1話でもしカフカが入隊を断っていたら?(リメイク版) 作:刀持ちの烏
1.序・章
『…スパーク8よりキグナス38。頼む。近所にいたら返事をしてくれ。送レ』
「こちらキグナス38。上空旋回中。用件はなんだ?送レ」
『キグナス38、現在怪獣が日本橋4丁目からそのまま北東に向かって進行中だ。スパーク8は105mm砲による支援を要請する。敵の現在位置は座標358_1353だ。送レ」
「了解、これよりキグナス38はただちに現場に向かい砲撃を開始する」
機長はそう言って無線を切ると、19名の防衛隊員を乗せたAC-130UスプーキーⅡを敵の方向へと向けた。
このAC-130Uは、アメリカから防衛隊が買い取って運用している機体だ。現在は自衛隊には配備されておらず、防衛隊の航空団のみが運用している。
なぜ自衛隊が装備しないのかというと、通常の戦闘でAC-130Uのようなガンシップは、普通味方側の制空権が取れている場合でしか効果を発揮できないからだ。その点、防衛隊は陸上での怪獣との戦いが主体のため、より効果的に使えるわけだった。(※もちろん飛行怪獣も存在したが、飛行怪獣の攻撃能力が乏しく実害が少ない点などからあまり脅威ではないと判断されていた)
現在この機体は大阪府中央区の上空を飛行していた。
胴体から下には、原型となったエッフェル塔とは似ても似つかない形状に仕上がった通天閣や、三名城の一つであり、優美な深緑の瓦を持った大阪城の天守閣といった光景が広がっている。
しかし、AC-130Uの機長と副操縦士はそれに見向きもせず、全く別の方向を見つめていた。
そこには巨大な、おそらく目で見る限りでは20m以上の大きさをもっていそうな四足歩行のトカゲに似た怪物が暴れていた。
トカゲといっても、その怪物の背中には白く発光する鉱石のような、小さい山のように大きい塊が突き出されていた。
狭い路地にいるため、その体を動かすたびに地面が荒れ、車が潰れて、ビルが崩れ、人々に築かれてきたコンクリートジャングルを煤塵にしてゆく。すでに住民の避難は完了しているため、周辺には人の姿は見られない。
機長は、現在の位置を確認すると、敵に全ての火器を向けられるように機体を反時計回りに旋回させる。
そのゆったりとした様子には、まるで獲物を見つけた猛禽類のような殺意が込められていた。
機長は敵の方を向いた。
「よし、来たな。105mm砲、攻撃開始だ」
機長の号令を合図として砲手がトリガーを引く。同時に、乾いた音と共に直径で10.5cmの弾丸が目標に向けて殺到する。
命中した弾丸は怪獣の体表を食い破り、炸裂した。爆発と共に血や肉片を周囲に撒き散らす。
元々この砲は、榴弾砲に使われているものを使用しているために威力は高く、それなりの威力を有していた。
だが、この攻撃でもなお怪獣は動きを止めることはなかった。それどころか殺意を持った目で機体を睨みつける。
「こちら砲手、敵に全弾命中。効果あり。ですが敵の侵攻止まりません」
「砲手、こちら機長。敵の前足を集中して狙え。動きを封じるんだ」
了解、と言って砲手は標準を怪獣の前足付近へと動かした。
その時だった。
突如オペレーターの悲鳴に近しい報告が聞こえた。
「こちらオペレーター。敵から大規模なエネルギー反応あり!攻撃してきます」
機長は下方を見る。怪獣の背中が光り始めており、侵攻も止まっている。
「機体を旋回させろ。攻撃を回避するんだ」
機長は冷静な声でそう言うと、機体をすばやく左にロールさせた。だが、大柄なこのAC-130Uではおおよそ避けることは出来そうになかった。
突如、怪獣の背面からサーチライトのような光が一斉に放出された。
光は高層ビルを焼き切り、そして回転しながらAC-130Uへと向かった。機体の方も当たらないように動かしたが、光線はそれを嘲笑うかのように命中した。
振動が走った。機体が斜め下へとかたむく。どこからか煙の匂いもする。
機長は落ち着いた表現で損害を確認した。
左翼がエンジンごと吹き飛ばされているようだった。
AC-130Uは4発機でエンジンが一つ壊れても大丈夫な作りになっているのだが、主翼ごと折られている都合上、あいにく助かりそうにもなかった。
機長は決断した。
こうなった以上脱出するしか手はない。たしかこの機体の後部ハッチは輸送機だったころの名残で開くはずだ。
よし、と思い機長は全乗員へと告げた。
「これより脱出する。胴体にいるのものは後ろから出るんだ。パラの準備をしろ」
その言葉を言い終わると同時に、機長は目の前が白くなるのを感じた。
怪獣から発せられた光線は機体の胴体に直撃した。すでに脱出の用意をおこなっていたとはいえ、機体を溶断されてはひとたまりもなかった。
機長を含む操縦席にいたものは焼死。それ以外のものも爆風で吹き飛ばされてしまった。
「畜生!畜生!どうなってるんだ」
パラシュートに揺られながら、砲手は大きく取り乱していた。上空からは真っ二つに分かれた機体が竹とんぼのように落下するのが見える。
彼はやらせないような表情になった。次第に大きな疲労感を覚える。
めまいを感じながら。彼は意識を手放していった。
どうも、刀持ちの烏です。
あらためてリメイク版を投稿してみました。次は明日にでも投稿する予定です。