1話でもしカフカが入隊を断っていたら?(リメイク版)   作:刀持ちの烏

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6.真夜中の覇者

 

「え?」

 

日比野は、市川の反応が変だったため、顔に何か付いてるのか?と思い窓を見る。

 

自らのいる場所には髑髏のような顔が映っていた。

 

2人は顔を見合わせる。

 

そして、ほぼ同時に絶叫した。

 

「うぇぇぇ!?怪獣、怪獣」

 

「市川、俺だよ、日比野だよ!!お願いだから引くのやめて」

 

日比野は、必死に自分だとアピールする。だが、市川は状況の整理に間に合っていないらしかった。

そんなことしてるうちに、外からドタドタという音が近づいてくる。

 

「市川さん、早すぎますよってええぇええええええ⁉︎」

 

いつから入って来たのか、ドアの近くにいた古金も混乱しており、腰を抜かしていた。

 

「えッ、怪獣!?いや人間大だし…」

 

「え、本当に先輩なんですか?まあ、ただの怪獣なら喋らないとは思いますが」

 

「ひとまず逃げるぞ、話はその後だ‼︎」

 

日比野は、混乱している2人に対してそう言った。

 

「逃げるんだったらドアから出れば……」

 

「バカ、すぐバレるだろ‼︎」

 

「もう何が何だか…」

 

しかし、2人はまだ冷静になっていないようだった。少し考えた日々野は再び窓の方に向く。

 

「行けるかどうかわからないが、とりあえず窓から出るぞ‼︎怪獣だったら行けるはずだ」

 

彼は、窓に手を掛けて勢いよく開けようとする。

 

その時、窓だけでなく、壁が開けられるとともに勢いよく剥がされてしまった。混乱している2人はおろか、日々野も唖然とした。

 

「どうなってんだこりゃ……」

 

夜はまだ始まったばかりであった。

 

 

 

 

 

「横浜南総合病院に小型の怪獣が出現しました。フォルティチュードは現在2、パトロール中の部隊はすぐに現場に向かってください」

 

「すぐ近くだな」

 

第3部隊第1普通科中隊第1小隊長、直間アキラは、眉ひとつ動かさないままそう言った。美形ではあるのだが、最近寝不足のため、目の下にクマが出来ている。

 

彼が率いる小隊は、現在、横浜市内を巡回中であった。自衛隊とは違い、防衛隊は小型の怪獣に対処するために常に付近のパトロールを行なっている。

小隊のため、確認できる人数は12人と限られているが、F2程度の怪獣ならば対応は可能と言えた。

 

彼らを乗せた軍用パジェロは現場へと急行した。

 

 

 

 

 

一体何が起きているのだろう?市川は未だに状況を理解できていなかった。

無理もない話だ。職場での先輩が、いきなり化け物になって、すぐに理解を示せる方がヤバいだろう。

市川は、何故怪獣になってしまったか日比野に聞く。

 

「念の為に聞きますけど、なんでこうなったんですか?」

 

日比野は走りながら理由を説明する。

 

「いろいろ突っ込みどころがあるだろうが、まず、口の中に喋る虫みたいなのが入り込んできた。そしたら何故か怪獣になってた。よくわからないと思うが、本当にそうなんだ」

 

「まあ、なった人が言うんだったら…そうなんですかね?」

 

古金は意外と冷静だった。

 

「なあ、古金って言ったっけ。俺、防衛隊に見つかったらどうなると思う」

 

彼女はうーん、と少し考える。

 

「まあ…殺処分からの兵器化ですかね?多分それぐらいしかないと……」

 

「そうか…うん、そうだよなぁ…」

 

日々野は大きくため息をついた。

 

「あっ、2人とも、もうすぐ規制線ですよ」

 

市川がふと気づいたように指さす。

全員は安堵した。

その時だった。突如、向こう側に閃光と音がした。

 

「ありゃあ、F2ぐらいだな。おおかた昨日のやつに惹かれる形で出てきたやつとかだろ」

 

市川は興味深そうに聞いた。

 

「怪獣になると、そんなことまで分かるんですか?」

 

日々野は首を振る。

 

「いや、長年の経験ってやつだ。言ってもまあ、勘のようなもんだけどな。遺体を処理したりする時に周りを見たりしてると、サイズごとの被害とか分かってくるんだわ」

 

「普通にすごいですね…」

 

二人は日比野の鋭い勘に驚いているようだった。まさに、長年の経験が生かされたものであると言えた。

 

「まぁ、F2といっても、これで先輩を追いかけて来る隊員の数は減るでしょう。避難は終わってるので、まずは無事を祈りましょう」

 

「ああ…」

 

日比野は、納得していない様子だった。

 

 

 

少女は、瓦礫の下にある自分の母親に、泣け叫びながらも呼びかけていた。

 

「早く…早く逃げて」

 

母親は自分がもう助からないだろうと腹をくくっていた。自分は瓦礫の下なんだから動けないし、すぐ近くには、人間より一回り大きく怪物がいる。完全に詰みの状況だ。

しかし、少女は逃げなかった。そして怪物は二人を攻撃しようと、手を伸ばす…。

 

その時だった。

何かが怪物へと殴りかかった。

 

 

 

日比野はなるべく加減して攻撃したつもりだった。

 

目の前に少女がいること、そしてここが市街地なことを考えて、そしてさっき窓を破壊したときのことを考慮すれば、その威力はなるべくは抑えたれたつもりだった。

 

しかし、その威力は予想以上に高いものだった。

 

彼の拳は敵怪獣の顔面に当たった。拳は頭蓋骨を粉砕し、そのまま顔面をただの肉片へと変えてしまう。そして、敵は続くように反動で後方へと吹き飛ばされる。そして、まだ残っていた怪獣の胴体は地面へと接触し、大きな穴を作りながら地中へとめり込んだ。誰の目からみても怪獣は原型の残らないほどやられていた。

 

 

 

「すっげー威力だな…これ」

 

「これ、人には向けちゃだめなやつですね…」

 

「うん……」

 

二人は冷や汗を流していた。

 

先程の日比野の言葉を借りるなら、こいつはF2と言うことになのだろう。それを軽い一撃でやったということは、怪獣の中でも、かなりの強さを持っていることになる。もしかしたら、だが、識別怪獣の可能性も捨てきれないぐらいだ。

 

「あ、そうだった!先輩早いところ逃げましょう」

 

「お、おう…」

 

日々野は2人に続いて逃げようとする。後方から声が聞こえる。一人の少女だった。

 

「あ…あの」

 

少女は、泣きじゃくりながらも礼を言った。

 

「ありがとう…」

 

 

 

 

 

「瓦礫とこの家に住んでいる二人しかいないようだな」

 

直間は不信感を募らせていた。おかしい、先程までここには2体の怪獣反応が出ていた。それは、瓦礫の山と散らばった肉片が証明している。おそらく戦ってたんだろう。もう一体は、地面に穴が空いてないことを見るに空中に逃げたのだろう。彼は、ふと辺りを見回した。被害者であろう少女がいる。

 

彼は部下に聞いた。 

 

「あの少女に事情聴取するのは可能か?母親のほうは気を失っているからな」

 

彼の部下は二言くらい衛生隊員と話し、首を縦に振った。

 

直間は少女の方に向かうと、こう話を切り出した。

 

「お嬢ちゃん、今から聞きたことがあるんだけど、いいかな?」

 

少女はコクリと頷く。

 

「ここに散らばってやつ以外に、なんか変なやつ、例えば怪獣みたいなのとか、いなかったかい?」

 

「うん……だってその人に、私助けられたから」

 

「え?」

 

直間は唖然とした。

 

 

 

 

「逃げれましたね」

 

古金は額の汗を拭いながら言う。市川も同じような感じで一息ついている。

 

「人助けが出来るならやろうとするのは良いですけど…先輩、泣いてるんすか」

 

市川が意外に思って聞く。

 

「俺はな、人間でなくなったことが…正直めちゃくちゃ悲しい」

 

日比野は涙を拭く。市川も同情的な目で見つめる。

 

「だが、こうも思ったんだ。もしかしたらこの力を使えれば……」

 

彼は少し間を置いてからこう言った。

 

「もしかしたら…誰かを救えるかもしれない」

 

彼は、心の奥底で炎が燃え上がっている気がした。討伐大学を落ちて以降、彼が感じなかった衝動だった。

 

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