1話でもしカフカが入隊を断っていたら?(リメイク版)   作:刀持ちの烏

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3.始・動

 

その空間は異様な光景となっていた。

 

その空間内部は広いドーム状となっており、内装はほとんどないが、地面には腐敗した肉がレジャーシートの上に乗せられており、防護服を着た複数の人物が機械を使ってそれを解析していた。

 

「どうだ。なにかおかしいところはあったか?」

 

日本防衛隊第5特務部隊所属の穂高タケミチは部下に尋ねた。年齢は20代後半程度までで、見た目としては髪は金髪なものの、日本人的な意味では無個性な顔をしており、とてもこの場には似つかわしくないような顔をしている。

 

しかし、実際はそのイメージとは裏腹に、彼はこの特捜部を5年近く勤めているエリートだった。若くからこの地位まで上り詰めた実績からか、上司の信頼も厚い。

 

特務部隊というのは基本防衛隊内での極秘任務などで使用される部隊だ。主に残っている識別怪獣のサンプルの奪取や、反逆者の始末などを行っている。

 

今回の穂高たちの仕事は、先日大阪に出現した怪獣の肉片からなにかを解析することだった。

 

普段ならこの手の仕事は生体研究部隊などがやるのだが、諸事情により今回は彼らがやるとととなっていた。

 

「穂高さん。今こんなものが見つかりました」

 

そう言って部下の1人が何かを持ってくる。

 

それはかなり小さかった。おそらく1cmにも満たないような大きさで、見たところ外観は生物の破片というよりかは電子部品に近かった。

 

彼はそれを手にとって少し見つめる。

 

「もしやこれは…あの事件のものか?」

 

「ええ、今年に入って発見これで5件目ですね。現在の予想ではまだ出回っているものと思われます」

 

穂高はううむと唸った。

 

 

 

彼は現在、何者かにより怪獣を操る事件を操作していた。どうやら先程の部品のように小型のチップを埋め込むことにより対象を操作しているようで、どうやら彼の部下によればおそらく怪獣を不法に飼育して、まだ小さい段階でこのようなチップを埋め込むと推測されている。

 

チップの埋め込まれた怪獣の動きに癖とかはないが、多くの場合市街地に現れることや、その特性にあっていない動きをしたりなど、不可解な行動をとっていることが一応の判別基準になっていた。

また、テロなどの破壊活動用に使う影響なのか、殺傷能力や破壊行動に向いているものが多いのも特徴だ。

 

残念ながらまだ足は掴めておらず、どこの誰がやったのもいまだに不明な状態だった。

 

 

 

「せめて、埋め込んだ犯人ぐらいはわかると良いのですがね。しかし大っぴらに捜査するとバレるのがまた厄介ですしね…」

 

「大丈夫、そういう事情はもう把握している。大規模にできん以上今はできることしかやらんよ」

 

部下の言ったように、基本的に防衛隊の特務部隊は秘密裏に行動する部隊のため表立って行動することができない。やるのであれば身分、職業などを偽って聞き込みや情報収集をするぐらいが精一杯だった。だから情報を掴めずらいという欠点を持っていた。

 

「まぁ、そうですね。我々も全力を尽くします」

 

そう言って部下は再び解析の方へと向かった。

 

とは言ったものの迷ったなと彼は思う。何年この手の時間は増加傾向にあり、ある程度証拠を掴んでおかないとまた被害が出てしまう。このまま行くとまずい。

 

 

 

「あ!」

 

先程と違う部下の声がきこえた。たしか彼は今回の捜査のために来た生体研究部隊から引き抜かれてきた人だったはずだ。年齢は穂高と同じぐらいで、防護服などを着用していた。

 

穂高はどうしたと聞きに行く。

 

「新たな証拠が見つかりました。これを見てください」

 

「これは…」

 

これは、と彼は新たな証拠品を手に取った。なにかの破片だろうか?彼はそう思いながら見つめる。

 

それは、なにかの金属と繊維の中間のものでできた破片のいったかんじだった。ある程度伸びはするものの表面はものすごく硬い。

 

「見たところ別におかしいところはないが、これがどうかしたのか?」

 

「この素材を解析したところ、おそらく怪獣素材を加工してできた金属だということが判明しました。おそらく、防衛隊のスーツに使用されているのと同様のものかと思います」

 

彼は息を飲んだ。

 

「怪獣素材を製造できる技術を持っているのは日本だけだ。それに、その日本でも使用できる人物は防衛隊か処理業者のみだ」

 

「ってことは、この事件には防衛隊か処理業者が関わっているってことですか?」

 

彼は頷く。

 

「そうだとしか言えんな。少なくともこの二つのどちらかに関わっている人物がこの案件にも関わっている可能性が高い。となれば、怪獣技術の技術漏洩がされている可能性すらありうるかもしれん」

 

「…最悪のケースですね」

 

「ああ、そうだ。だがこちらとしてはいい手がかりとなった。僕は上司に報告しに行くから、ここはお前に任せたぞ」

 

「了解しました」

 

穂高はそう言うと上司のいる執務室へと向かった。

 

 

 

 

 

「ん?ここは…」

 

彼はそう言いながら目を開いた。

あちらこちらに痛みを感じつつ、彼は起き上がった。今までの記憶が飛んでおり、自分が何をしていたのかはっきり思い出せない。

 

彼はボケっとしながらもあたりを見回す。

 

どうやら病室のようだった。彼の横にはバイタルを表示する機械や点滴、テレビなどがあった。病室の白い清潔感は、彼の心を落ち着かせてくれた。

 

 

 

「どうやら目覚めたようだね」

 

声のする方を向くと、そこには1人の女性が立っていた。

 

雰囲気から彼は彼女が防衛隊出身だと感じた。年齢などはわからないが、おそらく彼よりも潜り抜けてきた経験は多いように感じられた。

 

「あの、初っ端から申し訳ないですけど、お名前は…」

 

「申し遅れた。私は日本防衛隊第3部隊隊長の亜白ミナ一等特佐だ。よろしく頼む」

 

保科は立ち上がって慌てて背筋を伸ばした。一等特佐といったら彼よりも階級が2個上だ。

 

「そんなにかしこまらなくてもいい。今の君は病人なのだから、楽な格好でいるほうがいいならな」

 

「ああ…了解です」

 

彼はそう言って腰を下ろした。

 

「それで、亜白隊長はここになんの用でしょうか?」

 

「ああ、君に伝えたいことがあってな」

 

彼女は一旦言葉を切ってからこう言った。

 

「君にはこれから第3部隊の副隊長に任じられることになる。退院後すぐに職務についてもらうこととなる」

 

「え…?」

 

彼はキョトンとした顔になった。

 

たしかに彼自身は現在中隊長をやってるから、次昇進すれば副隊長になるとは薄々感じていた。

 

だが、第3部隊というのは首都近辺の防衛を担当する部隊で、現在彼の所属している第6部隊とはまったく勝手が違うと言っていい。今の彼からすれば驚くことも無理はない。

 

「数年前のことで臨時で部隊を編成した結果、副隊長が長らく不在でな。なので新しく任命することになったんだ」

 

「なるほど。聞きたいのですけど…一応僕を選んだ理由ってのはなんですか?」

 

「君は土竜1931型との戦闘において、圧倒的に不利な状況下から怪獣の討伐までいくことができた。そこを評価した」

 

なるほど、と感じながら彼は彼女の言葉を聞いた。

 

確かに前回の戦闘において彼の行動自体は何ら問題はなかっただろう。むしろある程度は適切だったと言えるレベルだ。そう考えれば、たしかにここまで昇進するというのもおかしい話ではない。

 

そう言い終えると、彼女は携帯で時間を確認した。

 

「そろそろ時間なので失礼する。手続きは後々連絡するから心配しなくても大丈夫だ」

 

「了解です」

 

「あとそれから…」

 

彼女は出る直前に振り向いた。

 

「あまり固くなるな。いろいろ抱え込むとその後が厳しくなる」

 

「わ、わかりました」

 

そう言って彼女は微笑むと、ドアを開けて病室から退出した。

 

 




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