ惚れしてしまいます。
わたしのように人を使って人を真似た機械とは、雲泥の差ですね。いつまででも見ていられますよ、美しいです。
「おい」
「…?わたしでしょうか?」
「そうだ。あんたがC&Cの仮入部員だな。あたしは美甘ネルだ、任務中はコールサイン00って呼んでくれ」
「仮入部員?」
早瀬さんに説明を求めて顔を伺いましたが、なぜか笑顔で頷いてから退出して行かれました。どうしてですか?
困惑するわたしをよそに、気付けばメイドさんが集まって来ていました。皆さんの名前とコールサインを教わりました。
「つっても今日は特に任務がねぇからな。ミレニアムの案内でもしてやるよ。おまえらも来るだろ?」
「もっちろーん!」
角楯さんに手を引かれ、ミレニアムを案内していただくことになりました。見たことのない物ばかりで、実は廊下を歩いていただけでも楽しかったのでワクワクします。
未知に対して、恐怖以外の感情を持つのは初めてかもしれません。
……あ、銃撃戦が始まりました。まってください、やっぱり怖いです。
「いたいッ!…あの、な!んでッ…」
吸い込まれるようにわたしへ弾丸が飛んで来るではありませんか。やめてください。さいわいにも威力はありませんが、痛いものはいたいのです!
なんで、こんなに、わたしに、とんでくるのですか!?
……ギュッと目を瞑って痛みに備えます。これ以上受けるのはイヤですが、わたしはそんなに早く動けません。下手に動いてダメージを負うのなら、耐えられるレベルで堪える方がマシです。
そう思い、嫌な気分でその時を待っていたのですが、いっこうに痛みがきません。
「もう大丈夫ですよ」
これは室笠さんの声ですね。優しくかけられて、おそるおそる目を開けました。今さらですが、角楯さんはずっとわたしの手を握っていてくれていました。と言うよりも、わたしが離さなかっただけですけどね、こわかったので。
……仕方ないじゃないですか、わたし、ぬくもりに飢えてるんですよ!
「オラァ!そんなもんかぁ!あ゛ぁ?」
「あっはは!ばいばーい、もうケンカしちゃだめだよ?」
「掃除完了、警護に戻ります」
あちらでは飛鳥馬さん、美甘さん、一ノ瀬さんが戦闘を鎮圧させていました。
なるほど…これがメイドさんですか……
「その様子ですと、もしや銃を持っていないのでしょうか?」
「はい。必要なものなのですか?」
「あった方が何かと便利ですので。今までに使った経験は?」
「ほとんどありませんが、使い方だけは知っています」
「では、先に射撃訓練場に向かいましょうか」
そうして、最初に向かった射撃訓練場。
はなれた場所にある的を、皆さんが次々に撃ち抜いていきました。わたしが驚いたのは角楯さんです。5発撃っていたはずなのに、的に空いた穴は1つしかありません。見ていましたが、全て同じ場所に撃ち込んだのです。
「風もない、邪魔も入らない、的も動かない。それにこの距離なら、スナイパーは外さない」
とのことでした。
スナイパーとはスゴい方なのですね。
銃は各種類の貸し出しがありましたが、皆さんがそれぞれ自分の物を貸してくださいました。
曰く、貸し出し銃には触らない方が良い、と。どうやらここにある貸し出し銃は改造されているらしく、生徒の誰かがどこかで製造し、勝手にここに置いていった物らしいです。そして、運が悪いと自爆してしまうと。
…どうしてそんなおそろしい物が、平然と並んでいるんでしょうか?
「あ~、受付で金払って借りれる銃は大丈夫だ。ミレニアムの自由貸し出しは信用しちゃあなんねぇ、必要なもんは面倒でも申請してから借りるか、自分で買った方が良いな。あんたもミレニアムに入ったんなら覚えとけ『持ち出し自由には、触るな』どうしても触るなら、そこに置いた本人か専門のヤツに見てもらえ」
「偉そうに言っていますが、ネル先輩は先日、勝手に拾って使い自爆していました」
「あたしのことはいーだろ別に!てかトキも一緒んなって自爆しただろうが!」
「私はリスクを許容した上で使用したので」
ふむふむ……ミレニアムはとても危ない場合なのですか?
なぞですね。ですが分かりました、落ちている物は触らない方が良いのですね。
そして、一通り皆さんの銃を撃った感想なのですが
「おまえ…すげぇな……」
「ありがとうございます」
どれもそれなりに扱うことができました。
昔取った杵柄ってやつです。立ち止まって撃つだけなら、わたしはたいていの銃は扱えます。扱えるだけで、戦えるわけではありませんけどね。
「なら、私と一緒にスナイパーになろう。C&Cはスナイパーが少ないから」
「わかりました」
………?
ちょっとまってください。
角楯さんの銃は、対物ですよね。
それを、人に…?
なんて思いましたが、よく考えたらそんなものなのでしょう。だってわたしも昔、手榴弾を押し付けられながら爆発させられましたし…そんなものなのでしょう。あれはいたかったです。ミサイルの砲撃に巻き込まれた時くらいいたかったですね。
「それでは、次は銃を用意してもらいましょうか」
ミレニアムには、エンジニア部という頼めばなんでも作ってくれる方がいらっしゃるようで、皆さんもそこで武器を作ったりメンテナンスをしているらしいです。
エンジニア、わたしの不具合を直したりはできるのでしょうか?できたら……いえ、やめておきましょう。もしもわたしが製造初期の状態に戻ってしまえば、皆さんに迷惑をかけてしまいます。不相応な望みはするべきではありませんね。たしかにわたしは《出来損ない》ですが、それがわたしですし、わたしはわたしなので。
その流れのままにやってきたエンジニア部ですが、彼女達は見覚えがあります。謎の機械と戦っていた方達です。わたしはその流れ弾に被弾して意識を失いました。
美甘さんと室笠さんが話しを通し、いくつか角楯さんが補足をして、最後にわたしの身体のサイズを測っておしまいです。
「少し待っていてくれ、これくらいの調整ならすぐに終わる」
「ではお願いしますね」
話しの途中で猫塚さんが持ってきてくれたお茶を、飛鳥馬さんとのんびり飲んで待っています。
はじめのうちは要望などを聞かれていたのですが、あまりにもわたしが銃の知識にとぼしいので、おまかせすることにしたのです。いちおう話だけは聞いていますが、細かい部分はなんのこっちゃって感じです。さっぱり分かりません。
十数分ほどでしょうか。エンジニア部の皆さんが戻って来ましたが、なぜか持ってきたのは銃ではなくキャリーケースでした。
「やあやあ、待たせてすまないね。さあ、見てくれ!これが君の新しい相棒さ!」
「説明しましょう!こちら可変移動式対物ライフル。見た目はキャリーケースですが、引き手にあるスイッチを押すと自動で開いてその場に固定される脚になるんです。そして内側に折り畳んでしまわれているライフルを展開し、そのまま射撃待機の状態に移行します。他にも沢山の機能を付けていますが…まあ、先ずは使って感想を聞かせて下さい!!」
「もちろん、Bluetooth接続もできるよ」
渡されれば受け取りますが、わたしは何をすれば良いのでしょう?
使うにしても、どこに向かって撃てば良いのですが?
「的は…よし、これにしよう。これに向かって撃ってくれ」
「わかりました」
ひとまずは言われた通り、引き手のスイッチを押します。
意外と静かに、それでいてスムーズに展開されました。なんとなく見覚えのある機構ですが、ムダそうな動きをムダのない機構で動かして連鎖的に必要性を持たせるムダな技術が込められています。わたしは好きですよ、遊び心というやつです。
自慢ではありませんが、わたしの身体は全て機械に組み換えられています。それらは通常の人体以上の情報密度を持っています。
まあ、狙いから外したんですけどね。
マトモには当たりましたが…
「ふむ…反動が大きすぎたかな?」
「いえ、大丈夫です」
衝撃を抑えきれず、射撃と同時に狙いがブレてしまったのです。おなじ建屋の室内で、この程度の距離でこれだけズレてしまえば狙撃など夢のまた夢です。
なので、ズルをします。
目標値として、反動を受け止められる出力に耐えられる身体を。
装甲の一部と演算領域の5%を使用します。
リソースを確認。必要分を確保しました。
プロジェクト:GENESIS、2幕を起動します。
───…体組織の組み換えを完了。
「白石さん。もう一度よろしいですか?」
「勿論さ、次は当たるといいね」
次は当てます。
ブレる銃身を、強化した筋力。つまりはパワーでねじ伏せるのです。ふっふっふっ、生身の人間では時間のかかる筋力増強を、一瞬でおこなえるのですよ。これぞ改造人間のなせる技、便利なものです。
まあ、わたし自身を対象にするのなら簡単ですが、それ以外では手の届く範囲しかできませんけど…本来は認識できる全てのモノを情報リソースに変換、操作、再編するらしいのですが、他の機能も乗っかっているせいか、わたしのキャパシティが足りていないのです。
だから《出来損ない》なんですよね、わたし。
人の脳みそには限界があるんですよ、なんでそんなことが分からないんでしょうね?さてはあの大人達、机の上でしか議論しませんね。なんで初めからそのような機械を作らなかったのか…改造したとは言え、元になる素体に引っ張られるのは当たり前のことなのでは?
これだから目の曇ったヘンな大人は困ったものですよ、もう。
「それではもう一度……ばん」
次は見事に命中。かんぺきです。
「おお!やるじゃないか。ではこれは今から君に授けよう、是非とも沢山使って、データを取らせてくれ……それと、これがその銃の仕様書だよ」
「よかったな。そんじゃ次は───」
「お待ち下さい!!まだ説明が終わっていません!まだ、銃としての機能しか説明出来ていません!!」
「は?銃なんだからトーゼンだろ……ばっ!おまえら!」
「はっはっはっ!だから誰も使わ──…持ち主を選ぶからね」
この日、陽が沈むまで…陽が沈んでもエンジニア部でお話を聞いていました。
この銃、キャリーケースの状態なら乗り物として使えるそうです。平地で最高時速80㎞が出ました!段差だってなんのその、とっても楽しいです!
でもころんだらきっと、怪我をしてしまうでしょうね…スピードはひかえめにするべきでしょう。
………?
美甘さん、最高速度を出していた時、となりを走っていた気がするのですが……えっ?
√ミレニアムが始まってますね、これで終わりです。
次はゲヘナかな?
一通りの学校で主人公を拾わせてみたいと思います。
そこから先は、気が向いたら書いてみます。