「んにゃぁぁぁぁーー!!」
わたし、スナイパーなんですが!?
わたし、スナイパーなんですけど!!?
「黒崎ちゃぁぁん!!飛鳥馬さぁぁん!!美甘さぁぁぁぁん!!助けてくだざぁぁぁあい!!!」
なんでわたしが囮なんですか!?なんでなんですか!!?打たれ弱いの、知ってるじゃないですか!!
なんで1番前なんですかやだぁぁぁぁあ!!
「うわぁーんなんでぇぇー!私はC&Cじゃないのにー!セミナーなのにぃぃーー!!」
あ、向かいから黒崎ちゃんが走ってきました。
なるほど?なんでなんですか?
とりあえず、一緒に逃げましょう。
「「うわぁぁぁぁん!!」」
このあと、飛鳥馬さんがきてくれて、追っかけてきた人たちをみんなぶっ飛ばしました。
これは少し前、悲しみの記憶です。
「なんで、わたしが、囮なんですか!?美甘さんがやればいいじゃないですか!」
「あのなぁ…いくらスナイパーだからって、後ろで引っ込んでるだけじゃダメなんだって…」
「で、でもわたし調べました。スナイパーはとおくから狙撃するものだって!」
「そりゃ普通ならそれでいいだろうがな?ここはC&Cなんだわ。変わった任務も多いからな……まぁ、諦めろ」
「いたいのイヤです!!」
角楯さんと一緒に部室のおそうじをしていたら、セミナーから依頼を受けた美甘さん達が帰って来て言ったのです。わたしに囮になれって。
イヤです!
いたいのイヤです!
「……はっ!角楯さん!」
「懐かしい…私も入部してすぐの頃はよく囮役をやってた」
「そんな……室笠さん!」
「通過儀礼だと思って」
「……飛鳥馬さん!」
「私なら1人で全てこなせます」
「…一ノ瀬さん……」
「私はいつもやってるよー!」
なんてこった、ダメじゃないですか。
味方がいません。
「はぁー…いい加減諦めろよ」
「いたいのイヤです」
「じゃあ命令だ、やれ」
「…………………………………………わかりました……」
…ぅう……おーぼーです。命令されたら従うしかありません…ズルですよ、ズル。わたしは悲しみに明け暮れています。
あ、今の内に身体装甲を組み替えておきましょう。せめて数発の被弾なら耐えられるようにして……ああリソースが足りません、演算領域をもう少し削って…肉体の主要部分を保護する代わりに、それ以外を薄く…
くっ…こうなるならあの白い大人達の話しをもう少し真剣に聞いておくべきでした。なんで居なくなったあとに神秘が宿るんですかもう!使い方がわかりません!でももし見つかったら、みなさんに会えなかったかもしれないですね、やっぱりナシでお願いします。
「よし、じゃあまず作戦の内容からだな。…アカネ」
「はい。次の任務の目標は、ミレニアム自治区内にある武器の販売業者。使用が認められていない薬品や、認可のない武器の密売を行っているそうです。そこへ
「はい。1つよろしいですか?」
「どうぞ、トキちゃん」
「本当に、この子を囮にするんですか?」
座っていたわたしを後ろから飛鳥馬さんがギュッとしてくれました。あたたかいですね、しあわせです。
「する。甘やかすんじゃねぇぞ。
「ですが…この子は私達より弱いんですよ」
「うぐぅ……!」
ぁ、飛鳥馬さん?なぜわたしを刺すのですか?たしかにわたしはみなさんよりも弱いですし、守ってもらわなければ逃げ出せもしませんが…
「そんな、弱くて戦いに向いていない性格の子を囮に使うだなんて…あまりにも……あまりにも可哀想ではありませんか」
「だがなぁ…ぶっちゃけ足手まといをいつまでも連れて歩ける余裕もねぇんだわ。そいつにゃ悪ぃが、ここでC&Cとして働いてもらわねぇと…下手すりゃ退部だぞ?」
え、退部……?
ここに居られなくなる……?
拾ってくださった黒崎ちゃんや、紹介をしてくれた早瀬さんの期待を裏切ってしまう?
それは、それだけは…
いやです。
すてられるのは、もういやなんです。
「あ、あの!やります…わたし、おとりやります!くんれんもにんむもぜんぶ…ぜんぶやります…どんな命令でもぜんぶしたがいます!なんでも、なんでもします!!…から、だから…すてないで、ください……」
…あの頃に戻ったような感覚。足元が崩れ、見えない穴の中へ突き落とされるような恐怖。心臓を直接握られているような、胸を掻き毟りたくなる程の不安。
急速に世界から色が抜け落ちていく様を見せつけられるようでした。
何を思い上がっていたのか。わたし所詮《出来損ない》の不良品、廃棄予定のゴミクズでした。
「──ちゃん!しっかりしてください!!」
「…室笠さん?」
強く肩を揺さぶられ、無理矢理に意識を現実へ向けさせられました。
こわいです。
何も見たくない、何も聞きたくありません。
それでも、目の前にある心配そうな顔をした室笠さんの言葉は、自然と耳に入ってきました。
「落ち着いて下さい。大丈夫ですから、貴女を捨てようなんて、誰も思っていません」
「………ほんとう、ですか…?」
正直、その時の話は殆ど覚えていません。
振り返ってみて驚きましたが、わたしの心は相当に弱っていたようでした。身体の事は分かっても、心は別なんですよね。
「…美甘さん、飛鳥馬さん……」
「ああー…怖がらせたみたいで悪かったな…。たしかに足手まといは要らねぇが、今いるヤツを辞めさせるほど余裕があるわけでもねぇんだわ」
「出来るようになるまで、何度でも。立派なメイドになれるようにお手伝いします」
「そーゆーことだ。初めから出来るヤツなんざそうそう居ねぇよ。あたしら全員、やれることやって1個ずつ、少しずつ出来るようしてきてんだ」
ここまで言ってもらって初めて、わたしは胸を撫で下ろしました。ほんとうに怖かったんです。優しくした後に突き放されるなんて、それはもう拷問なんですよ。
今までで1番怖かったです。
でも、捨てられないと分かればもう安心です。
「そういうことなら、わたしがんばります!立派なメイドさんになりますよ!」
「その意気です。おー!」
「お、おー?…おー!」
飛鳥馬さんに後ろから腕を持たれて、謎の掛け声をあげました。ちょっと楽しいですね、おー!
「では早速、私と戦闘訓練に行きましょう」
「っ!イヤです!戦闘訓練なら室笠さんか角楯さんがいいです!」
「なるほど、1番激しい内容でいきましょうか」
「イヤです!飛鳥馬さんの訓練はよくわからないまま気絶してしまうのでイヤです!みなさん、助けて下さい!飛鳥馬さんが、飛鳥馬さんが乱暴しようとしてきます!!」
「……行ってこい」
「いやぁぁぁぁああ!!」
………飛鳥馬さんと美甘さんの戦闘訓練は、きっと頭のおかしい人向けなんだと思います。
なんですか?あび・えしぇふって、あんな強化外装に勝てるわけないじゃないですか!せめてわたしが銃を展開するの待ってくださいよまったく…いえ、アームギアもやめてほしいです。あのミサイル、ちっちゃいのにすごく痛いんですから。追尾って反則です反則。
美甘さん?あれは人の皮を被った怪獣です。
普段はとても優しくて大好きなんですが、戦闘が始まると意味が分からないぐらい強いです。
ちらりと聞きましたが、約束された勝利の象徴でしたか。それを聞いて納得しました。美甘さんは怪獣です。
あ、でも飛鳥馬さんとの戦闘訓練で、なんかもう色々どうでもいいような気がしてきました。美甘さんも途中で参加されたので、多分もう何も怖くないですね。
囮でもなんでもドンと来いです、今なら行けます。
コユキが居た理由は、電子ロック解除の為……ではなく、主人公ちゃんを心配して勝手に着いてきたからです。そして勝手に追われてました。かわいいね。