1話でもしカフカが入隊を断っていたら?(リメイク版) 作:刀持ちの烏
連中、しくじったな。
第6部隊第11普通科連隊第1中隊長保科ソウシロウは、まずいような顔をしながら上空を見上げていた。
彼は、今回の怪獣…土竜1931型を討伐するうえで、航空攻撃であらかた敵にダメージを与えたあと、スパーク8、もとい第2中隊と共同でとどめを刺すことになっていた。
だが、その作戦は実質失敗したと見てよかった。
その証拠として、最初の航空攻撃に使用される予定だったガンシップは今撃墜されてしまったし、第2中隊とも先程から連絡が取れていない。
ひどいもんやな。と保科は思った。彼は当初からこの作戦に対して反対であった。わざわざ敵が遠距離攻撃が可能な怪獣なのだから、最初からガンシップで攻撃するなんてことはせずに、近距離である程度翻弄させて倒す方がいいと考えていたからだ。
もっともな話ではあった。彼の案を採用したならば、少なくともここまでひどいことにはならなかったはずだ。
だが、作戦を急に変更するほど時間があるわけではなかったのもまた事実だ。
今回の土竜1931型出現したのは今日の午前5時ごろで、避難が開始されたのがだいたいその数分後、避難自体は迅速に行われたものの、時間が通勤ラッシュ時であったために避難に時間がかかってしまった。
避難を優先した結果、防衛隊も作戦を修正するほどの時間がなかった。というわけである。
手始めに彼は現在の戦力を確認した。
まだ戦闘をおこなっていなかった彼の中隊は全員そろっていた。
防衛隊での一個中隊は、基本的にAMSGR(対怪獣特殊防護装甲)を着用した中隊長の特性に合わせて編成されている。
AMSGRは中隊長以上に支給される怪獣繊維を使用した特殊スーツで、身体や5感の強化などのほか、肩や膝などに着いたバリア発生装置の効果や、高い防御力をほこる怪獣繊維の効果による身体の防護などの役割もある、極めて強力な装備だ。
やろうと思えばスーツでなくとも、他の兵器などにも怪獣繊維などの部位は使用可能なのだが、2007年の広東条約により無人兵器らとともに使用に制限がかけられていた。
話をもどすと、彼は近接能力に秀でているため、中隊の編成も彼を援護するための迫撃砲小隊や誘導弾小隊などで編成されていた。人数は400名近くいる。
彼は腰に帯刀している0式対獣振動刀改を撫でた。この刀は出雲テックスにより開発された対怪獣用の短剣で、刀を振動して発熱させることにより威力を高めている。彼の持っている型は刀身を延長した改型であった。
部下から報告が入った。
「中隊長。スパーク8と交信繋がりました」
「僕が出る」
保科は祈るような気持ちで送話器に出た。たとえ彼の戦力がほぼ無傷とはいえ普通科だけでは対処は難しい。やれることはやれるがそれに対する犠牲が多すぎる。
彼はスパーク8の戦力が可能な限り残っていて欲しいと祈る事しか出来なかった。
「マルス9より通信入りました。現在スパーク8は20人近くを残し全滅。以後はマルス9の指揮下に入るとのことです」
「ひでぇもんだな」
上司のオペレーターは吐き捨てるようにつぶやいた。
スーパーマーケットに仮設された作戦本部のなかで、上司のオペレーターは吐き捨てるようにつぶやいた。先程、スパーク8の壊滅を伝えた若い女性のオペレーターも冷や汗をかいている。
隊長が前線に出ることが多い防衛隊は、全体の戦力配置を確認する仕事としてオペレーターを使用している。楽だが責任は伴う。
「航空支援はどれぐらい出せる?」
「現在、エリアル・ベースからはFS-2が二機出せるようです」
上司のオペレーターは考え込む。エリアル・ベース、神戸航空基地から発進したとすると、22km離れているわけだから、約11分で着く。
「よし、そいつらを出せとエリアル・ベースに伝えおけ。なるべく早くな」
「わかりました。こちらCPよりエリアル・ベース、敵の場所は浪速区日本橋、そのまま北上中。エリアル・ベースは待機中の2機を直ちに発進させてください」
FS-2支援戦闘機が神戸航空基地から発進したのは午前8時19分の事だった。
航空支援が来るのを伝えられた保科は考えた。
彼らが今回やるべきことはとにかく敵を足止めすることだ。航空支援が来るのなら単体で倒すほどやるべきではない。よし。
彼は部下に指示を出した。
「ええか、まず僕が敵を引きつけておくから君たちは僕の援護を頼む」
「了解です」
後方から大小様々な砲撃音が響いた。それぞれ、14式機動戦闘車および重MAT、軽MATによる攻撃だ。無数の曲線を空に描きながら目標に向かってゆく。
それぞれ攻撃は敵の結晶に命中した。
保科はそんな砲弾の雨を避け、両手に持った0式で、怪獣の片目を切りつける。黒目の部分から血が溢れていき、あまりの痛さに顔を押さえる。
通常保科流、いや、全ての刀伐術は二つの短刀によって討伐する。この由来は諸説あるが、言ってしまえば刀での居合い切りよりも、手回しのよい短刀のほうが翻弄できて怪獣相手ならより効果的だ、ということだった。
事実、今回の彼は自分が敵の気を引いているうちに、砲撃で背中の結晶体を破壊しようと考えていた。近距離で攻撃するこの方法は、少なくとも、この僅かな戦力、そして彼の得意な攻撃を存分に生かしてはいた。
保科は敵の後ろ足を横切ると同時に斬撃を浴びせる。AMSGRのおかげか、怪獣よりも早く攻撃できる。怪獣は片手で振り払おうとするが、逆に彼はその手を駆け上がっていき、もう片方の目を切り裂く。
もちろん、敵もやられたばかりではない。まだ残ってる結晶体からビームを放つ。当たると同時に、地面に爆発が起こり重MAT数台や十人以上の人員が吹き飛ばされる。
保科も怪獣からの攻撃を喰らいそうになる。
あかん。
彼はすぐに防御の構えを取ろうと腕を交差させようとする。
だが、敵の動きの方が早かった。
土竜1931型の長い尻尾が彼の胴体を直撃した。そのまま彼をビルの外壁へとふき飛ばす。
スーツの特殊繊維と保護用のバリアユニットのおかげで大事には至らなかったが、この攻撃により、次直撃すれば無事ではすまされないような状態になってしまった。
彼は再び身体を動かそうと力を入れるが、うまく動かせない。
流石にここまでか。そう感じながら彼は身構える。
その時だった。
轟音と共に空に黒い物体が現れた。彼は上空へと目を向けた。
「This is hawk15.shoot a missile now(こちらホーク15、これから誘導弾を発射する)」
そう言うとホーク編隊は見えるほどの高度へと下げ、両翼合わせて4発ずつ備えられている。AMM-1を発射した。
AMM-1、正式名称を91式空対獣誘導弾というこの兵装は、砲弾で言うところの徹甲弾のような存在であり、ある程度敵にめり込んでから爆発するように、遅延信管を使い、先端を鋭利に尖らせていた。
結果、怪獣は全弾命中したAMM-1により息を引き取ることとなってしまった。命中した誘導弾の内の3発が痛ましい傷口から体内に踊り込んで、そこで信管を作動させたのだ。内蔵や筋肉などを内部から吹き飛ばされ、前のめりになって倒れる。怪獣はもう動かなかった。
保科は怪獣が倒れるのを見届けると自らも目を閉じた。
そして、彼の意識はだんだんと遠のいていった。
かなり投稿遅れてしまってすいません